蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜

葉暮銀

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アクロ編

第20話 20日間Bランク昇格計画

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 Bランク冒険者を目指し始めて16日目。
 いつもどおり沼の主人ダンジョンに行って帰ってきた。
 帰宅するとナギさんが飛んでくる。

「午前中に冒険者ギルドに行っていたんだけど、アキさんの身元がバレるかも」

 あ、やっぱりか。何となくそんな気がした。
 ナギさんは続ける。

「昨日、沼の主人ダンジョンでサルファ達のパーティを助けたでしょ。それで助けてもらった奴隷がアキさんが魔法で泥ゴーレムを倒したって報告したみたいなの。水色の髪をしている弱い水魔法じゃ無理だってはじめは信じてもらえなかったみたいだけど、蒼色の炎の魔法だって言ったらそれを聞いていた宗主様が火を司る南の封印守護者のファイアール公爵家に水色の髪色をした子供がいたはずって」

 僕は深く息を吐く。うーんどうするか。

「ナギさんはなんでそんなに焦っているんですか?」

「だってアキさん自分がファイアール公爵家って周りに知られたくないって言ってたじゃない」

「そうだね」

「考えればわかるわ。飛び抜けた火の魔法が使えるのならファイアール公爵家に戻されるかもしれないと思って。そしたら自由がなくなる冒険者じゃなくなるもんね。そのためにギルドランクを無茶苦茶なスピードで上げてたんでしょ」

「凄いね。そこまで分かっちゃうか」

「それよりどうするの?ウォータール公爵家からファイアール公爵家にアキさんの情報が流れれば間違いなく連れ戻されるわよ」

「単純に考えればそれより速くB級冒険者になれば冒険者ギルドが守ってくれるでしょ」

 ミカが口を挟む

「それは可能なの?」

「計算するとギリギリだね。ここアクロから南方守護地域の中央都市ボムズまで馬車で10日かかる。往復で20日間。ウォータール公爵家からすぐにファイアール公爵家に情報が行くかわからないし、その情報を聞いたファイアール公爵家がすぐに動くかどうかもわからない。ある程度そのあたりで時間がかかればBランク冒険者になるのが間に合うかもしれないね」

 ミカは微笑んで口を開く。

「まぁやってみるしかないわね」

「そうだね。駄目なら逃げ出すから問題ないでしょ」

 2人に軽く言われたナギが慌てて話し出す。

「そんな!困るのよ!来年の予算は貴方達の魔石量を前提として作成しているんだから!」

「ハハハ。凄いね大人って。僕は気が向いたら他の場所に移るよ」

「だから移られないように便宜を図って居心地を良くしているんでしょ!」

「まぁまずは早期にBランク冒険者になることだね」

 話を打ち切って今日の魔石を冒険者ギルドに納品に行く。冒険者ギルドに入ると周りがザワザワとした。【蒼炎の魔術師】って言葉も聞こえる。噂が広がるのは早いと感じた。

【16日目】
昇龍のグリーブ
B級魔石  1個
C級魔石 76個
アキ レベル1UP
ミカ レベル1UP

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 アクロからボムズまで往復20日。この20日間でBランクに昇格できれば最高だ。

 帰宅してからBランク冒険者までのギルドポイントを計算してみた。

 Bランクに昇格するためには、あと2千万ギルドポイントが必要だ。C級魔石は1個1万ギルドポイント。B級魔石は1個10万ギルドポイントだからC級魔石10個分として計算できる。

 2千万ギルドポイントをC級魔石で換算すると2千個になる。20日で集めるとなると1日100個。

 泥ゴーレムを90体、毒泥ゴーレムを1体たおすのがノルマになる。
 蒼炎が最低91発必要になる。

 現在最大MPが158。蒼炎は79発撃てる。自然回復のMPを考慮しても10発分足りない。
 レベルアップが緩やかになっているから20日で必要MPまでは成長できない。

 10発分かぁ…

 リビングにいるナギさんに聞いてみる

「ナギさん、魔法の魔力消費量を減らす杖かアイテムってないかな?」

「魔力消費量を減らす杖なら一応あるけど、そんな杖は国宝級だから手には入らないわよ」

「それなら減った魔力を回復するようなポーションはない?」

「それは禁制品のポーションね。魔力は回復するけど飲むと常習性があって廃人になっちゃうの」

 やっぱりそう上手くはいかないか。
 同じくリビングで雑誌を読んでいるミカに声をかける。

「ねぇミカ、蒼炎を使わずに剣で泥ゴーレムを倒すのは無理かなぁ」

「頭か胸のオーブを狙わないといけないから厳しいわね。あれだけの巨体だから飛び上がらないといけないし、空中では相手の攻撃を避けられないから」

「うーん。やっぱりそうだよね。ありがとう。もう少し考えてみるよ」

 Bランクの水宮ダンジョンを考えるか。蛟《みずち》には遠距離攻撃があるから安定して狩れないか。最悪2人共やられてしまう。

 何か方法はないか。蒼炎を1日10発増やす方法だ。

 その時先日のサルファ達の奴隷を助けた映像が頭に浮かんだ!

