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本編
4.初めてのキス
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あれからジュードは何かを考え込むような仕草で静かに口を閉ざしている。
……ど、どうしよう?
ジュードもしかしてちょっとおこってる?
天使のようなジュードの不興を買ってしまったような気がして、祈るように手を合わせた。ドキドキしながらエルフリーデが反応を待っていると、ジュードが指でちょいちょいとエルフリーデを呼んだ。
「ジュード?」
不思議に思って名前を呼びながらそろそろと近づいて顔を覗き込む。
「ごめんなさい。タラシっていったのそんなにイヤだった?」
機嫌を直して欲しいとその天使のように綺麗な顔を両手のひらでくるんで謝罪する。困惑した様子で不安そうにエルフリーデが視線を送ると、ジュードがくすりと笑ってエルフリーデの腰に手を回してきた。互いの距離が近づいてピッタリと身体がくっつくいて、するとジュードからふんわりと温かい日溜まりの匂いがしてきた。
その温かな匂いを嗅いでいると気持ちが自然と和らいだ。ジュードの匂いになごんでエルフリーデが呑気にもほわほわとした気分で、ボーッとジュードにくっついてたら。エルフリーデの目を覚まさせるようにジュードが互いの額をコツンと当ててきた。今度はジュードの方から覗き込むように見られてちょっぴりドキドキしてしまう。
「うん。だからね、エルフリーデからキスしてくれたら許してもいいよ?」
「き、キスっ!?」
いつもよりちょっと強気なジュードにエルフリーデはたじたじになる。ソワソワと足を動かしてチラッとジュードを横目で見た。
……キスってあのキスだよね?
幼いながらもキスが何なのかをエルフリーデはちゃんと分かっていた。大人同士がするもので、本当に好きな人としかしてはいけないものだと両親から聞いていたから。エルフリーデは困ってしまった。
「あのっ! ……キスっておとなになったらするものなんでしょ? スキなひとじゃないとしちゃダメって、かあさまたちがいってたよ?」
「でも僕達は結婚の約束までしてるんだし、大人じゃなくてもいいんじゃないかな?」
「そっかぁ~そうだよね! わたしジュードのことスキだよ?」
「僕もリーのこと好きだよ。だからしても大丈夫でしょ?」
「うん! それならだいじょうぶだね! ……あっでも……」
「どうしたの?」
「わたしどうすればいいのかな?」
唇と唇をくっつければいい。それは分かっていてもそれまでの段取りというか近づき方がどうにも分からない。キスとはなんだかいろいろ難しそうだ。幼いエルフリーデが可愛い頭を使って一生懸命悩んでいるとジュードがくすくす笑って優しくエルフリーデの頭を撫でた。
「簡単だよ。僕の方にリーが顔を近づけてくれればいいだけだよ?」
「このままちかづければいいの?」
「ほらっおいで?」
「うん……」
エルフリーデはジュードに言われるまま無邪気に近づいた。ジュードに顔を寄せるとなんとなく自然に互いの唇がくっついて、柔らかいジュードの唇の感触にエルフリーデは不思議な気分になる。
天使のような容貌をしたジュードに上手く丸め込まれていることにも気付かずに、エルフリーデは初めての幼いキスをジュードと交わした。
そうして少ししてジュードがエルフリーデから顔を離して目を開けると、パッチリと大きな茶色の瞳を開けてエルフリーデが不思議そうな顔をしてジュードを見ていた。
「……リーもしかして、キスしてる間ずっと目を開けてた?」
「えっ? とじなきゃダメなの?」
「駄目じゃないけど……一般的には閉じるかな?」
「そうなの? じゃあいまのはしっぱいのキス?」
「そんなことないよ。でも、そうだね……できるならもう一度、今度は目を閉じてキスしてくれる?」
「うん、わかった。こんどはめをとじればいいんだよね?」
「そうだね。僕も閉じるからそれに合わせてリーも一緒に閉じてごらん?」
「うんっ! ジュードのいったとおりにする!」
「……本当にリーは素直で可愛いな」
「えっ? ジュードのほうがかわいいよ?」
エルフリーデはジュードにファーストキスとそしてセカンドキスも、幼いうちから着々と奪われていることにも気付かず。ジュードを慕って傍を離れることなく。その後もエルフリーデが王城を訪れる度に秘密の庭園でささやかな逢瀬を繰り返し、そうして一緒に幸せな時を重ね続けた。
……ど、どうしよう?
