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第四章~大人扱編~
091 約束の言葉
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「フェルディニャンっおそらっおそらっ」
昼間とは違った暗闇とその中で輝く星の光を指さすとフェルディナンは穏やかな表情でゆっくりと頷いた。
「月瑠は空が好きなのか?」
「にゃんにゃ~」
他の人は私の言葉が理解出来なくて困った顔をするのに。何故だかフェルディナンには私の言いたいことが直ぐに理解出来るようだ。とっても優しくて綺麗な人だと思う。何時も傍にいてくれて猫語もちゃんと分かっている不思議な人。
さっきも窓辺に座ってジーッと空を見つめていたら外に出してくれた。そして今も一緒にバルコニーのカウチソファーに座りながら二人っきりでのんびり過ごしている。
フェルディナンは私が色んな話を沢山してもニコニコ笑っていいこいいこしてくれる。猫耳ごと頭を撫でられるのも。そうして褒められるのもすごく嬉しい。乱暴にワシャワシャしないで丁寧に優しく触ってくれるその大きな手がすごく好きで、私は尻尾の先でクルリと一巻きして自身の方へと引き寄せた。
「尻尾の扱いが随分と上手くなったな」
面白そうに私の尻尾を触っているフェルディナンの指には金色の綺麗な輪っかがはまっていた。それがどうしても気になって意味もなくチロチロと舌で舐めて味を確かめてみる。
「わっにゃ?」
「それは食べ物じゃない。指輪だ」
「にゃ?」
そう言われてもやっぱりよく分からない。見た目は綺麗。ピカピカ光ってる。そして本当に食べられないものなのか確かめる為にガジガジ噛んでみた。固すぎてやっぱり言われた通り食べられなかった。それに美味しくもない。冷たいツルツルした感触が残って気持ち悪さにウェッと舌を出しっぱなしにしていたら、ヨダレの垂れた口元を袖口でそっと拭われた。
「君は何でも口にするんだな。それと舌が出しっぱなしだぞ?」
「にゃう?」
だって何だかまだ舌先に感触が残っていて気持ち悪い。とはいえ舌の出しっぱなしはちょっとかっこ悪い気がする。だからとりあえず舌を引っ込めた。
「旨かったか?」
「おいしくにゃーねっ!」
「そうだな美味しくない、これは食べ物じゃないからな……というか不味いならどうしてそんなに楽しそうに答えるんだ?」
「フェルディニャンのてっ! てっ!」
「んっ? ああ、どうして付けているのか知りたいのか?」
「にゃんっ」
やっぱりフェルディナンは私が言ってることをちゃんと分かってくれる。嬉しくてフェルディナンの胸元に頭を擦り付けながらにゃあにゃあ鳴いてみたらふんわりと包み込むように優しく抱き締められた。
「月瑠も同じ物をしているぞ?」
ほらっと指先を掴まれてようやく気が付いた。確かに私の指にも同じ金色の輪っかが付いている。
「にゃぁ?」
不思議そうに首を傾げながら何で同じ物をしているのか聞いてみたらフェルディナンはくすくすと笑い出してしまった。
「あえて言うなら月瑠と俺はお揃いの物をするくらい仲がいいってことだな」
「にゃかよし? フェルディニャンはわにゃしスキ?」
「好きだ。というよりも愛してるという言葉の方が正しい気がするが……月瑠は俺が好きか?」
好きかと言われれば確かに一緒にいるのは気持ちが良いからフェルディナンのことはすごく好きだ。そうか、つまり私達は同じ物をお揃いでするくらいお互いが好き。そういうことなのか。
「わにゃしはフェルディニャンとずっといっちょにいるにゃーね?」
仲良しならこれからもずっと一緒にいられる。そう単純に解釈したらフェルディナンは一瞬キョトンとした顔をして次の瞬間、盛大に笑いだした。
「ふっ……はははははははっ」
「にゃぁっ!?」
普段から感情の起伏をあまり見せない穏やかな人が前触れもなく豪快に笑いだした。その衝撃に身体が反射的に動いていた。カウチソファーから転げ落ちるように飛びのいて、その先にあるテーブルの端に隠れた。身を伏せて全身の毛を逆立てながら警戒する。
