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本編
12.いざ決行
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魅惑のボディーで誘惑スタイル(勝負服)と、マリアが主張するそれの正式名称は透け透けのネグリジェ(勝負下着)。つまりは服じゃない。を着用したまま、エルフリーデはその上に外套を羽織って王城を訪れていた。
絶対に外からそれが見えないように丈の長い外套を着て、王城までマリアに馬車で送ってもらった所まではよかった……。
エルフリーデはマリアが去った後、すぐに後悔した。何故ならこんな破廉恥(勝負服)な格好でそれも外套を羽織っただけで、王城内を出歩くなど相当に勇気のいることだったからだ。
「はうぅっ……もう帰りたいよぉマリア~」
まさか王城の正門付近を頼りない足取りでとぼとぼと歩きながら、もう嫌だと涙ぐんでメイドの名を呼ぶことになるとは。思い切りがよすぎただけに、あまりの情けなさに顔が火照ってひどく熱い。
それもこんな真っ赤な顔を通りすがりの人に見られたら何と思われるだろう? そう思ってエルフリーデが不審な視線を避けるべく、なるべく人がいない場所を選んで歩こうとしたところで天の助けが現れた。
「リー? どうしたの? 今日は王城に来るって言ってなかったよね?」
「……ジュっ、ジュードォ~~~~」
「えっ? なに? どうしたの? 何でそんな泣きそうな顔して……リー?」
エルフリーデの姿を見つけて近づいて来たジュードにエルフリーデは思わず抱きついてしまった。王子様らしく肩に肩章が装飾された正装姿で現れたジュードに抱きついたまま、この場でうわーんと子供のように泣きたくなる。
「とりあえず僕の部屋に行こうか? 話はそこで聞くけど、いい?」
ジュードは何かを察してくれたようだ。エルフリーデがコクリと頷くと優しく背中に手を回して、エスコートするように部屋まで連れて行ってくれた。
◇◇◇◇
部屋に付いてからすぐに、ジュードはエルフリーデをソファーに座らせて使用人にお茶を持ってこさせた。そうして使用人が持ってきたお茶をエルフリーデに勧めてから、ジュードはエルフリーデの隣にゆっくりと腰を下ろした。
そうして二人一緒に並んでいる間も、暗く沈んだ様子のエルフリーデを気遣ってジュードは何も言わない。ただ静かに隣で寄り添ってくれている。だから慌てることなく頭の中を整理することが出来た。
それから数分後、何とか落ち着きを取り戻したエルフリーデがジュードの胸元にコテンと頭を預けると、それが合図になった。
「もう聞いてもいい?」
「……うん」
「リー、いったいどうしたの? それにその格好、どうして外套何か着てるの?」
ジュードの疑問は最もだった。何故ならエルトリア公国は一年中気候の変わらない緑豊かな温暖の地。ほとんどの人が軽装を好み。正装以外で厚着をしたがらない。
そもそもこの国で外套とは、雨の日に身体を冷やさないようにするためだったり、強風により巻き上げられた砂塵を避ける為に使用する。その程度もの。普段から着用する人などほとんどない。だから何でもない日にエルフリーデが重々しく外套など着ていればおかしい(というか怪しい)とすぐに分かることだった。
「あ、あのねっ」
「うん」
「えーっと、だから、つまりは、そのぉ……」
やっぱり言えない。まさかジュードを誘惑しようとして破廉恥(勝負服)な格好で来ましたなんてエルフリーデはとても言えなかった。あまりにも恥ずかしくて顔があげられない。話すことも出来ず。顔を真っ赤にしながら口を噤んで俯いていたら、ジュードがポンポンと頭を優しく叩いた。
「ジュード……?」
「話したくないならいいけど。でもリーがそんなに辛そうにしているのを僕は見ているだけなんて嫌だな」
「……怒らないで聞いてくれる?」
「僕に怒られそうなことなの?」
「うっ……うん、……とっても……」
「そっか」
そう答えてからもジュードは落ち着きを示す柔らかい表情で、いつになく物静かなエルフリーデの顔を観察するように眺めて、それから少ししてふぅっと小さく息を付き、降参だと両手を上げた。理由がどうあれ、追い込まれているエルフリーデを責める気にはとてもなれないとジュードは判断したようだ。
「分かったよ。どんなことでも怒らないから教えてくれる?」
