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番外編
1. 姉と乙女ゲーム
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私は大平 恵(おおひら めぐみ)21歳。
私の趣味はなんといっても乙女ゲームをやり尽くすこと。攻略本、ネタバレもOKでとことん追求するのが大好きな大学3回生。
なんとその趣味が講じて大学2回生のときに行ったインターンシップで就職先も見つかり今のところ順風満帆な毎日を過ごしている。
でも1つだけ家族に言えないことがある。それは弟の透のこと。
実は弟の透は1年前の夏休み、交通事故で亡くなっている。
毎日、毎日私の乙ゲー愛を聴いてくれていた大好きな弟が突如として居なくなった現実を受け入れなかった私はその当時、大学に行くのも億劫でひたすら自室に篭って乙女ゲームに逃げていたのである。
そんなある晩、いつもの様に乙女ゲーム「白百合の君と…。」を3巡目していた時のこと、1人のエンディングが終わりエンドロールが流れているのを見ながら次は誰を攻略しようかと考えていた矢先、突然画面が光り、瞑っていた目を開くと現実では有り得ない世界に私はトリップしていたのである。私の周りは何もない真っ白な世界。何処を見渡しても目印になるものがない世界。
◯神と◯の部屋みたいだな…と緊張感のカケラもないことを考えていると突然目の前に想像通りの神様らしき人物が現れたのである。
金髪で碧目、ほどほどに皺くちゃで白い髭をたわわに生やしたお爺さん。
其処はイケメンじゃないんかい!と内心ツッコミを入れながらお爺さんと対峙する。
「あの…。」
「すまんっ!!!」
急にお爺さんは頭を下げながら謝罪をしてくる。
まさかコレって間違って死んだパターン…?
「えっ⁉︎もしかして私、間違って死んじゃったんですか⁉︎」
「いや、間違って弟の方を死なせてしまったんじゃー…。」
お爺さんは落胆しながら告げる。
えっ、透を⁉︎じゃあ私が死ぬ運命だったのに透が代わりに死んじゃったの⁉︎
「えっと神様…ですよね⁉︎じゃあ私が今からでも死にますから透を生き還らせて下さい!お願いします!」
私の代わりに透が死んだのなら私が死ねばどうにかなるはず…!
私は神様にどうにかして欲しいと頼み込んだ。
しかし…
「悪いが今から彼を戻すことは出来んのじゃ…。一度切り離した魂と肉体は再び結びつけることは出来ん。彼には悪いが転生をしてもらうことになるじゃろう。通常、転生をするには色んな条件をクリアした後、生まれ変わってもらうんじゃが今回はワシのミス…彼には他よりも優遇して転生してもらおうと思っておる。そこで彼の姉であるお前さんに相談じゃ、生前彼の好きなもの、興味のあることはあったかいの?出来る限りそれに沿った条件で転生させてあげようと思っておるんじゃが…。」
そう言って顎髭を撫でる神様を見ながら呆然としたものの透の好きだったものはなんだったかと思い出す。
いつも私の話ばっかり聴かせてたから透の好きなもの、正直分からないのよね…。でも透にとって好条件で転生させてもらわないと割に合わないわ。そうだ!この際、総受けフラグでラブラブな転生をしてもらいましょ!あれだけ私の話を聴いていたら多少の困難も透なら乗り越えれる筈!それに困難を乗り越えてからの互いの愛を確かめ合うなんて凄くロマンティックじゃない…!よし!これでいきましょ!
