42 / 117
第二章~恋人扱編~
031 約束の指切り
しおりを挟む
「っん……」
朝の眩しい日差しに私はまだ眠い目を擦りながら起きた。いつも起きた時に見る景色とは違う豪華な内装に、私はあれっ? と思わず首を傾げてしまう。着ている服も何時ものワンピースタイプの夜着ではなく、男物の白いシャツで私には大きすぎて布が余ってぶかぶかだった。
「起きたか?」
寝ぼけてボーとしていたところで、大好きな人の声が聞こえてきて私は全てを思い出した。ここはフェルディナンの部屋でそれも理性で欲情を抑え込んでいる彼に一緒にいたいと無理を言って、嫌がる彼の反対を押し切って私は自分の願望を叶えた。そしてベッドの上でそのままフェルディナンの腕に抱かれながら――
私フェルディナンの腕の中で眠っちゃったんだっけ……
少しの間だけと言われていたのに。何だか悪いことをしたような気がして、私はおそるおそる声のした方へと顔を向けた。するとフェルディナンは私から相当な距離を取ってベッドの端に腰かけて座っていた。
「えっと、フェルディナン? どうしてそんな遠くに、端っこにいるの?」
キョトンとした顔でフェルディナンを見ると、彼はベッドの端に座りながら不機嫌そうな顔付きで眉を顰めた。
フェルディナンは夜履いていたのと同じ黒い光沢のあるズボンに、剥き出しだった上半身には黒いタートルネックを着ていた。
紫が混じった青い瞳に金の髪。女の私よりも色気すら感じるその容貌はとても45歳には見えない。そして”黒将軍”の異名を持つ彼の肉体美は上半身だけだけれど十分過ぎるほど堪能してしまっている。あまりにも綺麗な恋人を前にして私が何時ものように見惚れていると、フェルディナンが呆れたような声を出した。
「……君は、好きな女が同じベッドにいて平然と寝られる男がいると思うのか?」
「好きな女って……」
私のことですか? と聞いてしまいたくなる。思わず顔を赤くする私の様子を見て、フェルディナンが深々と溜息を付いた。そして私はようやく彼が言いたいことに気が付いた。
「あっ、……えっと……その……」
要するに私はフェルディナンに生殺し地獄を味わわせたってことだ。それも一晩中。寝てしまった私の傍に少しだけどころか一晩中一緒にいることを余技なくされて、フェルディナンはどれだけ頭を悩ませていたのだろうか。それを想像するだけで気恥ずかしさにモジモジと落ち着かない気持ちになる。
「頼むから少しは自覚してくれ」
そうでないとこっちの身が持たない――フェルディナンがあえて伏せた部分の思いが伝わってくる。申し訳なさに頭が上がらない。
「う~、ごめんなさい」
「あまり自覚が無いようだから一応言っておくが……」
「なんですか?」
「――俺は君が欲しい」
「……っ!?」
そう言うフェルディナンの目が余りにも真っ直ぐに私に向けられていて、どうしていいのか分からなくなる。
「君を今このまま最後まで抱いて完全に俺のものにしてしまえば、君も少しは大人しく俺の元にいてくれるようになるのか?」
「あ、あのっ……私……」
戸惑いの声を上げてフェルディナンの方を見ると彼はベッドから腰を上げて私に近づいてきた。私の頬に手を伸ばしてそっと触れてくる。切なそうに紫混じった青い宝石のように綺麗な瞳を細めながら、狂おしい程の愛情と獣のような獰猛さの入り混じった熱い視線を向けられて私はたじろいでしまう。
「檻の中に捕らえてこの細い足首を鎖で繋ぎ止めて閉じ込めて、君が果てるまで飽くなき欲望を君にぶつけて抱きつぶしてしまいたいと、そういうことを俺が考えていないとでも思っているのか? 俺は君が思う程誠実でもなければ紳士でもないんだが」
にっこりと笑ってフェルディナンはその整った形の良い唇から、聞いているこっちが赤面するような言葉を平然と口にした。
「フェル、ディナン……?」
ツゥーと背中に汗が流れる。
「君が許しを乞う姿を想像しないとでも? もっとも君が行為の最中に果てたとしてもそのまま抱き続けてしまいそうなくらい、その時は抑えることが出来そうにないんだが」
「…………」
フェルディナンは相変わらずにっこりと笑っているけれど、ひしひしと伝わってくる得も言われぬ圧力に屈してしまいそうになる。私は肉食動物に追い詰められて捕獲される寸前の草食動物のように、プルプルと全身を小刻みに震えさせながら半泣きでフェルディナンを見返した。
