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第二章~恋人扱編~
043 束の間の子守歌
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イリヤはフェルディナンと話をしている内に少しの間だけ懐かしい昔の感覚を取り戻していた。
困ったな……流されそうになる。
穏やかなフェルディナンの横顔。こちらを見ていないフェルディナンの視線の先――彼の視界を常に占領しているのは一人だけだ。彼の視線は何時もベッドの中で眠りについている少女に向けられている。
「月瑠と出会ってからフェルディナンは変わったよね」
「そうか?」
「やっぱり気付いてないんだな」
一言でいうとフェルディナンは落ち着いたように見える。月瑠に出会ってからずっとフェルディナンは月瑠しか見ていなかった。本人は分かっていないようだったが。異邦人という存在自体が珍しくて目線を釘付けにされた事、それがきっかけで始まりだったとしても。その稀有な存在にフェルディナンが初めから囚われていたことに気付いていたのは自分だけだろう。
「そう言うお前も月瑠に出会ってから大分変わったぞ?」
「そうだね。俺もフェルディナンも結良が亡くなった後はずっと他人に興味を示さなかったし、何に対しても深い感情を抱くことはなかったからね。生きる事がどうでもいいみたいに振る舞って周りの奴らも相当に怖がって心配していたようけど、お構いなしで何があっても顧みる事をしなかった。だから月瑠が現れてからフェルディナンが笑うようになって皆驚いてるんだよ?」
「……そうか」
「まあ、俺も人の事はあまり言えないんだけどさ。多分それと同じような事思われているだろうし」
ふっと鼻で笑ってフェルディナンは紫混じった青い瞳を柔らかく細めた。月瑠の部屋の扉に背中を預けて僅かに上体を斜めに傾けながら、腕を組んで朝の陽ざしを全身に浴びている姿は今ある穏やかな日常をそのまま体現しているような雰囲気すら漂わせている。
「……お前は最近、やっと人に戻れたような顔をしている」
「あのね、フェルディナン。牙を抜かれた暗殺者に何の価値があるっていうのさ? 冗談はよしてくれ」
「いい加減それはもう引退して軍に戻れ。お前なら黒衣の軍の中枢を担えるだけの力量がある。そのまま復帰しても誰も文句は言わないだろう。元々お前は俺の右腕だったんだからな」
そう言うフェルディナンは安心したような酷く落ち着いた表情をしている。その穏やかな雰囲気の中に釣られて入り込んでしまう。
「フェルディナンはさ、俺が結良を亡くして荒れてた時何も言わなかったよね? ただずっと静かに俺がすることを黙って見ていただけだった。俺が軍を抜けて結良を殺した奴らを見つけ出して復讐した時も、そのまま暗殺の仕事を続ける事にした時も何も言わなかった。それなのにどうして今になって戻ってこい何て言うんだよ?」
「――お前が必要だからだ」
余計な事は何も言わずに。フェルディナンは言葉の意味がそのまま宿った強い瞳をイリヤに向けて真っ直ぐ見据えたまま動かない。フェルディナンの射貫く様な視線にイリヤはたじろいで言葉を失って、それから降参したように頭を縦にゆっくりと振った。
「はぁっ、それはまあいずれはね。戻ることも考えておくよ……それにしても月瑠ってさ、色んなものに怖がって逃げ回ってるのに肝心要なところでは何時も全力で向かって来るんだよね。怖いもの知らずなのか臆病なのか分からない。物珍しいものを人は好きになるけど月瑠はかなり特別だ。矛盾し過ぎて見てて飽きないよ」
――だから惹かれるのかもしれない。
「彼女は生きることに素直だからな……俺達が昔持っていた失くした感情を持ち続けている。自由に生きる心とそれを行動する意志を殺さず。曲げる事無く奇跡的にも共に持ち合わせて現れた。だから放っておけない」
確認するように言葉を噛み締めながらフェルディナンは瞳を閉じた。
「どうしてそう月瑠に対して時々他人行儀な言い方をするんだよ?」
「……彼女は俺には純粋過ぎて近寄りがたい時がある」
「何それ? 何変な遠慮してるのさ? 普段は誰も月瑠に近寄らせないように厳命して、悪い虫が付かないように監視に余念がない癖して……」
複雑そうに顔を顰めたフェルディナンに呆れながらもイリヤは口元から自然と笑みを零していた。
