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54. 仲直り
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するとアイリスさんがすかさず「ゴメンね!」と謝ってくる。
「実はさっきヨースケ君があの人に抱き締められた時、クローブと喋ってて俺だけがさっきの様子を見てたんだ。その時、アッ!って声出しちゃってクローブが振り返ったら…って感じで…。」
とポリポリと頰をかいている。
「別に気にしてませんよ。それよりこのピアスのことご存知だったんですか?」と指を差す。
「ああ…意味を知っちゃったの?」
「はい。」
「うん、俺とクローブは幼馴染だしね、騎士団でも同期だったよ。だから当時のことも覚えてる…それにクローブは騎士団の中じゃ、有名人だったよ…悪い意味で。」
「えぇ!?」
その言葉に凄く驚いた。クローブさんは無口とはいえ優しい人だからだ。
「クローブはね、基本自分以外に興味ないんだよ。騎士団でも他人に興味ないから鍛錬も黙々と出来るし、体格も力もあるから自然と上にいっちゃってね…俺のことは幼馴染っていうのがあるから辛うじて視界に入れてくれてたけど…。」
とアイリスさんは笑っている。
「でも今のクローブさんは穏やか?というか親切ですよね?」
「うーん…今はだいぶ丸くなった方だけど、まぁヨースケ君に対しては見て分かる通り特別だからねぇ…。それ以前はほとんど喋りもしなかったよ。」
「…そうなんですか。
(てか、クローブさん恋人は…?)」
「ああ!あとアレは大丈夫だよ!俺があまりにもクローブが他人に興味なさすぎて無理矢理、娼館に連れてったから!だから万が一、ヨースケ君が相手でも血みどろになったりしないからね!」
とアイリスさんに慌てて報告される。それを聞いた僕は「…あっ…ありがとうございます。」と苦笑いで答えた。
それからクローブさんと昨日に引き続き、気まずい帰路に着く。
「(クローブさん…いつも以上に無口だな…やっぱりジョンのこと気にしてるのかな…?)」
僕はクローブさんのことが気になりつつも先程のことがあった手前、余計に話しかけることが出来ずにいた。
「(いつもならどうでもいいことでも話しかけれるのに…。)」
そんな時、珍しくクローブさんが話しかけてくれた。
「ヨースケ…さっきのことだが…。」
「はい…?」
「彼奴は前の恋人かなにかか…?」
とクローブさんが呟く。
「…えっ?ちっ違いますよ!お仕事関係の人でお世話になった方なんです。僕、色んな街を転々としてるのでなかなか仲良くなる人がいなくて…。」
僕は慌てて訂正する。
「…そうだったのか。悪かったな、さっきは変な態度をとって。」
「いえ…。
(ゴメン…!クローブさん!仕事関係って嘘じゃないけど…なんかゴメン…!)
…あの…!前から気になってたんですがクローブさん恋人は…?」
と僕は内心、いないのは分かっていたが本人から直接聞きたいと思い伺う。
「…そんなのいないに決まっているだろう。ヨースケから見て俺の周りにそんな影はあったか?」
「えっ…いや、それは…。」
「ヨースケにはハッキリ言っておく。俺には恋人はいないし、ましてや身体だけの関係という奴もいない。だからヨースケにだけは誤解されたくない。」
「…あっ、はい。わかりました。
(これ、かなり告白に近いよね…?明らかにそうだと思うけど、まだ返事も出来ないから気付かないフリしとこう。サイさんにも急がなくてもいいって言われてたし…。)」
「それより、ヨースケはどうなんだ?今、恋人はいるのか?」
「えぇ!?いないですよ…さっきも言いましたが僕は色んな街を転々としているので恋人なんて作れませんし、むしろ恋人なんて今までにいたことなんてありませんし…。
(身体だけの関係はあるけども…。)」
「…そう…なのか?意外だ…ヨースケなら色んな奴から好かれそうなのに…。」
「…正直言うと告白は何度かありますが、僕自身がその人のことを本気で好きになれなかったんです…だからお付き合いというお付き合いはしたことなくて…、せっかくだから初めて付き合う人は自分の好きになった人がいいな、って思ってるんです…まぁ叶うかは分かりませんけど!」
と僕が言うとクローブさんはフッと笑い「叶うといいな。」と頭を撫でてくれた。
それからは今までの雰囲気が嘘の様に仲良く会話しながら帰宅することができた。その様子に僕達のことを心配していたクラリさんやサイさんもホッとしていたようだった。
そして夕食の片付けの最中、クラリさんがお風呂に行ったのを見計らってサイさんが話しかけてきた。
「ヨースケ君、クローブとは仲直りできたみたいね。」
「はい、根本的な解決はしていませんが、なんとか元どおりにはなりました。」
「そう、良かったわねぇ。そういえば仕事の話は出来たの?」
「はい!今日の帰り道にやっと話せました。」
実は今日の帰り道、仲直りをしたあと仕事の話をクローブさんに伝えた。すると自分の店の手伝い(裏方)かクラリさんの農業の手伝いのどちらかなら許してくれると言う。
「サイさん、どちらがいいと思いますか?」
「そうだねぇ…クラリの方はあまり人に会わないからいいかな、って思ったんだけど、重い荷物を運ぶことも多いし、いくら人に会わないって言っても隣街の市場に行ったりするから、その点では沢山の人に会っちゃうかもね…。クローブの方は裏方と言えども、ずっと裏方ではないだろうし、アイリスと交代しないといけなくなったら必然的にフードを外さないといけなくなるでしょう?そういう意味では危ないかもね…。でも、私としたらクローブのところで働いて是非クローブと仲良くなってもらいたいわ!」
