63 / 66
第二部
44 ブレイクスルー(難関打破)
しおりを挟む
王城を訪れたルーカスたちが王の間に通されると、そこに待っていたのは召喚状を寄越したオルガノではなく、魔獣小屋にいるはずのガロンだった。
人払いされ、しんと静まり返った王の間には、屋敷の主であるラーティを主幹として随行する従者たちの他に、取次役と衛兵が数名待機しており。皆一様に口を閉ざし、言動を控えめにかしこまっていたが、彼らの動向はガロンのもたらした情報によってざわめきに変わる。
「クーペとオルガノが共にいる? それは何とも珍しい組み合わせだが」
おやおやとルーカスが一人、余裕があるのに対し、他の面々は心配そうに互いに顔を見合わせている。
特に、クーペとお友達になった屋敷の従者たちは、反応が大きいようだ。
そこには、闇の勇者と謳われるオルガノへの恐れと、そんな彼と共にいるクーペを案じている様子が窺えた。
さらにタリヤの手配した早馬が到着し、ローランドからの手紙をルーカスに届けるため、クーペが一足先に王城に来ている理由を知るに至る。
お空の豆粒と化したクーペに執事長が絶叫するなど、屋敷は大騒ぎだったと伝言を受け、背後に控える従者たちの動揺がそちらを見ずとも手に取るように伝わってくる。状況は益々混迷を深めてきたようだ。
「ルーカス貴方って人は……まさか楽しんでないよな?」
先刻のラーティと同じようなことを言って訝しむガロンに、ルーカスはクスッと笑い、告げる。
「楽しむ、か。それは心外だ。私はあの子とオルガノが今頃どのような会話をしているのか、少し気になっているだけだ」
「え、あれはむしろ会話と言うより言葉が通じない相手との意思の疎通……」
いや、片方は花に擬態してたし、途中おめめキラキラりんだったし、とりあえず陛下とは話通じてたっぽいけどと。バルコニーに落ちてきたクーペとオルガノの様子を説明するのに難儀しているガロンから、ルーカスは「そうか」と一旦視線を外し、空の王座を眺める。
それから隣で共に佇み話を聞いていたラーティに視線を送る。
ガロンからオルガノとクーペが一緒にいると聞かされたとき、ラーティは終始無言で、ルーカス以外の人間の目には少しの乱れもなく映ったことだろう。しかし表情こそ動かさなかったものの、ルーカスには寡黙な彼の困惑が伝わっていた。
ラーティの沈黙には、複雑怪奇な現象にでも出会ったような戸惑いが含まれている。
おそらくルーカスが先刻馬上で話したことが要因だろう。
クーペがオルガノと友になったらなどと冗談交じりに言ったけれど、隣で静かに困惑するラーティを見やり、その様子に若干の罪悪を覚える。
いつも一歩後ろにいて大人の、あまり他者に振り回されることの少ないラーティが、いつになくどっぷり関わりをもたらされている。
夫婦になるまでは、彼は相手が子供であってもあまり関心を持たず、いつも通り淡白にやり過ごすとばかり思っていた。しかし実際は……
ラーティ様、淡白にやり過ごすどころか、意外にしっかり振り回されているな。
ここ最近は特に、父親という役を通してラーティから人間味のある部分が垣間見える。
そこから感じるのは息子に対する困惑であって拒絶ではない。ラーティの変化を嬉しく感じてしまうのを申し訳なく思いながら、家族を持つという人生の新たな局面を、惑いながらも受け入れてくれている彼に、ルーカスは穏やかな視線を送る。
ラーティの抱く不安の要因──これは私が植え付けたものだ。そのときがきたら全てこちらで対処しよう。
彼は平時より公務で忙しく、立場上、誰か一人が独占できる相手ではない。少し寂しくはあるが、普段より瑣末な事で負担をかけぬよう、極力配慮すべき存在なのだ。
されどラーティの心に寄り添い、支えることができるのは妻である己だけの役だと確信を持てるのは、ルーカスにとって誇りでもあった。
それにしても、よもやとは思うが……
クーペが持ってきたという、ローランドからの手紙。それは数奇な運命を辿った父セザン・フォリンに関わるものか。それとも、
「まさかな……」
「ルーカス?」
ラーティが気遣うようにこちらを見ている。話しの途中で深く考えるように黙り込んでしまったルーカスの様子が気になったのだろう。
「いえ、ラーティ様。何でもありません」
答えに納得していないラーティの探るような視線。ルーカスはニコリと笑い、頭をよぎった考えに、そっと蓋をする。
まだ来ていない未来に頭を悩ませるのはよそう。悪戯に、大切な人を不安にさせてしまうことになる。
*
オルガノが王の間にやってきたのは、それから間もなくのことだった。
突如として開かれた重厚な扉から、堂々とした風情で現れた王の登場に、ガロンの報告で気もそぞろにざわついていた雰囲気が一転した。
囁き声はピタリと止み、空気が一気に引き締まる。
夫であるラーティ以下、王の間にいる者全てが襟を正して床に片膝を付き、ザッと頭を垂れる。
得も言われぬ緊張と静寂のなか、一糸乱れぬ動きで頭を低くする配下の前を、王座に向かって歩くオルガノの足音だけが王の間に響いている。
昔からそうだ。オルガノの放つ強烈な王気に当てられて、意志薄弱な者は皆凍り付く。
今より二十年以上も昔。出会った当初『──逃げるのには飽きた』そう言い放ち、こちらを見据える青い瞳は、危ういまでに少しも死を恐れてはいなかった。
初見は小生意気な威勢の良い子供だと思っていたが……
昔は年上のルーカスでさえ、その生まれ持ったオルガノの王者たり得る風格と気迫に押されかけたものだ。
だから降した。まだ幼さの残る、少年の気迫に呑まれんとするために。
最初は軽い警告のつもりが、こともあろうに型通りの素人相手に、一瞬でも本気を出して打ち負かしてしまうとは。出会い頭の手合わせでしでかした若き頃の己の未熟さを思い出し、ルーカスが密やかに苦笑していると──
前方に足音が近付き、ルーカスは目だけをチラリとそちらへ向ける。
華々しく重厚な空気と圧倒的な存在感。年をとっても衰えを知らぬ見事な体躯には、微塵の隙も迷いもない。
しかし上級身分でありながら、生命力の強い雑草のような、野性的な強さも併せ持つ希有な存在。
オルガノは王座に向かって颯爽と歩きながら、跪き頭を下げるルーカスと、すれ違いざま一瞬目を合わせてきた。
考えていたことを読まれたのかもしれない。
さらには歩調を緩めず背を向けた直後の去り際に、視線を床に下ろしたルーカスにしか聞こえないくらいの小さな声で、オルガノはボソリと呟く。
「──隠し立ては無用だ」
今はラーティの妻として第一線から身を引いたが、ルーカスとて以前はオルガノと共に世界を渡り歩いた冒険者だ。多少の荒事には慣れている。闇の勇者と怖れられていようが、彼の若かりし頃を知る己にとっては今更だ。
