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番外編

7. 《キーワ〜if〜》4

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護衛2人が納得の道筋を相談してる最中、僕は周りをキョロキョロとしながらこの5年間まともに外に出てなかった分を埋めるように街の様子を眺めていた。

「(あっ、あそこの屋台美味しそう…。)」
「(あの服可愛い…。)」
「(うわぁ…壁のレンガの色、綺麗…キーワ様とデートしたら楽しいだろうなぁ…。)」



「………様!奥様!」

「あっえっ?」

さっきから僕のことを呼んでいたらしい。

「こちらの道を行こうと思うのですが…。」

そう言って地図を見せてくるのだが、当然僕には分からない。僕は苦笑いになりながらそれに「任せるよ。」と答え2人に着いて行くことにした。

「…奥様、旦那様への贈り物はもう決められているのですか?」

「うん…まだ迷ってるけど、指輪がいいかなって。ネックレスとかブレスレットとかも考えたけどなるべく邪魔にならないものの方がいいし。」

「…そうですね、個人的な意見ですがネックレスは風呂に入る際、外さなければならないしブレスレットは執務の度に机などにぶつけるなどでキズがつく恐れがあります。その点、指輪はしょっちゅう外す物ではないし一目で相手がいるのがわかる物です、とても良い贈り物だと思いますよ。」

「そう⁉︎良かった!これでキーワ様も喜んでくれるかな⁉︎」

護衛の人に褒められて僕のテンションは急上昇だ。

「大丈夫ですよ、きっと旦那様も喜んで下さいます。」

2人にそう褒められ僕は嬉々としながらアクセサリーのお店に足を運んだ。








「いらっしゃいませ。」

護衛を引き連れた僕は少し異様だったらしい。店内が少し騒つき、店内にいた人達が少しばかり固まった。

「(あっあれ…?僕、場違いだったかな。服装も変じゃないように綺麗な物を用意したんだけど…。)」

僕は自分の服装をチラチラと見ながら護衛2人を仰ぎ見る。その様子に2人は目配せで店員と客の視線を逸らさせた。

本当はいきなり護衛を連れて入ってきたヨースケを高貴な貴族だと思い皆が固まったのだが、未だに貴族というものに慣れていないヨースケは自分が場違いなのだと勘違いしていた。

「なっ何かお探しでしょうか…?」

恐る恐るといった表情で店員が話しかけてくる。

「あっあの指輪を探してるのですが…。」

僕の言葉に店員がすぐに案内してくれる。

「(あっ!あった!)」

指輪のコーナーは店内入ってすぐ右のスペースに設けられていた。「ありがとうございます。」と伝え僕が熱心に見つめていると気になるものをショーケースから出してくれることになった。

僕が選んだものは特に模様は彫られているわけではないシンプルなデザインに真ん中に石が1つ取り付けられているものだ。

「(やっぱりこういうのは定番に瞳の色とかかな。けど赤はあってもキーワ様の瞳の赤黒いのはない…それに僕の目も真っ黒ってわけじゃないし…。これってオーダーとかって出来るのかな…?)」

僕が指輪を見ながら唸っていると店員に「お気に召しませんか?」と聞かれる。僕は色味についてオーダー出来るか伺うとオーダーは出来るらしいが少し時間がかかるとの事。

「(当たり前か…オーダーメイドになるんだもんね。)
そうですか…。」

僕がガッカリしている様子を見て担当してくれた店員が上司に確認してくれるといった。

「すみません、お手数お掛けします…。」

僕の言葉に店員はニコリと微笑むとスタッフルームに下がっていく。その時を見計らって護衛2人が声を掛けてきた。

「お気に召すものはございませんでしたか?」
「熱心に見られていたのでご購入されるかと思いました。」

「うん…デザインとかはいいんだけど色がいいのが無くて。せっかくだからキーワ様の瞳の色にしたいんだけど理想的なものがなかったんだよね。」

「確かに…。」
「旦那様の瞳の色と同じものはありませんでしたね。」

「悩んでたら上司に確認してくれるって。」

「そうでしたか、良いものがあるといいですね。」

「うんっ!」

しばらく待っていると先程の店員と上司らしき人が戻って来た。

「お話はお伺いしました。赤黒い色の宝石をお好みの様で…?」

「はい、プレゼントにしたいのですが理想の色が無くて…。」

「そうですか…。大変申し訳ありませんがご希望の品は当店では用意し兼ねます。姉妹店にご希望の品があるかもしれませんが如何なさいますか?」

「(どうしよう…確認に時間もかかるだろうし、そうなると夕方までに帰れないかも…。)
あの…姉妹店はここから遠いですか?」

確認を取るまでに時間がかかる様なら自分で行った方が早いかもしれない。

「ここから馬車で1時間程です。」

それも屋敷とは反対方向である。

「(ということは、もし姉妹店にあったとしても屋敷に帰ってくるのに2時間以上掛かる…間に合うかな…?)」

僕はキーワ様を出迎えれるか微妙な時間に不安を抱えた。

しかし…

「分かりました、自分で行きます!」

「奥様⁉︎」
「本気ですか⁉︎」

2人は間に合わなかった時を危惧しているようだ。

「ゴメンね、もう少しだけ付き合って!」

僕のお願いに2人は渋々頷いた。





それから1時間ほど馬車に揺られて漸く姉妹店に到着した。

「あの赤黒い宝石のついた指輪を探しているのですが…。」

「指輪ですか…。ネックレスではありますのでそれを付け替えれば可能ですが…?」

現物を見せてもらい、それが理想的な色味であることに安堵する。

「はい、是非お願いします!」

それから結局30分程時間をかけて指輪に固定してくれた。運良く僕の瞳の色に似た指輪もあり、それも購入して家路を急いだ。
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