するとフェルディナンは怯えた顔で見つめられて少し毒気が抜かれてしまったらしい。
「はぁっ、まったく仕方ないな。……冗談だ。そんなに怖がらなくても今ここで君を無理やり抱いたりはしない」
そう言ってフェルディナンはポンッと私の頭を軽く叩いた。
「君はよく俺のことを綺麗だと言うが、君が思っているほど俺は綺麗なことを考えてはいないと少しは理解してくれたか?」
「……フェルディナンもしかして怒ってるの? だからそんなこと言うの?」
私は最近フェルディナンを怒らせてばかりだ。
「どうだろうな。だが君には遠回しに伝えるよりも濁さずはっきりと直接的にいう方が効果的だということはよく分かったよ」
くすっと笑ってフェルディナンは紫混じった青い瞳を細めた。困ったような呆れたようなそれでいて優しい複雑そうな表情を浮かべている。
「フェルディナン?」
「だが結局、俺は君には甘いということなんだろうな……」
大人の余裕でフェルディナンはふっと笑った。そして私の頭から手を退いて少し考えるように腕を前に組むと彼は次の瞬間、私の意表を突く質問をしてきた。
「ああ、そういえば」
「?」
「昨晩は扉の前で何を聞いていた?」
「……へっ? あっ、えっと特には何も。というか細かいところとか全く聞こえなくて……」
「そうか、ならいい」
あっさりと話を終わらせたフェルディナンに私は慌てて謝った。
「盗み聞きなんてしてごめんなさい。そのっ、そんなつもりじゃなかったんだけど結果的にはそうなってしまったというか……」
「まあいい、もう済んだことだ」
「そんなに重要な話だったの?」
「まあな……」
それ以上はフェルディナンも答えてくれそうになかったので、私は別の話を切り出すことにした。
「そうだ! あのっ、前から聞きたかったんだけど」
「ん? なんだ?」
私が急に話題を変えても、フェルディナンはテンポよく返事を返してくれた。
「その左耳に付けているピアスって、誰かからの贈りものかなにか?」
フェルディナンの左耳にはいつも欠かさず同じ金色のループピアスが付けられている。
「……何故、そんな事を知りたいんだ?」
訝しむような表情で返されて私は少し言葉に詰まってしまう。
「えっと、だって出会ってからずっと付けているから気になって……寝てるときも付けてるでしょ? だからとても大事なものなんじゃないかなって思って」
「これは月瑠の前に来た異邦人がくれたものだ」
「……それって卯佐美結良さんのことですよね? 私と同じ世界から来た」
「ああ、そうだな」
「でも結良さんはイリヤの恋人で結婚を誓い合った仲だったってイリヤから聞いているのですが。フェルディナンとはその……どんな関係だったんですか? ――あっ! まさかっ!」
「?」
付き合っている人がいるのにそれ以外の人にそれもピアスのような装飾品をプレゼントするなんてよっぽどだ。それなりの関係でないと成立しないことなのではないかと思う。
「まさかの三角関係っ!? 浮気っ!?」
「……違う」
「あはは~ですよね」
「まったく君は……、どうしてそう突拍子もないことを――そういうんじゃないんだ。彼奴は……」
何時も堂々としているフェルディナンがこんなにも辛そうな顔で口籠るのを私は初めて見たような気がした。
*******
それからフェルディナンは静かな声で私の前に来ていた異邦人、卯佐美結良のことを話してくれた。
彼女は私と同じ16歳でこの乙女ゲーム世界へ神様の力によって転移してきた女の子で――そして彼女は私と同じようにフェルディナンのところへ突如やってきた。
とても明るくて元気のいい、人懐っこい女の子で、当初フェルディナンは面倒な子供がきたと思っていたらしい。護衛だけ付けて追い返そうとするフェルディナンの冷たい態度にも屈せず、フェルディナンが何を言おうとも全く気にすることなく、その後も何をするでもなく王城の兵舎にいるフェルディナンの元をちょくちょく訪れるようになったそうだ。
「彼奴は当時イリヤと付き合っていたからな。王城へは兵舎にいるイリヤに会いに度々来ていた。そのついでに興味本位で俺のところにも寄っていたようだったが……それも付けている護衛を振り切って彼方此方歩き回っていた。目立たないようにしてはいたようだが、どうにも放っておけなくてな」
「…………」