オルガノの物騒な物言いに怯む己ではない。──だが、
彼が言葉を発した直後の、ヒヤッと首筋に冷たい汗が一筋流れるような感覚。
まったくどこまで読まれているのか。よくよく人を驚かせる男だ。それにしても……不味いな。しっかり釘を刺されてしまった。
ルーカスは物腰を静かに、しれっと何事もなかったように跪き続ける。そんなルーカスからオルガノもサラリと関心を外し、過ぎ去っていく。
着座する音がして、王座に着いたオルガノが軽く片手の先を上げた気配がした。顔を上げる許可を出したのを、彼に続いて王の間に入ってきた側仕えの青年が代弁したところで、ようやく会談が始まった。
この会談の目的は、ルーカスにかけられた呪いを解くための手段である勇者の紋章の復活だ。
生者必滅の呪いを抑えているクーペの竜玉を、ルーカスの体内から早く取り出すためにも、それは必要となる。
しかし、以前にラーティの勇者の紋章は傷付き、その力の大半を制御出来なくなっている。同じく勇者の紋章を持つ者は彼の半血兄弟に多くいるものの、力を自在に使いこなし、呪い以上の力を持つ者は現役の勇者ラーティをおいて他にいない。
唯一対応できそうなのは、現ラスクールの国王オルガノだが、彼がかつていくら強い勇者であったにしても、今は現役を退いて久しい。年齢を考慮しても、下手を打てば心身に支障をきたすのは、火を見るよりも明らかだ。
となるとやはりラーティの勇者の紋章の復活が必要となってくるのだが。内情を知る氷の精霊からロザリンドが伝え聞いた話によると、勇者の紋章を修復できる光の精霊は現在行方が知れず、闇の精霊であるリュシーが捜索しているという。
そのため、勇者の紋章の知識に精通した旧王族に会う必要がでてきた。けれど旧王族で生き残っているのはルーカスの父セザン・フォリンを殺した前王のみであり、彼と会う許可を得ることが、会談の最終的な目標となる。──だがそれは、初手の段階で打ち砕かれた。
「前王への面談を希望しているとの話だが、単刀直入に言おう。前王は二年前に亡くなっている。だから会わせることは不可能だ」
「なん、ですって?」
先刻と同様、御前に跪くルーカスを見下ろすオルガノの青い瞳は、まるで氷のように冷たく、感情が見えない。
これは──感情を殺し、合理的で冷徹な判断を下す、オルガノが王の役を為すときの目だ。
*
ルーカスの隣で話を聞いていたラーティは、前王の逝去に散瞳が生じ言葉を失っている妻を見るオルガノの冷酷な眼差しにゾクリとした。
長くルーカスと共にいたが、夫婦となったことでわかってきたことがある。
以前のラーティであったなら、オルガノの不遜な振る舞いに、事あるごとに反感を抱いていただろう。
しかし何事にも、一線を画するべき時宜がある。多くの命を預かる者ならば尚更だ。
命を天秤に掛け、秩序を重んじ、ときには多くを救うために少数を切り捨てる。
非情な選択を迫られ、馴れ合いは一時の気まぐれとなり、どれほど心を許した相手であっても必要とあらば切り捨てる。
王とは綺麗事だけでは勤まらない。本来、人の心を持たざる者にしか勤まらぬ大役に、心を千々に砕かれ壊れてしまった偉人、賢人を、ラーティは魔王討伐の旅で数多く見てきた。オルガノとて例外ではない。
そういった裏の世界の役を担う者たちは、総じて手練手管に長けている。
彼らの見えている部分は氷山の一角にすぎず、半分の情報量にも満たない。
その裏に潜む計略を推し測ることなくして、上辺のみを相手が考える全てと単一的に判断するのは、早計に失する行為だ。
以前のように安易に烙印を押すばかりでは、オルガノの他者の感情を逆なでする驕り高ぶる振る舞いに隠された、行動の裏を読み解くことはできない。
なれども理解出来ないものに対し人は懐疑的だ。
理解不能なものには最終的に興味を無くすのが常であるが。以前の己がそうであったように、なかには自身が理解出来ないものを認めたくないという心理が働き、偏狭的な考えからそれ自体を許すことができない者もいる。
そういった偏狭的な考えによるところの非難批判に類する否定は、一見まっとうな内容のようでいて、その実構成される理論は表面的なものの揚げ足取りにすぎず、深い意味を持ち得ない。ゆえに中身は羽のように軽く、重みを持たない。
時に理解出来ないストレスを緩和するための常套句として、わかりやすい方が正しいという傾向が世間一般に見え隠れするが、
世の物事の全てに正しい答えが用意されているというのは幻想にすぎない。
むしろ物事の多くは、ハッキリと白黒が付けられない曖昧さで成り立っている。
その最たるものが、世界の起源であろう。
この星を抜けた外界──星の外は無限に広がり、終わりがないという。
世界の果ては永遠にあり、無限に続いているというが。永遠とは何か。無限とは何か。無限とはどう存在するのか。何故終わりがないのか。終わりがないとはどういうことなのか。
しかし世界の端には何もないのだという逆説的な異論も然り。何もないとはどういうことなのか。世界が有限だとするならば、無限は存在しないことになる。
そもそも何故──我々が存在するのか。
無限有限、どちらも証明するには矛盾が生じる。
世界が存在するのもおかしいが、存在しないのもおかしい。そんな言葉遊びのような疑問の連鎖の上に、我々が住む世界自体が訳のない究極の曖昧さで成り立っている。
すぐさま結論に飛びつくのではなく世の曖昧さに慣れ、己に問い掛けるのを意識し、新たな知見を深めることを怖れず努めるなかで、やがて進化が訪れる。難関打破が延々繰り返されていく。それが生命の循環となる星の流れだ。
けれど、否定と対照的な共感、受容、肯定は、対象への理解から派生するものであり。理解とは知識と経験からくる。
ゆえに知見が多ければ多いほど、理解の範囲を広めていくが、総じて容易にできるものではない。
理解出来ないこと自体に知識は伴わないが、対象への理解には相応の知見が必要となる。
これが非難批判やそれに類する否定に多くの賛同が集まりやすい理由だ。理解よりも、理解できないことによる当面否定の立場を取り、現状を維持する方が圧倒的に楽なのである。
そのからくりに気付かぬまま短絡的な選択をすれば、以前ルーカスを失いかけた己がそうであったように、多くの機会を失うだろう。
己の物差しを持つことなく、他人の言葉を鵜呑みにする危険性とはそういうことだ。
稀に偏狭的な非難批判に紛れた建設的意見も存在するが、それを見抜くのも、そこへ至るのもまた、ある程度の知見を必要とする。
ルーカスは常にその模範となる行動をラーティに示してきた。
妻であると同時に人生の師でもある彼は、相手がどのような輩であれ、ごくたまに挑発はすれど初見で見下すような真似は一切しない。
