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第四章~大人扱編~
♀085 予定外のこと
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――私があの日、本当は何の為に神社へ足を運んだのか。神様はご存知だったのですか?
私はこの乙女ゲーム世界に来てからもずっと姉が生きていることを願っていた。
多分、私と同じようにこの乙女ゲーム世界に姉は来ている。そうは思ってもどうしても確信が持てなかった。何故なら何度姉の名前を出しても誰も彼女のことを知る人はいなかったからだ。
代わりによく耳にする卯佐美結良という名前の日本人。彼女の事ばかりが耳に入ってくるようになった。年齢は姉が失踪した時と同じ16歳。でもこの世界に来てから直ぐに、彼女が亡くなったのは9年前だと知って。5つ違いの私と年齢差が違うことから、最初のうちは彼女は姉ではないのだと思った。
それでも姉なのではないか? と思う気持ちは捨てきれなくて。
卯佐美結良という人物がどんなに人だったのかをフェルディナンやイリヤたちから聞いて疑心が確信へと変わっていった。多分、彼女が姉の誄歌であることは間違いない。謎めいた事や辻褄が合わないことが多すぎるけれど、きっと彼女は私の探し求めていた人だと。
けれどそれを認めてしまったら姉はとうの昔に死んでいたことになる。だからどうしてもそれが真実だと知りたくなかった。認めたくなかった。だから頑なに拒絶して私は次第に違うことを考えるようになった。
本当はこの乙女ゲーム世界に姉は来ていなくて、元いた世界にいるかもしれないと。そうだとしたら元の世界に私は姉を置いてきてしまったことになる。自分自身を騙すために考え出した一縷の望みもない空想なのに、それでもそう思うだけでいたたまれない気持ちになり、またも心が酷く痛んだ。
何処にいるのか分からない姉を思って。その生死すら定かではない彼女を思って。そうして日に日に思いは募っていった。
それも、貴女を探して見つけ出して元の世界へ一緒に帰るために私はこの世界に来たのに、沢山の予定外のことが起きてしまった。
1つ目はフェルディナンを愛して恋人になってしまったこと
2つ目はフェルディナンと結婚してしまったこと
3つ目は彼との子供が出来てしまったこと
攻略対象キャラと恋はしない。そう決めたのに、それをあっさりと覆された。
細かいことがどうでも良くなるくらいにフェルディナンは私を愛してくれた。愛され過ぎて困ってしまうくらいの強い執着に心が揺らいで。そうして私も変わってしまった。止めようがないくらいにフェルディナンを深く愛してしまったのは誤算だった。そして何より、フェルディナンがここまで自分を愛してくれたことが何よりの誤算だった。
「どうして? どうしてフェルディナンはわたしのこと好きになったの? なったり何かしたの?」
――そうならなければ、こんなに苦しむこともなかったのに。
「月瑠……」
「どうして?」
自室のベッドの上に座り込んだまま。私は古びた日記を手にギュッと握り締めて責めるような口調で隣にいるフェルディナンに問いかける。
何の説明もないまま。日記の最初のページを見て突然泣き出してしまった妻に責められているというのに。フェルディナンは文句の1つも言わない。ボロボロと涙を流し続けている私に痛々しいものを見るような目を向けながら、ギュウッと私をその逞しい胸元に抱き締めた。
「フェルディナン……ごめんなさぃ……」
身体に力が入らない。フェルディナンの温かい両腕に支えられていなければ、一人でいたら静かにその場に泣き崩れていたところだろう。フェルディナンは私が泣き止むまでただそうして静かに私を抱き締めてくれていた。
*******
それから数時間が経過して――
真夜中過ぎの星空が外の世界を照らす中、私とフェルディナンはベッドの上で互いに一糸纏わぬ姿で抱き合いながらのんびりと時を過ごしていた。
