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本編
14.作戦再開
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もっと欲しいな……と、エルフリーデが物欲しそうな目で、離れたジュードの唾液に濡れた色っぽい唇を見つめていたら。ジュードにおでことおでこをコツンとされて、目でこれ以上は駄目だよと制止をかけられてしまった。
「どうしてもダメ?」
「うん、どうしても」
「どうして?」
「僕が我慢できなくなりそうだからね」
「我慢、してるの?」
「してないと思うの? 好きな人が僕を誘惑するために下着姿で顔を真っ赤にしながら来てくれて、それもキスして欲しいって目で今も見られてるのに」
もしそれがジュードの本心だとしたらこれはチャンスだとエルフリーデは考えた。ジュードに深くキスされたことで、そしてジュードの言葉を聞いてしまったことで、諦めかけていた気持ちが浮上する。エルフリーデの抑え込んでいた気持ちにジュードの言葉が拍車を掛けてしまった。
外套の繋ぎ目にあるボタンを外して、マリアが用意してくれた破廉恥(勝負服)な格好を見せれば、もしかしたら今ならジュードが手を出してくれるかも知れない。そう期待してしまうくらいに、エルフリーデは切実な思いに駆られていた。
そして、抱き締められていて手元がジュードから見えないのをいいことに、エルフリーデは外套のボタンを外し始めた。俯きがちにさりげなく手元を隠しながら、ジュードの胸元でもぞもぞとぎこちなく動いているエルフリーデの姿は、まるで小動物が寝心地の良い場所取り(ポジション取り)をしているのに似ている。
普段からエルフリーデがおてんばなことを知っているジュードは、自分の胸元で先程からずっとエルフリーデが落ち着かない様子でごそごそしていてもあまり気にしてなさそうだ。そのぎこちない姿すらも愛おしいと言うように、口元には微笑みすら浮かべてジュードは絶えず優しく穏やかな視線をエルフリーデに注ぎ続けているのに。エルフリーデはその視線に気付かない。自分のことで精一杯でその視線の意味にまるで気が付いていなかった。
一方のジュードも、こそこそとエルフリーデが自分の腕の中で企みを進行していることに気付かず。結婚するまで手を出さないと言った言葉を、エルフリーデが純粋に信じて大人しくしてくれているものと思っていた。だからエルフリーデが準備万端に整ったところで、ようやく異変に気が付いた。
気付いたときには顔色を変えて慌ててエルフリーデの身体を引き剥がしたけれど、もう遅い。外套のボタンは全て綺麗に外された後で、それもその奥に先程まで厳重に隠されていた薄布が外套の繋ぎ目の間からヒラヒラと顔を見せている。脱ぐ寸前。それもかなりギリギリのところだった。
「ちょっとリー!? 何してるの!」
「もちろん、これからジュードを誘惑するのよ?」
先程までの恥ずかしがりようはどこへ行ったのやら。悪い? とまったく反省した様子もなくエルフリーデは動揺して油断しきっていたジュードを、体当たりするように思いっきりドンッと全体重をかけてソファーの上に押し倒した。ボスっとソファーに埋まったジュードの綺麗な身体の上にエルフリーデはそのままの勢いに任せて跨がり。ジュードの動きを封じることに何とか成功した。
「リー!? 駄目だよっ! 何やってるの!?」
自分のしていることが分かっているのかと、ジュードが再度制止の声を上げた。
「分かってるわよ。でもこうでもしないとジュードはわたしのこと見てくれないんだもの」
「見てるよ。僕はちゃんとリーのこと見てる。だからリーはこんなことしちゃ駄目だっ!」
そう言われてもどうしても納得出来ない部分がエルフリーデにはあった。ずっと引っかかっていたジュードへの疑問。それがどうしても抑えられなくてエルフリーデは感情的にその抱えていた思いを吐き出していた。