相手の目的が善意なのか悪意なのか、はたまた善意の皮を被った悪意なのか、その逆も然り。
なかでも善意と思い込んだ無自覚の悪意ほどたちが悪いものはないが、人生経験の不足からくるところの当人の問題であって、その心理に必要以上に引きずられるべきではないと、彼はよくよく心得ている。
他者をコントロールするにあたって、もっとも有用な感情的手段は、罪悪感を抱くよう仕向けるものと知り。その上でおそらくルーカスは、相手の行動を多くの知見から本能的に分析し、読み解いているのだろう。
とりわけオルガノは、どのような状況であれ、全てを遊戯に変えてしまう節がある。その思惑にまんまと乗せられて手中に落ちた、というより地獄を見た者たちの何と多いことか。
対峙する相手によって知能の高低差はあれど、こういう人間を相手にするならば、必要なのは冷静であることだ。
ラーティは隣で跪くルーカスをチラリと見る。
前王の逝去に暫し言葉を失っていたルーカスは、既にいつもの落ち着きを取り戻していた。
「何故私に訃報を知らせてくださらなかったのか。理由をお聞きしてもよろしいだろうか」
きっぱりとした態度で顔を上げ、真っ直ぐにオルガノを眼差し、もの柔らかに口を開く。踊らされるつもりはさらさらないルーカスは、やはり怒りといった負の感情を露ほども見せずにいる。
しかしオルガノも相当な食わせ物だ。冷淡な態度を崩さず、生真面目なルーカスの質疑をフッと鼻で笑う。
「私の下した決定に疑義を申し出るとは邪推が過ぎるというものだ。そもそも勇者の紋章が必要というのなら、私がその役を担えばすむ話ではないか。お前が私にそう直に頼み込めばいい」
オルガノは飄々と言ってのけたが、国王への頼み事となると、もちろん相応の見返りが要求されるはずだ。
慈善活動ではないのだから当然だが、話をすり替える辺り、厄介な見返りとなるのは確実だろう。
死者の魂を冥界から連れ出す力を持つ冥王ハザードの召喚に、不利な取り引き条件を呑まされているガロンにしてもそうだが、どちらも非常に危うい選択だ。
けれどルーカスにかけられた呪いを抑え込んでいる竜玉を取り出せなければ、息子は一生成長できないまま、あのミニマムサイズの子竜でいることになるやもしれない。それは可愛いが避けねばならないとルーカスも思っているはずだ。
「陛下は紋章の力を行使した後で、ラーティ様に王座を譲渡するおつもりですか?」
やや間を空けて、ルーカスが尋ねる。
今のオルガノに呪いの解除を頼めば、体への負担は明らかだ。それを本人が知らぬはずがない。あえて提案するオルガノの思惑を、ルーカスは図りかねているようだ。
だが不思議と、探るルーカスの声は波一つない湖畔のように穏やかで棘がない。昔から彼の話し方は人を安心させる子守歌のように、心に優しく響く。
「時は見計らい選ぶものだ。そしてそれが必要ならば今がその時なのだろう」
ルーカスは無駄な反応は控えて、静かな表情で押し黙るようにしていたが。やがてどのような考えに至ったのか、物事の核心を突くように述べる。
「──感情的になってはならない」
「何だと?」
途端、眉を顰めるオルガノに、ルーカスは変わらぬ様子で淡々と続ける。
「そうお伝えしたのは確か、陛下が私との手合わせで通算五十回目の敗北をしたときですが」
ルーカスが穏やかな物腰で眼前のオルガノを見据えた。
「恐れながら申し上げます。今の陛下には僅かながら乱れがあるようです」
「!」
長年遺恨を抱いてきた相手の死にまつわる事柄で、そうやすやすとルーカスが引き下がるわけがなかった。
オルガノを諌めるルーカスには少しの迷いもなく、こうも完璧にしてやられた顔で絶句するオルガノというのを、ラーティは初めて見た。
「もっとも、陛下との出会い頭の手合わせでしでかした若気の至りなど、私自身も他人にあまり知られたくない部分でもありますが。隠し立ては無用、とのことでしたので」
「お前という男は……!」
素っ気ない余所行きの口調で白を切るルーカスの、何と清々しいことか。
先ほどオルガノがルーカスの前を通ったとき、何事か話し掛けたのを、隣にいるラーティは気付いていた。内容は聞こえなかったものの、話の流れからしてその時に言われた言葉を、ルーカスは今返したのだろう。
状況によって相手の思惑に乗るべき時と、乗らざるべき時と複雑に絡むこともあるが、ルーカスは今回後者を選んだようだ。
出会った当初、ルーカスの方がオルガノより圧倒的に強かったなどの情報は、華やかな英雄譚の隅に追いやられ、殆ど知られていない。
後方に控える者たちは「五十回?」「陛下とルーカス様が手合わせを?」「陛下が敗北とはいったいお二人の間に何が……」と各々、驚きと推察に頭を悩ませていたが。身の危険を感じるほどの剣幕のオルガノに気付いた途端、口を閉ざし、青い顔で押し黙ってしまった。
やはり二人のやり取りを初めて間近で見た者の反応はこうなる。
これまでかなりの数の二人の攻防を目にしてきたラーティにとって、けだし当然の結果ではあるが、ルーカスが場の調和に手を抜くことはない。
後方で控えて固まっている彼らをルーカスは一瞥し、剣呑な顔付きのオルガノへ視線を戻すと、跪く姿勢のまま頭を下げ温厚篤実に述べる。
「言葉が過ぎましたことは平に伏してお詫び申し上げます。しかしこれ以上の恥の上塗りは互いに望むものではないでしょう」
ただただあるがままを語るように、気取らず飾らず。ルーカスは相手が誰であろうとも、毅然と対応し、凜とした姿勢を崩さない。
おそらくこれは、生まれ持った気性のなせるわざでもあるのだろう。それがどれほど難しいことか、さして自覚のないまま彼はこなしてしまうのだ。
「それともまだ思い出話がしたいというのであれば、私はいっこうに構いませんが」
顔を上げ、言い切り、ルーカスはニコリと笑った。
好戦的なルーカスの真っ直ぐな意志を貫く小さな体は、底知れぬ凄みを帯びていて、動じる気配はない。
前王の逝去について話をそらすオルガノから、相応の返答を貰えるまで、ルーカスは一歩も引く気はないようだ。
対するオルガノは思い出話に花を咲かせるどころか、咲いた花を冥土の土産に墓石へ飾りかねない様相でルーカスを睨み付けているも、効果はあまり期待できない。
どれもこれも全て、ルーカスは涼しい顔で躱してしまうのだから。
改めてその鮮やかな手腕にラーティが関心していると──ルーカスがチラリとこちらを見た。
「ん?」とラーティが見返すと、何事もなかったようにスルリと目を逸らされる。それがどうにもぎこちなく映り、暫し彼を傍観していると困ったようにルーカスは視線を泳がせた。
高尚なルーカスが不器用な反応を見せるのは、いつもきまって彼が苦手とする恋愛に関わる事柄ばかりだ。だから気付いた。
これは……私の反応を気にしているのか?