「――普段は徹底して月瑠を束縛しているのに何でそんな処だけ遠慮してるんだかね……黒将軍の異名も月瑠の前では形無しか。本当に月瑠って可愛いし凄いよね。君をここまで振り回せる奴なんて他にはいないのに、自分のことを一般人だと思い込んでて全く自覚してないみたいだし」
「それは俺も困っているところだ」
「フェルディナンが困っている何てやっぱり月瑠は凄いな。月瑠に出会ってから俺は何だかいろんなものから解放されたような気がしているよ」
先程からずっと昔を取り戻せたような感覚が過っている。それは錯覚だと苦笑しつつイリヤは、ベッドの上で眠り続ける月瑠に視線を落とした。
ベッドで丸くなって眠っている月瑠の頬に手を当てて輪郭を辿りながら少しだけ擽る様に指先を動かしてみると、「……んっ」と小さく声を出して掌に掴んだイリヤの銀髪を持ったまま布団の中で益々丸まって固くなってしまった。ムゥーと寝苦しそうに眉間に皺を寄せている。
――自分の銀髪を握って無垢な子供のように静かな寝息を立てている月瑠を見ていると、結良の件があったのにどうしてこの二人を見守ろうと思ったのか何だか妙に納得してしまう自分がいる。二人には恨んでいないと言ったけれど、そう言う感情を一瞬でも抱いた事がなかったかと問われれば嘘になる。今は恨んでいないのは本当の事だ。だが大切な者を失った時は誰彼構わず敵意を剥き出しにして責めることに何ら躊躇することもなかった。
「まあ何にしても、どうでもいいと仕事と職務を半ば放棄して逃亡しまくる将軍様と情緒不安定な暗殺者の傍にいた奴からすると月瑠の存在は救いだろうね。そうだろう? バートランド」
「よく分かってますね。イリヤさん」
イリヤの呼びかけにフェルディナンの後方からバートランドがやれやれと大柄な肢体を少し前のめりにして疲れた様子で現れた。バートランドは口髭に手をやりながら落ち着きなさそうにしている。
「姫様ほどお二人をまともな感情を持った人間に戻してくれる方はいらっしゃいませんからね。姫様を大切だと思っているのは俺だけじゃない。軍の奴らは皆姫様に感謝していますし大切に思っていますよ。失えない存在だと思う位に」
どうやらバートランドはずっと出るタイミングを窺っていたようだ。イリヤとフェルディナンが話していた内容を熟知している。
「まともな人間、ね。なかなか言ってくれるじゃないかバートランド」
「イリヤさん俺は嘘何て言っていませんよ?」
「……お前もたまには言いたいことを言うんだな」
普段あまり反論することのないバートランドの反撃にフェルディナンはしげしげと驚いた様子でバートランドの顔を眺めている。
「クロス将軍……普段は黙っていても俺も一応思うところはあるんですよ? お二人は怖い顔して話し合いをしていても、途中で姫様がやって来ると途端に表情が変わりますからね。あの変わりようときたら本当に……」
「バートランド、月瑠に余計な事は――」
「分かっています。言いませんからそんな怖い顔して睨まないで下さい」
やっぱり怖いのかバートランドは少し後退してフェルディナンから目を逸らしている。そんな二人のやり取りを月瑠の隣に座りながら眺めていたイリヤがくすくす笑いながらバートランドに助け船を寄こした。
「フェルディナン生殖時期を終えたばかりで少し虫の居所が悪いからって、あまりバートランドに当たるなよ」
そう言ってフェルディナンとバートランドの話を遮ったイリヤにフェルディナンはそのまま不機嫌そうな顔を向けた。矛先を自分に移されてもイリヤは余裕の表情で笑っている。
「イリヤ……報告することがあるだろう? どうせなら一度で済ませてしまいたいんだが」
「分かってるよ。シャノン出て来いよ。フェルディナンがお前にも用があるんだってさ」
「――用があるとは?」
シャノンが音を立てずに何処からともなく現れてバートランドの横にすっと並んだ。青みがかった灰色の耳をピクピクと動かして疑わし気な様子で黄金の瞳をイリヤに向けている。シャノンが現れたのを確認するとイリヤは懐から徐に取り出したものをフェルディナンに向けて素早く投げつけた。
「フェルディナン、これがあの人達の答えだよ」
不意に投げられたそれをフェルディナンは苦も無く流れるような動作で受け止めた。フェルディナンの強靭な筋肉に覆われている剥き出しの上腕――その指先には黒百合が描かれたカードが収められている。それはイリヤが月瑠に初めて会った時、フェルディナンへ手渡すよう頼んだものと同じ絵柄の物だった。
「やはりそうか……」
カードを見ずとも結果は分かっていたかのようにフェルディナンが小さく呟いた。