「嘘つき! 本当にわたしのことが好きならけじめなんて関係なく抱きたいって思うでしょ? そうしてくれないのはわたしのことまだ欲しいって思うほど好きじゃないからなんでしょ? 我慢できる程度にしか見てないってそういうことなんでしょ……? 恋愛ってそういうものだって同年代の子達が話してるの聞いてわたしだってちゃんと知ってるもの!」
興奮したせいなのか。涙がボロボロと零れて止まらなくなる。ジュードもやっぱり他の男の子達みたいにエルフリーデのことがいらないってそう思ってしまったのかもしれない。おてんばなエルフリーデに呆れて、興味を無くしてしまったのかもしれない。
そして、面倒だから色々と理由を作ってエルフリーデを遠ざけたかったのかもしれない。だからジュードは大人になるに従ってエルフリーデに触れなくなったのではないかと、本当は心の中でずっと怖かった部分がこんな時に限ってひょっこりと顔を出す。
思っていた以上にエルフリーデの中では、幼い頃に受けた男の子達の仕打ちが根深く傷として残っていたらしい。昔のことを繰り返し思い出して、それとジュードとを重ね合わせて、こんなに寂しくて悲しい気持ちになるなんて……と、エルフリーデ自身がビックリするくらいに。
そうしてボロボロと涙を零して泣いているエルフリーデにジュードが手を伸ばしてきた。ジュードに優しく頬を撫でられて、エルフリーデがハッとしたように動きを止めて緊張に息を呑む。
「違うよ。そうじゃないんだ。むしろ逆で……」
「やだっ! それ以上聞きたくない!」
「リーお願いだからちゃんと話を聞いて」
「いやっ!」
また口で上手く丸め込まれて誤魔化されたり、はぐらかされるのはもう嫌だった。だからジュードが繰り返す制止の声も振り切ってエルフリーデは外套を脱ぎ捨てた。そうしてエルフリーデが脱ぎ捨てた外套が床に落ちて皺を作る頃には、エルフリーデは肌の透けたエッチな勝負服姿をジュードの目に晒していた。
「お願い、もっとわたしを見て?」
「リー……」
エルフリーデの恋い焦がれる熱い思いをそのまま真っ向からぶつけられて驚きに目を見張るジュードに構わず、エルフリーデは薄い下着しか身につけていない身体をゆっくりとジュードの上に重ねた。そうして下にいるジュードの身体に体重を預けながら、ジュードの形の良い唇に自らの唇を押し当てる。放心しているジュードの唇にしっとりと唇を合わせて。エルフリーデは半ば強引に先程の口づけを再開した。
「どうしてもダメ?」
「うん、どうしても」
「どうして?」
「僕が我慢できなくなりそうだからね」
「我慢、してるの?」
「してないと思うの? 好きな人が僕を誘惑するために下着姿で顔を真っ赤にしながら来てくれて、それもキスして欲しいって目で今も見られてるのに」
もしそれがジュードの本心だとしたらこれはチャンスだとエルフリーデは考えた。ジュードに深くキスされたことで、そしてジュードの言葉を聞いてしまったことで、諦めかけていた気持ちが浮上する。エルフリーデの抑え込んでいた気持ちにジュードの言葉が拍車を掛けてしまった。
外套の繋ぎ目にあるボタンを外して、マリアが用意してくれた破廉恥(勝負服)な格好を見せれば、もしかしたら今ならジュードが手を出してくれるかも知れない。そう期待してしまうくらいに、エルフリーデは切実な思いに駆られていた。
そして、抱き締められていて手元がジュードから見えないのをいいことに、エルフリーデは外套のボタンを外し始めた。俯きがちにさりげなく手元を隠しながら、ジュードの胸元でもぞもぞとぎこちなく動いているエルフリーデの姿は、まるで小動物が寝心地の良い場所取り(ポジション取り)をしているのに似ている。
普段からエルフリーデがおてんばなことを知っているジュードは、自分の胸元で先程からずっとエルフリーデが落ち着かない様子でごそごそしていてもあまり気にしてなさそうだ。そのぎこちない姿すらも愛おしいと言うように、口元には微笑みすら浮かべてジュードは絶えず優しく穏やかな視線をエルフリーデに注ぎ続けているのに。エルフリーデはその視線に気付かない。自分のことで精一杯でその視線の意味にまるで気が付いていなかった。
一方のジュードも、こそこそとエルフリーデが自分の腕の中で企みを進行していることに気付かず。結婚するまで手を出さないと言った言葉を、エルフリーデが純粋に信じて大人しくしてくれているものと思っていた。だからエルフリーデが準備万端に整ったところで、ようやく異変に気が付いた。