それ、ちょっと覚えがある身としては何にもコメントが出来ないのですが……
「誰かに似ているとは思わないか?」
「そ、そうかな?」
フェルディナンは少し意地が悪そうな顔をして私を揶揄うと再び話を再開した。
そしてフェルディナンは結良が訪れる度に冷たくあしらってきたのだが、何を言われても屈託なく笑う彼女のことがフェルディナンはとても面倒になって最後は相手にすることを止めた。それでもめげずに堂々と通って来る彼女とそうして顔を会わせていくうちに、彼女とは年の差も関係なく、信頼できる友人のような奇妙な関係が出来ていったそうだ。
「彼奴とは親友だった。それ以上でもそれ以外でもなく。大切な存在だったのは確かだな」
「親友……イリヤはそれを知ってたんですか?」
「勿論知っていた。それに俺達が間違っても一線を越えるような関係ではないこともはっきりとしていたからな。イリヤは寧ろ喜んでいたように見えたが」
「そう言えば、結良さんがこの世界に神様の力で転移させられて、一番初めに会ったのは誰なんですか? 結良さんも転移した時は私と同じように町中でポツンと立っていたんですか?」
「一番初めに会ったのがイリヤだ。それと転移した時に出現した場所はイリヤの自室だったそうだ」
「い、イリヤの自室!?」
「それもベッドの上で寛いでいたら上から降ってきたそうだ」
「…………」
何て無茶苦茶なと驚きに開いた口が塞がらない。それにしても神様は何て場所に転送させるんだろうと思ったところで一つの疑問が頭に浮かんできた。
「……そう、なんですか――って、あれっ? そう言えばどうして異邦人をこの世界に転送することを神様は事前に教えてくれないんですか? 王様に教えるとかはしてくれないんですか? 私の時もいきなり知らない場所に一人で転移してびっくりして……」
「事前には告知は受けている。だが異邦人がどの場所に出現するかまでは特定出来ないそうだ。何でもその世界によって時間軸が違うらしい。それを調整して最小限に留めても、毎回必ずといっていいほど若干のズレが生じる」
「ズレた結果がイリヤの自室ですか……」
ということは私も下手をするとフェルディナンの自室にいきなり転送させられてしまっていた可能性があったということだった。
「月瑠……?」
「いえ、あの……えっと、あっ! そういえば結良さんが亡くなったのは何年前なんですか? 獣人との抗争に巻き込まれて亡くなったって聞きましたけど……」
「もうあと二週間で丁度9年になる」
――9年前ということは当時のイリヤは今32歳だから23歳で、フェルディナンは45歳だから36歳ということで。結良さんが16歳で……何だか頭がごちゃごちゃしてきた。
「――んっ? 二週間後? この世界の暦って不思議なことに私がいた世界と同じなんですよね。お陰で混乱せずに済みましたけど。ということは今から二週間後って――4月2日……」
「どうした?」
「えっ? 何でもないですよ。何というか切りが良いなと思って」
「切りが良い?」
「私がいた世界の学校では法律で4月2日から翌年の4月1日生まれの人が同じ学年なんです。だから始まりでちょっと切りが良いなって思っただけです」
「……そうか」
「それで、あのっ抗争に巻き込まれて結良さんが亡くなった時、イリヤは?」
どんな様子だったのかと聞かずにはいられなくておそるおそる私はフェルディナンに尋ねた。
「彼奴が死ぬ直前に駆け付けたのは俺だったんだ」
「……えっ?」
「イリヤは結良の死を看取っていない」
「それってどういう……」
「イリヤは結良を助けに行けなかった。――いや、行くことが出来なかったというのが正しいな。結良が死にかけている時、イリヤは俺が依頼した仕事に出ていた。だからイリヤは結良の危機に気付くことが出来なかった」
「そんなっ!」
「イリヤの不在中、俺は彼奴を助けてやることが出来なかった。彼奴を最後に看取ったのは俺だ。このピアスは結良がその最後の時に残していったものだ。本来なら今際の際に彼女の言葉を聞くべきだったのは俺ではなくイリヤの役目だった」
全てが想定外の方向へと狂ってしまった現実を叩きつけられて、フェルディナン達がどれ程辛い思いをしたのか私には想像も出来ない。フェルディナンは綺麗な顔を曇らせて辛そうに視線を落とした。
「フェルディナン……?」
