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39.《キーワ・メイローズ視点》
しおりを挟む私が"運命"という言葉を信じたあの日、それは隣国との商談に赴いた日であった。
なんとかこちらの利益のある結果に終わり、馬車に乗って上機嫌に帰宅していた道中だった…私は連日の業務と今日の商談で精神的にも疲れ果てており、馬車内で揺れに任せ、ウトウトとしていた。
しかし、眠りに落ちる瞬間、甘美な匂いが鼻を掠める。
「馬車を止めろ!」
思わず、そう叫んでしまった。
「(何だ、この匂いは…!?今まで嗅いだことがない…!)
いいか、今から進行方向を私が指示していく、その通りに馬車を走らせろ。」
私はそう従者に言うと馬車を急がせた。
私が目的の場所に着いた頃には既に人だかりが出来ており、その目的も同じだろうと見て取れた。私は急いで馬車を降りると目的の場所に近付く。
「(やはり…この匂いだ…!)」
私はこの部屋の中にいる誰かに早く会いたくて建物の入り口へ急ぐ。なんとそこは娼館だった。
「(娼館なら、あの者に会える…!)」
そう思い、慌てて建物内へ入り、娼夫を充てがうように要求する。しかし、店主から言われたのは謝罪だった。「何故!?」と聞くも、まだ客を取るような段階ではないと言う。それでも私は食い下がらなかった。その時、後ろから数名が足早に入ってくる。口々に私と同じ様な内容のことを言い、あの者を要求する。やはり皆、あの色香にあてられたのだろう。店主はそれでも首を縦に振らなかった。私はここで初めて自分の権力を使い、その者の初めての客を私にさせるよう店主を脅した。
こんなこと、本当はしたくない…しかし、そうでもしなければあの者は他の客のモノとなってしまうだろう。そうならない為にはこうするしかなかった…。
私はそう自分に言い聞かせ、再度店主を見る。店主は諦めたように溜息を吐くと、私の要求に了承してくれた。しかし、まだ入ったばかりの新人なので時間をくれ、と。私は店主との相談の上、3日間という日数に渋々納得し、引き下がった。私が娼館を出る時、見覚えのある者が何名かいたが知ったことではない、あの者の1番は私が貰うのだから。
それからの3日間は地獄だった。
あの色香にあてられ、私はあの香りでないと満足出来なくなってしまった。あれから自身の昂りが抑えきれず、違う娼館へ行き娼夫を抱いた。しかし、身体は満たされても心が満たされない…こんな気持ち初めてだった。
私は今まで恋人が出来たことはある。しかし、どれも長続きはしなかった…理由は私の性欲と嫉妬によるものだ。
私は他の種族より繁殖活動が激しく何度も交尾を行う。別れる理由はそれに相手がついて行けなくなるか私が娼館へ行っていたことがバレ、振られるかのどちらかだ。私だって我慢はしていた、好きになった恋人を大事にしたいが故に相手が「もう無理。」と言えば無理強いはしなかった。しかし、それでは私の性欲は満たされず、その後、娼館に行くこともしばしばあった。それに相手が激怒し振られるのだ。
それに私は恋人が出来たら他の者の目に映したくない程、囲ってしまう。それも別れる原因の1つだ。自分でも治さなければいけないことは分かってはいたが種族の本能なのか、どう足掻いても治せそうにない。だから将来、伴侶になるべき者にはそんな私を含めて好きになってくれる者でないといけない。
しかし、そんな者には会ったことがないのが現状である。
そんな折、この匂いに出会った。この甘美な香りを放つ者なら私の性欲を満たしてくれるかもしれない。私は期待に胸膨らませながら約束の時間に娼館へと訪れた。
案内された部屋で待っていたのは毛色の珍しい小さな子供であった。しかし、その身にあの匂いを纏い、柔和な表情でこちらに挨拶をしてくる。
目が合い、心躍ったが突然目を逸らされる。
「(こんな子供にはやはり私は怖く見えるのだろうか…。)」
不安になり、声を掛けると私のことを魅力的だと言う。嬉しいことを言われ、思わず口元が緩む。ヨウの腰を抱き、ゆっくりとその顔と香りを堪能する。
「(やはり、この香りは格別だ…。)」
そして、この後ヨウから驚くべきことを聞かされるのである。
「(なんと!精通が済んでいないだと…!?)」
私は驚きの余り、暫く反応出来ずにいた。それをヨウは悪い方向に取り、申し訳ないと謝ってくる。
「(そんなことはない…!嬉しい限りだ!)」
今のご時世、成人を過ぎても精通が済んでいない者など滅多にいない。それに出会えただけでも貴重なのに、今から抱こうとしているヨウがそうなのだと思うと嬉しくなる。
「(これは"運命"だ…!神がきっとヨウと結ばれろと言っているのだ。しかし…ヨウが私の性欲を受け止めてくれるか分からない…それにヨウは娼夫だ、身請けしなければ囲うことだって出来ない。先ずはヨウが私を受け入れることが出来るか確認しなくては。)」
それから私はヨウの身体を一心不乱に貪った。
ヨウの1つ1つの反応が娼夫らしからぬ素直な反応で、どこもかしこも性感帯なのか触れる度にビクビクと反応する。
ヨウは驚くことにその小さな身体で私の欲をすべて受け入れ、私を満足させた。更に気絶をせずに最後まで喋れる相手など初めての経験だった。やはり、私がヨウに出会えたことは運命だったのだ。
私は事が終わり、微睡んでいるヨウに自分の元へ来ないかと誘う。今すぐ快い返事が貰えると思ってなかったが、ヨウの反応は悪くないと思い安心する。
この頃、既に私はヨウを運命の相手だと思い、退室するのも渋々だった。しかし、またすぐ会えると思い店を後にする。
この後、事件が起こるとも知らずに…。
「何だと!?ヨウが店を辞めた!?」
私は久しぶりに娼館を訪ねた。
私以降にヨウは2人程、相手をしなければいけないことは分かっていた為、終わり次第訪れたのだ。
私は店主から受け取った手紙を手に怒鳴りつける。
店主は困ったように事情を説明してくるが、私はその説明もおざなりに手紙を広げた。
"キーワ・メイローズ様"
突然お店を辞め、居なくなることをお許し下さい。
キーワ様が僕を身請けして下さると言ってくれたこと、大変ありがたいと思っております。しかし、僕はある事情により貴方の側にいると多大なる迷惑をかけてしまいます。理由はお話できませんが、とても高貴な貴方なら僕のような者ではなく相応しい相手がきっといる筈です。僕はキーワ様にとても親切にして頂き、貴方のことを少なからずお慕いしておりました。しかし、僕が貴方の側にいることで貴方の迷惑になるのなら僕は身を引きます。
僕は先日のキーワ様と過ごせた幸せな時間を糧に、これから遠くで頑張っていこうと思います。自分勝手ではありますが、これからもお身体に気を付けて、僕は遠くからキーワ様のご健康をお祈りしております。
ヨウ
私はその手紙を読み、身体が震えた。
「(何故…何故こんなことを…私に一言、相談してくれればこんな結果にならなかったはず…いや、私が身請け話をしたからダメだったのか…?しかし…ヨウは私の運命の相手だ。こうしてはいられない…!ヨウを探さなければ!)」
私は急いで娼館を出ると私の人脈をすべて使ってヨウを探し出そうと奔走した。
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