上 下
10 / 58
本編

8.手出しさせてやろうじゃないの!

しおりを挟む
 エルフリーデはどうしてもジュードにかまってほしいから、ついついそう無理難題を言ってジュードを困らせてしまう。困っているジュードにソファーの上で抱き寄せられながらエルフリーデは切なさに胸を痛めた。

 ……だって大好きなんだもの。
 でもどうしてジュードはわたしに手を出してくれないの?
 今までだってずっとジュードはキス以上のことはしてくれないし……
 もしかして本当はわたしのこと女として興味ないの? 妹だと思ってる?

 嫌われてはいない。好かれてはいる。それは分かる。でももしかしたら女として見られていないのかもしれなかった。エルフリーデとジュードは同い年で二人とも今年で18になる。
 公爵令嬢という地位にあるエルフリーデは王子様のジュードにとっても釣り合いの取れる、丁度よいお相手に思えるのだが……

「リー……」

 ジュードがエルフリーデを呼んだ。それでもエルフリーデが答えないから、最終的にジュードはエルフリーデの細腰に慣れた様子で手を回してエルフリーデを一層強く引き寄せた。互いの額に額をコツンと合わせて言い聞かせるように瞳をのぞき込まれて、またも「うっ……」とエルフリーデは言葉に詰まった。どうやらそろそろ潮時しおどきらしい。降参する頃合いを見計らってエルフリーデはジュードの要求を聞くことにした。そうしないとエルフリーデは本当に自分がジュードに興味を持ってもらえなくなってしまうのではないかとちょっと怖かったからだ。

「駄目だよ? 分かった?」

 言い聞かせるようにまた瞳を覗き込まれる。

「わ、わかったわよ。……でも1つお願い聞いてくれる?」
「いいよ。何でも言ってごらん?」
「キスして」

 甘えるようにジュードの首に手を回してキスをねだるとジュードはくすりと笑ってついばむような軽い口づけをしてくれた。

「もっとして」
「もっとって?」
「舌をからませたり大人のキスがしたいの」
「駄目だよ、僕達は婚約してるけどそう言うのは結婚してからじゃないと」
「頭固い……」
「どういわれても駄目なものは……──っ!?」

 あんまりしてくれないからエルフリーデから思いっきり噛みつくようなキスをした。舌を差し入れると温かいジュードの舌に触れて心地いい。だから嫌がるジュードの唇に深々と唇を押し付ける。最初は動揺してジュードも対応出来ていなかったけれど、結局すぐに引きがされてしまった。

「……っ……こらっリー! 駄目だって言ってるでしょ!」
「やぁっ! したいのにどうしてダメなの?」

 無理矢理引き剥がされて。エルフリーデは涙目でジュードを非難した。だってまだ全然思いを伝えきれていない。もっと沢山ジュードに触れていたかった。

「リー……」
「もっとしたい」
「良い子だから言うことを聞いて? これ以上は駄目だよ?」
「どうして? わたしたち婚約者同士なのに……そういうことしても公認の仲なんだから誰にも文句は言われないのに?」
「でもね。そういうことは結婚した後じゃないと駄目なの。それがけじめだからね」
「結婚した後って……わたしたちの結婚式まであと3ヶ月もあるんだけど、それも祭事が終わったちょうど翌日だったわよね?」
「もう3ヶ月しかないって、リーは思わないの?」
「すっっっっっごく長いと思うわ」
「そっか。でも3ヶ月待てばいいだけなんだから、そのくらいリーも我慢できるよね?」
「……ジュードは平気なの?」
「僕は平気だけど?」

 その綺麗な顔にニッコリと天使の笑みを浮かべて、サラッと軽やかな口調で返された。欲望とは無縁です。と言わんばかりのキラキラした笑顔がまぶしすぎる。が、手出ししなくても平気だと言われたも同然の言葉にエルフリーデの声が低くなる。

「……じゃあつまり、ジュードは結婚するまでわたしに絶対手を出さないってこと?」
「そういうことになるかな?」

 爽やかな笑みで、3ヶ月くらいたいしたことではない。とでも言うかのようにまたもサラッと返されて。その無関心な様子にエルフリーデはものすごく頭にきた。

 なぁ、なっ、な、な、なぁんですってぇぇぇぇぇぇぇえッ!? 

 わたしがこんなにジュードに触りたいのを我慢してるっていうのに? と、プルプルと震える肩と怒りで爆発しそうな感情を必死に抑えながらエルフリーデは決意した。

 結婚するまで手を出さない? なら手出しさせてやろうじゃないの!

 この日から、エルフリーデに手を出させるためにあらゆる手段を使ってジュードを誘惑するという、エルフリーデの(無謀な)戦いが始まった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

ポンコツ気味の学園のかぐや姫が僕へのラブコールにご熱心な件

鉄人じゅす
恋愛
平凡な男子高校生【山田太陽】にとっての日常は極めて容姿端麗で女性にモテる親友の恋模様を観察することだ。 ある時、太陽はその親友の妹からこんな言葉を隠れて聞くことになる。 「私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない」 親友の妹【神凪月夜】は千回告白されてもYESと言わない学園のかぐや姫と噂される笑顔がとても愛らしい美少女だった。 月夜を親友の妹としか見ていなかった太陽だったがその言葉から始まる月夜の熱烈なラブコールに日常は急変化する。 恋に対して空回り気味でポンコツを露呈する月夜に苦笑いしつつも、柔和で優しい笑顔に太陽はどんどん魅せられていく。 恋に不慣れな2人が互いに最も大切な人になるまでの話。 7月14日 本編完結です。 小説化になろう、カクヨム、マグネット、ノベルアップ+で掲載中。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

処理中です...