気付いたときには顔色を変えて慌ててエルフリーデの身体を引き剥がしたけれど、もう遅い。外套のボタンは全て綺麗に外された後で、それもその奥に先程まで厳重に隠されていた薄布が外套の繋ぎ目の間からヒラヒラと顔を見せている。脱ぐ寸前。それもかなりギリギリのところだった。
「ちょっとリー!? 何してるの!」
「もちろん、これからジュードを誘惑するのよ?」
先程までの恥ずかしがりようはどこへ行ったのやら。悪い? とまったく反省した様子もなくエルフリーデは動揺して油断しきっていたジュードを、体当たりするように思いっきりドンッと全体重をかけてソファーの上に押し倒した。ボスっとソファーに埋まったジュードの綺麗な身体の上にエルフリーデはそのままの勢いに任せて跨がり。ジュードの動きを封じることに何とか成功した。
「リー!? 駄目だよっ! 何やってるの!?」
自分のしていることが分かっているのかと、ジュードが再度制止の声を上げた。
「分かってるわよ。でもこうでもしないとジュードはわたしのこと見てくれないんだもの」
「見てるよ。僕はちゃんとリーのこと見てる。だからリーはこんなことしちゃ駄目だっ!」
そう言われてもどうしても納得出来ない部分がエルフリーデにはあった。ずっと引っかかっていたジュードへの疑問。それがどうしても抑えられなくてエルフリーデは感情的にその抱えていた思いを吐き出していた。
「嘘つき! 本当にわたしのことが好きならけじめなんて関係なく抱きたいって思うでしょ? そうしてくれないのはわたしのことまだ欲しいって思うほど好きじゃないからなんでしょ? 我慢できる程度にしか見てないってそういうことなんでしょ……? 恋愛ってそういうものだって同年代の子達が話してるの聞いてわたしだってちゃんと知ってるもの!」
興奮したせいなのか。涙がボロボロと零れて止まらなくなる。ジュードもやっぱり他の男の子達みたいにエルフリーデのことがいらないってそう思ってしまったのかもしれない。おてんばなエルフリーデに呆れて、興味を無くしてしまったのかもしれない。
そして、面倒だから色々と理由を作ってエルフリーデを遠ざけたかったのかもしれない。だからジュードは大人になるに従ってエルフリーデに触れなくなったのではないかと、本当は心の中でずっと怖かった部分がこんな時に限ってひょっこりと顔を出す。
思っていた以上にエルフリーデの中では、幼い頃に受けた男の子達の仕打ちが根深く傷として残っていたらしい。昔のことを繰り返し思い出して、それとジュードとを重ね合わせて、こんなに寂しくて悲しい気持ちになるなんて……と、エルフリーデ自身がビックリするくらいに。
そうしてボロボロと涙を零して泣いているエルフリーデにジュードが手を伸ばしてきた。ジュードに優しく頬を撫でられて、エルフリーデがハッとしたように動きを止めて緊張に息を呑む。
「違うよ。そうじゃないんだ。むしろ逆で……」
「やだっ! それ以上聞きたくない!」
「リーお願いだからちゃんと話を聞いて」
「いやっ!」
また口で上手く丸め込まれて誤魔化されたり、はぐらかされるのはもう嫌だった。だからジュードが繰り返す制止の声も振り切ってエルフリーデは外套を脱ぎ捨てた。そうしてエルフリーデが脱ぎ捨てた外套が床に落ちて皺を作る頃には、エルフリーデは肌の透けたエッチな勝負服姿をジュードの目に晒していた。
「お願い、もっとわたしを見て?」
「リー……」
エルフリーデの恋い焦がれる熱い思いをそのまま真っ向からぶつけられて驚きに目を見張るジュードに構わず、エルフリーデは薄い下着しか身につけていない身体をゆっくりとジュードの上に重ねた。そうして下にいるジュードの身体に体重を預けながら、ジュードの形の良い唇に自らの唇を押し当てる。放心しているジュードの唇にしっとりと唇を合わせて。エルフリーデは半ば強引に先程の口づけを再開した。
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