「ふ――っ!」
そうして怒りを表しながら警戒していたら、ようやく笑いをおさめたフェルディナンにおいでおいでと呼ばれた。それでも近寄ってこないと分かるとフェルディナンも続いてソファーから下りた。スタスタと何の迷いもなく歩いてくる。そうして近寄られて真ん前まで来られても警戒を解くことができない。怒り顔で牙を剥き出しに唸っていたらフェルディナンは予想外の行動に出た。
突然その場に座り込んであぐらをかくと低い姿勢でポンポンと膝を叩いてその仕草だけでおいでと私を呼んだ。背の高いフェルディナンが座ると中腰で威嚇している私よりも少しだけ目線が低くなる。そうして先程とは真逆の見下ろすような姿勢になると、どうしてもフェルディナンの頭の天辺にあるつむじに目がいく。
何時もは見えないそれに興味津々に近づいて、それからすんすんと鼻を動かして匂いを嗅いでみる。すると、ふわりと良い香りがしてきて不思議と気持ちが落ち着いた。何だか妙にその香りが気に入ったのでとりあえずフェルディナンの頭ごと腕の中に抱えてひっついてみた。
「……月瑠?」
突然ひっつかれてもフェルディナンは何もしてこない。ただ優しく私の名前を呼んだだけ。それだけなのに何故だかとても嬉しくて胸のところがほんわか温かくなった。
「にゃんにゃ~」
ようやく機嫌を直して胸元に抱えたフェルディナンの顔に顔をすりすりさせるとチュッとほっぺたにキスされた。
「すまない驚かせるつもりはなかったんだが。好きかと聞いたのにまさか将来一緒だという返事が貰えるとは思ってもみなかったんだ」
「にゃん?」
自分たちが夫婦だということすらも忘れている人に、お膳立ても何もかも飛び越えて将来の約束を答えに持ってこられては、流石のフェルディナンも笑うしかない。拒絶や興味が薄れるといった反応があってもおかしくはないと覚悟していたのを、あっさりと変わらない思いを幼い瞳で率直に伝えられてしまったのだから。けれどもそんなフェルディナンの心境に気付いていない私は答えを欲しがった。
「フェルディニャン? フェルディニャンはわにゃしといっちょにゃあね?」
「月瑠……?」
これからもずっと一緒にいる? そう聞いただけだったのに笑われてしまった。だからまだ私はフェルディナンから返事を貰っていない。
「いっちょ? ずっといっちょにゃの?」
もう一度聞いてみてもフェルディナンは参ったと小さく首を振ってまた笑い出してしまう。なかなか欲しい返事がもらえなくて私は思わずガシッとフェルディナンの顔を掴んでしまった。
早く答えが欲しくてフェルディナンの顔を押さえ付けるように掴んだまま、ものすごく近くに顔を寄せたら鼻と鼻がくっついた。それでもフェルディナンが答えてくれないからムムムッと口を強く結んでもっと迫ったらまた豪快に笑われてしまった。
「はっはっは……まったく、君はさっきから何をやっているんだ? にらめっこでもしたいのか?」
まだ遊び足りないのかと聞かれて余計に顔が険しくなる。
「ちにゃうのにゃぁっ! フェルディニャンいっちょなのっ!」
「ああ、先程の返事が欲しいのか?」
「にゃんっ! フェルディニャンわにゃしといっちょ!」
あんまり返事をくれないから最後は強制的に一緒にいることにしてみた。するといきなり引き寄せられて唇を合わされた。
「ふにゃぁっ!?」
軽く互いの唇を重ね合わせただけなのにどうしてだか動悸が激しくなる。また警戒して毛を逆立てながら距離を取ろうとしたら今度は腰に手を回されて止められた。
「にゃんにゃぁ~っ!」
ふみゃふみゃ言いながらふんぬと力を入れて腕の中から抜け出そうとするも、どうしても逃れることが出来ない。最後は涙目でフェルディナンを見上げると目尻に唇を落とされた。どうやら涙を唇で吸い取ってくれたようだ。が、そんなことはどうでもいい。
