イケメンは観賞用！

第１章

19. ノア様は心配性

「ノア様…？」

考え込む彼を見ながら暫く待っていたが、彼を待っていると話が進みそうにない。よって頃合いをみて声を掛けた。

「ああ…ごめんね、ちょっと考え事をしてたんだ。それでその人探しの旅というのは君の身の安全は保障されてないんだろう？」

それはそうだ、僕は転生をしたものの神様からなんのチートも無くこの世界に生まれたのだから。

「はい、特にありません。」

「だったら護衛などを雇うのはどうかな？」

「護衛…ですか？」

「そう。あの…今から言うことに不快にならないで欲しいんだけど…君へのお見合い話が出た時、君の容姿以外に学業の成績、素養の有無なども調べさせてもらったんだ。そしたら君の学業の成績は申し分無いほどに良かったんだけど、魔術や剣術の成績はあまり突出していないということがわかったんだ。だからこのまま君一人が旅に出るとなったら不慣れな旅に加えて一番大切な身の安全が確保出来ないと思う、それは私としても避けたいところなんだ。だったらせめて護衛を雇ってその人と一緒に旅するのはどうかなって私は思うんだ。」

ノア様の言うことは全て最もだ。僕の魔術や剣術の技術があまり高くないのは事実だし、こんなひ弱な男は誰かに守ってもらわないと旅なんてできない。

しかし、滅多に争い事が起きないこの街ではあまりギルドの質が高いとは言えない。この街は1つの国の小さな街ではあるが周りを大きな街で囲まれている為、魔物や魔獣が襲ってきても周りの街に侵入してきた時点で退治される。よって、この街まで魔物や魔獣が侵入してくることなど滅多にないのだ。そうして、ありがたいことに魔物や魔獣の群れに襲われることがこの数十年間無かったこの街では冒険者ランクもS、A、B、C、D、Eまである中で最高ランクはC止まり。だからこの街で護衛を雇うとしてもそこまで強いランクの者を護衛にすることは出来ないのだ。

「しかし、この街で護衛を雇うことは難しいのではないでしょうか？」

「確かにそうだね、護衛を雇うとなったらせめてBランク以上の人を雇うべきかな。そうじゃないと護衛の意味がないし。」

「でしたら、隣国のエイブで雇うのはどうでしょうか。エイブは魔術や剣術の大会も盛んですし、そこなら高ランクの方もおられますよね？」

「うん、エイブなら納得かな。でもそうなるとエイブまで行く道のりが危険じゃ？」

いや、エイブまで馬車で6時間だよ！

僕は内心ツッコミを入れながら「いえ、馬車に乗ってるだけなので大丈夫かと思います。」と笑顔で返した。