私はそんなフェルディナンを見ていられなくて彼に近寄ってそっと後ろから彼の背中を抱きしめた。フェルディナンは私が抱きしめた手に手を重ねて、私の手を優しくさすっている。彼の手は私の手を全て隠してしまえるくらい大きくて温かい。
いつも私を甘やかすことに長けている包容力の塊で、滅多に弱っている姿を見せないフェルディナンがいまは落ち込み傷ついた様子を私に見せている――私は彼を慰めるように彼の背中に頬を寄せて抱きしめる手にギュッと力を込めた。
「……俺がイリヤに仕事を頼まなければ、きっと間に合っていた筈だ。結良も死なずにすんだかもしれない。だから結良が死ぬ原因を作ってしまった俺をイリヤはきっと憎んでいる」
「憎んでいるって……イリヤがそう言ったの?」
「イリヤは今までただの一度もそんな素振りもそんな思いも口にしたことはない」
「だったら……」
フェルディナンは私の言葉を否定するように小さく首を横に振った。
「あの時俺は彼奴を守れなかった。だから今度こそ俺は君を守る――この命に代えても」
死を意識したフェルディナンの言葉に私は言いようの不安を覚えた。
「フェルディナン……やだよ。そんな怖いこと言わないで」
「月瑠……?」
「言ったでしょ? 私はフェルディナンと一緒にいたいの。だから命に代えられてしまったらそれこそ本末転倒だし、それにフェルディナンは私より先に死んじゃダメ。私ね。好きな人には私より長く生きてほしいの。私より先に死んでほしくない。だってそうなったらすごく寂しくて生きていく自信がないから。だから私より先に死なないって約束して。お願い」
「……だがそれは……」
「お願い。私より先に死なないって約束して」
私は16歳でフェルディナンは45歳。29歳差の私達は順番的にもどう考えても無茶なことを言っているというのは分かっていた。けれど私はあえてそれを口にせずにはいられなかった。
「君はとんでもなく不合理な約束を強要してくれるな……」
「うん、分かってる。でも嫌なの好きな人が先になくなるのは嫌。理屈じゃないの。だからお願い約束して」
そうきっぱり言い切った私を少しの間眺めてから、フェルディナンは徐に顔を近づけると優しく唇に唇を重ねてきた。軽く触れ合うような口づけを交わして唇を離すと、フェルディナンは困ったように眉根を寄せた――そして、私の再三のお願いにフェルディナンがついに折れた。
「……仕方ないな。何時まで立っても俺は君には敵う気がしない」
「じゃあ、指切りして」
「指切り?」
「うん、こうして互いの小指と小指を絡めて約束するの。それで約束破ったら針を千本飲んでもらうという――」
「月瑠の住んでいた世界はそんな恐ろしいところなのか……?」
ちょっと待てとフェルディナンが顔を顰めて口を挟んだ。
「あははっ、違うよ。針を千本は例えというか表面的な約束の文句だから。本当に飲まないから安心して? とにかく、これでフェルディナンは私より先に死なないって約束したんだからちゃんと守って下さいね?」
「……分かった」
フェルディナンを後ろから抱きしめている私の額にフェルディナンがコツンと自身の額を当ててきて優しい時間が少しだけ流れた。
「……フェルディナンがイリヤに依頼した仕事ってどんなことなの?」
「…………」
「どうしたの?」
徐々に重苦しい雰囲気が解消されてきたところで、フェルディナンは再び私の質問に少し考え込むようにしてその目線を私から外してしまった。長い睫毛が半ば伏せられて、紫混じった青い瞳に影が落ちる。何時もより少しだけ色濃く見える瞳が愁いを帯びて妖しく光っている。
「……月瑠もそれに関わっている――だから君をイリヤにあまり近づけたくなかった」
嫌な予感がして私は同じ質問を繰り返した。
「イリヤに依頼した仕事って、何なの?」
フェルディナンを後方から抱きしめている腕が震えそうになる。少し指先に力を入れて抱きしめる力を強くしたら、フェルディナンは私が不安に思っているのを感じとったのか、私の手を掴んで自身の方へ引き寄せると指と指を絡ませて優しく握り直してくれた。
「結良の次に来る異邦人が現れる場所の特定だ」
「それって、まさか……」
次に来る異邦人ってまさか……
「月瑠――君のことだ」
ゆっくりと底知れぬ恐怖が衝撃と共に身体中を侵食して、全身が震えていくのを私はおさえることが出来なかった。
朝の眩しい日差しに私はまだ眠い目を擦りながら起きた。いつも起きた時に見る景色とは違う豪華な内装に、私はあれっ? と思わず首を傾げてしまう。着ている服も何時ものワンピースタイプの夜着ではなく、男物の白いシャツで私には大きすぎて布が余ってぶかぶかだった。
「起きたか?」
寝ぼけてボーとしていたところで、大好きな人の声が聞こえてきて私は全てを思い出した。ここはフェルディナンの部屋でそれも理性で欲情を抑え込んでいる彼に一緒にいたいと無理を言って、嫌がる彼の反対を押し切って私は自分の願望を叶えた。そしてベッドの上でそのままフェルディナンの腕に抱かれながら――
私フェルディナンの腕の中で眠っちゃったんだっけ……
少しの間だけと言われていたのに。何だか悪いことをしたような気がして、私はおそるおそる声のした方へと顔を向けた。するとフェルディナンは私から相当な距離を取ってベッドの端に腰かけて座っていた。
「えっと、フェルディナン? どうしてそんな遠くに、端っこにいるの?」
キョトンとした顔でフェルディナンを見ると、彼はベッドの端に座りながら不機嫌そうな顔付きで眉を顰めた。
フェルディナンは夜履いていたのと同じ黒い光沢のあるズボンに、剥き出しだった上半身には黒いタートルネックを着ていた。
紫が混じった青い瞳に金の髪。女の私よりも色気すら感じるその容貌はとても45歳には見えない。そして”黒将軍”の異名を持つ彼の肉体美は上半身だけだけれど十分過ぎるほど堪能してしまっている。あまりにも綺麗な恋人を前にして私が何時ものように見惚れていると、フェルディナンが呆れたような声を出した。
「……君は、好きな女が同じベッドにいて平然と寝られる男がいると思うのか?」
「好きな女って……」
私のことですか? と聞いてしまいたくなる。思わず顔を赤くする私の様子を見て、フェルディナンが深々と溜息を付いた。そして私はようやく彼が言いたいことに気が付いた。
「あっ、……えっと……その……」
要するに私はフェルディナンに生殺し地獄を味わわせたってことだ。それも一晩中。寝てしまった私の傍に少しだけどころか一晩中一緒にいることを余技なくされて、フェルディナンはどれだけ頭を悩ませていたのだろうか。それを想像するだけで気恥ずかしさにモジモジと落ち着かない気持ちになる。
「頼むから少しは自覚してくれ」
そうでないとこっちの身が持たない――フェルディナンがあえて伏せた部分の思いが伝わってくる。申し訳なさに頭が上がらない。
「う~、ごめんなさい」
「あまり自覚が無いようだから一応言っておくが……」
「なんですか?」
「――俺は君が欲しい」
「……っ!?」
そう言うフェルディナンの目が余りにも真っ直ぐに私に向けられていて、どうしていいのか分からなくなる。
「君を今このまま最後まで抱いて完全に俺のものにしてしまえば、君も少しは大人しく俺の元にいてくれるようになるのか?」
「あ、あのっ……私……」
戸惑いの声を上げてフェルディナンの方を見ると彼はベッドから腰を上げて私に近づいてきた。私の頬に手を伸ばしてそっと触れてくる。切なそうに紫混じった青い宝石のように綺麗な瞳を細めながら、狂おしい程の愛情と獣のような獰猛さの入り混じった熱い視線を向けられて私はたじろいでしまう。
「檻の中に捕らえてこの細い足首を鎖で繋ぎ止めて閉じ込めて、君が果てるまで飽くなき欲望を君にぶつけて抱きつぶしてしまいたいと、そういうことを俺が考えていないとでも思っているのか? 俺は君が思う程誠実でもなければ紳士でもないんだが」
にっこりと笑ってフェルディナンはその整った形の良い唇から、聞いているこっちが赤面するような言葉を平然と口にした。
「フェル、ディナン……?」
ツゥーと背中に汗が流れる。
「君が許しを乞う姿を想像しないとでも? もっとも君が行為の最中に果てたとしてもそのまま抱き続けてしまいそうなくらい、その時は抑えることが出来そうにないんだが」
「…………」
フェルディナンは相変わらずにっこりと笑っているけれど、ひしひしと伝わってくる得も言われぬ圧力に屈してしまいそうになる。私は肉食動物に追い詰められて捕獲される寸前の草食動物のように、プルプルと全身を小刻みに震えさせながら半泣きでフェルディナンを見返した。
するとフェルディナンは怯えた顔で見つめられて少し毒気が抜かれてしまったらしい。
「はぁっ、まったく仕方ないな。……冗談だ。そんなに怖がらなくても今ここで君を無理やり抱いたりはしない」
そう言ってフェルディナンはポンッと私の頭を軽く叩いた。
「君はよく俺のことを綺麗だと言うが、君が思っているほど俺は綺麗なことを考えてはいないと少しは理解してくれたか?」
「……フェルディナンもしかして怒ってるの? だからそんなこと言うの?」
私は最近フェルディナンを怒らせてばかりだ。
「どうだろうな。だが君には遠回しに伝えるよりも濁さずはっきりと直接的にいう方が効果的だということはよく分かったよ」
くすっと笑ってフェルディナンは紫混じった青い瞳を細めた。困ったような呆れたようなそれでいて優しい複雑そうな表情を浮かべている。
「フェルディナン?」
「だが結局、俺は君には甘いということなんだろうな……」
大人の余裕でフェルディナンはふっと笑った。そして私の頭から手を退いて少し考えるように腕を前に組むと彼は次の瞬間、私の意表を突く質問をしてきた。
「ああ、そういえば」
「?」
「昨晩は扉の前で何を聞いていた?」
「……へっ? あっ、えっと特には何も。というか細かいところとか全く聞こえなくて……」
「そうか、ならいい」
あっさりと話を終わらせたフェルディナンに私は慌てて謝った。
「盗み聞きなんてしてごめんなさい。そのっ、そんなつもりじゃなかったんだけど結果的にはそうなってしまったというか……」
「まあいい、もう済んだことだ」
「そんなに重要な話だったの?」
「まあな……」
それ以上はフェルディナンも答えてくれそうになかったので、私は別の話を切り出すことにした。
「そうだ! あのっ、前から聞きたかったんだけど」
「ん? なんだ?」
私が急に話題を変えても、フェルディナンはテンポよく返事を返してくれた。
「その左耳に付けているピアスって、誰かからの贈りものかなにか?」
フェルディナンの左耳にはいつも欠かさず同じ金色のループピアスが付けられている。
「……何故、そんな事を知りたいんだ?」
訝しむような表情で返されて私は少し言葉に詰まってしまう。
「えっと、だって出会ってからずっと付けているから気になって……寝てるときも付けてるでしょ? だからとても大事なものなんじゃないかなって思って」
「これは月瑠の前に来た異邦人がくれたものだ」
「……それって卯佐美結良さんのことですよね? 私と同じ世界から来た」
「ああ、そうだな」
「でも結良さんはイリヤの恋人で結婚を誓い合った仲だったってイリヤから聞いているのですが。フェルディナンとはその……どんな関係だったんですか? ――あっ! まさかっ!」
「?」
付き合っている人がいるのにそれ以外の人にそれもピアスのような装飾品をプレゼントするなんてよっぽどだ。それなりの関係でないと成立しないことなのではないかと思う。
「まさかの三角関係っ!? 浮気っ!?」
「……違う」
「あはは~ですよね」
「まったく君は……、どうしてそう突拍子もないことを――そういうんじゃないんだ。彼奴は……」
何時も堂々としているフェルディナンがこんなにも辛そうな顔で口籠るのを私は初めて見たような気がした。
*******
それからフェルディナンは静かな声で私の前に来ていた異邦人、卯佐美結良のことを話してくれた。
彼女は私と同じ16歳でこの乙女ゲーム世界へ神様の力によって転移してきた女の子で――そして彼女は私と同じようにフェルディナンのところへ突如やってきた。
とても明るくて元気のいい、人懐っこい女の子で、当初フェルディナンは面倒な子供がきたと思っていたらしい。護衛だけ付けて追い返そうとするフェルディナンの冷たい態度にも屈せず、フェルディナンが何を言おうとも全く気にすることなく、その後も何をするでもなく王城の兵舎にいるフェルディナンの元をちょくちょく訪れるようになったそうだ。
「彼奴は当時イリヤと付き合っていたからな。王城へは兵舎にいるイリヤに会いに度々来ていた。そのついでに興味本位で俺のところにも寄っていたようだったが……それも付けている護衛を振り切って彼方此方歩き回っていた。目立たないようにしてはいたようだが、どうにも放っておけなくてな」
「…………」
それ、ちょっと覚えがある身としては何にもコメントが出来ないのですが……
「誰かに似ているとは思わないか?」
「そ、そうかな?」
フェルディナンは少し意地が悪そうな顔をして私を揶揄うと再び話を再開した。
そしてフェルディナンは結良が訪れる度に冷たくあしらってきたのだが、何を言われても屈託なく笑う彼女のことがフェルディナンはとても面倒になって最後は相手にすることを止めた。それでもめげずに堂々と通って来る彼女とそうして顔を会わせていくうちに、彼女とは年の差も関係なく、信頼できる友人のような奇妙な関係が出来ていったそうだ。
「彼奴とは親友だった。それ以上でもそれ以外でもなく。大切な存在だったのは確かだな」
「親友……イリヤはそれを知ってたんですか?」
「勿論知っていた。それに俺達が間違っても一線を越えるような関係ではないこともはっきりとしていたからな。イリヤは寧ろ喜んでいたように見えたが」
「そう言えば、結良さんがこの世界に神様の力で転移させられて、一番初めに会ったのは誰なんですか? 結良さんも転移した時は私と同じように町中でポツンと立っていたんですか?」
「一番初めに会ったのがイリヤだ。それと転移した時に出現した場所はイリヤの自室だったそうだ」
「い、イリヤの自室!?」
「それもベッドの上で寛いでいたら上から降ってきたそうだ」
「…………」
何て無茶苦茶なと驚きに開いた口が塞がらない。それにしても神様は何て場所に転送させるんだろうと思ったところで一つの疑問が頭に浮かんできた。
「……そう、なんですか――って、あれっ? そう言えばどうして異邦人をこの世界に転送することを神様は事前に教えてくれないんですか? 王様に教えるとかはしてくれないんですか? 私の時もいきなり知らない場所に一人で転移してびっくりして……」
「事前には告知は受けている。だが異邦人がどの場所に出現するかまでは特定出来ないそうだ。何でもその世界によって時間軸が違うらしい。それを調整して最小限に留めても、毎回必ずといっていいほど若干のズレが生じる」
「ズレた結果がイリヤの自室ですか……」
ということは私も下手をするとフェルディナンの自室にいきなり転送させられてしまっていた可能性があったということだった。
「月瑠……?」
「いえ、あの……えっと、あっ! そういえば結良さんが亡くなったのは何年前なんですか? 獣人との抗争に巻き込まれて亡くなったって聞きましたけど……」
「もうあと二週間で丁度9年になる」
――9年前ということは当時のイリヤは今32歳だから23歳で、フェルディナンは45歳だから36歳ということで。結良さんが16歳で……何だか頭がごちゃごちゃしてきた。
「――んっ? 二週間後? この世界の暦って不思議なことに私がいた世界と同じなんですよね。お陰で混乱せずに済みましたけど。ということは今から二週間後って――4月2日……」
「どうした?」
「えっ? 何でもないですよ。何というか切りが良いなと思って」
「切りが良い?」
「私がいた世界の学校では法律で4月2日から翌年の4月1日生まれの人が同じ学年なんです。だから始まりでちょっと切りが良いなって思っただけです」
「……そうか」
「それで、あのっ抗争に巻き込まれて結良さんが亡くなった時、イリヤは?」
どんな様子だったのかと聞かずにはいられなくておそるおそる私はフェルディナンに尋ねた。
「彼奴が死ぬ直前に駆け付けたのは俺だったんだ」
「……えっ?」
「イリヤは結良の死を看取っていない」
「それってどういう……」
「イリヤは結良を助けに行けなかった。――いや、行くことが出来なかったというのが正しいな。結良が死にかけている時、イリヤは俺が依頼した仕事に出ていた。だからイリヤは結良の危機に気付くことが出来なかった」
「そんなっ!」
「イリヤの不在中、俺は彼奴を助けてやることが出来なかった。彼奴を最後に看取ったのは俺だ。このピアスは結良がその最後の時に残していったものだ。本来なら今際の際に彼女の言葉を聞くべきだったのは俺ではなくイリヤの役目だった」
全てが想定外の方向へと狂ってしまった現実を叩きつけられて、フェルディナン達がどれ程辛い思いをしたのか私には想像も出来ない。フェルディナンは綺麗な顔を曇らせて辛そうに視線を落とした。
「フェルディナン……?」
私はそんなフェルディナンを見ていられなくて彼に近寄ってそっと後ろから彼の背中を抱きしめた。フェルディナンは私が抱きしめた手に手を重ねて、私の手を優しくさすっている。彼の手は私の手を全て隠してしまえるくらい大きくて温かい。