*******
「五枚の内回収したカードはこれで三枚。フェルディナンの答えは聞かずとも分かっているからね。あと一枚で事実上全てが決まるってわけだ」
イリヤは淡々と感情の籠らない声でそう告げた。
「ああ」
「イースデイル殿下、シンクレア殿下は反対。レインウォーター殿下は賛成。そして最後は……」
「エアハートか……」
「どうせ何時も通りライルに動向を探らせてるんだろ?」
「……ライル」
フェルディナンが呼ぶとその後方に灰色の影が舞い降りた。灰色の外套を羽織り片膝を地面に付いたライルが重々しく首を垂れて跪いている。ライルは感情を殺した低い声で口を開いた。
「ここに」
「彼等の動向はどうなっている?」
「恐れながら――フェルディナン様が想定された通りの情勢に変わりはなく」
「芳しくないか」
「残念ながらそのようです」
「どうやら古代貴族の面々はレインウォーター殿下を抜かしてどうしてもフェルディナンを敵に回したいらしいね」
「そのようだな……」
「ははは、落ちぶれたものだよね。国の建国者の末裔が国の優位性を保つ為に歴史を繰り返す――月瑠を人柱に立てるような考え方しか持っていない古代貴族なんて滅びてしまえばいいんじゃない?」
「その物言い……お前らしくないなイリヤ」
「それはね。頭にもくるよ。過去の異邦人と同じ方法で政権に月瑠を巻き込むってそう言っているんだよ? あの人達は」
「ああ、だが何時もならそれは俺が言う台詞だろう? お前ではなく」
「いいじゃないかたまにはさ、フェルディナンの代わりにそういうことを言うのも。それで、フェルディナンはどうするつもり? 何かするつもりだから此処にこのメンバーを集めたんだろう?」
イリヤの言葉に各々が顔を上げてフェルディナンへとその視線を向けた。イリヤ、バートランド、シャノン、ライルから一斉に向けられた視線に応えてフェルディナンはゆっくりと顔を上げた。
「歴史を繰り返すような真似を許すつもりはない。俺から月瑠を奪うと言うのならイリヤ、お前の言う通り黒衣の軍――総勢10万の兵を以って反対派は全て殲滅する。そしてその為の準備はもう出来ている」
「「「「!?」」」」
全員がフェルディナンの言葉に衝撃を受けて動揺に動けなくなっている中、イリヤは一人だけ沈痛な面持ちでフェルディナンへと怒りに震える血の様に赤い瞳を向けた。
「……古代貴族の当主達が下した決定は例えユーリー陛下と言えどそう簡単に覆すことは出来ない。……だからって君が始めるっていうのか! それは何より月瑠が恐れていたことじゃないか!」
イリヤは息を荒くしてフェルディナンに食ってかかった。”神解き”によって神からの統治を離れた世界。それによって大規模な戦闘が発生するかもしれないという可能性を誰よりも恐れていたのは月瑠だった。それを自分の為に最愛の恋人が始めると言い出したなんて事が月瑠に知れたら。本当に冗談ではない。
「始めるからには一人残らず生かしてはおかない。これは国への反逆だ。ずっと穏便に事を進められればと、そう働きかけていた。だが彼等はこの先も変わるつもりはないらしい」
「我々獣人達が反逆の徒として追放された25年前。その時に果たせなかったことを貴方が継ぐつもりなのか?」
シャノンの問いかけにフェルディナンは少しだけ目線をそちらへ向けた。
「……ああ、だがお前達獣人をこれに巻き込むつもりはない」
「いよいよ黒将軍の本領発揮ってわけ? 月瑠がこの世界に来てからずっと君は俺やライルにあの人達の動向を探らせていたけど、まさかそんなことを考えていたとはね。でも、そんなことされるくらいなら昼行灯に徹してくれていた方がまだましだよ。第一、それだけ大規模な戦闘を引き起こしたらいくら何でも月瑠が気付かないわけないじゃないか!」
「だからお前達を呼んだ……シャノン」
「はい」
「――月瑠が事態に気付かないように彼女を国外へ逃す。獣人の国へ月瑠を連れて行って保護してほしい。内密にな。お前なら出来るだろう?」
「それは……可能ですが、月瑠が貴方の傍を離れてもいいと言うとは思えない。それも納得出来るだけの理由がなければ月瑠が大人しく国を出るとも思えないのだが……」
「そうだな。だからバートランド、イリヤ、お前達にも月瑠について国を出てほしい」
「「!?」」
「軽い小旅行だ。前から月瑠は外に出たがっていただろう? 警護に当たるよう王命を受けているお前達が一緒なら月瑠も疑うことはない。数か月の間だけでいい。俺は軍務でついて行けないと話しておく。たまに顔を見せるようにするが、全てが終わるまで月瑠を獣人の国に留めておいてほしい」