ルーカスは夫であるラーティを立てるよう、いつも気に掛けている。今回のように前面に出るような行動を取るのは、気が咎めるのやもしれぬ。
そうラーティが察してしまったのを、ルーカスは何とはなしに勘付いたようだ。以降、けしてこちらを見ようとしないものだから、逆に確信する。
一国の王を相手にこれほどの駆け引きをする男が、その最中にも私にどう思われているのか、反応を気にしているのか……
不覚にも感情を揺さぶられたラーティの変化を、敏感に察知したルーカスがようやくこちらを見たところで、苛立ちを包み隠さずそして苦々しく舌打ちする音が耳に届く。
「夫婦の語らいは他所でやれ」
前方に数十歩ほど離れた上座に位置する、王座のオルガノが頬杖をついて、軽く嘆息を漏らす。
オルガノもルーカスの思慕に気付いたらしい。
「……夫婦の語らいとは、いったい何の話でしょうか」
澄まし顔でルーカスが答える。
「この期に及んで城主の私に平気な顔で嘯くとは。相応の覚悟は出来ているのだろうな?」
「この期に及んで詮無いことをおっしゃるのは、陛下の真心と察せぬほど、私は愚か者ではないつもりです」
しかしとことん白を切り、惚けるルーカスに、オルガノは恨み言を吐き出すも、気を悪くしたわけではないようだ。その証拠に不機嫌を露にしているものの、すっかり毒気を抜かれて、半ば呆れ顔でルーカスを見ている。
「なればこそ、私はその先にある答えについて怖れるのを止めましょう」
野放図なオルガノに気圧されることなく、自己欺瞞に陥るでもなく、ルーカスはどこまでも信じ切って笑う。
透き通るような美しさだった。
その希少性に気付いた控えの者たちが、己の妻に惹かれるのをラーティは目の当たりにする。
「まったく、お前ほど危険な男はそういない」
そんなルーカスを、オルガノは開かれた青の両眼で見つめ、穏やかな表情を浮かべている。
ラーティの知らぬ時代を共に生きてきた二人の、確かな絆が垣間見えた時だった。
「答えるのが筋だと、先に示してきたのはお前だ。これから話す異聞にお前がどう反応しようとも、私は何ら責任を負わんぞ」
「ご随意になさればいい」
もはや一国の王と、その臣下の妻の会話に留まらない。これは完全に師弟の域にある者たちの会話だ。
後方に控えて、それを静観していた者たちはひたすらに驚き、茫然として二人の会話に聞き入っている。
二十年程前、ルーカスがオルガノと共に旅をした英雄であることは、誰もが知っている。けれど噂話の口伝えや古書などから得た文字の上だけの知識と、実際にその二人の会談を直に見聞きするのとでは、実感となって押し寄せる感情は前者の比ではない。
空と大地を結ぶ境界線のように、そこには確かに、切っても切れない鋼鉄の絆が存在しているのだから。
当時から現在まで続く二人の関係性の深さに、目撃した者たちは誰もが感銘を受けずにはおれなくなるのだ。
感慨深くも多くの衝撃にあって、張り詰めた空気がガラガラと音を立てて崩れ去っていく。
暖かな春風に吹かれるように、王の間には一旦穏やかな空気が流れ出した。ようやく機が熟したようだ。
「聡いお前ならば、前王が亡くなったのは二年前のあの日、お前が小屋からいなくなった時期だと言えば察しはつくか?」
話しながら、オルガノはゆっくりとした動作で、体をほぐすように背もたれに寄りかかる。
「まさか……話したのですか?」
ハッとするルーカスの顔を眺め見ながら、オルガノは続けた。
「セザン・フォリンの息子であるお前の行く末を見届けること。それが私が前王に課せた罰であった。その上で私がお前に何があったかを話した」
「っ!」
それでは、死刑宣告をしたも同然ではないか──
流石に驚きというよりショックの方が大きかったらしい。ルーカスの体が一瞬、視界がぐらりと揺らいだようになった。
「グランドキャッスルに向かったきり戻らないと話した翌日に、前王は亡くなっていた。ようやく役割を終えたというようにな。あれだけの大罪を犯した相手を、王城の地下牢でただのうのうと飼い殺すだけで、私が終わらせると本気で思っていたのか? 罪人には相応の報いが必要だ」
「だから処罰を与えたと?」
絞り出すような声だった。
ルーカスの発言を聞きながら、──いや、むしろ前王には生きるための理由として、それが必要だったのかもしれない。ラーティはそう直感した。
前王には何もなかったのだ。ルーカスの命一つで簡単に消えてしまうほどに。
ラスクールをオルガノに奪還されたその日、前王は一人王座にいた。臣下に見放され、頼るものはなく、誰も自身を王と呼ぶ者はいない。
恐ろしいほどの孤独と失意の中で、全てを失った前王には、生きる目的が何もなかったのだ。
墓標を気持ちの整理をするための拠り所とするように、多くの人が、心の拠り所となるモノを持っている。
対象は物でも人でも信仰でも、思い出でも、何であってもいい。ただ己が正しいと思える依存先として何かしらを選び、心のよすがとすることで、心の安定を図る。
依存先の数は多かれ少なかれ。心の内に抱く依存先のないまま、己の行動に確信を持って生きていける者は、そう多くないだろう。
何にも依存せず、何にも心を許さず生きることは、不可能に近い。
しかし、前王のように己の過去の行いを全て否定され、無意味なものだと本人が思い知ったのだとしたら? 価値を見出せるもののないまま、いったい何をよすがに生きればいい。
生きるよすがを失えば、多くの人は目的を失う。
たとえそれが罰だとしても、何かしらを自分自身に課さなければ生きていけないほど、心に深い傷を負い、弱っている者もいるのだ。
そうしなければ前王は生きられなかったのだろうことを、この眼前の王座に君臨する男は見抜いていた。そしておそらく、ルーカスもそれに気付いたのだろう。他人に心を砕く、優しい心根を持つ妻は、とても悲しい目をしていた。
ラーティはルーカスの生き様から目が離せなかった。
父親の手記から前王の内情を知るとはいえ、己の父親を極刑に処した相手にすら、そのような感情を抱けるのか。
そんな歪で不完全な人間らしいあり方は、どこか矛盾している。
ゆえに人は、不完全な生き物に自己を投影し、惹かれずにはおれないのかもしれない。
人払いされ、しんと静まり返った王の間には、屋敷の主であるラーティを主幹として随行する従者たちの他に、取次役と衛兵が数名待機しており。皆一様に口を閉ざし、言動を控えめにかしこまっていたが、彼らの動向はガロンのもたらした情報によってざわめきに変わる。
「クーペとオルガノが共にいる? それは何とも珍しい組み合わせだが」
