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番外編
⑤ウサちゃん!-Ⅱ
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そうして抱き上げて膝上に下ろしてからその華奢な身体を両腕に閉じ込めたら、エルフリーデは傍目からもハッキリと分かるくらいに狼狽えた。おろおろと取り乱して大混乱に陥って。どうしたらいいのか分からないと半ば涙目になりながら必死にジュードを見つめてくる。
「じゅ、ジュード……!? えっ!? あっあのっ……! ぁっなん、で……?」
身動いだ分だけジュードがエルフリーデを抱く手がどんどん強くなっていく。そうして強く胸元に抱き締めて閉じ込められて、エルフリーデは始めのうちはおどおどと怯えるような仕草で何度も瞬きを繰り返していた。
ジュードにもエルフリーデが今、「どうしよう?」と思っていること位なら分かる。そして最後の悪足掻きで、エルフリーデはジュードの服をキュッと握り締めてう~と目で訴えてきた。
「駄目だよ。離さない」
「ジュードっ!」
「どうして僕を試すようなことをしたのか、教えてくれるまで下ろさないよ?」
「──っ! やぁっ離してってばぁっ!」
再三の訴えも虚しく。ジュードは強い意志を宿した瞳でエルフリーデを見つめながら静かに首を横に振った。
無言で却下されてようやくエルフリーデは理解した。何を言ってもどれだけお願いしてもジュードが絶対に離してくれない事を。それが分かるとエルフリーデは渋々と声を落としながら悪態をついた。
「ジュードのいじわるっ! バカぁっ! ……もう、きらぃ……だもの……」
「リー分かったから少し落ち着いて……」
「やっ!」
エルフリーデはへにょんと次第に元気を無くしていく。そうしてうるうると涙ぐんだ瞳で見つめられると決心が揺らぐ。それでも離さないでいたらまた怒られた。
「ジュードきらいっ!」
「うん、分かったから、ね?」
よしよしとジュードが頭を撫でると、唇を尖らせてムーッと頬を膨らませながらも少しだけ大人しくなった。ブツブツとジュードの胸元で文句を延々呟いている。
幼い子供のように無邪気にそれもバニーガール姿であんまり可愛らしくエルフリーデが怒っているから、ジュードは苦笑して思わずその頬に手を当て互いの顔がくっつきそうな位近くまで顔を寄せた。その角度によって金にも見える茶色の大きな瞳を覗き込む。
「愛してる。僕がリーしか愛せないこと知ってるよね?」
「……そんなの知らないもの」
「そうなの?」
本当に? そう言って互いのおでこをコツンと合わせるとエルフリーデはそろそろと目線を上げた。
「好きだよ。愛してる」
そうして唇が触れ合う位の距離から涙に濡れて金色に光り輝いている大きな瞳を熱く情熱的に見つめてもエルフリーデは逃げなかった。怒っているはずなのに、心なしか嬉しそうに目を細めて同じように見つめ返してくるのは何故なのか。互いを求め合うような視線の交錯の最中にも、エルフリーデの陶器のように白い綺麗な肌が朱に染まるのを見てジュードは確信した。
「リー、もう怒ってない?」
「……怒ってなぃ」
「そっか、良かった。でも今日は全然話してくれないんだね。触れればこんなに可愛く反応してくれるのに……」
ピンク色に染まっているエルフリーデの頬に手を当ててもう一度、瞳の奥を覗き込む。期待に潤んだ瞳はハッキリとジュードが好きだと教えてくれるのに、エルフリーデは先程からずっとそれとは逆の言葉しか口にしてくれない。
「リー僕のこと好きだよね?」
「……うん」
「愛してる?」
「うん」
「僕もリーのこと誰よりも何よりも大切で愛しい女性だと思ってる。だからリーの考えてることを知りたいんだ。リーが僕に何をして欲しいのか教えてほしい。リーが望むことならちゃんと知りたいし、叶えたいって思ってる。だから教えてくれる? 今、リーは何を考えているの?」
「…………」
「そんなに話したくないの?」
「だって! ……だってぇジュード鈍いんだものぉ~」
「えっ?」
ふわーんとちょっとだけ半泣きになりながら手の甲で涙を拭う仕草が妙に可愛くて困る。
それにしても、鈍いとはいったい何の話だと聞こうとしたところで、エルフリーデがジュードの身体に手を回して抱きついてきた。それも甘えるように身体の力を抜いてジュードに寄り掛かり、ジュードの胸元にポテッと頭を預けて気持ちよさそうに目を瞑ってスリスリしてくる。
「リー? どうしたの? 急に甘えだしたりして」
嬉しいけど……
そう言うジュードの問いかけにも答えず、エルフリーデは更にジュードの唇に軽く唇で触れてくる。目を薄ら閉じて掠めるようなキスを繰り返す。ジュードがエルフリーデの行為に答えようと腰に手を回してしっとりと唇を深く重ねると、エルフリーデは大人しく唇を開いてジュードを受け入れた。
「……んっ」
キスが終った後もまだ甘え足りないのか。エルフリーデはジュードの背中に回している手に力を入れて上目遣いに見つめてくる。頬をピンク色に染めて、何かを伝えたいのかその花びらのように可憐な唇を躊躇いがちに半ば開けたり閉じたりしている。
けれどなかなか思い切りが付かず。結局何も言い出せなくて。エルフリーデは最後にまたちょっと涙ぐんで眉尻を下げた。
