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本編
21.思い込み
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エルフリーデは言ってはいけないことを公然と言い放ち。プイッと横を向いた。
ジュードにベッドの上へ引っ張られて首筋に剣を突きつけられてからずっと。エルフリーデはジュードに言われた通り大人しくそのままの位置でジュードが救急箱を手に帰って来るまで待機していた。だから当然今も同じ位置でベッドの上に両膝を付けてペタンと座り込んだまま、あられもない格好に構わずプクッと頬を膨らませている。そうして怒りながら自分のことにばかりかまけていたから気付いていなかった。ジュードの変化に。
「へえ、そうなんだ」
ギシッとベッドが軋む音がして、ベッドの上が揺れる感覚にえっ? と振り向くと唇が触れ合うくらいにジュードの顔が傍にあって、その近すぎる距離感に驚いてエルフリーデは反射的に身を引いた。
「な、なによっ! なんでそんな近寄ってくるの?」
「だってリーが言ったんじゃないか、手を出さない僕が全部悪いって」
「だったらなんなのよっ? 今喧嘩中なのにどうしてそんなに近づいてくるの? わたし、ジュードが何を考えてるのかサッパリわからな……──えっ? あの……」
エルフリーデの無体な言動。それに顔色を一つ変えずにジュードがニッコリと笑って、話をしている最中も顔に作り物のような笑顔を張り付かせながらエルフリーデに近づいてくる。その笑顔が怖くて寒気のような何かを感じたエルフリーデが、後ろ手に這うように後退して逃げるのをジュードは逃さなかった。
「あっ! ジュードぃやぁっ」
ドサッとベッドにエルフリーデを押し倒して、その小さな花びらのように可憐な形の生意気な唇に、ジュードは深々と自身のものを重ねた。そして続けて上げようとした悲鳴ごと塞ぎきってしまう。身動きできないようにエルフリーデの身体に覆い被さり、互いの指と指とをからめてエルフリーデの両手をベッドに押さえつけながら、大人のキスに慣れていないエルフリーデが息も出来ないくらいに激しくその唇を奪うと、エルフリーデは口腔内を逃げ惑った。
逃げるエルフリーデの舌を追い込んでからめて、吸い上げるように無理矢理引きずり出す。そうして戸惑いと困惑の中にいる婚約者の唇を奪うことに夢中になっていたら、やがてエルフリーデが大人しく動かなくなったことに気付いて、ジュードはようやく唇をエルフリーデから離した。
「リー?」
「…………」
「どうしたの?」
放心したようにボーッと涙ぐんだ瞳で口を半開きにして動かなくなったエルフリーデの様子がどうにもおかしい。ジュードがエルフリーデの頬を撫でて、その乾ききっていない目尻に溜まっている涙を指先で優しく拭うと、エルフリーデがその角度によっては金にも見える茶色の大きな瞳にまたジワジワと涙を溜め込みながらジュードをようやく視界に捉えた。そして悲しそうに目を細めてエルフリーデはかろうじて聞き取れるくらいの小さな声でボソリと心細げに呟いた。
「……ジュード、わたしのこと嫌いになった?」
「リー? 何を言ってるの? そんなわけな……」
「他の男の子たちみたいにジュードもわたしのこといらないの?」
「リー? 何をいって……」
「ジュードもわたしのこといらない?」
乱暴に扱われることに慣れていないエルフリーデにはそれがショックで怖くて、どうしていいか分からなかった。だから優しいジュードにそうされてしまったのはきっと嫌われてしまったからだとエルフリーデは思い込んでいた。
ジュードにベッドの上へ引っ張られて首筋に剣を突きつけられてからずっと。エルフリーデはジュードに言われた通り大人しくそのままの位置でジュードが救急箱を手に帰って来るまで待機していた。だから当然今も同じ位置でベッドの上に両膝を付けてペタンと座り込んだまま、あられもない格好に構わずプクッと頬を膨らませている。そうして怒りながら自分のことにばかりかまけていたから気付いていなかった。ジュードの変化に。
「へえ、そうなんだ」
ギシッとベッドが軋む音がして、ベッドの上が揺れる感覚にえっ? と振り向くと唇が触れ合うくらいにジュードの顔が傍にあって、その近すぎる距離感に驚いてエルフリーデは反射的に身を引いた。
「な、なによっ! なんでそんな近寄ってくるの?」
「だってリーが言ったんじゃないか、手を出さない僕が全部悪いって」
「だったらなんなのよっ? 今喧嘩中なのにどうしてそんなに近づいてくるの? わたし、ジュードが何を考えてるのかサッパリわからな……──えっ? あの……」
エルフリーデの無体な言動。それに顔色を一つ変えずにジュードがニッコリと笑って、話をしている最中も顔に作り物のような笑顔を張り付かせながらエルフリーデに近づいてくる。その笑顔が怖くて寒気のような何かを感じたエルフリーデが、後ろ手に這うように後退して逃げるのをジュードは逃さなかった。
「あっ! ジュードぃやぁっ」
ドサッとベッドにエルフリーデを押し倒して、その小さな花びらのように可憐な形の生意気な唇に、ジュードは深々と自身のものを重ねた。そして続けて上げようとした悲鳴ごと塞ぎきってしまう。身動きできないようにエルフリーデの身体に覆い被さり、互いの指と指とをからめてエルフリーデの両手をベッドに押さえつけながら、大人のキスに慣れていないエルフリーデが息も出来ないくらいに激しくその唇を奪うと、エルフリーデは口腔内を逃げ惑った。
逃げるエルフリーデの舌を追い込んでからめて、吸い上げるように無理矢理引きずり出す。そうして戸惑いと困惑の中にいる婚約者の唇を奪うことに夢中になっていたら、やがてエルフリーデが大人しく動かなくなったことに気付いて、ジュードはようやく唇をエルフリーデから離した。
「リー?」
「…………」
「どうしたの?」
放心したようにボーッと涙ぐんだ瞳で口を半開きにして動かなくなったエルフリーデの様子がどうにもおかしい。ジュードがエルフリーデの頬を撫でて、その乾ききっていない目尻に溜まっている涙を指先で優しく拭うと、エルフリーデがその角度によっては金にも見える茶色の大きな瞳にまたジワジワと涙を溜め込みながらジュードをようやく視界に捉えた。そして悲しそうに目を細めてエルフリーデはかろうじて聞き取れるくらいの小さな声でボソリと心細げに呟いた。
「……ジュード、わたしのこと嫌いになった?」
「リー? 何を言ってるの? そんなわけな……」
「他の男の子たちみたいにジュードもわたしのこといらないの?」
「リー? 何をいって……」
「ジュードもわたしのこといらない?」
乱暴に扱われることに慣れていないエルフリーデにはそれがショックで怖くて、どうしていいか分からなかった。だから優しいジュードにそうされてしまったのはきっと嫌われてしまったからだとエルフリーデは思い込んでいた。
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