どうにかしてフェルディナンの腕の中から逃げ出そうと必死にあれこれやってみたけれど結果は同じだった。どうしてだかフェルディナンは捕獲するのがすごく上手い。手慣れているといってもいいくらいだ。そんなに力は入れられていない筈なのにどういう訳かその強靱な腕の中から抜け出ることが出来ない。
「ふんみゃ――っ!」
「君は幼児化して忘れているようだが。俺は君の逃げ癖には慣れている。だから逃げようと藻掻いても無駄だぞ?」
言っている意味は分からなくともとりあえず逃げる努力は惜しまない。最後は必死の形相であらん限りの力で無理矢理這い出ようと踏ん張っていたら呆れたような声が聞こえてきた。
「まったく……どうして君は幼児化しても逃げ癖だけは治らないんだ?」
「にゃうっ! にゃうにゃう~っ! ふぎゃ――っ! にゃんにゃぁっ! うんにゃ――っ!」
「こらっ! 月瑠っ!? 暴れるな怪我をするぞ!?」
何てやかましい声を出すんだと片手で耳を塞ぎながらフェルディナンが驚きに目を見張っている。
「ふんにゃ――っ!」
「力むな!」
これだけやっても一向に緩む気配のない拘束に、最後はフェルディナンの腕に指先がめり込むくらいに強く力を入れて踏ん張る。そんでもって髪を振り乱しながらにゃあにゃあ涙目で鳴いて大暴れしてやった。そうしたらようやくフェルディナンが折れた。
「分かった! 分かったからだからそう暴れるな! 手を離すからっ!」
慌てているようなフェルディナンの声。そしてやっとのことで解放されると、今度は私の方が大慌てでフェルディナンから飛び退いた。壁際に寄ってふ――っ! っと威嚇すると弱ったように腰に手を当ててフェルディナンが立ち上がった。
「にゃ――っ!」
また捕獲されるのを恐れて威嚇の声を上げるとフェルディナンは私から離れた。後退してさっきまで一緒に座っていたカウチソファーにドカッと腰を下ろす。
「分かった近づかない。捕まえたりしないから」
両手を挙げて降参すると言われても信用できない。だから暫くの間、私は同じ距離間を維持しつつジーッと四方八方からフェルディナンを観察することにした。
――そうして観察すること数時間が経ち、
とりあえず私に近づこうとする気配は感じられないことが確認できた。フェルディナンは相変わらず私から視線を外さないけれど一応もう捕まる心配はないようだ。
目で行動を追われているだけならまあいいかと捕獲される危機から脱したことに安堵して、勝利の喜びにフェルディナンの周りを思わず本物の猫のように軽やかな足取りで四つん這いになってルンルンと回ってしまった。
「にゃんっにゃんっにゃん」
二足歩行ならスキップでも踏んでいるところだ。
「はぁ……頼むから少しは……」
「……ふにゃ?」
フェルディナンの発する弱った声に思わず動きを止める。何で困ってるの? 何で? と、顔色を窺う為に近づいたらフェルディナンの眉間にある皺が濃くなった。
「お腹の子供にもよくない。そう言っても今の君には分からないか……」
「にゃ?」
これだけ近づいても手を出してこないなら平気かな。先程まであれだけ警戒していたのにそうあっさり警戒を解いてフェルディナンの膝に顎を乗っけながらダラリとした姿勢で尻尾を振る。やっぱりフェルディナンの身体に寄りかかっているのは気持ちいい。そうしてフェルディナンにくっついてリラックスしながらにゃんにゃんご機嫌に鳴きだしたら深いため息が聞こえてきた。
「どうして逃げるんだ? そんなに俺が怖いのか? それと、あんなに無理に力を入れるから指先がすっかり赤くなってしまったな……」
そう言うなりフェルディナンが私の手を取り赤くなった指先を口に含んだ。
「にゃんっ!?」
びっくりして思わず口に含まれていない手の方でフェルディナンの顔を引っ掻いてしまった。痛みに小さく声を上げたもののフェルディナンは私の指を口に入れたまま手を離してくれない。そうして優しく指先を吸われている合間にもフェルディナンの頬からは薄ら血が滲んできている。
酷いことをしたのにどうしてフェルディナンは怒らないんだろう?