「……本気、なんですか? クロス将軍」
バートランドが驚愕に瞳を大きく見開いて緊張に両掌を強く握り締めながら身体を戦慄かせて、額に流れる汗を拭おうともせず固唾を呑んでフェルディナンの答えを待っている。
「お前達が月瑠を留めている間に俺が全てを終わらせる。ライルには俺とお前達との伝令役を担ってもらう事になるが……」
ライルは全てを心得ているようで一瞬だけフェルディナンと目線を合わせて意志を通じ合わせた。ライルはフェルディナンのすることに何の異存もないようだ。フェルディナンにただ付き従うような姿勢のライルにイリヤは舌打ちしてからフェルディナンを責めるように睨め付けた。
「ライルだけ傍に残して一人で全てを終わらせる気なのかよ? それも月瑠に何も知らせずに。俺達を除け者にして」
「そうですよ何も知らない内にクロス将軍がそんな無茶な事をしたと姫様が知ったらどう思うか……」
「怒るだろうな……誇大妄想に取りつかれた者達の末路など知った事ではないが、それを知れば自分の事よりも俺の心配をして月瑠が苦しむことになる。だから月瑠には知られる訳にはいかないんだ」
「だから月瑠には黙って一人でやるつもりだっていうのか」
「戦いの最中にはお前達に配慮してやれるほどの余裕はない。だからお前達に此処にいてもらっては困るんだ」
「――そうやって俺達を邪魔者扱いして遠ざける気?」
「政変に犠牲は付きものだ。選択出来る期間は十分過ぎる程あった。だがどうあっても彼等は変わるつもりはないらしい。それにお前達を関わらせたくないだけだ」
「他に……方法はないって言うのか?」
「他に方法はない。そして彼等がそうしなければ終わらないというのなら。俺もそれに従うまでだ。古い風習もしきたりも悪しきものは全て終わらせる。繰り返すのはこれが最後だ……」
「……そっかそうやって自分の手だけ汚して終わらせる気なのかよ。でもさ、フェルディナン。俺も俺の命に代えても守りたいものがあるんだぞ……?」
振絞る様に発せられたイリヤの言葉も今のフェルディナンには届かない。
「ああ、分かっている。だがこれは俺が下した決断だ。それを変えるつもりはない。他に異論がないなら了承したとみなす。これでこの話しはもう終わりだ――」
一方的に言い切られて無理やり話を終わらせられてしまう。そして誰もフェルディナンの決定に反論することが出来ず、こうして最悪の決断が下されてしまった。
――結良が亡くなってから過ごしていた時間。ずっと月瑠に出会うまで冷徹な人でなくなってしまったような冷え切った日々だけが残されて。底なし沼に嵌って動けなくなっていた。けれど絶望の中で人を憎み続けるのは忍耐と体力がいる作業だ。
「それにしてもさっきからずっと月瑠が怖い顔して寝てるんだけどさ」
フェルディナンとイリヤ以外皆この場を退出してしまって、初めと同じ三人だけの空間に何事もなかったかのような穏やかな空気が流れている。イリヤは月瑠の頬を撫でながら先程からずっと解消されない眉間に刻まれた皺をチョンチョンと突いてどうしたものかと首を傾げた。
「子守歌でも歌ってあげようか?」
「出来るならそうしてやってくれ――俺はもう一度寝る」
冗談で言ったつもりだったのにフェルディナンが返してきた返事は肯定で、それも月瑠を任せて寝に戻るなどと言われてはそうするしかない。束の間の静寂と穏やかな時間。これから起こることを考えると嵐の前の静けさに鳥肌が立ちそうになる。
「分かったよ。まあ適当にやっておくからさ。フェルディナンは寝てていいよ?」
「ああ、任せた」
「それと、俺はこれから最後のカードをエアハート殿下から回収してくるよ……月瑠が手を放してくれたらだけどね。それまで俺は月瑠の傍にいるからね?」
確認するように月瑠の傍にいてもいいのか? と問いかけるとフェルディナンは眠たげに半ば重く閉じられている紫混じった青い瞳を静かにこじ開けて、ジッとフェルディナンを見つめてきた。
「……イリヤ」
「何?」
「必ず……戻ってこい」
「勿論戻って来るけど……何変な心配してるのさ?」
笑ってそう答えてもフェルディナンの表情は変わらず、珍しく心配するような顔をしてこちらを見ている。
「……本当に月瑠といいフェルディナンといい疑り深いよね」
「お前は月瑠とは違う意味で危なっかしいところがあるからな」
この人なんでこんなに強いんだよ……?