「神様!提案があるんですけど…!」
それから私は神様に乙女ゲーム「白百合の君と…。」とはどういうものかレクチャーをし、そこに転生をさせて貰えるようにお願いをした。神様は少し考える素ぶりを見せた後「あい、分かった。」と杖のようなものを一振りした。
「これで彼の魂はその乙女ゲームとやらの中に転生したぞ。乙女ゲームといってもその世界は現実に存在しておる、彼がそれを見余らんことだけを祈るしかないな。それと…。」
その後、神様からある事を言い渡された私は眠るように意識を失った。
神様から言い渡されたこと、それは透が幸せを掴むまで見守ることだった。
そんなこと頼まれずとも元からサポートしようと思っていた。しかし、転生をした透を私がどうやって干渉できるのか、神様はそんな私にこう言った。
「もし彼の身に何かあった時は1度だけワシが助けてやろう、その時はこの世界…彼の時間軸で戻しておいてやる。だがな、彼の居るべき世界を捻じ曲げてお前さんがいる世界に戻すんじゃ、そう長いことは戻してやれん。最大でも72時間じゃ、意味は分かるな?」
私は神様の言ったことを頭の中で反復する。
もし透の命に関わることがあれば1度だけ神様が助けてくれる、でも透はもうこの世界の人間じゃないから3日間だけしかこの世界では生きられない。もし透がこの世界に戻ってくることがあれば私が正しい道筋を透に示して元の世界に戻してあげないとダメということね。
「わかったわ。」
「それまでは彼の行末を見届けてあげてくれ。」
それから私は透が乙女ゲーム「白百合の君と…。」の中で生活しているのを度々覗いていた。もちろんヒロインの傍若無人さに呆れつつ直接手助けできないことにもヤキモキしていた。そんな中、あの事件が起こったのである。
「ヒロイン!何やってるのよ⁉︎まさか透を攻撃するつもり⁉︎そんなことしたら…!!!」
アッと思った時には透が画面から消えていた。まさかと思い、まだ生前残したままにしておいた透の部屋やリビングに急いで足を運び透の姿を探しに行く。するとリビングのテーブルで寝こけている当時の透がいたのである。
「透…!」
思わず抱き着きそうになり、ハッとした。
「くれぐれも私のことは知られちゃいけない…。」
神様から口を酸っぱくして言われていたことだ、透に私が彼の世界を見ていたこと、私の代わりに死んでしまったことは知られてはいけない。知られてしまったら透は元の世界に戻れなくなる。
もしそんなことになったら私も一緒に死のう…。
そんな想いを抱きつつ、何事もなかったかのように透を叩き起こす。
「透!」
「痛っ!えっ、姉さん?」
あの時の透のままね…。
透の姿を懐かしく思いながら私は平静を装った。
私の趣味はなんといっても乙女ゲームをやり尽くすこと。攻略本、ネタバレもOKでとことん追求するのが大好きな大学3回生。
なんとその趣味が講じて大学2回生のときに行ったインターンシップで就職先も見つかり今のところ順風満帆な毎日を過ごしている。
でも1つだけ家族に言えないことがある。それは弟の透のこと。
実は弟の透は1年前の夏休み、交通事故で亡くなっている。
毎日、毎日私の乙ゲー愛を聴いてくれていた大好きな弟が突如として居なくなった現実を受け入れなかった私はその当時、大学に行くのも億劫でひたすら自室に篭って乙女ゲームに逃げていたのである。
そんなある晩、いつもの様に乙女ゲーム「白百合の君と…。」を3巡目していた時のこと、1人のエンディングが終わりエンドロールが流れているのを見ながら次は誰を攻略しようかと考えていた矢先、突然画面が光り、瞑っていた目を開くと現実では有り得ない世界に私はトリップしていたのである。私の周りは何もない真っ白な世界。何処を見渡しても目印になるものがない世界。
◯神と◯の部屋みたいだな…と緊張感のカケラもないことを考えていると突然目の前に想像通りの神様らしき人物が現れたのである。
金髪で碧目、ほどほどに皺くちゃで白い髭をたわわに生やしたお爺さん。
其処はイケメンじゃないんかい!と内心ツッコミを入れながらお爺さんと対峙する。
「あの…。」
「すまんっ!!!」
急にお爺さんは頭を下げながら謝罪をしてくる。
まさかコレって間違って死んだパターン…?
「えっ⁉︎もしかして私、間違って死んじゃったんですか⁉︎」
「いや、間違って弟の方を死なせてしまったんじゃー…。」
お爺さんは落胆しながら告げる。
えっ、透を⁉︎じゃあ私が死ぬ運命だったのに透が代わりに死んじゃったの⁉︎
「えっと神様…ですよね⁉︎じゃあ私が今からでも死にますから透を生き還らせて下さい!お願いします!」
私の代わりに透が死んだのなら私が死ねばどうにかなるはず…!