おやおやとルーカスが一人、余裕があるのに対し、他の面々は心配そうに互いに顔を見合わせている。
特に、クーペとお友達になった屋敷の従者たちは、反応が大きいようだ。
そこには、闇の勇者と謳われるオルガノへの恐れと、そんな彼と共にいるクーペを案じている様子が窺えた。
さらにタリヤの手配した早馬が到着し、ローランドからの手紙をルーカスに届けるため、クーペが一足先に王城に来ている理由を知るに至る。
お空の豆粒と化したクーペに執事長が絶叫するなど、屋敷は大騒ぎだったと伝言を受け、背後に控える従者たちの動揺がそちらを見ずとも手に取るように伝わってくる。状況は益々混迷を深めてきたようだ。
「ルーカス貴方って人は……まさか楽しんでないよな?」
先刻のラーティと同じようなことを言って訝しむガロンに、ルーカスはクスッと笑い、告げる。
「楽しむ、か。それは心外だ。私はあの子とオルガノが今頃どのような会話をしているのか、少し気になっているだけだ」
「え、あれはむしろ会話と言うより言葉が通じない相手との意思の疎通……」
いや、片方は花に擬態してたし、途中おめめキラキラりんだったし、とりあえず陛下とは話通じてたっぽいけどと。バルコニーに落ちてきたクーペとオルガノの様子を説明するのに難儀しているガロンから、ルーカスは「そうか」と一旦視線を外し、空の王座を眺める。
それから隣で共に佇み話を聞いていたラーティに視線を送る。
ガロンからオルガノとクーペが一緒にいると聞かされたとき、ラーティは終始無言で、ルーカス以外の人間の目には少しの乱れもなく映ったことだろう。しかし表情こそ動かさなかったものの、ルーカスには寡黙な彼の困惑が伝わっていた。
ラーティの沈黙には、複雑怪奇な現象にでも出会ったような戸惑いが含まれている。
おそらくルーカスが先刻馬上で話したことが要因だろう。
クーペがオルガノと友になったらなどと冗談交じりに言ったけれど、隣で静かに困惑するラーティを見やり、その様子に若干の罪悪を覚える。
いつも一歩後ろにいて大人の、あまり他者に振り回されることの少ないラーティが、いつになくどっぷり関わりをもたらされている。
夫婦になるまでは、彼は相手が子供であってもあまり関心を持たず、いつも通り淡白にやり過ごすとばかり思っていた。しかし実際は……
ラーティ様、淡白にやり過ごすどころか、意外にしっかり振り回されているな。
ここ最近は特に、父親という役を通してラーティから人間味のある部分が垣間見える。
そこから感じるのは息子に対する困惑であって拒絶ではない。ラーティの変化を嬉しく感じてしまうのを申し訳なく思いながら、家族を持つという人生の新たな局面を、惑いながらも受け入れてくれている彼に、ルーカスは穏やかな視線を送る。
ラーティの抱く不安の要因──これは私が植え付けたものだ。そのときがきたら全てこちらで対処しよう。
彼は平時より公務で忙しく、立場上、誰か一人が独占できる相手ではない。少し寂しくはあるが、普段より瑣末な事で負担をかけぬよう、極力配慮すべき存在なのだ。
されどラーティの心に寄り添い、支えることができるのは妻である己だけの役だと確信を持てるのは、ルーカスにとって誇りでもあった。
それにしても、よもやとは思うが……
クーペが持ってきたという、ローランドからの手紙。それは数奇な運命を辿った父セザン・フォリンに関わるものか。それとも、
「まさかな……」
「ルーカス?」
ラーティが気遣うようにこちらを見ている。話しの途中で深く考えるように黙り込んでしまったルーカスの様子が気になったのだろう。
「いえ、ラーティ様。何でもありません」
答えに納得していないラーティの探るような視線。ルーカスはニコリと笑い、頭をよぎった考えに、そっと蓋をする。
まだ来ていない未来に頭を悩ませるのはよそう。悪戯に、大切な人を不安にさせてしまうことになる。
*
オルガノが王の間にやってきたのは、それから間もなくのことだった。
突如として開かれた重厚な扉から、堂々とした風情で現れた王の登場に、ガロンの報告で気もそぞろにざわついていた雰囲気が一転した。
囁き声はピタリと止み、空気が一気に引き締まる。
夫であるラーティ以下、王の間にいる者全てが襟を正して床に片膝を付き、ザッと頭を垂れる。
得も言われぬ緊張と静寂のなか、一糸乱れぬ動きで頭を低くする配下の前を、王座に向かって歩くオルガノの足音だけが王の間に響いている。
昔からそうだ。オルガノの放つ強烈な王気に当てられて、意志薄弱な者は皆凍り付く。
今より二十年以上も昔。出会った当初『──逃げるのには飽きた』そう言い放ち、こちらを見据える青い瞳は、危ういまでに少しも死を恐れてはいなかった。
初見は小生意気な威勢の良い子供だと思っていたが……
昔は年上のルーカスでさえ、その生まれ持ったオルガノの王者たり得る風格と気迫に押されかけたものだ。
だから降した。まだ幼さの残る、少年の気迫に呑まれんとするために。
最初は軽い警告のつもりが、こともあろうに型通りの素人相手に、一瞬でも本気を出して打ち負かしてしまうとは。出会い頭の手合わせでしでかした若き頃の己の未熟さを思い出し、ルーカスが密やかに苦笑していると──
前方に足音が近付き、ルーカスは目だけをチラリとそちらへ向ける。
華々しく重厚な空気と圧倒的な存在感。年をとっても衰えを知らぬ見事な体躯には、微塵の隙も迷いもない。
しかし上級身分でありながら、生命力の強い雑草のような、野性的な強さも併せ持つ希有な存在。
オルガノは王座に向かって颯爽と歩きながら、跪き頭を下げるルーカスと、すれ違いざま一瞬目を合わせてきた。
考えていたことを読まれたのかもしれない。
さらには歩調を緩めず背を向けた直後の去り際に、視線を床に下ろしたルーカスにしか聞こえないくらいの小さな声で、オルガノはボソリと呟く。
「──隠し立ては無用だ」
今はラーティの妻として第一線から身を引いたが、ルーカスとて以前はオルガノと共に世界を渡り歩いた冒険者だ。多少の荒事には慣れている。闇の勇者と怖れられていようが、彼の若かりし頃を知る己にとっては今更だ。
オルガノの物騒な物言いに怯む己ではない。──だが、
彼が言葉を発した直後の、ヒヤッと首筋に冷たい汗が一筋流れるような感覚。
まったくどこまで読まれているのか。よくよく人を驚かせる男だ。それにしても……不味いな。しっかり釘を刺されてしまった。
ルーカスは物腰を静かに、しれっと何事もなかったように跪き続ける。そんなルーカスからオルガノもサラリと関心を外し、過ぎ去っていく。