とりあえず私はもう暴れるのを止めることにした。もうこれ以上この人を傷付けたくなかった。
「フェルディニャンおこにゃにゃーの?」
どうして怒らないの? そう聞いたらフェルディナンはようやく指から口を離した。見ると口に含まれていた指先は赤みが引いてすっかり元の健康な肌色を取り戻している。どうして赤みがとれたのか私には分からない。フェルディナンが癒しの魔力で治してくれたのにそれすら今の私には分からなくなっていた。
「……以前君には悪戯で背中を引っ掻かれたことがある」
だから引っ掻き傷のことは気にするな。そう言って苦笑しているフェルディナンの顔に出来た赤い三本の線が痛々しい。思わずその傷口に口を近づけたら手で口を塞がれてしまった。
どうしてフェルディナンに拒否されてしまったのか分からない。くぐもった声で何故か問いかけると思いっきり不機嫌な顔でグイッと身体を引き離された。
「舐めなくていい」
やっぱり私が今何をしようとしていたのかフェルディナンには分かっていたようだ。勿論、私は塞いでいる手をベリッと引き剥がして反論した。
「やにゃ!」
「駄目だ」
「いやにゃっ!」
悪い事なんてしてないのにどうして駄目なのかと、フェルディナンを心配する気持ちを拒絶されたような気分になって思わずムキッと怒って言い返す。
「……どうして君は幼児化しても大人の時と全く同じ反応をするんだ?」
「にゃぁん?」
以前、背中を引っ掻いた時に同じように傷口を舐めてくすぐったいと嫌がられていたことを私はすっかり忘れていた。だからフェルディナンにそう言われても彼の考えていることを理解出来ない。
「そう言えば君は幼児化する前もよく歌いたがっていたが……猫になってからも機嫌が良いと歌いたがるんだな」
「にゃんにゃぁ?」
「さっきも俺の周りを歌いながら回っていたな」
ああ、あの時かと思い出して勢いよく返事をした。
「にゃんっ!」
「頼むから止めてくれ」
「にゃぁっ!?」
褒められるものと思って喜んで歌っていたと答えたのに、まさか音痴だから止めてくれと言われるとは。ガーンと頭の上にたらいでも落ちたような衝撃に何だか目眩でも起こしたように目の前がクラクラしてきた。
「にゃ、にゃぁぁ~」
好きだと思ったけどやっぱり嫌いだ! もういいもん! ショックでふらふらする身体に鞭打って立ち上がろうとしたらフェルディナンに止められた。
「あともう一つ言いたいことがある」
「ふにゃぁ?」
あのぉまだ何かご不満があるのでしょうか。何だかとっても悲しくなってきたしちょっと、……いや、かなり辛いので私はこれ以上何も聞きたくありません。と、両手で耳を塞いでキュ~と身を縮こませながら怖々とフェルディナンから目をそらす。
「やにゃぁ~」
必死に耳を塞いでいた両手を簡単に解かれて耳元に唇を寄せられる。
「――俺はずっと君と一緒にいる。ずっと君の傍にいる。そう約束する……」
エッ? という顔をして目をパチパチさせる私のおでこにキスをしてフェルディナンは優しく笑った。
「答えを聞きたがっていただろう?」
ドキドキして心臓が止まりそうなくらい怖かったのに、防ぎきれない止めの一撃だと思っていたものは、今まで聞いた中で一番甘くて優しい――私が一番欲しいと思っていた言葉だった。
昼間とは違った暗闇とその中で輝く星の光を指さすとフェルディナンは穏やかな表情でゆっくりと頷いた。
「月瑠は空が好きなのか?」
「にゃんにゃ~」
他の人は私の言葉が理解出来なくて困った顔をするのに。何故だかフェルディナンには私の言いたいことが直ぐに理解出来るようだ。とっても優しくて綺麗な人だと思う。何時も傍にいてくれて猫語もちゃんと分かっている不思議な人。
