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アクロ編

第30話 水宮のダンジョン

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 水宮のダンジョンに入る。なるほど。水宮のダンジョンとは良く名付けたもんだ。宮殿の中みたいだ。

 壁は煉瓦風で青く光っている。通路はとても広い。高さは10メトルほど、幅は40メトルくらいか。両脇は10メトルくらいの水路になっている。歩ける道幅は20メトルくらいか。

 壁には上から水が流れていてダンジョンの光を浴びてキラキラしている。
 幻想的な風景だがここがダンジョンだ。どこから魔物が出現するか油断はできない。

 少し前に位置するミカは右手に【昇龍の剣】、左手にしっかりと【昇龍の盾】を構えている。
 僕の装備は右手に【鳳凰の杖】、左手には【昇龍の盾】を装備している。初めての盾装備だ。

 一歩一歩ゆっくりと進む。今日は何か確認できればすぐに蒼炎を撃ち込む予定でいる。
 攻撃こそ最大の防御なり。

 ジリジリとした時間が続く。まだ魔物の気配は感じない。
 左側の水路に黒い影が見えた!

「ミカ!左側の水路に影!」

「了解!」

 水路の影はこちら側に向かっていたが30メトル手前くらいでUターンした。動きが結構早い。影は遠ざかっていたが50メトルくらいの距離があるところで水面から飛び出した!

 これがみずちか!
 全身青い鱗でキラキラしている。全長は10メトルは超えている。
 首のところに大きなヒレがあり、それを使ってこちらに滑空してくる。
 速い!

【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】

 反射的に蒼炎を詠唱していた。
 蒼炎は滑空しているみずちに撃ち込まれる!
 僕達から20メトルくらいの距離だった。
 目の前が蒼から白、そして赤色に変わる。

 残ったのは尻尾(?)側が1メトルくらい。あとは燃やし尽くしたようだ。
 みずちはこちらに突っ込んできたから、蒼炎と正面に衝突した後も焼けながら身体が流れて来て9メトルほど焼けたんだろうな。

 あの巨体で滑空のように体当たりもしてくるのか。実際戦ってみないと分からないことばかりだな。

 みずちの焼け残った尻尾はダンジョンに吸収されていく。空中から魔石が落ちてきた。
 魔石はB級魔石だった。初戦は取り敢えず勝利。ただもう少し攻撃のパターンを見たい。

 魔石を拾い周りを警戒してダンジョン探索を再開する。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 水宮のダンジョン1階層でみずちとの戦闘を続けた。今のところ魔物はみずちしか見ていない。

 みずちの攻撃の種類が分かってきた。
 初めにやられた空中飛び上がりからの滑空体当たり。
 水面から顔を出してからの水流。
 水から出てきてからの尻尾攻撃。
 だいたいこの3つだった。

①一番強い攻撃が滑空体当たり。
 蒼炎の魔法と障壁の魔法の詠唱が間に合わない場合があった。そうすると昇龍の盾で防ぐことになるのだが、体長15メトルくらいの巨体の体当たりである。真正面から当たるとどこまでも押し込まれる。壁に挟まれたら圧死する可能性もある。

 昇龍の盾で受ける場合は受け流す感じで横への体捌きが必要になる。
 ミカが盾を上手いこと使い受け流していた。僕も一回やってみたが跳ね飛ばされた。
 無駄にHPがあるし、ミカから硬化の魔法をかけてもらってるから大丈夫だったけど。

②水面から顔を出してからの水流。
 この攻撃はこちらの先制攻撃が間に合わない。まずは攻撃を受けないといけない。
 魔法の詠唱は間に合わない。昇龍の盾で防ぐ事になる。この防御は効果的で簡単に水流を盾で防げた。

 問題は水面から顔を出してくる攻撃という事である。こちらから蒼炎で攻撃すると頭が消滅する。それでみずちは倒せるが魔石が水路に沈んでしまう。水路は底が見えないくらい深い。こちらのレベルは上がるが魔石は獲得できない攻撃だ。

③水から出てきてからの尻尾攻撃。
 この攻撃が一番対応が楽だった。近付かれる前に蒼炎を当てることができる。尻尾の攻撃も滑空体当たりより威力が弱く昇龍の盾で十分対応できた。

みずちは頭を消滅させれば討伐できた。
身体の真ん中あたりに蒼炎が当たって顔を含めて5メトルくらいあるとまだ生きている。
頭が急所と分かった。

 今日は9頭のみずちを討伐した。B級魔石は7つ獲得。レベルは上がらなかった。
 それにしても盾を相当使ったなぁ。盾の練習が必要だね。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 水宮のダンジョンかぁ。ダンジョンは綺麗だったけど、みずちの攻撃がやっぱり凄いな。

 これまでこちらに攻撃してきた魔物はF級モンスターのカーサス(鳥だからね)とDランクモンスターの大猪型のビッグボスくらいだった。
 それ以外のモンスターは遠距離から蒼炎1発で終わりだったからな。

 僕とミカのパーティで苦手なのは遠距離攻撃がある敵と素早い攻撃をしてくる敵の2タイプ。

 ミカの【硬化】の魔法と盾を上手く使えば問題無く戦える。ただ今までは蒼炎だけで頭も身体も使わない戦いばっかりだったから普通の戦闘に慣れていないな。
 剣術以外にも盾の使い方を鍛錬していこう。

 問題は水宮のダンジョンを制覇できるかってことだ。
 今後どうなるか分からないけどみずちだけならダンジョンを進んで行くのは問題ない。ただし沼の主人ダンジョンのように走り抜けることは不可能だ。みずちのスピードが速いから。

 B級ダンジョンは7階層までと言われている。一層3キロルとしても片道21キロル。往復で42キロルもある。

みずちと戦いながら42キロルを進むのは時間的に厳しい。どこかで休憩はしないといけない。安全に眠れるところなんてダンジョン内にはない。パーティの人数を増やして立ちながらの仮眠を10分程度で我慢するか? なんか根性論だな。

 待てよ。一つだけ時間限定だがダンジョンで安全地帯が存在している。
 ボス部屋だ。
 ボスモンスターを倒した後に半日ほどボスが復活しない。ボスを倒した後に半日弱は休めないか?
 いやそのまま復活したボスを倒せば追加で半日休める。これなら制覇可能じゃないか?

 でもボスモンスターが倒せなくて逃げなければならない場合アウトだ。実際にやるとしたら結構博打になるな。

 今のところはこの方法は僕の胸の内にとどめておこう。
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