ボロボロと涙を流して泣くばかりの私を何も言わずに黙って抱き留めて、気持ちごと全部受け入れてくれたフェルディナンのお陰でようやく涙が止まると。私は酷い喪失感とその寂しさに耐えかねてフェルディナンを求めた。そうして身体を重ねようとする私の要求に応えて、何も聞かずに慰めるようにフェルディナンは私を抱いて優しく身体を繋いでくれた。
事が終わった後も互いの肌と肌が直に触れ合う心地よさに和んで少しだけ気持ちが楽になった。そうしてふわふわした温もりに浸りながら、私はフェルディナンの分厚い胸板に触れてくすぐるように指先でちょんちょん突いて遊び始めた。妻を慰める夫で遊べるくらい気持ちに余裕が出てきたのは良いことだが。勿論それは眉を顰めたフェルディナンに止められた。
「……やめなさい」
「どうして?」
「理由はどうでもいい」
どうでもいいと言われると余計に意地悪したくなる。だからフェルディナンの胸元で遊んでいた指を更に動かしてあろうことかその胸板にある突起に触れようと手を伸ばしたらガシッと掴まれた。
「くすぐったいの? フェルディナンって耳と背中けっこう弱かったよね? 胸も弱いの? んっ? アレッ? もしかしてフェルディナンって……」
「……何だ?」
またろくでもないことを言うのではないかとフェルディナンは警戒していた。私の指先をしっかり掴みながら紫混じった青い瞳を細めて困った顔をしている。
「人に触れることはあってもフェルディナン自身はあまり人に触られたことなくてまだまだ色々と未開発だとか? だからフェルディナンも自分でどこが感じやすいとか分かってない何て事……フェルディナンって多分、エッチするときは自分の身体、人にあまり触らせないタイプだよね? だからもしかしてだけど、その……自分でも弱い部分が分かってないとかだったりし……」
「月瑠っ!」
「はい!」
フェルディナンが珍しく強い口調で私の名前を呼んだ。けれど普段から怒られ慣れている私としては、そんなふうに今更声を荒げられても怖くも何ともない。ただ可愛いなぁと思うだけで。だから返事も勢いで返すものの妙に淡々としていて冷静なものとなってしまう。
「どうして君はそう恥ずかしげも無く次から次にそんなことを考えつくんだ!」
「えっとぉ~……じゃあやっぱり、私がさっき言ったことあってるの? 本当ってこと?」
「違う!」
思いっきり否定されても全く説得力がないくらいにフェルディナンは耳まで顔を真っ赤にして怒っている。それも私の手を掴んでいる手の力加減が明らかにおかしい。力が入っているようで入っていないような定まらない感覚に、思わず目を瞬かせてフェルディナンの手と顔、双方共に交互に見入ってしまう。
「そうなの?」
「月瑠!」
「は~い」
「……っ! どうして君はそうなんだ!」
少しも反省した様子もなく挙手でもしかねないほど緩い返事を返されて。フェルディナンは私の手を握り締めたままの格好で完全に参っていた。それが分かっているのに私は更に止めとばかりに酷いことを口にした。
「わたしね。フェルディナンの身体開発したい」
「……は?」
今何と言った? と、フェルディナンは口をポカンと開けて目を丸くしている。私の手を掴んでいる手の力が僅かに緩んで身体が強張っているように見えるのはきっと気のせいではない。
「だってフェルディナンの反応全部可愛いんだもの。わたしが触っただけでビクついて感じてくれたら楽し……いえ、嬉しいなって思って。だから身体触らせて欲しいんだけど」
ダメ? と小首を傾げて聞いてみた。一応自分の中では最大限に可愛い表情をして上目遣いにお願いしてみる。
「……もしかして君は俺で遊んでいるのか?」
黒将軍の異名を持つ冷酷非道で名の通った王様が、幼妻に身体を玩ばれるようなエッチの提案を寝屋で床を共にしている最中にされているとは、流石に誰も想像できないだろう。立場が逆転するにも程があるというもので、フェルディナンはすっかりお冠だった。
