26 / 58
本編
24.長いキス
しおりを挟む
ジュードはエルフリーデと出会ってからずっと、エルフリーデの傍にいて観察し、見守って、その純粋な心を守り続けた。そんなに慎重に事を進めてきたというのに。今回エルフリーデにしでかした自分の失態に、そのいつになく余裕を無くして軽率すぎる行いをした自身に呆れながら、どうすればエルフリーデが自分を受け入れてくれるのかをジュードは考えていた。
そして先程した強引なキスで放心状態になってしまったエルフリーデが、ジュードを拒絶しないかどうか知りたかった。それを確かめなければとてもこのままエルフリーデを家に帰すことなんて出来ない。不安で胸が押し潰されそうなくらいジュードは追い詰められていた。
「ねえ、リー……1ついいかな?」
「なあに? わたしに出来ることならいって? 難しいことでもちゃんと協力するから」
黙っている間も苦悶の表情を浮かべているジュードに気が気でないエルフリーデは一も二もなく答えた。
「もう一度、リーにキスしてもいい? リーに触ってもいい?」
「ジュード……?」
突然ジュードに触れる許可を求められて何を言い出したのかとエルフリーデはビックリして大きな茶色の瞳を二、三度瞬いた。どうしたんだろう? としきりにジュードを不思議そうな顔で見て、それから返事の代わりにエルフリーデは自らジュードに近付いてきた。おそるおそると言うよりもとにかくジュードが心配で、でもどうしたらいいのか分からない様子で。困惑して、戸惑いながらも何とか落ち込んでいる主人を必死に慰めようとする子犬のようにエルフリーデはジュードに触れてきた。
エルフリーデはジュードの首筋に手を回してジュードをそっと引き寄せると、始めは頬にそして目蓋にと、その柔らかい唇をジュードの顔のいたるところに次々と優しく押し当てて沢山のキスを降り注いでいく。
怪我をして痛がっている子供にするように、大丈夫だよとエルフリーデはジュードを自身の懐に受け入れて、ジュードの心を守る為に優しいキスと包容で癒していく。
慰めるようにキスの雨を降り注いで最後に少しためらってから、エルフリーデは遠慮がちにジュードの唇に唇を重ねてきた。ジュードが嫌がるんじゃないかとエルフリーデが大人の舌をからめるキスを遠慮しているのが分かって、ジュードはエルフリーデの口を優しく開かせて舌を差し入れた。
一瞬だけビクついて身体を強張らせたもののエルフリーデは逃げない。いいのかな? とおそるおそるエルフリーデはジュードの舌に応えて舌をからませてきた。まるで臆病な小動物を相手にしているような感覚に苦笑しつつ、エルフリーデがジュードを拒絶しなかったことにホッとしてようやく少し心の平安を取り戻せたことにジュードは胸を撫で下ろす。
これ以上怖がらせないように優しく唇を重ねながらジュードはエルフリーデを胸元に引き寄せた。ジュードの舌に応えようとして必死に口を開けるエルフリーデのその健気な様子が、ジュードにはあまりにも愛おし過ぎておかしくなりそうで。けれど危なくエルフリーデにトラウマを植え付けるところだったと、ジュードはその危険性を思い出して自分の行動を恥じながら、心の中でチッと舌打ちして衝動に耐えた。
くそっ、こんなんじゃ結婚してもこれ以上手なんかとても出せない。出せたもんじゃないぞ。
どうする? とジュードが悩む頭で口づけを続けていたら、エルフリーデが小さく身じろいだ。エルフリーデの身体から力が抜けていくのを感じでジュードはやっと唇を離した。互いの唾液が糸を引いてアーチ状に唇を繋ぐくらい深いキスを思えばかなり長い時間続けていた気がする。
「リーは昔からちょっとおてんばで気が強くて、……でも泣き虫だよね」
そうジュードに言われてもエルフリーデには答えられないようだった。何故なら先程のジュードの口づけがあまりにも長くて。今までした中でも一番、すごく長いキスのおかげで半ばのぼせるようにボーッと思考が回らない状態だったからだ。ほわんと微睡んだ色気のある表情で唾液に濡れて熱っぽく赤くなった唇を半開きに、頬をピンク色に染めながらとろんと警戒を解いた姿で、エルフリーデはただただジュードだけを見ていた。ジュード以外のモノは何も見えていないかのように。
そして、やがて離れたジュードの唇を物欲しそうな目でエルフリーデが見つめ始めた。
「……それにとっても甘えん坊だ」
優しくそう言ってジュードはエルフリーデの唇にもう一度唇を重ねた。
そして先程した強引なキスで放心状態になってしまったエルフリーデが、ジュードを拒絶しないかどうか知りたかった。それを確かめなければとてもこのままエルフリーデを家に帰すことなんて出来ない。不安で胸が押し潰されそうなくらいジュードは追い詰められていた。
「ねえ、リー……1ついいかな?」
「なあに? わたしに出来ることならいって? 難しいことでもちゃんと協力するから」
黙っている間も苦悶の表情を浮かべているジュードに気が気でないエルフリーデは一も二もなく答えた。