着座する音がして、王座に着いたオルガノが軽く片手の先を上げた気配がした。顔を上げる許可を出したのを、彼に続いて王の間に入ってきた側仕えの青年が代弁したところで、ようやく会談が始まった。
この会談の目的は、ルーカスにかけられた呪いを解くための手段である勇者の紋章の復活だ。
生者必滅の呪いを抑えているクーペの竜玉を、ルーカスの体内から早く取り出すためにも、それは必要となる。
しかし、以前にラーティの勇者の紋章は傷付き、その力の大半を制御出来なくなっている。同じく勇者の紋章を持つ者は彼の半血兄弟に多くいるものの、力を自在に使いこなし、呪い以上の力を持つ者は現役の勇者ラーティをおいて他にいない。
唯一対応できそうなのは、現ラスクールの国王オルガノだが、彼がかつていくら強い勇者であったにしても、今は現役を退いて久しい。年齢を考慮しても、下手を打てば心身に支障をきたすのは、火を見るよりも明らかだ。
となるとやはりラーティの勇者の紋章の復活が必要となってくるのだが。内情を知る氷の精霊からロザリンドが伝え聞いた話によると、勇者の紋章を修復できる光の精霊は現在行方が知れず、闇の精霊であるリュシーが捜索しているという。
そのため、勇者の紋章の知識に精通した旧王族に会う必要がでてきた。けれど旧王族で生き残っているのはルーカスの父セザン・フォリンを殺した前王のみであり、彼と会う許可を得ることが、会談の最終的な目標となる。──だがそれは、初手の段階で打ち砕かれた。
「前王への面談を希望しているとの話だが、単刀直入に言おう。前王は二年前に亡くなっている。だから会わせることは不可能だ」
「なん、ですって?」
先刻と同様、御前に跪くルーカスを見下ろすオルガノの青い瞳は、まるで氷のように冷たく、感情が見えない。
これは──感情を殺し、合理的で冷徹な判断を下す、オルガノが王の役を為すときの目だ。
*
ルーカスの隣で話を聞いていたラーティは、前王の逝去に散瞳が生じ言葉を失っている妻を見るオルガノの冷酷な眼差しにゾクリとした。
長くルーカスと共にいたが、夫婦となったことでわかってきたことがある。
以前のラーティであったなら、オルガノの不遜な振る舞いに、事あるごとに反感を抱いていただろう。
しかし何事にも、一線を画するべき時宜がある。多くの命を預かる者ならば尚更だ。
命を天秤に掛け、秩序を重んじ、ときには多くを救うために少数を切り捨てる。
非情な選択を迫られ、馴れ合いは一時の気まぐれとなり、どれほど心を許した相手であっても必要とあらば切り捨てる。
王とは綺麗事だけでは勤まらない。本来、人の心を持たざる者にしか勤まらぬ大役に、心を千々に砕かれ壊れてしまった偉人、賢人を、ラーティは魔王討伐の旅で数多く見てきた。オルガノとて例外ではない。
そういった裏の世界の役を担う者たちは、総じて手練手管に長けている。
彼らの見えている部分は氷山の一角にすぎず、半分の情報量にも満たない。
その裏に潜む計略を推し測ることなくして、上辺のみを相手が考える全てと単一的に判断するのは、早計に失する行為だ。
以前のように安易に烙印を押すばかりでは、オルガノの他者の感情を逆なでする驕り高ぶる振る舞いに隠された、行動の裏を読み解くことはできない。
なれども理解出来ないものに対し人は懐疑的だ。
理解不能なものには最終的に興味を無くすのが常であるが。以前の己がそうであったように、なかには自身が理解出来ないものを認めたくないという心理が働き、偏狭的な考えからそれ自体を許すことができない者もいる。
そういった偏狭的な考えによるところの非難批判に類する否定は、一見まっとうな内容のようでいて、その実構成される理論は表面的なものの揚げ足取りにすぎず、深い意味を持ち得ない。ゆえに中身は羽のように軽く、重みを持たない。
時に理解出来ないストレスを緩和するための常套句として、わかりやすい方が正しいという傾向が世間一般に見え隠れするが、
世の物事の全てに正しい答えが用意されているというのは幻想にすぎない。
むしろ物事の多くは、ハッキリと白黒が付けられない曖昧さで成り立っている。
その最たるものが、世界の起源であろう。
この星を抜けた外界──星の外は無限に広がり、終わりがないという。
世界の果ては永遠にあり、無限に続いているというが。永遠とは何か。無限とは何か。無限とはどう存在するのか。何故終わりがないのか。終わりがないとはどういうことなのか。
しかし世界の端には何もないのだという逆説的な異論も然り。何もないとはどういうことなのか。世界が有限だとするならば、無限は存在しないことになる。
そもそも何故──我々が存在するのか。
無限有限、どちらも証明するには矛盾が生じる。
世界が存在するのもおかしいが、存在しないのもおかしい。そんな言葉遊びのような疑問の連鎖の上に、我々が住む世界自体が訳のない究極の曖昧さで成り立っている。
すぐさま結論に飛びつくのではなく世の曖昧さに慣れ、己に問い掛けるのを意識し、新たな知見を深めることを怖れず努めるなかで、やがて進化が訪れる。難関打破が延々繰り返されていく。それが生命の循環となる星の流れだ。
けれど、否定と対照的な共感、受容、肯定は、対象への理解から派生するものであり。理解とは知識と経験からくる。
ゆえに知見が多ければ多いほど、理解の範囲を広めていくが、総じて容易にできるものではない。
理解出来ないこと自体に知識は伴わないが、対象への理解には相応の知見が必要となる。
これが非難批判やそれに類する否定に多くの賛同が集まりやすい理由だ。理解よりも、理解できないことによる当面否定の立場を取り、現状を維持する方が圧倒的に楽なのである。
そのからくりに気付かぬまま短絡的な選択をすれば、以前ルーカスを失いかけた己がそうであったように、多くの機会を失うだろう。
己の物差しを持つことなく、他人の言葉を鵜呑みにする危険性とはそういうことだ。
稀に偏狭的な非難批判に紛れた建設的意見も存在するが、それを見抜くのも、そこへ至るのもまた、ある程度の知見を必要とする。
ルーカスは常にその模範となる行動をラーティに示してきた。
妻であると同時に人生の師でもある彼は、相手がどのような輩であれ、ごくたまに挑発はすれど初見で見下すような真似は一切しない。
相手の目的が善意なのか悪意なのか、はたまた善意の皮を被った悪意なのか、その逆も然り。
なかでも善意と思い込んだ無自覚の悪意ほどたちが悪いものはないが、人生経験の不足からくるところの当人の問題であって、その心理に必要以上に引きずられるべきではないと、彼はよくよく心得ている。
