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56. ネガティブ
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それから3日経ったが僕は相変わらずクローブさんのお店で働かせてもらっている。初日にあれだけ沢山の人に顔を見られたことですぐにキーワ様やその部下の人に見つかるかとヒヤヒヤしていたが思いの外、気付かれてはいないみたいだ。
そして昨日、僕は「キーワ様に見つかってクローブさん達に迷惑をかけるくらいなら…。」と街にキーワ様を捜しに行った。
前回は声を掛けようとしたところでジョンに見つかり無理だったが、今回は大丈夫だろうと街中を捜す。しかし、いくら僕が街内を探し回ってもキーワ様は見つからず、さらに部下の人達もこの街にはいないと思ったのか姿が見えなくなっていた。
それから暫く僕がクローブさんのお店で働くようになって困ったことがある。
それは街の人達の中で僕とクローブさんが恋人もしくは夫婦になっているということだ。
今までそういう相手や噂も無かったクローブさんが街の人達でさえ知らない人物を店番にし、さらに親しげに話している姿から街の人たちはきっとそうなのだろうとそういう噂を流したらしい。
僕はその噂を聞き、最初はクローブさんもああ言っていることだし、素直に甘えてみても良いのかな、と思ったがよくよく考えてみると、その理由を使うことによってクローブさんの婚期がどんどん遅れるのではないかと心配になってきた。
ジョンの時も今回のこともそうだが僕がクローブさんを好きになる保証はどこにもない。クローブさんの気持ちを利用している僕がいうのもなんだけど、クローブさんの気持ちを知ってしまった今、どうすればいいか僕は毎夜悩んでいる。
日本で夜な夜な街に繰り出していた時は、一夜限りの相手が殆どだったので相手の気持ちがどうとか考える必要もなかったが、こちらの世界ではそうではない。
僕は割とこちらの世界で好かれるらしく、ここで店番をしてからも何回も求婚されていた。きっと獣感が少なく小さいため庇護欲を唆るのだろう。しかし、僕はその時の断り文句としてクローブさんの名前は一切出さなかった。何故ならそこまでしてしまうと後に引き返せなくなりそうだからだ。
一方、クローブさんは前と変わらず僕に優しくしてくれている。しかし、僕はその優しさを前のようには素直に受け取れず心苦しさを感じていた。普通ならこれからお互いを意識して好きになっていくはずだが、まともに恋愛をしてこなかった僕は既にクローブさんの気持ちを知っているこの状況でどうしたらいいか分からなくなっていた。
そんな時、ある事件が起きる。
僕は店番をしながらボーっと外を眺めていると、ふと胃が痛くなってきた。初めはアレ?というくらいの痛さだったが、だんだんと立っているのが辛くなり僕はそのままお腹を抱える様にしゃがみ込んだ。
冷や汗が流れ、呼吸もし辛くなってくる。僕は暫く我慢していたが、とうとうあっ…と呟き、身体が傾いていってるのがわかる。気を失う直前、クローブさんの「ヨースケ!」という声を聞こえた気がして僕はそのまま意識を失った。
次に僕が気付いたときにはクラリさん家のベッドの上に横たわっていた。時計を見ると夜の9時。普段なら既に皆、眠っている時間だ。しかし、僕のベッドの傍らにはクローブさんが僕の手を握りながら眠っている。その瞬間、申し訳なさが一気に押し寄せてきた。
「(どうしよう…迷惑かけちゃった…明日も仕事があるのに…。きっと僕が倒れたからお店も閉めちゃったよね…。)」
と僕はどんどんネガティブな考えを巡らせながらクローブさんを見つめる。するとクローブさんが「ううん…。」と身動いだ。僕は咄嗟に寝たフリをし、目を瞑る。
クローブさんはゆっくりと目を覚ますと僕の手を握ったまま反対の手で僕の頰を撫でる。
「すまない、ヨースケ。無理をさせたみたいだな。」と呟くクローブさんに僕は罪悪感が芽生えた。
「(そんなことない…僕が勝手にグルグル考えて勝手に倒れただけ…。クローブさんは何も悪くないのに…。)」
クローブさんは最後に僕の頭を撫でて部屋を出て行く。
僕はゆっくりとベッドに腰掛けるとネガティブな気持ちを払拭するようにかぶりを振った。