とサイさんは嬉々と言う。
「実はさっきヨースケ君があの人に抱き締められた時、クローブと喋ってて俺だけがさっきの様子を見てたんだ。その時、アッ!って声出しちゃってクローブが振り返ったら…って感じで…。」
とポリポリと頰をかいている。
「別に気にしてませんよ。それよりこのピアスのことご存知だったんですか?」と指を差す。
「ああ…意味を知っちゃったの?」
「はい。」
「うん、俺とクローブは幼馴染だしね、騎士団でも同期だったよ。だから当時のことも覚えてる…それにクローブは騎士団の中じゃ、有名人だったよ…悪い意味で。」
「えぇ!?」
その言葉に凄く驚いた。クローブさんは無口とはいえ優しい人だからだ。
「クローブはね、基本自分以外に興味ないんだよ。騎士団でも他人に興味ないから鍛錬も黙々と出来るし、体格も力もあるから自然と上にいっちゃってね…俺のことは幼馴染っていうのがあるから辛うじて視界に入れてくれてたけど…。」
とアイリスさんは笑っている。
「でも今のクローブさんは穏やか?というか親切ですよね?」
「うーん…今はだいぶ丸くなった方だけど、まぁヨースケ君に対しては見て分かる通り特別だからねぇ…。それ以前はほとんど喋りもしなかったよ。」
「…そうなんですか。
(てか、クローブさん恋人は…?)」
「ああ!あとアレは大丈夫だよ!俺があまりにもクローブが他人に興味なさすぎて無理矢理、娼館に連れてったから!だから万が一、ヨースケ君が相手でも血みどろになったりしないからね!」
とアイリスさんに慌てて報告される。それを聞いた僕は「…あっ…ありがとうございます。」と苦笑いで答えた。
それからクローブさんと昨日に引き続き、気まずい帰路に着く。
「(クローブさん…いつも以上に無口だな…やっぱりジョンのこと気にしてるのかな…?)」
僕はクローブさんのことが気になりつつも先程のことがあった手前、余計に話しかけることが出来ずにいた。
「(いつもならどうでもいいことでも話しかけれるのに…。)」
そんな時、珍しくクローブさんが話しかけてくれた。
「ヨースケ…さっきのことだが…。」
「はい…?」
「彼奴は前の恋人かなにかか…?」
とクローブさんが呟く。
「…えっ?ちっ違いますよ!お仕事関係の人でお世話になった方なんです。僕、色んな街を転々としてるのでなかなか仲良くなる人がいなくて…。」
僕は慌てて訂正する。
「…そうだったのか。悪かったな、さっきは変な態度をとって。」
「いえ…。
(ゴメン…!クローブさん!仕事関係って嘘じゃないけど…なんかゴメン…!)
…あの…!前から気になってたんですがクローブさん恋人は…?」
と僕は内心、いないのは分かっていたが本人から直接聞きたいと思い伺う。
「…そんなのいないに決まっているだろう。ヨースケから見て俺の周りにそんな影はあったか?」
「えっ…いや、それは…。」
「ヨースケにはハッキリ言っておく。俺には恋人はいないし、ましてや身体だけの関係という奴もいない。だからヨースケにだけは誤解されたくない。」
「…あっ、はい。わかりました。
(これ、かなり告白に近いよね…?明らかにそうだと思うけど、まだ返事も出来ないから気付かないフリしとこう。サイさんにも急がなくてもいいって言われてたし…。)」
「それより、ヨースケはどうなんだ?今、恋人はいるのか?」
「えぇ!?いないですよ…さっきも言いましたが僕は色んな街を転々としているので恋人なんて作れませんし、むしろ恋人なんて今までにいたことなんてありませんし…。
(身体だけの関係はあるけども…。)」
「…そう…なのか?意外だ…ヨースケなら色んな奴から好かれそうなのに…。」
「…正直言うと告白は何度かありますが、僕自身がその人のことを本気で好きになれなかったんです…だからお付き合いというお付き合いはしたことなくて…、せっかくだから初めて付き合う人は自分の好きになった人がいいな、って思ってるんです…まぁ叶うかは分かりませんけど!」
と僕が言うとクローブさんはフッと笑い「叶うといいな。」と頭を撫でてくれた。
それからは今までの雰囲気が嘘の様に仲良く会話しながら帰宅することができた。その様子に僕達のことを心配していたクラリさんやサイさんもホッとしていたようだった。
そして夕食の片付けの最中、クラリさんがお風呂に行ったのを見計らってサイさんが話しかけてきた。
「ヨースケ君、クローブとは仲直りできたみたいね。」
「はい、根本的な解決はしていませんが、なんとか元どおりにはなりました。」
「そう、良かったわねぇ。そういえば仕事の話は出来たの?」
「はい!今日の帰り道にやっと話せました。」
実は今日の帰り道、仲直りをしたあと仕事の話をクローブさんに伝えた。すると自分の店の手伝い(裏方)かクラリさんの農業の手伝いのどちらかなら許してくれると言う。
「サイさん、どちらがいいと思いますか?」
「そうだねぇ…クラリの方はあまり人に会わないからいいかな、って思ったんだけど、重い荷物を運ぶことも多いし、いくら人に会わないって言っても隣街の市場に行ったりするから、その点では沢山の人に会っちゃうかもね…。クローブの方は裏方と言えども、ずっと裏方ではないだろうし、アイリスと交代しないといけなくなったら必然的にフードを外さないといけなくなるでしょう?そういう意味では危ないかもね…。でも、私としたらクローブのところで働いて是非クローブと仲良くなってもらいたいわ!」
とサイさんは嬉々と言う。
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