「遊んでないよ? ちゃんと本気でフェルディナンの身体触ってみたいと思ってるし、それでフェルディナンが可愛く鳴いてくれたら嬉しいかも?」
「……冗談はよしてくれ」
「冗談じゃないのに……」
両手はフェルディナンに押さえられていても口は塞がれていないからまだ使える。私はフェルディナンの胸元の突起に唇を寄せてちょっとだけペロッと舐めてみた。するとフェルディナンの身体がビクッと大きく反応して赤かった顔色が更に熟れたトマトのように真っ赤になった。
「月瑠ッ!!! ――っ!」
声を荒げるどころか怒鳴る勢いの夫に構わず。その突起を口に含んで吸ってみるとフェルディナンは身体を硬くして耐えるように息を殺してしまった。セックスが出来るとはいえ妊娠している妻に無理強いしたり、あまり強く出ることが出来ないフェルディナンがただ黙って耐えているその姿は想像していた以上にすごく刺激的で官能的だ。
今までも粗雑に扱われた事は無いけれど。その荒々しい肉体の中心にある巨大なモノの先端を最深部まで受け入れるように身体を深々と重ねて子種を植え付けるように抱いていた分、私が妊娠してからは今までのように沢山私を抱けないことにフェルディナンが物足りなさを感じているのではないか? と私は常々思っていた。
マンネリ化は夫婦の大敵とも言うし。新しい趣向の提案は必要に思えた。だから逆のことをして少しは発散させてみるのもありかな? と考えていたのだが……これは思っていた以上に面白い。
「くっ! やめなさいっ! 月瑠!」
制止の声を掛けられても一向に止める気配のない私の両肩をフェルディナンが掴んだ。それでも吸い付くのを止めない私を乱暴に引き剥がす事も出来なくて。フェルディナンは顔を赤くしたまま結局無抵抗に身体をいいようにされている。
そういえば、フェルディナンのあれはどうなっているのだろう? そう思ってその巨大な一物に手を伸ばすと反応してちゃんと立っていた。それもはち切れそうなくらいブルブル震えて大きくなっているそれがフェルディナンの答えなのだと分かってちょっとだけ嬉しくなる。
フェルディナンの胸の先端を唇に含んだまま、私はそれを自らの秘所に招いてゆっくりと飲み込んで奥深くまで咥え込んだ。フェルディナンのそれが膣内に戻れたことを喜んでいるのが分かる。入れた瞬間、大きさを増したそれの熱さと圧倒的な存在感に気を取られそうになりながらも、何とかフェルディナンの胸元の突起に口を宛がい愛撫を繰り返していたらフェルディナンの腕が私の腰にそっと回された。どうやらやっとフェルディナンは観念したらしい――っと思っていたらそれは間違いだった。
「きゃぁっ! あぁっやぁっそんなっぁんっ! うごかさなっ……きゃんっ」
私の腰に回した手を動かしてフェルディナンが挿入の速度を速めてしまった。それもこちらの意志を全く無視してフェルディナンはそこをぐちゃぐちゃに掻き回しながら、パンパンと乾いた音が立つくらい強い突き上げを始めてしまった。
「はふっ……はっ……ふぁっ……ふぇっあっやぁ~っ」
「……可愛いな」
「う~っ……ぁっフェルディ、ナンっ……はぁっ……やめっ……ふぁっ」
「良い子だからこれ以上悪戯するのは止めなさい」
分かったな? と強い目でフェルディナンに見つめられても、負けるもんか! と負けん気の強さが災いして私は思わず意地を張ってしまった。
「ふわっ……はぁっ……やっ、やだっ!」
「月瑠……聞き分けないなら手加減がなかなか出来なくなる。子を宿している君にそれを強いる事は出来ないからな。鎖でも付けてこの部屋に一日中繋いでおくことになるがそれでも良いのか?」
「やぁっ……ど、して……ぁっフェルディ、ナンにふぁっ……さ、さわっちゃダメ、なの……?」
う~と悔しそうに唸りながら涙目で訴えても答えはやはり変わらなかった。
「頼むからこれ以上悪夢を見るようなことを言わないでくれ……」