他者をコントロールするにあたって、もっとも有用な感情的手段は、罪悪感を抱くよう仕向けるものと知り。その上でおそらくルーカスは、相手の行動を多くの知見から本能的に分析し、読み解いているのだろう。
とりわけオルガノは、どのような状況であれ、全てを遊戯に変えてしまう節がある。その思惑にまんまと乗せられて手中に落ちた、というより地獄を見た者たちの何と多いことか。
対峙する相手によって知能の高低差はあれど、こういう人間を相手にするならば、必要なのは冷静であることだ。
ラーティは隣で跪くルーカスをチラリと見る。
前王の逝去に暫し言葉を失っていたルーカスは、既にいつもの落ち着きを取り戻していた。
「何故私に訃報を知らせてくださらなかったのか。理由をお聞きしてもよろしいだろうか」
きっぱりとした態度で顔を上げ、真っ直ぐにオルガノを眼差し、もの柔らかに口を開く。踊らされるつもりはさらさらないルーカスは、やはり怒りといった負の感情を露ほども見せずにいる。
しかしオルガノも相当な食わせ物だ。冷淡な態度を崩さず、生真面目なルーカスの質疑をフッと鼻で笑う。
「私の下した決定に疑義を申し出るとは邪推が過ぎるというものだ。そもそも勇者の紋章が必要というのなら、私がその役を担えばすむ話ではないか。お前が私にそう直に頼み込めばいい」
オルガノは飄々と言ってのけたが、国王への頼み事となると、もちろん相応の見返りが要求されるはずだ。
慈善活動ではないのだから当然だが、話をすり替える辺り、厄介な見返りとなるのは確実だろう。
死者の魂を冥界から連れ出す力を持つ冥王ハザードの召喚に、不利な取り引き条件を呑まされているガロンにしてもそうだが、どちらも非常に危うい選択だ。
けれどルーカスにかけられた呪いを抑え込んでいる竜玉を取り出せなければ、息子は一生成長できないまま、あのミニマムサイズの子竜でいることになるやもしれない。それは可愛いが避けねばならないとルーカスも思っているはずだ。
「陛下は紋章の力を行使した後で、ラーティ様に王座を譲渡するおつもりですか?」
やや間を空けて、ルーカスが尋ねる。
今のオルガノに呪いの解除を頼めば、体への負担は明らかだ。それを本人が知らぬはずがない。あえて提案するオルガノの思惑を、ルーカスは図りかねているようだ。
だが不思議と、探るルーカスの声は波一つない湖畔のように穏やかで棘がない。昔から彼の話し方は人を安心させる子守歌のように、心に優しく響く。
「時は見計らい選ぶものだ。そしてそれが必要ならば今がその時なのだろう」
ルーカスは無駄な反応は控えて、静かな表情で押し黙るようにしていたが。やがてどのような考えに至ったのか、物事の核心を突くように述べる。
「──感情的になってはならない」
「何だと?」
途端、眉を顰めるオルガノに、ルーカスは変わらぬ様子で淡々と続ける。
「そうお伝えしたのは確か、陛下が私との手合わせで通算五十回目の敗北をしたときですが」
ルーカスが穏やかな物腰で眼前のオルガノを見据えた。
「恐れながら申し上げます。今の陛下には僅かながら乱れがあるようです」
「!」
長年遺恨を抱いてきた相手の死にまつわる事柄で、そうやすやすとルーカスが引き下がるわけがなかった。
オルガノを諌めるルーカスには少しの迷いもなく、こうも完璧にしてやられた顔で絶句するオルガノというのを、ラーティは初めて見た。
「もっとも、陛下との出会い頭の手合わせでしでかした若気の至りなど、私自身も他人にあまり知られたくない部分でもありますが。隠し立ては無用、とのことでしたので」
「お前という男は……!」
素っ気ない余所行きの口調で白を切るルーカスの、何と清々しいことか。
先ほどオルガノがルーカスの前を通ったとき、何事か話し掛けたのを、隣にいるラーティは気付いていた。内容は聞こえなかったものの、話の流れからしてその時に言われた言葉を、ルーカスは今返したのだろう。
状況によって相手の思惑に乗るべき時と、乗らざるべき時と複雑に絡むこともあるが、ルーカスは今回後者を選んだようだ。
出会った当初、ルーカスの方がオルガノより圧倒的に強かったなどの情報は、華やかな英雄譚の隅に追いやられ、殆ど知られていない。
後方に控える者たちは「五十回?」「陛下とルーカス様が手合わせを?」「陛下が敗北とはいったいお二人の間に何が……」と各々、驚きと推察に頭を悩ませていたが。身の危険を感じるほどの剣幕のオルガノに気付いた途端、口を閉ざし、青い顔で押し黙ってしまった。
やはり二人のやり取りを初めて間近で見た者の反応はこうなる。
これまでかなりの数の二人の攻防を目にしてきたラーティにとって、けだし当然の結果ではあるが、ルーカスが場の調和に手を抜くことはない。
後方で控えて固まっている彼らをルーカスは一瞥し、剣呑な顔付きのオルガノへ視線を戻すと、跪く姿勢のまま頭を下げ温厚篤実に述べる。
「言葉が過ぎましたことは平に伏してお詫び申し上げます。しかしこれ以上の恥の上塗りは互いに望むものではないでしょう」
ただただあるがままを語るように、気取らず飾らず。ルーカスは相手が誰であろうとも、毅然と対応し、凜とした姿勢を崩さない。
おそらくこれは、生まれ持った気性のなせるわざでもあるのだろう。それがどれほど難しいことか、さして自覚のないまま彼はこなしてしまうのだ。
「それともまだ思い出話がしたいというのであれば、私はいっこうに構いませんが」
顔を上げ、言い切り、ルーカスはニコリと笑った。
好戦的なルーカスの真っ直ぐな意志を貫く小さな体は、底知れぬ凄みを帯びていて、動じる気配はない。
前王の逝去について話をそらすオルガノから、相応の返答を貰えるまで、ルーカスは一歩も引く気はないようだ。
対するオルガノは思い出話に花を咲かせるどころか、咲いた花を冥土の土産に墓石へ飾りかねない様相でルーカスを睨み付けているも、効果はあまり期待できない。
どれもこれも全て、ルーカスは涼しい顔で躱してしまうのだから。
改めてその鮮やかな手腕にラーティが関心していると──ルーカスがチラリとこちらを見た。
「ん?」とラーティが見返すと、何事もなかったようにスルリと目を逸らされる。それがどうにもぎこちなく映り、暫し彼を傍観していると困ったようにルーカスは視線を泳がせた。
高尚なルーカスが不器用な反応を見せるのは、いつもきまって彼が苦手とする恋愛に関わる事柄ばかりだ。だから気付いた。
これは……私の反応を気にしているのか?