とんでもなく困難で辛い決断を下した後だというのに、フェルディナンは何時もと変わらずそれもとても眠そうな顔をしていて。年の差以上に器の大きさが違うということを改めて認識させられてしまう。
「はいはい、分かっているよ。ちゃんと君達の処に戻って来るし、いずれは軍にも復帰する。だから安心して待っててよ。それともフェルディナンも子守歌、歌ってほしいの?」
「……必要ない」
素直にそう答えたフェルディナンは眠そうに首を横に振りながら扉に半ばもたれかかっている。
「そっか、じゃあ大人しく君も寝ててよ」
「分かった……」
――まったく、この二人はどうしてこう世話の焼きがいがあるんだかね。
どうやら束の間の子守歌が必要なのはフェルディナンも同じようだった。
絶対にこのままでは終わらせない……
大切な二人を前にしてイリヤはハハッと気づかれないように小さく笑ってから、秘めたる思いを固めて少しだけ唇の端を引き上げた。
困ったな……流されそうになる。
穏やかなフェルディナンの横顔。こちらを見ていないフェルディナンの視線の先――彼の視界を常に占領しているのは一人だけだ。彼の視線は何時もベッドの中で眠りについている少女に向けられている。
「月瑠と出会ってからフェルディナンは変わったよね」
「そうか?」
「やっぱり気付いてないんだな」
一言でいうとフェルディナンは落ち着いたように見える。月瑠に出会ってからずっとフェルディナンは月瑠しか見ていなかった。本人は分かっていないようだったが。異邦人という存在自体が珍しくて目線を釘付けにされた事、それがきっかけで始まりだったとしても。その稀有な存在にフェルディナンが初めから囚われていたことに気付いていたのは自分だけだろう。
「そう言うお前も月瑠に出会ってから大分変わったぞ?」
「そうだね。俺もフェルディナンも結良が亡くなった後はずっと他人に興味を示さなかったし、何に対しても深い感情を抱くことはなかったからね。生きる事がどうでもいいみたいに振る舞って周りの奴らも相当に怖がって心配していたようけど、お構いなしで何があっても顧みる事をしなかった。だから月瑠が現れてからフェルディナンが笑うようになって皆驚いてるんだよ?」
「……そうか」
「まあ、俺も人の事はあまり言えないんだけどさ。多分それと同じような事思われているだろうし」
ふっと鼻で笑ってフェルディナンは紫混じった青い瞳を柔らかく細めた。月瑠の部屋の扉に背中を預けて僅かに上体を斜めに傾けながら、腕を組んで朝の陽ざしを全身に浴びている姿は今ある穏やかな日常をそのまま体現しているような雰囲気すら漂わせている。
「……お前は最近、やっと人に戻れたような顔をしている」
「あのね、フェルディナン。牙を抜かれた暗殺者に何の価値があるっていうのさ? 冗談はよしてくれ」
「いい加減それはもう引退して軍に戻れ。お前なら黒衣の軍の中枢を担えるだけの力量がある。そのまま復帰しても誰も文句は言わないだろう。元々お前は俺の右腕だったんだからな」
そう言うフェルディナンは安心したような酷く落ち着いた表情をしている。その穏やかな雰囲気の中に釣られて入り込んでしまう。
「フェルディナンはさ、俺が結良を亡くして荒れてた時何も言わなかったよね? ただずっと静かに俺がすることを黙って見ていただけだった。俺が軍を抜けて結良を殺した奴らを見つけ出して復讐した時も、そのまま暗殺の仕事を続ける事にした時も何も言わなかった。それなのにどうして今になって戻ってこい何て言うんだよ?」
「――お前が必要だからだ」
余計な事は何も言わずに。フェルディナンは言葉の意味がそのまま宿った強い瞳をイリヤに向けて真っ直ぐ見据えたまま動かない。フェルディナンの射貫く様な視線にイリヤはたじろいで言葉を失って、それから降参したように頭を縦にゆっくりと振った。
「はぁっ、それはまあいずれはね。戻ることも考えておくよ……それにしても月瑠ってさ、色んなものに怖がって逃げ回ってるのに肝心要なところでは何時も全力で向かって来るんだよね。怖いもの知らずなのか臆病なのか分からない。物珍しいものを人は好きになるけど月瑠はかなり特別だ。矛盾し過ぎて見てて飽きないよ」
――だから惹かれるのかもしれない。
「彼女は生きることに素直だからな……俺達が昔持っていた失くした感情を持ち続けている。自由に生きる心とそれを行動する意志を殺さず。曲げる事無く奇跡的にも共に持ち合わせて現れた。だから放っておけない」
確認するように言葉を噛み締めながらフェルディナンは瞳を閉じた。
「どうしてそう月瑠に対して時々他人行儀な言い方をするんだよ?」
「……彼女は俺には純粋過ぎて近寄りがたい時がある」
「何それ? 何変な遠慮してるのさ? 普段は誰も月瑠に近寄らせないように厳命して、悪い虫が付かないように監視に余念がない癖して……」
複雑そうに顔を顰めたフェルディナンに呆れながらもイリヤは口元から自然と笑みを零していた。