「わたし、かわいぃフェルディナンっ……もっとふぁっ……みたぃ……はふっ」
かなり手加減されているとはいえ、久ぶりに強く抱かれて身体が喜んでしまう。それも喘ぐ声を必死に吐き出しているせいでフェルディナンの胸元を吸っている余裕なんて全くない。そこから離してしまった唇にフェルディナンが唇を寄せてきた。
「あっ……」
しっとりと唇を重ねられて。それから深く舌を吸われた。
「んっんっ……ん――っ!」
フェルディナンに吸われていた唇を無理矢理離して何とか唇の自由を得たものの、下半身はすっかりフェルディナンに捕らわれている。巨大なモノを深々と埋め込まれた股間は酷く熱い。何度もフェルディナンの巨大な雄の印が中で弾けて子種が再び注がれていくのを当然と受け止めて飲み込み続けている。
そして必死に受け入れているそこを更に押し広げるようにフェルディナンの強靱な腕に腰を振るように動かされた。ぐちゃぐちゃと精液と愛液に塗れた花弁を無理やり大きく広げられてしまうのを、それでも当然と受け入れてしまうのは余りにも沢山フェルディナンと身体を重ね合わせて来たせいだ。受け入れないなんてこと自体があり得ないことだという位に、私の身体はすっかりフェルディナンのものに染まってしまっている。
「ひっ! あっあっあっ……ふあぁっ!」
精液を絶えず注ぎ込みながらフェルディナンは先程の話の続きを呟いた。
「やはり……鎖は必要か?」
「……ふぇっ……? はふっ……ぁっう、そ……だよ、ね……?」
「俺はいたって本気だ」
「――っ!」
どうしよう。本当にフェルディナンは本気の顔をしている。夫婦となって沢山色々な話をして愛し合って。そうして身体を重ね続けて来たから分かる。今までにも何度も似たようなことを言われたことがあったけれど。一度としてフェルディナンは私に鎖を付けるなんて事はしなかった。
それは飽くまでも脅しというか警告の範囲内でのことで、それを実際に実行する位までフェルディナンがまだ追い詰められていなかったからだ。
けれど今回、私はフェルディナンを追い詰めるようなことを言って実際それを実行してしまった。それも私が古びた日記を手にしたことで精神的に不安定な状態になっているのはとうにバレているから尚のこと。
「フェルディナン……ふあっ……ぁっおねが、ぃ……許し、……て」
「今回ばかりは駄目だ。許さない。それに君をこのまま野放しにしたらまた一人で勝手なことをするだろう? 子を宿している君の意識がなくなるまで抱くことはもう出来ないからな。相応の処置だと思ってもらいたいものだが……」
そう言ってフェルディナンはぐじゅっと熱い肉棒を突き上げた。
「ふぁっ!」
「それに、君を部屋の中に閉じ込めて独占出来る状況もなかなかにそそられる。激しく抱けなくとも鎖に繋がれた君の身体に舌を這わせて一日中愛撫を繰り返す事くらいならしても構わないだろう?」
「かっ、かまいます――っ! そんなのダメにきまって……きゃぁっ!」
怒って反論していたら突然胸に食いつかれた。それも先程私がしたことへの仕返しとばかりに背中を押さえつけながら口に含まれ強く吸われてしまう。
「あっあんっ……ふぇっふぁっ……フェルディナっやっ……きゃあっ」
フェルディナンは胸の先端を口に含んでチュッチュッと音を立てて揉みしだきながら、器用にも下肢に埋め込んだ肉棒を私の膣内で扱いて挿入を繰り返している。そこに収まりきらなかった愛液と精液がこぼれ落ちて互いの股間とシーツを汚していくのにも構わず、フェルディナンはピッタリと互いの性器を合わせてズルズルと液に塗れながら出し入れを繰り返している。
「フェル、ディナン……あっ! ……やめっ」
「君は俺の下で鳴いている方が可愛らしくていい」
「ふぇっ……なに、をいって……きゃぁんっ!」
玩ばれるのは御免だとフェルディナンは眉を顰めて苦しげに紫混じった青い瞳を細めた。熱く太い肉棒でミッチリと隙間無く膣内を埋めながら何を甘ったるいことを言っているのかと、下肢を貫かれる振動に耐えながら必死に抗議したものの。勿論、フェルディナンは全く聞いてはくれなかった。