「もう一度、リーにキスしてもいい? リーに触ってもいい?」
「ジュード……?」
突然ジュードに触れる許可を求められて何を言い出したのかとエルフリーデはビックリして大きな茶色の瞳を二、三度瞬いた。どうしたんだろう? としきりにジュードを不思議そうな顔で見て、それから返事の代わりにエルフリーデは自らジュードに近付いてきた。おそるおそると言うよりもとにかくジュードが心配で、でもどうしたらいいのか分からない様子で。困惑して、戸惑いながらも何とか落ち込んでいる主人を必死に慰めようとする子犬のようにエルフリーデはジュードに触れてきた。
エルフリーデはジュードの首筋に手を回してジュードをそっと引き寄せると、始めは頬にそして目蓋にと、その柔らかい唇をジュードの顔のいたるところに次々と優しく押し当てて沢山のキスを降り注いでいく。
怪我をして痛がっている子供にするように、大丈夫だよとエルフリーデはジュードを自身の懐に受け入れて、ジュードの心を守る為に優しいキスと包容で癒していく。
慰めるようにキスの雨を降り注いで最後に少しためらってから、エルフリーデは遠慮がちにジュードの唇に唇を重ねてきた。ジュードが嫌がるんじゃないかとエルフリーデが大人の舌をからめるキスを遠慮しているのが分かって、ジュードはエルフリーデの口を優しく開かせて舌を差し入れた。
一瞬だけビクついて身体を強張らせたもののエルフリーデは逃げない。いいのかな? とおそるおそるエルフリーデはジュードの舌に応えて舌をからませてきた。まるで臆病な小動物を相手にしているような感覚に苦笑しつつ、エルフリーデがジュードを拒絶しなかったことにホッとしてようやく少し心の平安を取り戻せたことにジュードは胸を撫で下ろす。
これ以上怖がらせないように優しく唇を重ねながらジュードはエルフリーデを胸元に引き寄せた。ジュードの舌に応えようとして必死に口を開けるエルフリーデのその健気な様子が、ジュードにはあまりにも愛おし過ぎておかしくなりそうで。けれど危なくエルフリーデにトラウマを植え付けるところだったと、ジュードはその危険性を思い出して自分の行動を恥じながら、心の中でチッと舌打ちして衝動に耐えた。
くそっ、こんなんじゃ結婚してもこれ以上手なんかとても出せない。出せたもんじゃないぞ。
どうする? とジュードが悩む頭で口づけを続けていたら、エルフリーデが小さく身じろいだ。エルフリーデの身体から力が抜けていくのを感じでジュードはやっと唇を離した。互いの唾液が糸を引いてアーチ状に唇を繋ぐくらい深いキスを思えばかなり長い時間続けていた気がする。
「リーは昔からちょっとおてんばで気が強くて、……でも泣き虫だよね」
そうジュードに言われてもエルフリーデには答えられないようだった。何故なら先程のジュードの口づけがあまりにも長くて。今までした中でも一番、すごく長いキスのおかげで半ばのぼせるようにボーッと思考が回らない状態だったからだ。ほわんと微睡んだ色気のある表情で唾液に濡れて熱っぽく赤くなった唇を半開きに、頬をピンク色に染めながらとろんと警戒を解いた姿で、エルフリーデはただただジュードだけを見ていた。ジュード以外のモノは何も見えていないかのように。
そして、やがて離れたジュードの唇を物欲しそうな目でエルフリーデが見つめ始めた。
「……それにとっても甘えん坊だ」
優しくそう言ってジュードはエルフリーデの唇にもう一度唇を重ねた。
0
お気に入りに追加
1,663
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない
かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」
婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。
もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。
ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。
想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。
記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…?
不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。
12/11追記
書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。
たくさんお読みいただきありがとうございました!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる