悪役令嬢の弟

ミイ

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31. 愛の告白

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オール様に屋敷内を案内され、1つの部屋に落ち着く。

「ここは一応、お客様が来た時用に用意されてる部屋なんだけど…。ここでもいいし僕の部屋でもいいよ…?」

と告げるオール様は心無しかソワソワしている。

僕はその様子に「(もしかして部屋に来て欲しいのかな…?)」と思ったが、それと同時に「(初めて来たのにオール様の部屋に行っていいものなのか…?日本じゃ自分の部屋くらいしか案内できないからそれって普通だけど、この世界じゃ、きちんとしたお客様用の部屋があるから僕はここでもいいんだけど…。)」と考えていた。

オール様は僕がなかなか返事をしないのを嫌がってるように捉えたのか「嫌だったらいいんだ…。」とあからさまに哀しそうな顔をする。

「あっ、いや!嫌とかではなくて僕が入っていいのかなって…。
(そんな哀しそうな顔されたら、罪悪感が…。)」

「そんなのいいに決まってるよ、僕が来てもいいって言ってるんだから…。」とオール様は照れながら告げる。

僕はそれを「(やっぱり可愛い人だなぁ…。)」と思いながら「…あっ…はい、わかりました。それでは、お願いしてもいいですか?」と頼む。

すると途端に表情を明るくさせたオール様は嬉しそうに「うん、こっちだよ。」と告げ、僕の荷物を従者に持って来るように指示をし、さらに飲み物も自分の部屋に持って来るように頼んでいた。

僕はコッソリと従者の人に飲み物はカップとソーサーだけでいい事を告げ、オール様に着いて行く。

オール様は余程自分の部屋に招くのが嬉しいのか鼻歌混じりで僕の前を歩く。

少し歩くとオール様が「ココだよ。」と、ある部屋の扉の前で立ち止まった。中に入ると巨大な本棚に所狭しと本が並べてある。

僕は思わず「うわ~。」と言いながら本棚に近付く。

「凄いでしょ、これ。」とオール様は微笑みながら本棚を指差す。

「これ、殆ど歴史の本なんだ。僕、今までの歴史を遡っていく中で気になったモノは納得いくまで調べないと気が済まない質なんだ…だから気付いたらこんなに増えちゃって…トルー君も気になる物があれば言ってね、どれでも貸すよ?」

「うわぁ…本当ですか?嬉しいです、コレなんか…。」と暫く僕達は並んでいる本について語り合った。






「あっ!そうだ!今日の目的を忘れるところだった。僕の庭のチューリップを見てもらいたかったんだ。トルー君、コッチに来てもらっていい?」とオール様は僕の腕を掴むと立ち上がらせる。

「(おぉ…オール様にしては強引だな…。)」と思いつつも「はい、わかりました。」と応え、オール様に着いて行く。

屋敷の外に出て裏庭へと続く道を進むと一面にチューリップ畑が広がっている。

「凄いですね…オール様。」と僕は感嘆の声を上げた。

「トルー君にそう言って貰えて嬉しいな。」とオール様は再び微笑む。

「…それにしても…こんなにチューリップって種類があったんですね。」

「うん。赤と白、ピンク、紫、緑、オレンジ、黒。それぞれに花言葉があってプレゼントとかで贈る相手によって使い分けるのもいいんだ。」

「へぇ~そうなんですか。花言葉…全然わからないですけど…。」

「フフッ!気になったら調べてみて。」

とオール様は笑うと「さっ!中でお茶でもしよう。さっきは歴史の話ばかりでゆっくりお茶も出来なかったし。」と告げる。

僕はここでお土産に持ってきた紅茶の出番だ、とばかりに部屋に戻るとお茶の準備を始めた。

オール様は慌てて従者にさせようとしていたが「僕がやりたいので。」と言うと渋々ながら引き下がってくれる。

僕は紅茶を素早く2つ用意するとオール様の前に置いた。

オール様はそれを手に取り、ゆっくりと嚥下する。

「ふぅ~…美味しい…。」と笑みがこぼれた。

「…良かったです、お気に召したみたいで。」

「…トルー君が淹れてくれたから余計に…かな?」

「…オール様…そんなに持ち上げても何も出ないですよ?」

「フフッ…本心だよ。ありがとう、美味しい紅茶を淹れてくれて。」

「はい、どういたしまして。」





その後、僕達はたわいも無い話をして別れた。

別れ際オール様に赤とピンクのチューリップの花束を貰い、素直に「ありがとうございます。」と言ったものの、僕はこのチューリップの意味を後々調べれば良かったと後悔するのだった。








※チューリップの花言葉

赤→愛の告白
ピンク→愛の芽生え、誠実な愛
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