さっきも窓辺に座ってジーッと空を見つめていたら外に出してくれた。そして今も一緒にバルコニーのカウチソファーに座りながら二人っきりでのんびり過ごしている。
フェルディナンは私が色んな話を沢山してもニコニコ笑っていいこいいこしてくれる。猫耳ごと頭を撫でられるのも。そうして褒められるのもすごく嬉しい。乱暴にワシャワシャしないで丁寧に優しく触ってくれるその大きな手がすごく好きで、私は尻尾の先でクルリと一巻きして自身の方へと引き寄せた。
「尻尾の扱いが随分と上手くなったな」
面白そうに私の尻尾を触っているフェルディナンの指には金色の綺麗な輪っかがはまっていた。それがどうしても気になって意味もなくチロチロと舌で舐めて味を確かめてみる。
「わっにゃ?」
「それは食べ物じゃない。指輪だ」
「にゃ?」
そう言われてもやっぱりよく分からない。見た目は綺麗。ピカピカ光ってる。そして本当に食べられないものなのか確かめる為にガジガジ噛んでみた。固すぎてやっぱり言われた通り食べられなかった。それに美味しくもない。冷たいツルツルした感触が残って気持ち悪さにウェッと舌を出しっぱなしにしていたら、ヨダレの垂れた口元を袖口でそっと拭われた。
「君は何でも口にするんだな。それと舌が出しっぱなしだぞ?」
「にゃう?」
だって何だかまだ舌先に感触が残っていて気持ち悪い。とはいえ舌の出しっぱなしはちょっとかっこ悪い気がする。だからとりあえず舌を引っ込めた。
「旨かったか?」
「おいしくにゃーねっ!」
「そうだな美味しくない、これは食べ物じゃないからな……というか不味いならどうしてそんなに楽しそうに答えるんだ?」
「フェルディニャンのてっ! てっ!」
「んっ? ああ、どうして付けているのか知りたいのか?」
「にゃんっ」
やっぱりフェルディナンは私が言ってることをちゃんと分かってくれる。嬉しくてフェルディナンの胸元に頭を擦り付けながらにゃあにゃあ鳴いてみたらふんわりと包み込むように優しく抱き締められた。
「月瑠も同じ物をしているぞ?」
ほらっと指先を掴まれてようやく気が付いた。確かに私の指にも同じ金色の輪っかが付いている。
「にゃぁ?」
不思議そうに首を傾げながら何で同じ物をしているのか聞いてみたらフェルディナンはくすくすと笑い出してしまった。
「あえて言うなら月瑠と俺はお揃いの物をするくらい仲がいいってことだな」
「にゃかよし? フェルディニャンはわにゃしスキ?」
「好きだ。というよりも愛してるという言葉の方が正しい気がするが……月瑠は俺が好きか?」
好きかと言われれば確かに一緒にいるのは気持ちが良いからフェルディナンのことはすごく好きだ。そうか、つまり私達は同じ物をお揃いでするくらいお互いが好き。そういうことなのか。
「わにゃしはフェルディニャンとずっといっちょにいるにゃーね?」
仲良しならこれからもずっと一緒にいられる。そう単純に解釈したらフェルディナンは一瞬キョトンとした顔をして次の瞬間、盛大に笑いだした。
「ふっ……はははははははっ」
「にゃぁっ!?」
普段から感情の起伏をあまり見せない穏やかな人が前触れもなく豪快に笑いだした。その衝撃に身体が反射的に動いていた。カウチソファーから転げ落ちるように飛びのいて、その先にあるテーブルの端に隠れた。身を伏せて全身の毛を逆立てながら警戒する。
「ふ――っ!」
そうして怒りを表しながら警戒していたら、ようやく笑いをおさめたフェルディナンにおいでおいでと呼ばれた。それでも近寄ってこないと分かるとフェルディナンも続いてソファーから下りた。スタスタと何の迷いもなく歩いてくる。そうして近寄られて真ん前まで来られても警戒を解くことができない。怒り顔で牙を剥き出しに唸っていたらフェルディナンは予想外の行動に出た。