「――普段は徹底して月瑠を束縛しているのに何でそんな処だけ遠慮してるんだかね……黒将軍の異名も月瑠の前では形無しか。本当に月瑠って可愛いし凄いよね。君をここまで振り回せる奴なんて他にはいないのに、自分のことを一般人だと思い込んでて全く自覚してないみたいだし」
「それは俺も困っているところだ」
「フェルディナンが困っている何てやっぱり月瑠は凄いな。月瑠に出会ってから俺は何だかいろんなものから解放されたような気がしているよ」
先程からずっと昔を取り戻せたような感覚が過っている。それは錯覚だと苦笑しつつイリヤは、ベッドの上で眠り続ける月瑠に視線を落とした。
ベッドで丸くなって眠っている月瑠の頬に手を当てて輪郭を辿りながら少しだけ擽る様に指先を動かしてみると、「……んっ」と小さく声を出して掌に掴んだイリヤの銀髪を持ったまま布団の中で益々丸まって固くなってしまった。ムゥーと寝苦しそうに眉間に皺を寄せている。
――自分の銀髪を握って無垢な子供のように静かな寝息を立てている月瑠を見ていると、結良の件があったのにどうしてこの二人を見守ろうと思ったのか何だか妙に納得してしまう自分がいる。二人には恨んでいないと言ったけれど、そう言う感情を一瞬でも抱いた事がなかったかと問われれば嘘になる。今は恨んでいないのは本当の事だ。だが大切な者を失った時は誰彼構わず敵意を剥き出しにして責めることに何ら躊躇することもなかった。
「まあ何にしても、どうでもいいと仕事と職務を半ば放棄して逃亡しまくる将軍様と情緒不安定な暗殺者の傍にいた奴からすると月瑠の存在は救いだろうね。そうだろう? バートランド」
「よく分かってますね。イリヤさん」
イリヤの呼びかけにフェルディナンの後方からバートランドがやれやれと大柄な肢体を少し前のめりにして疲れた様子で現れた。バートランドは口髭に手をやりながら落ち着きなさそうにしている。
「姫様ほどお二人をまともな感情を持った人間に戻してくれる方はいらっしゃいませんからね。姫様を大切だと思っているのは俺だけじゃない。軍の奴らは皆姫様に感謝していますし大切に思っていますよ。失えない存在だと思う位に」
どうやらバートランドはずっと出るタイミングを窺っていたようだ。イリヤとフェルディナンが話していた内容を熟知している。
「まともな人間、ね。なかなか言ってくれるじゃないかバートランド」
「イリヤさん俺は嘘何て言っていませんよ?」
「……お前もたまには言いたいことを言うんだな」
普段あまり反論することのないバートランドの反撃にフェルディナンはしげしげと驚いた様子でバートランドの顔を眺めている。
「クロス将軍……普段は黙っていても俺も一応思うところはあるんですよ? お二人は怖い顔して話し合いをしていても、途中で姫様がやって来ると途端に表情が変わりますからね。あの変わりようときたら本当に……」
「バートランド、月瑠に余計な事は――」
「分かっています。言いませんからそんな怖い顔して睨まないで下さい」
やっぱり怖いのかバートランドは少し後退してフェルディナンから目を逸らしている。そんな二人のやり取りを月瑠の隣に座りながら眺めていたイリヤがくすくす笑いながらバートランドに助け船を寄こした。
「フェルディナン生殖時期を終えたばかりで少し虫の居所が悪いからって、あまりバートランドに当たるなよ」
そう言ってフェルディナンとバートランドの話を遮ったイリヤにフェルディナンはそのまま不機嫌そうな顔を向けた。矛先を自分に移されてもイリヤは余裕の表情で笑っている。
「イリヤ……報告することがあるだろう? どうせなら一度で済ませてしまいたいんだが」
「分かってるよ。シャノン出て来いよ。フェルディナンがお前にも用があるんだってさ」
「――用があるとは?」
シャノンが音を立てずに何処からともなく現れてバートランドの横にすっと並んだ。青みがかった灰色の耳をピクピクと動かして疑わし気な様子で黄金の瞳をイリヤに向けている。シャノンが現れたのを確認するとイリヤは懐から徐に取り出したものをフェルディナンに向けて素早く投げつけた。
「フェルディナン、これがあの人達の答えだよ」
不意に投げられたそれをフェルディナンは苦も無く流れるような動作で受け止めた。フェルディナンの強靭な筋肉に覆われている剥き出しの上腕――その指先には黒百合が描かれたカードが収められている。それはイリヤが月瑠に初めて会った時、フェルディナンへ手渡すよう頼んだものと同じ絵柄の物だった。
「やはりそうか……」
カードを見ずとも結果は分かっていたかのようにフェルディナンが小さく呟いた。
*******
「五枚の内回収したカードはこれで三枚。フェルディナンの答えは聞かずとも分かっているからね。あと一枚で事実上全てが決まるってわけだ」
イリヤは淡々と感情の籠らない声でそう告げた。
「ああ」