「リー?」
「…………」
「僕に何か言いたいことがあるんだよね?」
もう一度、優しい声色で尋ねると。エルフリーデはやっとといった様子でコクリと頷いた。
「じゅ、ジュード……!? えっ!? あっあのっ……! ぁっなん、で……?」
身動いだ分だけジュードがエルフリーデを抱く手がどんどん強くなっていく。そうして強く胸元に抱き締めて閉じ込められて、エルフリーデは始めのうちはおどおどと怯えるような仕草で何度も瞬きを繰り返していた。
ジュードにもエルフリーデが今、「どうしよう?」と思っていること位なら分かる。そして最後の悪足掻きで、エルフリーデはジュードの服をキュッと握り締めてう~と目で訴えてきた。
「駄目だよ。離さない」
「ジュードっ!」
「どうして僕を試すようなことをしたのか、教えてくれるまで下ろさないよ?」
「──っ! やぁっ離してってばぁっ!」
再三の訴えも虚しく。ジュードは強い意志を宿した瞳でエルフリーデを見つめながら静かに首を横に振った。
無言で却下されてようやくエルフリーデは理解した。何を言ってもどれだけお願いしてもジュードが絶対に離してくれない事を。それが分かるとエルフリーデは渋々と声を落としながら悪態をついた。
「ジュードのいじわるっ! バカぁっ! ……もう、きらぃ……だもの……」
「リー分かったから少し落ち着いて……」
「やっ!」
エルフリーデはへにょんと次第に元気を無くしていく。そうしてうるうると涙ぐんだ瞳で見つめられると決心が揺らぐ。それでも離さないでいたらまた怒られた。
「ジュードきらいっ!」
「うん、分かったから、ね?」
よしよしとジュードが頭を撫でると、唇を尖らせてムーッと頬を膨らませながらも少しだけ大人しくなった。ブツブツとジュードの胸元で文句を延々呟いている。
幼い子供のように無邪気にそれもバニーガール姿であんまり可愛らしくエルフリーデが怒っているから、ジュードは苦笑して思わずその頬に手を当て互いの顔がくっつきそうな位近くまで顔を寄せた。その角度によって金にも見える茶色の大きな瞳を覗き込む。
「愛してる。僕がリーしか愛せないこと知ってるよね?」
「……そんなの知らないもの」
「そうなの?」
本当に? そう言って互いのおでこをコツンと合わせるとエルフリーデはそろそろと目線を上げた。
「好きだよ。愛してる」
そうして唇が触れ合う位の距離から涙に濡れて金色に光り輝いている大きな瞳を熱く情熱的に見つめてもエルフリーデは逃げなかった。怒っているはずなのに、心なしか嬉しそうに目を細めて同じように見つめ返してくるのは何故なのか。互いを求め合うような視線の交錯の最中にも、エルフリーデの陶器のように白い綺麗な肌が朱に染まるのを見てジュードは確信した。
「リー、もう怒ってない?」
「……怒ってなぃ」
「そっか、良かった。でも今日は全然話してくれないんだね。触れればこんなに可愛く反応してくれるのに……」
ピンク色に染まっているエルフリーデの頬に手を当ててもう一度、瞳の奥を覗き込む。期待に潤んだ瞳はハッキリとジュードが好きだと教えてくれるのに、エルフリーデは先程からずっとそれとは逆の言葉しか口にしてくれない。
「リー僕のこと好きだよね?」
「……うん」
「愛してる?」
「うん」
「僕もリーのこと誰よりも何よりも大切で愛しい女性だと思ってる。だからリーの考えてることを知りたいんだ。リーが僕に何をして欲しいのか教えてほしい。リーが望むことならちゃんと知りたいし、叶えたいって思ってる。だから教えてくれる? 今、リーは何を考えているの?」
「…………」
「そんなに話したくないの?」
「だって! ……だってぇジュード鈍いんだものぉ~」
「えっ?」
ふわーんとちょっとだけ半泣きになりながら手の甲で涙を拭う仕草が妙に可愛くて困る。
それにしても、鈍いとはいったい何の話だと聞こうとしたところで、エルフリーデがジュードの身体に手を回して抱きついてきた。それも甘えるように身体の力を抜いてジュードに寄り掛かり、ジュードの胸元にポテッと頭を預けて気持ちよさそうに目を瞑ってスリスリしてくる。
「リー? どうしたの? 急に甘えだしたりして」
嬉しいけど……
そう言うジュードの問いかけにも答えず、エルフリーデは更にジュードの唇に軽く唇で触れてくる。目を薄ら閉じて掠めるようなキスを繰り返す。ジュードがエルフリーデの行為に答えようと腰に手を回してしっとりと唇を深く重ねると、エルフリーデは大人しく唇を開いてジュードを受け入れた。
「……んっ」
キスが終った後もまだ甘え足りないのか。エルフリーデはジュードの背中に回している手に力を入れて上目遣いに見つめてくる。頬をピンク色に染めて、何かを伝えたいのかその花びらのように可憐な唇を躊躇いがちに半ば開けたり閉じたりしている。
けれどなかなか思い切りが付かず。結局何も言い出せなくて。エルフリーデは最後にまたちょっと涙ぐんで眉尻を下げた。
「リー?」
「…………」
「僕に何か言いたいことがあるんだよね?」
もう一度、優しい声色で尋ねると。エルフリーデはやっとといった様子でコクリと頷いた。
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