突然その場に座り込んであぐらをかくと低い姿勢でポンポンと膝を叩いてその仕草だけでおいでと私を呼んだ。背の高いフェルディナンが座ると中腰で威嚇している私よりも少しだけ目線が低くなる。そうして先程とは真逆の見下ろすような姿勢になると、どうしてもフェルディナンの頭の天辺にあるつむじに目がいく。
何時もは見えないそれに興味津々に近づいて、それからすんすんと鼻を動かして匂いを嗅いでみる。すると、ふわりと良い香りがしてきて不思議と気持ちが落ち着いた。何だか妙にその香りが気に入ったのでとりあえずフェルディナンの頭ごと腕の中に抱えてひっついてみた。
「……月瑠?」
突然ひっつかれてもフェルディナンは何もしてこない。ただ優しく私の名前を呼んだだけ。それだけなのに何故だかとても嬉しくて胸のところがほんわか温かくなった。
「にゃんにゃ~」
ようやく機嫌を直して胸元に抱えたフェルディナンの顔に顔をすりすりさせるとチュッとほっぺたにキスされた。
「すまない驚かせるつもりはなかったんだが。好きかと聞いたのにまさか将来一緒だという返事が貰えるとは思ってもみなかったんだ」
「にゃん?」
自分たちが夫婦だということすらも忘れている人に、お膳立ても何もかも飛び越えて将来の約束を答えに持ってこられては、流石のフェルディナンも笑うしかない。拒絶や興味が薄れるといった反応があってもおかしくはないと覚悟していたのを、あっさりと変わらない思いを幼い瞳で率直に伝えられてしまったのだから。けれどもそんなフェルディナンの心境に気付いていない私は答えを欲しがった。
「フェルディニャン? フェルディニャンはわにゃしといっちょにゃあね?」
「月瑠……?」
これからもずっと一緒にいる? そう聞いただけだったのに笑われてしまった。だからまだ私はフェルディナンから返事を貰っていない。
「いっちょ? ずっといっちょにゃの?」
もう一度聞いてみてもフェルディナンは参ったと小さく首を振ってまた笑い出してしまう。なかなか欲しい返事がもらえなくて私は思わずガシッとフェルディナンの顔を掴んでしまった。
早く答えが欲しくてフェルディナンの顔を押さえ付けるように掴んだまま、ものすごく近くに顔を寄せたら鼻と鼻がくっついた。それでもフェルディナンが答えてくれないからムムムッと口を強く結んでもっと迫ったらまた豪快に笑われてしまった。
「はっはっは……まったく、君はさっきから何をやっているんだ? にらめっこでもしたいのか?」
まだ遊び足りないのかと聞かれて余計に顔が険しくなる。
「ちにゃうのにゃぁっ! フェルディニャンいっちょなのっ!」
「ああ、先程の返事が欲しいのか?」
「にゃんっ! フェルディニャンわにゃしといっちょ!」
あんまり返事をくれないから最後は強制的に一緒にいることにしてみた。するといきなり引き寄せられて唇を合わされた。
「ふにゃぁっ!?」
軽く互いの唇を重ね合わせただけなのにどうしてだか動悸が激しくなる。また警戒して毛を逆立てながら距離を取ろうとしたら今度は腰に手を回されて止められた。
「にゃんにゃぁ~っ!」
ふみゃふみゃ言いながらふんぬと力を入れて腕の中から抜け出そうとするも、どうしても逃れることが出来ない。最後は涙目でフェルディナンを見上げると目尻に唇を落とされた。どうやら涙を唇で吸い取ってくれたようだ。が、そんなことはどうでもいい。
どうにかしてフェルディナンの腕の中から逃げ出そうと必死にあれこれやってみたけれど結果は同じだった。どうしてだかフェルディナンは捕獲するのがすごく上手い。手慣れているといってもいいくらいだ。そんなに力は入れられていない筈なのにどういう訳かその強靱な腕の中から抜け出ることが出来ない。