「イースデイル殿下、シンクレア殿下は反対。レインウォーター殿下は賛成。そして最後は……」
「エアハートか……」
「どうせ何時も通りライルに動向を探らせてるんだろ?」
「……ライル」
フェルディナンが呼ぶとその後方に灰色の影が舞い降りた。灰色の外套を羽織り片膝を地面に付いたライルが重々しく首を垂れて跪いている。ライルは感情を殺した低い声で口を開いた。
「ここに」
「彼等の動向はどうなっている?」
「恐れながら――フェルディナン様が想定された通りの情勢に変わりはなく」
「芳しくないか」
「残念ながらそのようです」
「どうやら古代貴族の面々はレインウォーター殿下を抜かしてどうしてもフェルディナンを敵に回したいらしいね」
「そのようだな……」
「ははは、落ちぶれたものだよね。国の建国者の末裔が国の優位性を保つ為に歴史を繰り返す――月瑠を人柱に立てるような考え方しか持っていない古代貴族なんて滅びてしまえばいいんじゃない?」
「その物言い……お前らしくないなイリヤ」
「それはね。頭にもくるよ。過去の異邦人と同じ方法で政権に月瑠を巻き込むってそう言っているんだよ? あの人達は」
「ああ、だが何時もならそれは俺が言う台詞だろう? お前ではなく」
「いいじゃないかたまにはさ、フェルディナンの代わりにそういうことを言うのも。それで、フェルディナンはどうするつもり? 何かするつもりだから此処にこのメンバーを集めたんだろう?」
イリヤの言葉に各々が顔を上げてフェルディナンへとその視線を向けた。イリヤ、バートランド、シャノン、ライルから一斉に向けられた視線に応えてフェルディナンはゆっくりと顔を上げた。
「歴史を繰り返すような真似を許すつもりはない。俺から月瑠を奪うと言うのならイリヤ、お前の言う通り黒衣の軍――総勢10万の兵を以って反対派は全て殲滅する。そしてその為の準備はもう出来ている」
「「「「!?」」」」
全員がフェルディナンの言葉に衝撃を受けて動揺に動けなくなっている中、イリヤは一人だけ沈痛な面持ちでフェルディナンへと怒りに震える血の様に赤い瞳を向けた。
「……古代貴族の当主達が下した決定は例えユーリー陛下と言えどそう簡単に覆すことは出来ない。……だからって君が始めるっていうのか! それは何より月瑠が恐れていたことじゃないか!」
イリヤは息を荒くしてフェルディナンに食ってかかった。”神解き”によって神からの統治を離れた世界。それによって大規模な戦闘が発生するかもしれないという可能性を誰よりも恐れていたのは月瑠だった。それを自分の為に最愛の恋人が始めると言い出したなんて事が月瑠に知れたら。本当に冗談ではない。
「始めるからには一人残らず生かしてはおかない。これは国への反逆だ。ずっと穏便に事を進められればと、そう働きかけていた。だが彼等はこの先も変わるつもりはないらしい」
「我々獣人達が反逆の徒として追放された25年前。その時に果たせなかったことを貴方が継ぐつもりなのか?」
シャノンの問いかけにフェルディナンは少しだけ目線をそちらへ向けた。
「……ああ、だがお前達獣人をこれに巻き込むつもりはない」
「いよいよ黒将軍の本領発揮ってわけ? 月瑠がこの世界に来てからずっと君は俺やライルにあの人達の動向を探らせていたけど、まさかそんなことを考えていたとはね。でも、そんなことされるくらいなら昼行灯に徹してくれていた方がまだましだよ。第一、それだけ大規模な戦闘を引き起こしたらいくら何でも月瑠が気付かないわけないじゃないか!」
「だからお前達を呼んだ……シャノン」
「はい」
「――月瑠が事態に気付かないように彼女を国外へ逃す。獣人の国へ月瑠を連れて行って保護してほしい。内密にな。お前なら出来るだろう?」
「それは……可能ですが、月瑠が貴方の傍を離れてもいいと言うとは思えない。それも納得出来るだけの理由がなければ月瑠が大人しく国を出るとも思えないのだが……」
「そうだな。だからバートランド、イリヤ、お前達にも月瑠について国を出てほしい」
「「!?」」
「軽い小旅行だ。前から月瑠は外に出たがっていただろう? 警護に当たるよう王命を受けているお前達が一緒なら月瑠も疑うことはない。数か月の間だけでいい。俺は軍務でついて行けないと話しておく。たまに顔を見せるようにするが、全てが終わるまで月瑠を獣人の国に留めておいてほしい」
「……本気、なんですか? クロス将軍」
バートランドが驚愕に瞳を大きく見開いて緊張に両掌を強く握り締めながら身体を戦慄かせて、額に流れる汗を拭おうともせず固唾を呑んでフェルディナンの答えを待っている。
「お前達が月瑠を留めている間に俺が全てを終わらせる。ライルには俺とお前達との伝令役を担ってもらう事になるが……」
ライルは全てを心得ているようで一瞬だけフェルディナンと目線を合わせて意志を通じ合わせた。ライルはフェルディナンのすることに何の異存もないようだ。フェルディナンにただ付き従うような姿勢のライルにイリヤは舌打ちしてからフェルディナンを責めるように睨め付けた。
