手出しさせてやろうじゃないの! ~公爵令嬢の幼なじみは王子様~

薄影メガネ

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本編

33.かけがえのない存在

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 エルフリーデの告白を聞いてジュードはエルフリーデの華奢な身体をグイッと抱き寄せ顔を上向かせると、その可憐な花びらのような形をした唇を覆うように自らの唇を重ねた。そうして奪うように深くジュードはエルフリーデに口づけた。

「ふぁっ……」

 小さく声を上げてエルフリーデはジュードの着ている服をギュッと握り締める。そうしてジュードの強い抱擁と口づけに始めは必死に耐えて身体を硬くしていたエルフリーデが、次第に肩の力を抜いて身を任せるようにジュードの腕の中に身体を預けてきた。
 無抵抗にジュードをそのまま受け入れてくれたエルフリーデが愛しくて、ジュードはエルフリーデのチョコレートを連想させるふわふわの栗色の髪ごと肩を掴んでさらに強く抱き寄せた。き抱くようにエルフリーデの身体にまわされた手がエルフリーデの服にしわを作り。華奢なエルフリーデの細腰をきしませる。

「……っ!」

 その力強さに一瞬ビックリしてエルフリーデは身体を強張らせたけれど、ギシッと弓なりに身体を反らしたエルフリーデの身体が壊れそうなくらい強く抱き締めても、エルフリーデは無抵抗のまま逃げずに大人しくジュードの腕の中に収まっている。エルフリーデが本当にジュードを受け入れているのが分かって、ジュードは口づけたまま静かに息を吐き出した。

 互いの唇を合わせながらゆっくりとエルフリーデの身体をベッドに横たえて組み敷いて、それからそっと唇を離す。トサッとベッドの上に寝かされたエルフリーデは、頬を赤く染めて息も絶え絶えにとろんと目を潤ませながら見下ろすジュードを見つめ返している。互いの息がかかるくらい近くに顔を近づけ見つめ合いながら、ジュードは唇をエルフリーデのものに何度も落として息つく暇もないくらい何度も唇を重ねた。

 少しだけ唇を離すとエルフリーデのあえぐように半ば開かれた可憐な唇が、ジュードのものに触れた摩擦で赤くなっているのが分かる。唾液で濡れてしっとりと湿った甘く柔らかい感触のそこへもう一度唇を重ねながらエルフリーデの両手を掴んでベッドに縫い付ける。抱き締めるように身体を重ねて体重を下ろすとエルフリーデが「……ぁっ」と戸惑いの声を出してくすぐったそうに身動みじろいだ。

「……リー、本当に怖くないの? 僕が手を出そうと近付いたときは逃げたのに。今は逃げなくてもいいの?」
「ジュードのいじわる……」

 重ねた唇をわずかに離して、互いの唇が触れるか触れないかのギリギリの距離からジュードが意地の悪い質問をすると。エルフリーデは恥ずかしそうに目を潤ませて泣きそうな顔をした。ジュードの意地悪な質問に怒って唇をとがらせると、ねてプイッと横を向いてしまった。

「ごめん、リーがあんまり可愛い反応をするからつい意地悪したくなっちゃったんだ。謝るからこっちを向いてくれないかな?」
「いやっ」
 
 頬を赤く染めてキュッと目をつむり、そうしてジュードを拒絶するエルフリーデの頬に優しく手を当てると、エルフリーデは少しだけそろそろと目を開いて迷うような表情を見せた。

「リー、ごめんね。もう意地悪しないから。こっちを向いて?」
「…………」
「もしかして僕に触られるのが恥ずかしいの?」
「…………」
「どうして答えてくれないの? リー……?」

 ジュードがその可愛らしい頬をでながら謝罪しても、益々ますます身を縮こませて思い詰めたように顔を真っ赤にしてギュッとまた目を強くつむってしまった。ジュードがかたくななエルフリーデの心を溶かすように優しく頬や額にキスを繰り返すと、やっとエルフリーデは様子をうかがうように少しだけジュードに視線を戻した。
 その様子はまるで警戒心の強い小動物のようだ。近づいてきたと思ったらすぐ警戒して逃げられて。捕まえていないとすぐに姿を見失ってしまう。そんなとらえどころのない小動物を相手にしている感覚に苦笑しながら。ジュードはエルフリーデに愛しい視線を注ぐ。

 かつて神童と呼ばれ、エルトリア公国、法定継承順位第1位の公子であり、手に入らないモノなど何もないと言っても過言ではない位に事実上の地位と権力と財力と……全てを持ち合わせた王子のジュードが、ここまで一人の女性に苦戦をいられている。それがどんなにすごいことなのかをこの腕の中にいる幼なじみの少女は知らない。純粋でただ一途いちずにジュードを慕っているだけの感情を常に向けられているのは心地良い。だからこそかけがえのない愛しい存在だった。
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