「ふんみゃ――っ!」
「君は幼児化して忘れているようだが。俺は君の逃げ癖には慣れている。だから逃げようと藻掻いても無駄だぞ?」
言っている意味は分からなくともとりあえず逃げる努力は惜しまない。最後は必死の形相であらん限りの力で無理矢理這い出ようと踏ん張っていたら呆れたような声が聞こえてきた。
「まったく……どうして君は幼児化しても逃げ癖だけは治らないんだ?」
「にゃうっ! にゃうにゃう~っ! ふぎゃ――っ! にゃんにゃぁっ! うんにゃ――っ!」
「こらっ! 月瑠っ!? 暴れるな怪我をするぞ!?」
何てやかましい声を出すんだと片手で耳を塞ぎながらフェルディナンが驚きに目を見張っている。
「ふんにゃ――っ!」
「力むな!」
これだけやっても一向に緩む気配のない拘束に、最後はフェルディナンの腕に指先がめり込むくらいに強く力を入れて踏ん張る。そんでもって髪を振り乱しながらにゃあにゃあ涙目で鳴いて大暴れしてやった。そうしたらようやくフェルディナンが折れた。
「分かった! 分かったからだからそう暴れるな! 手を離すからっ!」
慌てているようなフェルディナンの声。そしてやっとのことで解放されると、今度は私の方が大慌てでフェルディナンから飛び退いた。壁際に寄ってふ――っ! っと威嚇すると弱ったように腰に手を当ててフェルディナンが立ち上がった。
「にゃ――っ!」
また捕獲されるのを恐れて威嚇の声を上げるとフェルディナンは私から離れた。後退してさっきまで一緒に座っていたカウチソファーにドカッと腰を下ろす。
「分かった近づかない。捕まえたりしないから」
両手を挙げて降参すると言われても信用できない。だから暫くの間、私は同じ距離間を維持しつつジーッと四方八方からフェルディナンを観察することにした。
――そうして観察すること数時間が経ち、
とりあえず私に近づこうとする気配は感じられないことが確認できた。フェルディナンは相変わらず私から視線を外さないけれど一応もう捕まる心配はないようだ。
目で行動を追われているだけならまあいいかと捕獲される危機から脱したことに安堵して、勝利の喜びにフェルディナンの周りを思わず本物の猫のように軽やかな足取りで四つん這いになってルンルンと回ってしまった。
「にゃんっにゃんっにゃん」
二足歩行ならスキップでも踏んでいるところだ。
「はぁ……頼むから少しは……」
「……ふにゃ?」
フェルディナンの発する弱った声に思わず動きを止める。何で困ってるの? 何で? と、顔色を窺う為に近づいたらフェルディナンの眉間にある皺が濃くなった。
「お腹の子供にもよくない。そう言っても今の君には分からないか……」
「にゃ?」
これだけ近づいても手を出してこないなら平気かな。先程まであれだけ警戒していたのにそうあっさり警戒を解いてフェルディナンの膝に顎を乗っけながらダラリとした姿勢で尻尾を振る。やっぱりフェルディナンの身体に寄りかかっているのは気持ちいい。そうしてフェルディナンにくっついてリラックスしながらにゃんにゃんご機嫌に鳴きだしたら深いため息が聞こえてきた。
「どうして逃げるんだ? そんなに俺が怖いのか? それと、あんなに無理に力を入れるから指先がすっかり赤くなってしまったな……」
そう言うなりフェルディナンが私の手を取り赤くなった指先を口に含んだ。
「にゃんっ!?」
びっくりして思わず口に含まれていない手の方でフェルディナンの顔を引っ掻いてしまった。痛みに小さく声を上げたもののフェルディナンは私の指を口に入れたまま手を離してくれない。そうして優しく指先を吸われている合間にもフェルディナンの頬からは薄ら血が滲んできている。
酷いことをしたのにどうしてフェルディナンは怒らないんだろう?