私はこの乙女ゲーム世界に来てからもずっと姉が生きていることを願っていた。
多分、私と同じようにこの乙女ゲーム世界に姉は来ている。そうは思ってもどうしても確信が持てなかった。何故なら何度姉の名前を出しても誰も彼女のことを知る人はいなかったからだ。
代わりによく耳にする卯佐美結良という名前の日本人。彼女の事ばかりが耳に入ってくるようになった。年齢は姉が失踪した時と同じ16歳。でもこの世界に来てから直ぐに、彼女が亡くなったのは9年前だと知って。5つ違いの私と年齢差が違うことから、最初のうちは彼女は姉ではないのだと思った。
それでも姉なのではないか? と思う気持ちは捨てきれなくて。
卯佐美結良という人物がどんなに人だったのかをフェルディナンやイリヤたちから聞いて疑心が確信へと変わっていった。多分、彼女が姉の誄歌であることは間違いない。謎めいた事や辻褄が合わないことが多すぎるけれど、きっと彼女は私の探し求めていた人だと。
けれどそれを認めてしまったら姉はとうの昔に死んでいたことになる。だからどうしてもそれが真実だと知りたくなかった。認めたくなかった。だから頑なに拒絶して私は次第に違うことを考えるようになった。
本当はこの乙女ゲーム世界に姉は来ていなくて、元いた世界にいるかもしれないと。そうだとしたら元の世界に私は姉を置いてきてしまったことになる。自分自身を騙すために考え出した一縷の望みもない空想なのに、それでもそう思うだけでいたたまれない気持ちになり、またも心が酷く痛んだ。
何処にいるのか分からない姉を思って。その生死すら定かではない彼女を思って。そうして日に日に思いは募っていった。
それも、貴女を探して見つけ出して元の世界へ一緒に帰るために私はこの世界に来たのに、沢山の予定外のことが起きてしまった。
1つ目はフェルディナンを愛して恋人になってしまったこと
2つ目はフェルディナンと結婚してしまったこと
3つ目は彼との子供が出来てしまったこと
攻略対象キャラと恋はしない。そう決めたのに、それをあっさりと覆された。
細かいことがどうでも良くなるくらいにフェルディナンは私を愛してくれた。愛され過ぎて困ってしまうくらいの強い執着に心が揺らいで。そうして私も変わってしまった。止めようがないくらいにフェルディナンを深く愛してしまったのは誤算だった。そして何より、フェルディナンがここまで自分を愛してくれたことが何よりの誤算だった。
「どうして? どうしてフェルディナンはわたしのこと好きになったの? なったり何かしたの?」
――そうならなければ、こんなに苦しむこともなかったのに。
「月瑠……」
「どうして?」
自室のベッドの上に座り込んだまま。私は古びた日記を手にギュッと握り締めて責めるような口調で隣にいるフェルディナンに問いかける。
何の説明もないまま。日記の最初のページを見て突然泣き出してしまった妻に責められているというのに。フェルディナンは文句の1つも言わない。ボロボロと涙を流し続けている私に痛々しいものを見るような目を向けながら、ギュウッと私をその逞しい胸元に抱き締めた。
「フェルディナン……ごめんなさぃ……」
身体に力が入らない。フェルディナンの温かい両腕に支えられていなければ、一人でいたら静かにその場に泣き崩れていたところだろう。フェルディナンは私が泣き止むまでただそうして静かに私を抱き締めてくれていた。
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それから数時間が経過して――
真夜中過ぎの星空が外の世界を照らす中、私とフェルディナンはベッドの上で互いに一糸纏わぬ姿で抱き合いながらのんびりと時を過ごしていた。