いつも私を甘やかすことに長けている包容力の塊で、滅多に弱っている姿を見せないフェルディナンがいまは落ち込み傷ついた様子を私に見せている――私は彼を慰めるように彼の背中に頬を寄せて抱きしめる手にギュッと力を込めた。
「……俺がイリヤに仕事を頼まなければ、きっと間に合っていた筈だ。結良も死なずにすんだかもしれない。だから結良が死ぬ原因を作ってしまった俺をイリヤはきっと憎んでいる」
「憎んでいるって……イリヤがそう言ったの?」
「イリヤは今までただの一度もそんな素振りもそんな思いも口にしたことはない」
「だったら……」
フェルディナンは私の言葉を否定するように小さく首を横に振った。
「あの時俺は彼奴を守れなかった。だから今度こそ俺は君を守る――この命に代えても」
死を意識したフェルディナンの言葉に私は言いようの不安を覚えた。
「フェルディナン……やだよ。そんな怖いこと言わないで」
「月瑠……?」
「言ったでしょ? 私はフェルディナンと一緒にいたいの。だから命に代えられてしまったらそれこそ本末転倒だし、それにフェルディナンは私より先に死んじゃダメ。私ね。好きな人には私より長く生きてほしいの。私より先に死んでほしくない。だってそうなったらすごく寂しくて生きていく自信がないから。だから私より先に死なないって約束して。お願い」
「……だがそれは……」
「お願い。私より先に死なないって約束して」
私は16歳でフェルディナンは45歳。29歳差の私達は順番的にもどう考えても無茶なことを言っているというのは分かっていた。けれど私はあえてそれを口にせずにはいられなかった。
「君はとんでもなく不合理な約束を強要してくれるな……」
「うん、分かってる。でも嫌なの好きな人が先になくなるのは嫌。理屈じゃないの。だからお願い約束して」
そうきっぱり言い切った私を少しの間眺めてから、フェルディナンは徐に顔を近づけると優しく唇に唇を重ねてきた。軽く触れ合うような口づけを交わして唇を離すと、フェルディナンは困ったように眉根を寄せた――そして、私の再三のお願いにフェルディナンがついに折れた。
「……仕方ないな。何時まで立っても俺は君には敵う気がしない」
「じゃあ、指切りして」
「指切り?」
「うん、こうして互いの小指と小指を絡めて約束するの。それで約束破ったら針を千本飲んでもらうという――」
「月瑠の住んでいた世界はそんな恐ろしいところなのか……?」
ちょっと待てとフェルディナンが顔を顰めて口を挟んだ。
「あははっ、違うよ。針を千本は例えというか表面的な約束の文句だから。本当に飲まないから安心して? とにかく、これでフェルディナンは私より先に死なないって約束したんだからちゃんと守って下さいね?」
「……分かった」
フェルディナンを後ろから抱きしめている私の額にフェルディナンがコツンと自身の額を当ててきて優しい時間が少しだけ流れた。
「……フェルディナンがイリヤに依頼した仕事ってどんなことなの?」
「…………」
「どうしたの?」
徐々に重苦しい雰囲気が解消されてきたところで、フェルディナンは再び私の質問に少し考え込むようにしてその目線を私から外してしまった。長い睫毛が半ば伏せられて、紫混じった青い瞳に影が落ちる。何時もより少しだけ色濃く見える瞳が愁いを帯びて妖しく光っている。
「……月瑠もそれに関わっている――だから君をイリヤにあまり近づけたくなかった」
嫌な予感がして私は同じ質問を繰り返した。
「イリヤに依頼した仕事って、何なの?」
フェルディナンを後方から抱きしめている腕が震えそうになる。少し指先に力を入れて抱きしめる力を強くしたら、フェルディナンは私が不安に思っているのを感じとったのか、私の手を掴んで自身の方へ引き寄せると指と指を絡ませて優しく握り直してくれた。
「結良の次に来る異邦人が現れる場所の特定だ」
「それって、まさか……」
次に来る異邦人ってまさか……
「月瑠――君のことだ」
ゆっくりと底知れぬ恐怖が衝撃と共に身体中を侵食して、全身が震えていくのを私はおさえることが出来なかった。
0
お気に入りに追加
3,442
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる