悪役令嬢の弟

ミイ

文字の大きさ
上 下
53 / 154

53. 保健室

しおりを挟む
「(セイロンかな?)」と思っているとマリタイムが入ってきた。それには先生も驚いている。

「マリタイム君、今はまだ生徒会の仕事中では…?」

そう先生が声を掛けたにも関わらず、マリタイムは真っ直ぐと僕を見つめたまま「私のすべき事は終えましたのでご心配なく。フラン先生は私とトルーの貴重な時間を邪魔しないで下さい。」と淡々と告げる。

そんな失礼な発言をしたマリタイムだったが、先生は「…はい、分かりました。」と大人しく返事をすると保健室を出て行った。

「(えっ…なんで先生が敬語…?てか先生、出て行かないで…!)」と僕が戸惑っているとマリタイムがツカツカと近付いてくる。

僕と対峙したマリタイムは途端に雰囲気を変え「トルー…怪我の具合はどう?トルーが山道を落ちた時は私の心臓が止まりそうだったよ…。」と心配そうに僕の頰を撫でる。

「(えっ…何?ちょっ…近い!)」と僕は少し距離を取ろうとするがマリタイムはその態度に哀しそうな顔をする。

僕は未だにこの状況に頭がついていかないでいた。

先程のマリタイムの発言と先生の敬語。2人の関係はどういうものなんだろう…。

そんなことをグルグル考えていると彼はスッと手を下ろし「左腕の調子はどう?」と聞いてきた。

僕はパッと左腕を見つめ「あっ…はい、山道を落ちた後、気付いた時には既に折れていて…ん…あれ?痛くない…。」と自分の左腕を持ち上げた。ギプスらしき物もしていない。

「…良かった!光魔法を使える人に頼んでトルーの腕を治してもらったんだ!どう?指は動く?」

そう言われ、手のひらをグーパーグーパーと動かしてみる。本当に何事もなかったかの様に動くことに驚いた。

「…大丈夫そうです。マリタイム様が頼んで下さったんですね、ありがとうございます。」

と素直にお礼を言う。

しかし、マリタイムは途端にムッとした顔になり「トルー、私達の間に敬語は無しだよ。対等に話そう、敬語は禁止ね。」と告げてくる。

「あの…しかしマリタイム様は副会長ですし、先輩には変わりないので敬語は使わなくてはいけないですよ?」

そう一度、断ってみたが、副会長命令だ、と言われると断れない。

「…分かりました。でも敬語を使わないのは2人きりの時にして下さい。僕は学校で極力目立たず過ごしたいのです。僕のお願いも聞いてくれませんか?」

と言ってみる。こういう時は素直が一番だ。

案の定、マリタイムも了承の返事をくれる。

「…うん。分かった、じゃあ今後は2人きりになる時があるんだね。それなら許すよ。」

「えっ、いやそれは言葉の綾というか!とりあえずそれでお願いしますね!」

と揚げ足を取られたような形になったが、どうにか納得してもらえたようだ。






「あの…今更なんですが、マリタイム様、聞いてもいいですか?」

「…敬語をやめてくれたら良いよ。」

「…うん、わかった。僕とマリタイム様は何処かで会ったことがあるの?だからそんなに親しげに話してくるんでしょう?」

と僕は前から思っていた疑問をぶつける。

すると彼は静かに「やっぱり…。」と呟いた。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

目覚めたそこはBLゲームの中だった。

BL
ーーパッパー!! キキーッ! …ドンッ!! 鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥ 身体が曲線を描いて宙に浮く… 全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥ 『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』 異世界だった。 否、 腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

攻略対象者やメインキャラクター達がモブの僕に構うせいでゲーム主人公(ユーザー)達から目の敵にされています。

BL
───…ログインしました。 無機質な音声と共に目を開けると、未知なる世界… 否、何度も見たことがある乙女ゲームの世界にいた。 そもそも何故こうなったのか…。経緯は人工頭脳とそのテクノロジー技術を使った仮想現実アトラクション体感型MMORPGのV Rゲームを開発し、ユーザーに提供していたのだけど、ある日バグが起きる───。それも、ウィルスに侵されバグが起きた人工頭脳により、ゲームのユーザーが現実世界に戻れなくなった。否、人質となってしまい、会社の命運と彼らの解放を掛けてゲームを作りストーリーと設定、筋書きを熟知している僕が中からバグを見つけ対応することになったけど… ゲームさながら主人公を楽しんでもらってるユーザーたちに変に見つかって騒がれるのも面倒だからと、ゲーム案内人を使って、モブの配役に着いたはずが・・・ 『これはなかなか… 面白い方ですね。正直、悪魔が勇者とか神子とか聖女とかを狙うだなんてベタすぎてつまらないと思っていましたが、案外、貴方のほうが楽しめそうですね』 「は…!?いや、待って待って!!僕、モブだからッッそれ、主人公とかヒロインの役目!!」 本来、主人公や聖女、ヒロインを襲撃するはずの上級悪魔が… なぜに、モブの僕に構う!?そこは絡まないでくださいっっ!! 『……また、お一人なんですか?』 なぜ、人間族を毛嫌いしているエルフ族の先代魔王様と会うんですかね…!? 『ハァ、子供が… 無茶をしないでください』 なぜ、隠しキャラのあなたが目の前にいるんですか!!!っていうか、こう見えて既に成人してるんですがッ! 「…ちょっと待って!!なんか、おかしい!主人公たちはあっっち!!!僕、モブなんで…!!」 ただでさえ、コミュ症で人と関わりたくないのに、バグを見つけてサクッと直す否、倒したら終わりだと思ってたのに… 自分でも気づかないうちにメインキャラクターたちに囲われ、ユーザー否、主人公たちからは睨まれ… 「僕、モブなんだけど」 ん゙ん゙ッ!?……あれ?もしかして、バレてる!?待って待って!!!ちょっ、と…待ってッ!?僕、モブ!!主人公あっち!!! ───だけど、これはまだ… ほんの序の口に過ぎなかった。

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

ヒロインの兄は悪役令嬢推し

西楓
BL
異世界転生し、ここは前世でやっていたゲームの世界だと知る。ヒロインの兄の俺は悪役令嬢推し。妹も可愛いが悪役令嬢と王子が幸せになるようにそっと見守ろうと思っていたのに…どうして?

処理中です...