ボロボロと涙を流して泣くばかりの私を何も言わずに黙って抱き留めて、気持ちごと全部受け入れてくれたフェルディナンのお陰でようやく涙が止まると。私は酷い喪失感とその寂しさに耐えかねてフェルディナンを求めた。そうして身体を重ねようとする私の要求に応えて、何も聞かずに慰めるようにフェルディナンは私を抱いて優しく身体を繋いでくれた。
事が終わった後も互いの肌と肌が直に触れ合う心地よさに和んで少しだけ気持ちが楽になった。そうしてふわふわした温もりに浸りながら、私はフェルディナンの分厚い胸板に触れてくすぐるように指先でちょんちょん突いて遊び始めた。妻を慰める夫で遊べるくらい気持ちに余裕が出てきたのは良いことだが。勿論それは眉を顰めたフェルディナンに止められた。
「……やめなさい」
「どうして?」
「理由はどうでもいい」
どうでもいいと言われると余計に意地悪したくなる。だからフェルディナンの胸元で遊んでいた指を更に動かしてあろうことかその胸板にある突起に触れようと手を伸ばしたらガシッと掴まれた。
「くすぐったいの? フェルディナンって耳と背中けっこう弱かったよね? 胸も弱いの? んっ? アレッ? もしかしてフェルディナンって……」
「……何だ?」
またろくでもないことを言うのではないかとフェルディナンは警戒していた。私の指先をしっかり掴みながら紫混じった青い瞳を細めて困った顔をしている。
「人に触れることはあってもフェルディナン自身はあまり人に触られたことなくてまだまだ色々と未開発だとか? だからフェルディナンも自分でどこが感じやすいとか分かってない何て事……フェルディナンって多分、エッチするときは自分の身体、人にあまり触らせないタイプだよね? だからもしかしてだけど、その……自分でも弱い部分が分かってないとかだったりし……」
「月瑠っ!」
「はい!」
フェルディナンが珍しく強い口調で私の名前を呼んだ。けれど普段から怒られ慣れている私としては、そんなふうに今更声を荒げられても怖くも何ともない。ただ可愛いなぁと思うだけで。だから返事も勢いで返すものの妙に淡々としていて冷静なものとなってしまう。
「どうして君はそう恥ずかしげも無く次から次にそんなことを考えつくんだ!」
「えっとぉ~……じゃあやっぱり、私がさっき言ったことあってるの? 本当ってこと?」
「違う!」
思いっきり否定されても全く説得力がないくらいにフェルディナンは耳まで顔を真っ赤にして怒っている。それも私の手を掴んでいる手の力加減が明らかにおかしい。力が入っているようで入っていないような定まらない感覚に、思わず目を瞬かせてフェルディナンの手と顔、双方共に交互に見入ってしまう。
「そうなの?」
「月瑠!」
「は~い」
「……っ! どうして君はそうなんだ!」
少しも反省した様子もなく挙手でもしかねないほど緩い返事を返されて。フェルディナンは私の手を握り締めたままの格好で完全に参っていた。それが分かっているのに私は更に止めとばかりに酷いことを口にした。
「わたしね。フェルディナンの身体開発したい」
「……は?」
今何と言った? と、フェルディナンは口をポカンと開けて目を丸くしている。私の手を掴んでいる手の力が僅かに緩んで身体が強張っているように見えるのはきっと気のせいではない。
「だってフェルディナンの反応全部可愛いんだもの。わたしが触っただけでビクついて感じてくれたら楽し……いえ、嬉しいなって思って。だから身体触らせて欲しいんだけど」
ダメ? と小首を傾げて聞いてみた。一応自分の中では最大限に可愛い表情をして上目遣いにお願いしてみる。
「……もしかして君は俺で遊んでいるのか?」
黒将軍の異名を持つ冷酷非道で名の通った王様が、幼妻に身体を玩ばれるようなエッチの提案を寝屋で床を共にしている最中にされているとは、流石に誰も想像できないだろう。立場が逆転するにも程があるというもので、フェルディナンはすっかりお冠だった。
「遊んでないよ? ちゃんと本気でフェルディナンの身体触ってみたいと思ってるし、それでフェルディナンが可愛く鳴いてくれたら嬉しいかも?」
「……冗談はよしてくれ」
「冗談じゃないのに……」
両手はフェルディナンに押さえられていても口は塞がれていないからまだ使える。私はフェルディナンの胸元の突起に唇を寄せてちょっとだけペロッと舐めてみた。するとフェルディナンの身体がビクッと大きく反応して赤かった顔色が更に熟れたトマトのように真っ赤になった。
「月瑠ッ!!! ――っ!」
声を荒げるどころか怒鳴る勢いの夫に構わず。その突起を口に含んで吸ってみるとフェルディナンは身体を硬くして耐えるように息を殺してしまった。セックスが出来るとはいえ妊娠している妻に無理強いしたり、あまり強く出ることが出来ないフェルディナンがただ黙って耐えているその姿は想像していた以上にすごく刺激的で官能的だ。
今までも粗雑に扱われた事は無いけれど。その荒々しい肉体の中心にある巨大なモノの先端を最深部まで受け入れるように身体を深々と重ねて子種を植え付けるように抱いていた分、私が妊娠してからは今までのように沢山私を抱けないことにフェルディナンが物足りなさを感じているのではないか? と私は常々思っていた。
マンネリ化は夫婦の大敵とも言うし。新しい趣向の提案は必要に思えた。だから逆のことをして少しは発散させてみるのもありかな? と考えていたのだが……これは思っていた以上に面白い。
「くっ! やめなさいっ! 月瑠!」
制止の声を掛けられても一向に止める気配のない私の両肩をフェルディナンが掴んだ。それでも吸い付くのを止めない私を乱暴に引き剥がす事も出来なくて。フェルディナンは顔を赤くしたまま結局無抵抗に身体をいいようにされている。
そういえば、フェルディナンのあれはどうなっているのだろう? そう思ってその巨大な一物に手を伸ばすと反応してちゃんと立っていた。それもはち切れそうなくらいブルブル震えて大きくなっているそれがフェルディナンの答えなのだと分かってちょっとだけ嬉しくなる。
フェルディナンの胸の先端を唇に含んだまま、私はそれを自らの秘所に招いてゆっくりと飲み込んで奥深くまで咥え込んだ。フェルディナンのそれが膣内に戻れたことを喜んでいるのが分かる。入れた瞬間、大きさを増したそれの熱さと圧倒的な存在感に気を取られそうになりながらも、何とかフェルディナンの胸元の突起に口を宛がい愛撫を繰り返していたらフェルディナンの腕が私の腰にそっと回された。どうやらやっとフェルディナンは観念したらしい――っと思っていたらそれは間違いだった。
「きゃぁっ! あぁっやぁっそんなっぁんっ! うごかさなっ……きゃんっ」
私の腰に回した手を動かしてフェルディナンが挿入の速度を速めてしまった。それもこちらの意志を全く無視してフェルディナンはそこをぐちゃぐちゃに掻き回しながら、パンパンと乾いた音が立つくらい強い突き上げを始めてしまった。
「はふっ……はっ……ふぁっ……ふぇっあっやぁ~っ」
「……可愛いな」
「う~っ……ぁっフェルディ、ナンっ……はぁっ……やめっ……ふぁっ」
「良い子だからこれ以上悪戯するのは止めなさい」
分かったな? と強い目でフェルディナンに見つめられても、負けるもんか! と負けん気の強さが災いして私は思わず意地を張ってしまった。
「ふわっ……はぁっ……やっ、やだっ!」
「月瑠……聞き分けないなら手加減がなかなか出来なくなる。子を宿している君にそれを強いる事は出来ないからな。鎖でも付けてこの部屋に一日中繋いでおくことになるがそれでも良いのか?」
「やぁっ……ど、して……ぁっフェルディ、ナンにふぁっ……さ、さわっちゃダメ、なの……?」
う~と悔しそうに唸りながら涙目で訴えても答えはやはり変わらなかった。
「頼むからこれ以上悪夢を見るようなことを言わないでくれ……」
「わたし、かわいぃフェルディナンっ……もっとふぁっ……みたぃ……はふっ」
かなり手加減されているとはいえ、久ぶりに強く抱かれて身体が喜んでしまう。それも喘ぐ声を必死に吐き出しているせいでフェルディナンの胸元を吸っている余裕なんて全くない。そこから離してしまった唇にフェルディナンが唇を寄せてきた。
