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本編
40.結婚初夜
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──結婚まで大人しくしている約束をしてからあっという間に時は流れて。遂に手出しさせる期限の3ヶ月後が訪れた。
エルフリーデとジュードの結婚式は流石、公爵家と王家の縁を結ぶ挙式だけに惜しみない潤沢の資金を投入されたものとなり。大々的に執り行なわれるものとなった。千を越える見知らぬ参列者達に囲まれて沢山の「おめでとう」という掛け声に祝福されながら、エルフリーデは純白の花嫁衣装に身を包みバージンロードを歩んだ。そして誓いのキスと指輪の交換が行われて。エルフリーデとジュードは名実ともに夫婦と認められ。
そして今、王城にある離れの別邸で新婚初夜を迎えている──
エルフリーデとジュードは互いに向き合う格好で大きなベッドの上に座り込んでいた。が、エルフリーデの方が若干ジュードから距離を置くように離れて座っている。どうみても警戒している様子にジュードがくすくす笑っておいでと手招きした。
エルフリーデが着ている服はジュードを以前夜這いしたときのような薄布一枚(勝負下着:マリア見繕い済み)で。身体の隅々までしっかりとマリアに磨き上げられていた。胸元や首筋には上質な香油が塗られていて、時折ふわんと良い香りが漂ってくる。まるで花にでも包まれているような気分になるのはいいのだが。余計にこれから何をするのか意識してしまって、エルフリーデは気恥ずかしくてジュードと目を合わせられない。
そして対するジュードはというとツルツルとしたシルク素材のバスローブ一枚を着ただけの格好で。部屋の中はこれまたムードを出すために色とりどりの花々が散らされていて、いい匂いのするお香が炊かれている。明かりは蝋燭のみというシチュエーション。
セピア色の世界に空気の流れで動く蝋燭の炎、その陰りを帯びた明かりがチラチラとエルフリーデとジュードを照らしている。否が応でも妙に色っぽい雰囲気にさせられてしまう。
そして如何にもこれからそういうことをします。という演出の施された部屋は徹底して、ご丁寧にも細部に渡りそういう仕様の部屋にしっかりと出来上がっているから、奥手なエルフリーデにとってはむず痒くて仕方が無い。というより気まずいしどうしても引いてしまう。この部屋にいること自体が間違っているのではないかと思うくらいに、そわそわして落ち着かない。
おいでと優しく手招きされてもエルフリーデは近寄るどころか、胸元に申し分程度引っかかっている薄布を掻き抱くようにして何とか胸元を隠しながら、ジュードからもっと離れようと(逃げようと)していたところでジュードに核心を突かれてしまった。
「もしかしてリー、僕に抱かれるの怖いと思ってる? というか……逃げようとしてる?」
「えっとぉ~その、ね。だってあのジュードがわたしにそう言う意味で触るときってちょっと怖いし……わたしまだこのままでもいいかな、何て思ったりして……」
「リー、何言ってるの? 今までのは軽く摘まんだ程度でまだ全然本番じゃないんだけど」
ジュードはニッコリと笑って手招きしても警戒して近づいてこないエルフリーデの腕をガッチリ掴んでグイッと引っ張った。絶対に逃がさないと天使のように綺麗な顔に笑顔を浮かべながらジュードはエルフリーデを腕の中に引き入れる。
普段触れているときよりも互いに着ている服が薄布のせいか、ジュードの身体の厚みをいつもよりハッキリと感じてしまい顔が真っ赤になる。思っていたよりも逞しい身体付きにエルフリーデは大慌てで離れようとするも、それをジュードは許さなかった。
「じゅ、ジュードぉ!? あ、でもね? わたしまだ心の準備が……」