「……うん」
ジュードの温かな声を聞いて、エルフリーデは鼻で深く息を吸い込み、しばらく目を閉じていた。そしてようやく心が決まると。やっとのことで重い口を開いた。
絶対に外からそれが見えないように丈の長い外套を着て、王城までマリアに馬車で送ってもらった所まではよかった……。
エルフリーデはマリアが去った後、すぐに後悔した。何故ならこんな破廉恥(勝負服)な格好でそれも外套を羽織っただけで、王城内を出歩くなど相当に勇気のいることだったからだ。
「はうぅっ……もう帰りたいよぉマリア~」
まさか王城の正門付近を頼りない足取りでとぼとぼと歩きながら、もう嫌だと涙ぐんでメイドの名を呼ぶことになるとは。思い切りがよすぎただけに、あまりの情けなさに顔が火照ってひどく熱い。
それもこんな真っ赤な顔を通りすがりの人に見られたら何と思われるだろう? そう思ってエルフリーデが不審な視線を避けるべく、なるべく人がいない場所を選んで歩こうとしたところで天の助けが現れた。
「リー? どうしたの? 今日は王城に来るって言ってなかったよね?」
「……ジュっ、ジュードォ~~~~」
「えっ? なに? どうしたの? 何でそんな泣きそうな顔して……リー?」
エルフリーデの姿を見つけて近づいて来たジュードにエルフリーデは思わず抱きついてしまった。王子様らしく肩に肩章が装飾された正装姿で現れたジュードに抱きついたまま、この場でうわーんと子供のように泣きたくなる。
「とりあえず僕の部屋に行こうか? 話はそこで聞くけど、いい?」
ジュードは何かを察してくれたようだ。エルフリーデがコクリと頷くと優しく背中に手を回して、エスコートするように部屋まで連れて行ってくれた。
◇◇◇◇
部屋に付いてからすぐに、ジュードはエルフリーデをソファーに座らせて使用人にお茶を持ってこさせた。そうして使用人が持ってきたお茶をエルフリーデに勧めてから、ジュードはエルフリーデの隣にゆっくりと腰を下ろした。
そうして二人一緒に並んでいる間も、暗く沈んだ様子のエルフリーデを気遣ってジュードは何も言わない。ただ静かに隣で寄り添ってくれている。だから慌てることなく頭の中を整理することが出来た。
それから数分後、何とか落ち着きを取り戻したエルフリーデがジュードの胸元にコテンと頭を預けると、それが合図になった。
「もう聞いてもいい?」
「……うん」
「リー、いったいどうしたの? それにその格好、どうして外套何か着てるの?」
ジュードの疑問は最もだった。何故ならエルトリア公国は一年中気候の変わらない緑豊かな温暖の地。ほとんどの人が軽装を好み。正装以外で厚着をしたがらない。
そもそもこの国で外套とは、雨の日に身体を冷やさないようにするためだったり、強風により巻き上げられた砂塵を避ける為に使用する。その程度もの。普段から着用する人などほとんどない。だから何でもない日にエルフリーデが重々しく外套など着ていればおかしい(というか怪しい)とすぐに分かることだった。
「あ、あのねっ」
「うん」
「えーっと、だから、つまりは、そのぉ……」
やっぱり言えない。まさかジュードを誘惑しようとして破廉恥(勝負服)な格好で来ましたなんてエルフリーデはとても言えなかった。あまりにも恥ずかしくて顔があげられない。話すことも出来ず。顔を真っ赤にしながら口を噤んで俯いていたら、ジュードがポンポンと頭を優しく叩いた。
「ジュード……?」
「話したくないならいいけど。でもリーがそんなに辛そうにしているのを僕は見ているだけなんて嫌だな」
「……怒らないで聞いてくれる?」
「僕に怒られそうなことなの?」
「うっ……うん、……とっても……」
「そっか」
そう答えてからもジュードは落ち着きを示す柔らかい表情で、いつになく物静かなエルフリーデの顔を観察するように眺めて、それから少ししてふぅっと小さく息を付き、降参だと両手を上げた。理由がどうあれ、追い込まれているエルフリーデを責める気にはとてもなれないとジュードは判断したようだ。
「分かったよ。どんなことでも怒らないから教えてくれる?」
「……うん」
ジュードの温かな声を聞いて、エルフリーデは鼻で深く息を吸い込み、しばらく目を閉じていた。そしてようやく心が決まると。やっとのことで重い口を開いた。
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