「(あぁ~!僕らしくない!こんなウジウジ考えるなんて!日本にいた頃はいちいちこんなことで悩まなかったのに!はぁ~…日本が懐かしい…。)」
僕はこの短期間で色んなことが起こりすぎた為、頭を抱えた。
そして昨日、僕は「キーワ様に見つかってクローブさん達に迷惑をかけるくらいなら…。」と街にキーワ様を捜しに行った。
前回は声を掛けようとしたところでジョンに見つかり無理だったが、今回は大丈夫だろうと街中を捜す。しかし、いくら僕が街内を探し回ってもキーワ様は見つからず、さらに部下の人達もこの街にはいないと思ったのか姿が見えなくなっていた。
それから暫く僕がクローブさんのお店で働くようになって困ったことがある。
それは街の人達の中で僕とクローブさんが恋人もしくは夫婦になっているということだ。
今までそういう相手や噂も無かったクローブさんが街の人達でさえ知らない人物を店番にし、さらに親しげに話している姿から街の人たちはきっとそうなのだろうとそういう噂を流したらしい。
僕はその噂を聞き、最初はクローブさんもああ言っていることだし、素直に甘えてみても良いのかな、と思ったがよくよく考えてみると、その理由を使うことによってクローブさんの婚期がどんどん遅れるのではないかと心配になってきた。
ジョンの時も今回のこともそうだが僕がクローブさんを好きになる保証はどこにもない。クローブさんの気持ちを利用している僕がいうのもなんだけど、クローブさんの気持ちを知ってしまった今、どうすればいいか僕は毎夜悩んでいる。
日本で夜な夜な街に繰り出していた時は、一夜限りの相手が殆どだったので相手の気持ちがどうとか考える必要もなかったが、こちらの世界ではそうではない。
僕は割とこちらの世界で好かれるらしく、ここで店番をしてからも何回も求婚されていた。きっと獣感が少なく小さいため庇護欲を唆るのだろう。しかし、僕はその時の断り文句としてクローブさんの名前は一切出さなかった。何故ならそこまでしてしまうと後に引き返せなくなりそうだからだ。
一方、クローブさんは前と変わらず僕に優しくしてくれている。しかし、僕はその優しさを前のようには素直に受け取れず心苦しさを感じていた。普通ならこれからお互いを意識して好きになっていくはずだが、まともに恋愛をしてこなかった僕は既にクローブさんの気持ちを知っているこの状況でどうしたらいいか分からなくなっていた。
そんな時、ある事件が起きる。
僕は店番をしながらボーっと外を眺めていると、ふと胃が痛くなってきた。初めはアレ?というくらいの痛さだったが、だんだんと立っているのが辛くなり僕はそのままお腹を抱える様にしゃがみ込んだ。
冷や汗が流れ、呼吸もし辛くなってくる。僕は暫く我慢していたが、とうとうあっ…と呟き、身体が傾いていってるのがわかる。気を失う直前、クローブさんの「ヨースケ!」という声を聞こえた気がして僕はそのまま意識を失った。
次に僕が気付いたときにはクラリさん家のベッドの上に横たわっていた。時計を見ると夜の9時。普段なら既に皆、眠っている時間だ。しかし、僕のベッドの傍らにはクローブさんが僕の手を握りながら眠っている。その瞬間、申し訳なさが一気に押し寄せてきた。
「(どうしよう…迷惑かけちゃった…明日も仕事があるのに…。きっと僕が倒れたからお店も閉めちゃったよね…。)」
と僕はどんどんネガティブな考えを巡らせながらクローブさんを見つめる。するとクローブさんが「ううん…。」と身動いだ。僕は咄嗟に寝たフリをし、目を瞑る。
クローブさんはゆっくりと目を覚ますと僕の手を握ったまま反対の手で僕の頰を撫でる。
「すまない、ヨースケ。無理をさせたみたいだな。」と呟くクローブさんに僕は罪悪感が芽生えた。
「(そんなことない…僕が勝手にグルグル考えて勝手に倒れただけ…。クローブさんは何も悪くないのに…。)」
クローブさんは最後に僕の頭を撫でて部屋を出て行く。
僕はゆっくりとベッドに腰掛けるとネガティブな気持ちを払拭するようにかぶりを振った。
「(あぁ~!僕らしくない!こんなウジウジ考えるなんて!日本にいた頃はいちいちこんなことで悩まなかったのに!はぁ~…日本が懐かしい…。)」
僕はこの短期間で色んなことが起こりすぎた為、頭を抱えた。
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