「それこそ何言ってるのかな? 人の部屋に勝手に入って夜這いまで仕掛けた人が」
「……うっ、そ、それはそうなんだけど。なんかジュードやっぱり怖いし……」
「怖い僕は嫌い? 優しくない僕は愛してない?」
「あっ、ううん、違うのそう言う意味じゃないの! 嫌いじゃないし愛してる。どんなジュードでもわたしは好きよ? でもね、それとこれとは別というか……それにまだジュードの怪我治ってないのに、その……して本当に大丈夫なの? やっぱりちゃんと治ってからにした方が……」
「それこそ冗談じゃないよ。初夜に妻に手を出さない夫が何処にいるの?」
「そ、そうよね……でもっあのね。やっぱりジュードの身体心配だし……」
「前にも言ったけどこの位平気だよ。多少痛むけど、普段からそれなりに鍛えてはいるからね。どうってことない。それよりも僕にとっては怪我なんかでリーに触れられない方がよっぽど辛いんだけど」
一向に心を開こうとしないエルフリーデにジュードは溜息を付いてそれからベッドに備え付けられているサイドテーブルの引き出しから何かを取り出した。
「ああそうだ、リーはこの花の由来が何なのか知ってる?」
徐に取り出したそれは真っ白な輝く大輪。白かと思ったら動かすと虹色に輝く花びらの一つ一つに金色の鱗粉が薄らとかかっていてまるで宝石のようだ。
「……ジュードっ!? それ幻の花じゃない!? どうしたのそれっ? ってまさか……」
「もちろん祭事で優勝したんだよ」
サラッと何でも無いことのようにすごいことを言われてエルフリーデはほんの一瞬、息が止まった。
「……そう、よね。だってそれ……優勝商品、だし……」
エルフリーデには怪我を治すためにも大人しくしていろと言っておきながら、自分も怪我してる癖にエルフリーデに内緒でこっそり出場して。挙げ句、軽く優勝までしてしまう辺り本当に油断できない。隙のない人だ。そう思いながらも大人なジュードのやんちゃな一面が垣間見れたような気がしてほんわか心が和んでいく。そうして少しずつ緊張が薄れていくのを感じながらエルフリーデはジュードの胸元にそっと身体を預けた。
エルフリーデとジュードの結婚式は流石、公爵家と王家の縁を結ぶ挙式だけに惜しみない潤沢の資金を投入されたものとなり。大々的に執り行なわれるものとなった。千を越える見知らぬ参列者達に囲まれて沢山の「おめでとう」という掛け声に祝福されながら、エルフリーデは純白の花嫁衣装に身を包みバージンロードを歩んだ。そして誓いのキスと指輪の交換が行われて。エルフリーデとジュードは名実ともに夫婦と認められ。
そして今、王城にある離れの別邸で新婚初夜を迎えている──
エルフリーデとジュードは互いに向き合う格好で大きなベッドの上に座り込んでいた。が、エルフリーデの方が若干ジュードから距離を置くように離れて座っている。どうみても警戒している様子にジュードがくすくす笑っておいでと手招きした。
エルフリーデが着ている服はジュードを以前夜這いしたときのような薄布一枚(勝負下着:マリア見繕い済み)で。身体の隅々までしっかりとマリアに磨き上げられていた。胸元や首筋には上質な香油が塗られていて、時折ふわんと良い香りが漂ってくる。まるで花にでも包まれているような気分になるのはいいのだが。余計にこれから何をするのか意識してしまって、エルフリーデは気恥ずかしくてジュードと目を合わせられない。
そして対するジュードはというとツルツルとしたシルク素材のバスローブ一枚を着ただけの格好で。部屋の中はこれまたムードを出すために色とりどりの花々が散らされていて、いい匂いのするお香が炊かれている。明かりは蝋燭のみというシチュエーション。
セピア色の世界に空気の流れで動く蝋燭の炎、その陰りを帯びた明かりがチラチラとエルフリーデとジュードを照らしている。否が応でも妙に色っぽい雰囲気にさせられてしまう。
そして如何にもこれからそういうことをします。という演出の施された部屋は徹底して、ご丁寧にも細部に渡りそういう仕様の部屋にしっかりと出来上がっているから、奥手なエルフリーデにとってはむず痒くて仕方が無い。というより気まずいしどうしても引いてしまう。この部屋にいること自体が間違っているのではないかと思うくらいに、そわそわして落ち着かない。
おいでと優しく手招きされてもエルフリーデは近寄るどころか、胸元に申し分程度引っかかっている薄布を掻き抱くようにして何とか胸元を隠しながら、ジュードからもっと離れようと(逃げようと)していたところでジュードに核心を突かれてしまった。
「もしかしてリー、僕に抱かれるの怖いと思ってる? というか……逃げようとしてる?」
「えっとぉ~その、ね。だってあのジュードがわたしにそう言う意味で触るときってちょっと怖いし……わたしまだこのままでもいいかな、何て思ったりして……」
「リー、何言ってるの? 今までのは軽く摘まんだ程度でまだ全然本番じゃないんだけど」
ジュードはニッコリと笑って手招きしても警戒して近づいてこないエルフリーデの腕をガッチリ掴んでグイッと引っ張った。絶対に逃がさないと天使のように綺麗な顔に笑顔を浮かべながらジュードはエルフリーデを腕の中に引き入れる。
普段触れているときよりも互いに着ている服が薄布のせいか、ジュードの身体の厚みをいつもよりハッキリと感じてしまい顔が真っ赤になる。思っていたよりも逞しい身体付きにエルフリーデは大慌てで離れようとするも、それをジュードは許さなかった。
「じゅ、ジュードぉ!? あ、でもね? わたしまだ心の準備が……」
「それこそ何言ってるのかな? 人の部屋に勝手に入って夜這いまで仕掛けた人が」
「……うっ、そ、それはそうなんだけど。なんかジュードやっぱり怖いし……」
「怖い僕は嫌い? 優しくない僕は愛してない?」
「あっ、ううん、違うのそう言う意味じゃないの! 嫌いじゃないし愛してる。どんなジュードでもわたしは好きよ? でもね、それとこれとは別というか……それにまだジュードの怪我治ってないのに、その……して本当に大丈夫なの? やっぱりちゃんと治ってからにした方が……」
「それこそ冗談じゃないよ。初夜に妻に手を出さない夫が何処にいるの?」
「そ、そうよね……でもっあのね。やっぱりジュードの身体心配だし……」
「前にも言ったけどこの位平気だよ。多少痛むけど、普段からそれなりに鍛えてはいるからね。どうってことない。それよりも僕にとっては怪我なんかでリーに触れられない方がよっぽど辛いんだけど」
一向に心を開こうとしないエルフリーデにジュードは溜息を付いてそれからベッドに備え付けられているサイドテーブルの引き出しから何かを取り出した。
「ああそうだ、リーはこの花の由来が何なのか知ってる?」
徐に取り出したそれは真っ白な輝く大輪。白かと思ったら動かすと虹色に輝く花びらの一つ一つに金色の鱗粉が薄らとかかっていてまるで宝石のようだ。
「……ジュードっ!? それ幻の花じゃない!? どうしたのそれっ? ってまさか……」
「もちろん祭事で優勝したんだよ」
サラッと何でも無いことのようにすごいことを言われてエルフリーデはほんの一瞬、息が止まった。
「……そう、よね。だってそれ……優勝商品、だし……」
エルフリーデには怪我を治すためにも大人しくしていろと言っておきながら、自分も怪我してる癖にエルフリーデに内緒でこっそり出場して。挙げ句、軽く優勝までしてしまう辺り本当に油断できない。隙のない人だ。そう思いながらも大人なジュードのやんちゃな一面が垣間見れたような気がしてほんわか心が和んでいく。そうして少しずつ緊張が薄れていくのを感じながらエルフリーデはジュードの胸元にそっと身体を預けた。
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