とりあえず私はもう暴れるのを止めることにした。もうこれ以上この人を傷付けたくなかった。
「フェルディニャンおこにゃにゃーの?」
どうして怒らないの? そう聞いたらフェルディナンはようやく指から口を離した。見ると口に含まれていた指先は赤みが引いてすっかり元の健康な肌色を取り戻している。どうして赤みがとれたのか私には分からない。フェルディナンが癒しの魔力で治してくれたのにそれすら今の私には分からなくなっていた。
「……以前君には悪戯で背中を引っ掻かれたことがある」
だから引っ掻き傷のことは気にするな。そう言って苦笑しているフェルディナンの顔に出来た赤い三本の線が痛々しい。思わずその傷口に口を近づけたら手で口を塞がれてしまった。
どうしてフェルディナンに拒否されてしまったのか分からない。くぐもった声で何故か問いかけると思いっきり不機嫌な顔でグイッと身体を引き離された。
「舐めなくていい」
やっぱり私が今何をしようとしていたのかフェルディナンには分かっていたようだ。勿論、私は塞いでいる手をベリッと引き剥がして反論した。
「やにゃ!」
「駄目だ」
「いやにゃっ!」
悪い事なんてしてないのにどうして駄目なのかと、フェルディナンを心配する気持ちを拒絶されたような気分になって思わずムキッと怒って言い返す。
「……どうして君は幼児化しても大人の時と全く同じ反応をするんだ?」
「にゃぁん?」
以前、背中を引っ掻いた時に同じように傷口を舐めてくすぐったいと嫌がられていたことを私はすっかり忘れていた。だからフェルディナンにそう言われても彼の考えていることを理解出来ない。
「そう言えば君は幼児化する前もよく歌いたがっていたが……猫になってからも機嫌が良いと歌いたがるんだな」
「にゃんにゃぁ?」
「さっきも俺の周りを歌いながら回っていたな」
ああ、あの時かと思い出して勢いよく返事をした。
「にゃんっ!」
「頼むから止めてくれ」
「にゃぁっ!?」
褒められるものと思って喜んで歌っていたと答えたのに、まさか音痴だから止めてくれと言われるとは。ガーンと頭の上にたらいでも落ちたような衝撃に何だか目眩でも起こしたように目の前がクラクラしてきた。
「にゃ、にゃぁぁ~」
好きだと思ったけどやっぱり嫌いだ! もういいもん! ショックでふらふらする身体に鞭打って立ち上がろうとしたらフェルディナンに止められた。
「あともう一つ言いたいことがある」
「ふにゃぁ?」
あのぉまだ何かご不満があるのでしょうか。何だかとっても悲しくなってきたしちょっと、……いや、かなり辛いので私はこれ以上何も聞きたくありません。と、両手で耳を塞いでキュ~と身を縮こませながら怖々とフェルディナンから目をそらす。
「やにゃぁ~」
必死に耳を塞いでいた両手を簡単に解かれて耳元に唇を寄せられる。
「――俺はずっと君と一緒にいる。ずっと君の傍にいる。そう約束する……」
エッ? という顔をして目をパチパチさせる私のおでこにキスをしてフェルディナンは優しく笑った。
「答えを聞きたがっていただろう?」
ドキドキして心臓が止まりそうなくらい怖かったのに、防ぎきれない止めの一撃だと思っていたものは、今まで聞いた中で一番甘くて優しい――私が一番欲しいと思っていた言葉だった。
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結衣の義兄の長男。
面倒見がよく優しい。
近くのクリニックの先生をしている。
矢神 秀(Shu yagami)
24歳 172cm
結衣の義兄の次男。
優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。
結衣と大雅が通うS高の数学教師。
矢神 瑛斗(Eito yagami)
22歳 177cm
結衣の義兄の三男。
優しいけどちょっぴりSな一面も!?
今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。
矢神 大雅(Taiga yagami)
高3 182cm
結衣の義兄の四男。
学校からも目をつけられているヤンキー。
結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。
*注 医療の知識等はございません。
ご了承くださいませ。
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※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
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