私は神様にどうにかして欲しいと頼み込んだ。
しかし…
「悪いが今から彼を戻すことは出来んのじゃ…。一度切り離した魂と肉体は再び結びつけることは出来ん。彼には悪いが転生をしてもらうことになるじゃろう。通常、転生をするには色んな条件をクリアした後、生まれ変わってもらうんじゃが今回はワシのミス…彼には他よりも優遇して転生してもらおうと思っておる。そこで彼の姉であるお前さんに相談じゃ、生前彼の好きなもの、興味のあることはあったかいの?出来る限りそれに沿った条件で転生させてあげようと思っておるんじゃが…。」
そう言って顎髭を撫でる神様を見ながら呆然としたものの透の好きだったものはなんだったかと思い出す。
いつも私の話ばっかり聴かせてたから透の好きなもの、正直分からないのよね…。でも透にとって好条件で転生させてもらわないと割に合わないわ。そうだ!この際、総受けフラグでラブラブな転生をしてもらいましょ!あれだけ私の話を聴いていたら多少の困難も透なら乗り越えれる筈!それに困難を乗り越えてからの互いの愛を確かめ合うなんて凄くロマンティックじゃない…!よし!これでいきましょ!
「神様!提案があるんですけど…!」
それから私は神様に乙女ゲーム「白百合の君と…。」とはどういうものかレクチャーをし、そこに転生をさせて貰えるようにお願いをした。神様は少し考える素ぶりを見せた後「あい、分かった。」と杖のようなものを一振りした。
「これで彼の魂はその乙女ゲームとやらの中に転生したぞ。乙女ゲームといってもその世界は現実に存在しておる、彼がそれを見余らんことだけを祈るしかないな。それと…。」
その後、神様からある事を言い渡された私は眠るように意識を失った。
神様から言い渡されたこと、それは透が幸せを掴むまで見守ることだった。
そんなこと頼まれずとも元からサポートしようと思っていた。しかし、転生をした透を私がどうやって干渉できるのか、神様はそんな私にこう言った。
「もし彼の身に何かあった時は1度だけワシが助けてやろう、その時はこの世界…彼の時間軸で戻しておいてやる。だがな、彼の居るべき世界を捻じ曲げてお前さんがいる世界に戻すんじゃ、そう長いことは戻してやれん。最大でも72時間じゃ、意味は分かるな?」
私は神様の言ったことを頭の中で反復する。
もし透の命に関わることがあれば1度だけ神様が助けてくれる、でも透はもうこの世界の人間じゃないから3日間だけしかこの世界では生きられない。もし透がこの世界に戻ってくることがあれば私が正しい道筋を透に示して元の世界に戻してあげないとダメということね。
「わかったわ。」
「それまでは彼の行末を見届けてあげてくれ。」
それから私は透が乙女ゲーム「白百合の君と…。」の中で生活しているのを度々覗いていた。もちろんヒロインの傍若無人さに呆れつつ直接手助けできないことにもヤキモキしていた。そんな中、あの事件が起こったのである。
「ヒロイン!何やってるのよ⁉︎まさか透を攻撃するつもり⁉︎そんなことしたら…!!!」
アッと思った時には透が画面から消えていた。まさかと思い、まだ生前残したままにしておいた透の部屋やリビングに急いで足を運び透の姿を探しに行く。するとリビングのテーブルで寝こけている当時の透がいたのである。
「透…!」
思わず抱き着きそうになり、ハッとした。
「くれぐれも私のことは知られちゃいけない…。」
神様から口を酸っぱくして言われていたことだ、透に私が彼の世界を見ていたこと、私の代わりに死んでしまったことは知られてはいけない。知られてしまったら透は元の世界に戻れなくなる。
もしそんなことになったら私も一緒に死のう…。
そんな想いを抱きつつ、何事もなかったかのように透を叩き起こす。
「透!」
「痛っ!えっ、姉さん?」
あの時の透のままね…。
透の姿を懐かしく思いながら私は平静を装った。
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