「あっ……」
しっとりと唇を重ねられて。それから深く舌を吸われた。
「んっんっ……ん――っ!」
フェルディナンに吸われていた唇を無理矢理離して何とか唇の自由を得たものの、下半身はすっかりフェルディナンに捕らわれている。巨大なモノを深々と埋め込まれた股間は酷く熱い。何度もフェルディナンの巨大な雄の印が中で弾けて子種が再び注がれていくのを当然と受け止めて飲み込み続けている。
そして必死に受け入れているそこを更に押し広げるようにフェルディナンの強靱な腕に腰を振るように動かされた。ぐちゃぐちゃと精液と愛液に塗れた花弁を無理やり大きく広げられてしまうのを、それでも当然と受け入れてしまうのは余りにも沢山フェルディナンと身体を重ね合わせて来たせいだ。受け入れないなんてこと自体があり得ないことだという位に、私の身体はすっかりフェルディナンのものに染まってしまっている。
「ひっ! あっあっあっ……ふあぁっ!」
精液を絶えず注ぎ込みながらフェルディナンは先程の話の続きを呟いた。
「やはり……鎖は必要か?」
「……ふぇっ……? はふっ……ぁっう、そ……だよ、ね……?」
「俺はいたって本気だ」
「――っ!」
どうしよう。本当にフェルディナンは本気の顔をしている。夫婦となって沢山色々な話をして愛し合って。そうして身体を重ね続けて来たから分かる。今までにも何度も似たようなことを言われたことがあったけれど。一度としてフェルディナンは私に鎖を付けるなんて事はしなかった。
それは飽くまでも脅しというか警告の範囲内でのことで、それを実際に実行する位までフェルディナンがまだ追い詰められていなかったからだ。
けれど今回、私はフェルディナンを追い詰めるようなことを言って実際それを実行してしまった。それも私が古びた日記を手にしたことで精神的に不安定な状態になっているのはとうにバレているから尚のこと。
「フェルディナン……ふあっ……ぁっおねが、ぃ……許し、……て」
「今回ばかりは駄目だ。許さない。それに君をこのまま野放しにしたらまた一人で勝手なことをするだろう? 子を宿している君の意識がなくなるまで抱くことはもう出来ないからな。相応の処置だと思ってもらいたいものだが……」
そう言ってフェルディナンはぐじゅっと熱い肉棒を突き上げた。
「ふぁっ!」
「それに、君を部屋の中に閉じ込めて独占出来る状況もなかなかにそそられる。激しく抱けなくとも鎖に繋がれた君の身体に舌を這わせて一日中愛撫を繰り返す事くらいならしても構わないだろう?」
「かっ、かまいます――っ! そんなのダメにきまって……きゃぁっ!」
怒って反論していたら突然胸に食いつかれた。それも先程私がしたことへの仕返しとばかりに背中を押さえつけながら口に含まれ強く吸われてしまう。
「あっあんっ……ふぇっふぁっ……フェルディナっやっ……きゃあっ」
フェルディナンは胸の先端を口に含んでチュッチュッと音を立てて揉みしだきながら、器用にも下肢に埋め込んだ肉棒を私の膣内で扱いて挿入を繰り返している。そこに収まりきらなかった愛液と精液がこぼれ落ちて互いの股間とシーツを汚していくのにも構わず、フェルディナンはピッタリと互いの性器を合わせてズルズルと液に塗れながら出し入れを繰り返している。
「フェル、ディナン……あっ! ……やめっ」
「君は俺の下で鳴いている方が可愛らしくていい」
「ふぇっ……なに、をいって……きゃぁんっ!」
玩ばれるのは御免だとフェルディナンは眉を顰めて苦しげに紫混じった青い瞳を細めた。熱く太い肉棒でミッチリと隙間無く膣内を埋めながら何を甘ったるいことを言っているのかと、下肢を貫かれる振動に耐えながら必死に抗議したものの。勿論、フェルディナンは全く聞いてはくれなかった。
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