「ライルだけ傍に残して一人で全てを終わらせる気なのかよ? それも月瑠に何も知らせずに。俺達を除け者にして」
「そうですよ何も知らない内にクロス将軍がそんな無茶な事をしたと姫様が知ったらどう思うか……」
「怒るだろうな……誇大妄想に取りつかれた者達の末路など知った事ではないが、それを知れば自分の事よりも俺の心配をして月瑠が苦しむことになる。だから月瑠には知られる訳にはいかないんだ」
「だから月瑠には黙って一人でやるつもりだっていうのか」
「戦いの最中にはお前達に配慮してやれるほどの余裕はない。だからお前達に此処にいてもらっては困るんだ」
「――そうやって俺達を邪魔者扱いして遠ざける気?」
「政変に犠牲は付きものだ。選択出来る期間は十分過ぎる程あった。だがどうあっても彼等は変わるつもりはないらしい。それにお前達を関わらせたくないだけだ」
「他に……方法はないって言うのか?」
「他に方法はない。そして彼等がそうしなければ終わらないというのなら。俺もそれに従うまでだ。古い風習もしきたりも悪しきものは全て終わらせる。繰り返すのはこれが最後だ……」
「……そっかそうやって自分の手だけ汚して終わらせる気なのかよ。でもさ、フェルディナン。俺も俺の命に代えても守りたいものがあるんだぞ……?」
振絞る様に発せられたイリヤの言葉も今のフェルディナンには届かない。
「ああ、分かっている。だがこれは俺が下した決断だ。それを変えるつもりはない。他に異論がないなら了承したとみなす。これでこの話しはもう終わりだ――」
一方的に言い切られて無理やり話を終わらせられてしまう。そして誰もフェルディナンの決定に反論することが出来ず、こうして最悪の決断が下されてしまった。
――結良が亡くなってから過ごしていた時間。ずっと月瑠に出会うまで冷徹な人でなくなってしまったような冷え切った日々だけが残されて。底なし沼に嵌って動けなくなっていた。けれど絶望の中で人を憎み続けるのは忍耐と体力がいる作業だ。
「それにしてもさっきからずっと月瑠が怖い顔して寝てるんだけどさ」
フェルディナンとイリヤ以外皆この場を退出してしまって、初めと同じ三人だけの空間に何事もなかったかのような穏やかな空気が流れている。イリヤは月瑠の頬を撫でながら先程からずっと解消されない眉間に刻まれた皺をチョンチョンと突いてどうしたものかと首を傾げた。
「子守歌でも歌ってあげようか?」
「出来るならそうしてやってくれ――俺はもう一度寝る」
冗談で言ったつもりだったのにフェルディナンが返してきた返事は肯定で、それも月瑠を任せて寝に戻るなどと言われてはそうするしかない。束の間の静寂と穏やかな時間。これから起こることを考えると嵐の前の静けさに鳥肌が立ちそうになる。
「分かったよ。まあ適当にやっておくからさ。フェルディナンは寝てていいよ?」
「ああ、任せた」
「それと、俺はこれから最後のカードをエアハート殿下から回収してくるよ……月瑠が手を放してくれたらだけどね。それまで俺は月瑠の傍にいるからね?」
確認するように月瑠の傍にいてもいいのか? と問いかけるとフェルディナンは眠たげに半ば重く閉じられている紫混じった青い瞳を静かにこじ開けて、ジッとフェルディナンを見つめてきた。
「……イリヤ」
「何?」
「必ず……戻ってこい」
「勿論戻って来るけど……何変な心配してるのさ?」
笑ってそう答えてもフェルディナンの表情は変わらず、珍しく心配するような顔をしてこちらを見ている。
「……本当に月瑠といいフェルディナンといい疑り深いよね」
「お前は月瑠とは違う意味で危なっかしいところがあるからな」
この人なんでこんなに強いんだよ……?
とんでもなく困難で辛い決断を下した後だというのに、フェルディナンは何時もと変わらずそれもとても眠そうな顔をしていて。年の差以上に器の大きさが違うということを改めて認識させられてしまう。
「はいはい、分かっているよ。ちゃんと君達の処に戻って来るし、いずれは軍にも復帰する。だから安心して待っててよ。それともフェルディナンも子守歌、歌ってほしいの?」
「……必要ない」
素直にそう答えたフェルディナンは眠そうに首を横に振りながら扉に半ばもたれかかっている。
「そっか、じゃあ大人しく君も寝ててよ」
「分かった……」
――まったく、この二人はどうしてこう世話の焼きがいがあるんだかね。
どうやら束の間の子守歌が必要なのはフェルディナンも同じようだった。
絶対にこのままでは終わらせない……
大切な二人を前にしてイリヤはハハッと気づかれないように小さく笑ってから、秘めたる思いを固めて少しだけ唇の端を引き上げた。
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