ジュードもしかしてちょっとおこってる?
天使のようなジュードの不興を買ってしまったような気がして、祈るように手を合わせた。ドキドキしながらエルフリーデが反応を待っていると、ジュードが指でちょいちょいとエルフリーデを呼んだ。
「ジュード?」
不思議に思って名前を呼びながらそろそろと近づいて顔を覗き込む。
「ごめんなさい。タラシっていったのそんなにイヤだった?」
機嫌を直して欲しいとその天使のように綺麗な顔を両手のひらでくるんで謝罪する。困惑した様子で不安そうにエルフリーデが視線を送ると、ジュードがくすりと笑ってエルフリーデの腰に手を回してきた。互いの距離が近づいてピッタリと身体がくっつくいて、するとジュードからふんわりと温かい日溜まりの匂いがしてきた。
その温かな匂いを嗅いでいると気持ちが自然と和らいだ。ジュードの匂いになごんでエルフリーデが呑気にもほわほわとした気分で、ボーッとジュードにくっついてたら。エルフリーデの目を覚まさせるようにジュードが互いの額をコツンと当ててきた。今度はジュードの方から覗き込むように見られてちょっぴりドキドキしてしまう。
「うん。だからね、エルフリーデからキスしてくれたら許してもいいよ?」
「き、キスっ!?」
いつもよりちょっと強気なジュードにエルフリーデはたじたじになる。ソワソワと足を動かしてチラッとジュードを横目で見た。
……キスってあのキスだよね?
幼いながらもキスが何なのかをエルフリーデはちゃんと分かっていた。大人同士がするもので、本当に好きな人としかしてはいけないものだと両親から聞いていたから。エルフリーデは困ってしまった。
「あのっ! ……キスっておとなになったらするものなんでしょ? スキなひとじゃないとしちゃダメって、かあさまたちがいってたよ?」
「でも僕達は結婚の約束までしてるんだし、大人じゃなくてもいいんじゃないかな?」
「そっかぁ~そうだよね! わたしジュードのことスキだよ?」
「僕もリーのこと好きだよ。だからしても大丈夫でしょ?」
「うん! それならだいじょうぶだね! ……あっでも……」
「どうしたの?」
「わたしどうすればいいのかな?」
唇と唇をくっつければいい。それは分かっていてもそれまでの段取りというか近づき方がどうにも分からない。キスとはなんだかいろいろ難しそうだ。幼いエルフリーデが可愛い頭を使って一生懸命悩んでいるとジュードがくすくす笑って優しくエルフリーデの頭を撫でた。
「簡単だよ。僕の方にリーが顔を近づけてくれればいいだけだよ?」
「このままちかづければいいの?」
「ほらっおいで?」
「うん……」
エルフリーデはジュードに言われるまま無邪気に近づいた。ジュードに顔を寄せるとなんとなく自然に互いの唇がくっついて、柔らかいジュードの唇の感触にエルフリーデは不思議な気分になる。
天使のような容貌をしたジュードに上手く丸め込まれていることにも気付かずに、エルフリーデは初めての幼いキスをジュードと交わした。
そうして少ししてジュードがエルフリーデから顔を離して目を開けると、パッチリと大きな茶色の瞳を開けてエルフリーデが不思議そうな顔をしてジュードを見ていた。
「……リーもしかして、キスしてる間ずっと目を開けてた?」
「えっ? とじなきゃダメなの?」
「駄目じゃないけど……一般的には閉じるかな?」
「そうなの? じゃあいまのはしっぱいのキス?」
「そんなことないよ。でも、そうだね……できるならもう一度、今度は目を閉じてキスしてくれる?」
「うん、わかった。こんどはめをとじればいいんだよね?」
「そうだね。僕も閉じるからそれに合わせてリーも一緒に閉じてごらん?」
「うんっ! ジュードのいったとおりにする!」
「……本当にリーは素直で可愛いな」
「えっ? ジュードのほうがかわいいよ?」
エルフリーデはジュードにファーストキスとそしてセカンドキスも、幼いうちから着々と奪われていることにも気付かず。ジュードを慕って傍を離れることなく。その後もエルフリーデが王城を訪れる度に秘密の庭園でささやかな逢瀬を繰り返し、そうして一緒に幸せな時を重ね続けた。
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