ルーカスは夫であるラーティを立てるよう、いつも気に掛けている。今回のように前面に出るような行動を取るのは、気が咎めるのやもしれぬ。
そうラーティが察してしまったのを、ルーカスは何とはなしに勘付いたようだ。以降、けしてこちらを見ようとしないものだから、逆に確信する。
一国の王を相手にこれほどの駆け引きをする男が、その最中にも私にどう思われているのか、反応を気にしているのか……
不覚にも感情を揺さぶられたラーティの変化を、敏感に察知したルーカスがようやくこちらを見たところで、苛立ちを包み隠さずそして苦々しく舌打ちする音が耳に届く。
「夫婦の語らいは他所でやれ」
前方に数十歩ほど離れた上座に位置する、王座のオルガノが頬杖をついて、軽く嘆息を漏らす。
オルガノもルーカスの思慕に気付いたらしい。
「……夫婦の語らいとは、いったい何の話でしょうか」
澄まし顔でルーカスが答える。
「この期に及んで城主の私に平気な顔で嘯くとは。相応の覚悟は出来ているのだろうな?」
「この期に及んで詮無いことをおっしゃるのは、陛下の真心と察せぬほど、私は愚か者ではないつもりです」
しかしとことん白を切り、惚けるルーカスに、オルガノは恨み言を吐き出すも、気を悪くしたわけではないようだ。その証拠に不機嫌を露にしているものの、すっかり毒気を抜かれて、半ば呆れ顔でルーカスを見ている。
「なればこそ、私はその先にある答えについて怖れるのを止めましょう」
野放図なオルガノに気圧されることなく、自己欺瞞に陥るでもなく、ルーカスはどこまでも信じ切って笑う。
透き通るような美しさだった。
その希少性に気付いた控えの者たちが、己の妻に惹かれるのをラーティは目の当たりにする。
「まったく、お前ほど危険な男はそういない」
そんなルーカスを、オルガノは開かれた青の両眼で見つめ、穏やかな表情を浮かべている。
ラーティの知らぬ時代を共に生きてきた二人の、確かな絆が垣間見えた時だった。
「答えるのが筋だと、先に示してきたのはお前だ。これから話す異聞にお前がどう反応しようとも、私は何ら責任を負わんぞ」
「ご随意になさればいい」
もはや一国の王と、その臣下の妻の会話に留まらない。これは完全に師弟の域にある者たちの会話だ。
後方に控えて、それを静観していた者たちはひたすらに驚き、茫然として二人の会話に聞き入っている。
二十年程前、ルーカスがオルガノと共に旅をした英雄であることは、誰もが知っている。けれど噂話の口伝えや古書などから得た文字の上だけの知識と、実際にその二人の会談を直に見聞きするのとでは、実感となって押し寄せる感情は前者の比ではない。
空と大地を結ぶ境界線のように、そこには確かに、切っても切れない鋼鉄の絆が存在しているのだから。
当時から現在まで続く二人の関係性の深さに、目撃した者たちは誰もが感銘を受けずにはおれなくなるのだ。
感慨深くも多くの衝撃にあって、張り詰めた空気がガラガラと音を立てて崩れ去っていく。
暖かな春風に吹かれるように、王の間には一旦穏やかな空気が流れ出した。ようやく機が熟したようだ。
「聡いお前ならば、前王が亡くなったのは二年前のあの日、お前が小屋からいなくなった時期だと言えば察しはつくか?」
話しながら、オルガノはゆっくりとした動作で、体をほぐすように背もたれに寄りかかる。
「まさか……話したのですか?」
ハッとするルーカスの顔を眺め見ながら、オルガノは続けた。
「セザン・フォリンの息子であるお前の行く末を見届けること。それが私が前王に課せた罰であった。その上で私がお前に何があったかを話した」
「っ!」
それでは、死刑宣告をしたも同然ではないか──
流石に驚きというよりショックの方が大きかったらしい。ルーカスの体が一瞬、視界がぐらりと揺らいだようになった。
「グランドキャッスルに向かったきり戻らないと話した翌日に、前王は亡くなっていた。ようやく役割を終えたというようにな。あれだけの大罪を犯した相手を、王城の地下牢でただのうのうと飼い殺すだけで、私が終わらせると本気で思っていたのか? 罪人には相応の報いが必要だ」
「だから処罰を与えたと?」
絞り出すような声だった。
ルーカスの発言を聞きながら、──いや、むしろ前王には生きるための理由として、それが必要だったのかもしれない。ラーティはそう直感した。
前王には何もなかったのだ。ルーカスの命一つで簡単に消えてしまうほどに。
ラスクールをオルガノに奪還されたその日、前王は一人王座にいた。臣下に見放され、頼るものはなく、誰も自身を王と呼ぶ者はいない。
恐ろしいほどの孤独と失意の中で、全てを失った前王には、生きる目的が何もなかったのだ。
墓標を気持ちの整理をするための拠り所とするように、多くの人が、心の拠り所となるモノを持っている。
対象は物でも人でも信仰でも、思い出でも、何であってもいい。ただ己が正しいと思える依存先として何かしらを選び、心のよすがとすることで、心の安定を図る。
依存先の数は多かれ少なかれ。心の内に抱く依存先のないまま、己の行動に確信を持って生きていける者は、そう多くないだろう。
何にも依存せず、何にも心を許さず生きることは、不可能に近い。
しかし、前王のように己の過去の行いを全て否定され、無意味なものだと本人が思い知ったのだとしたら? 価値を見出せるもののないまま、いったい何をよすがに生きればいい。
生きるよすがを失えば、多くの人は目的を失う。
たとえそれが罰だとしても、何かしらを自分自身に課さなければ生きていけないほど、心に深い傷を負い、弱っている者もいるのだ。
そうしなければ前王は生きられなかったのだろうことを、この眼前の王座に君臨する男は見抜いていた。そしておそらく、ルーカスもそれに気付いたのだろう。他人に心を砕く、優しい心根を持つ妻は、とても悲しい目をしていた。
ラーティはルーカスの生き様から目が離せなかった。
父親の手記から前王の内情を知るとはいえ、己の父親を極刑に処した相手にすら、そのような感情を抱けるのか。
そんな歪で不完全な人間らしいあり方は、どこか矛盾している。
ゆえに人は、不完全な生き物に自己を投影し、惹かれずにはおれないのかもしれない。
25
お気に入りに追加
7,327
あなたにおすすめの小説
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。