 そうだ!10発増やすんじゃなくて1発で数匹倒せば良いじゃないか。
 泥ゴーレムをいつも1体を1発で倒していたのでそれが当たり前になっていた。こないだ奴隷を助けた時は初めの1発で2体倒していた。
 ミカと僕で泥ゴーレムをキャリーして一纏めにしてから蒼炎を撃てば良いんだ。1日10回上手く行けば良い。これなら行ける!

 早速ミカに作戦を伝え了承を得た。動きの遅い泥ゴーレムならばキャリーも上手くいきそうだ。
 まずは明日試してからだな。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 気合いを入れ直した朝。今日から20日間でBランク冒険者昇格を目指してやる!
 今日は20日間Bランク計画1日目だ!

 僕は朝からイレこんでいた。
 ミカは笑いながら落ち着くように僕に言った。

 まずはボス部屋へのランニング。この行為も慣れてきたな。
 右手に昇龍の杖を握り、慎重に毒泥ゴーレムに蒼炎を当てた。昇龍の杖から発射される蒼炎は通常より速く目標物にあたる。
 B級魔石と装備をマジックバッグに入れて2階まで走って戻る。
 さぁこれからだ。

 キャリーの方法は泥のゴーレムが出たら道に上がって来る前に横を通り過ぎる。引きつけながら前方の状況を確認しておく。
 前方から泥のゴーレムが出る兆候があったらギリギリのスピードで横をすり抜ける。
 初めのゴーレムがついて来ていれば成功だ。

 4匹程度になったら蒼炎を撃つ。今まで蒼炎を使って分かったことはダンジョン内での蒼炎の有効半径は3メトルほどと感じた。
 2体のゴーレムの真ん中に蒼炎を撃ち込めば充分討伐可能だと思う。

「よしミカ始めるよ!」

「了解!任せといて」

 まずは1体目の泥のゴーレムが出るまで待つ。右手前方に現れた。その横を通り過ぎて泥ゴーレムが道に出てくるのを待つ。僕は前方を警戒。ミカは軽く泥のゴーレムに攻撃を加えて誘導する。1分ほど泥のゴーレムを引き連れて進んで行くと左手前方に新たな泥ゴーレムが出現した。

「左手前方に出現!」

 ミカに知らせてちょうど2体目の横を通り過ぎる速度で進む。上手くいった。2体の泥ゴーレムがついてくる。
 そのまま4体になるまでキャリーを続けた。
 4体になったところでミカは泥ゴーレムを密集させるように足止めの攻撃を始める。
 上手く密集してきたのでタイミングを図って詠唱を開始した。

【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】

 ミカは詠唱を聞きながらタイミングよくバックステップを決めた。
 蒼炎が密集している場所に着弾する。水蒸気で状態が見えない。数秒で視界が良好になる。
 よし!2体倒した!
 まずは倒した2体の魔石を拾う。
 ミカは倒せなかった2体を上手く誘導し、蒼炎の有効半径に入れた。

【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】

 2体の真ん中に着弾! 水蒸気が無くなると泥ゴーレムは消え去り、泥の成分が赤白くドロドロになっていた。

 2発で4体の泥ゴーレムを倒すことができた。2発分浮いた勘定だ。これを5~6回やればノルマをクリアできる。あとは安定して安全にこなせるかだな。

 その後も泥ゴーレムのキャリーを続ける。
 今日はキャリーを7回試してみた。蒼炎一発で3体倒す時もあり思ったより上手くいく。

 今日は結局B級魔石を1個、C級魔石を92個獲得できた。レベルもお互い1ずつ上がる。

 ダンジョンを出ると夕方になっていた。キャリーしていると時間はとられる。お腹空いたな。
 家に帰るともう少しで夕ご飯の時間だった。
 帰宅がいつもより遅くなってナギは心配していた。僕達の顔を見ると安心した顔を見せてくれる。

 どうしてもキャリーで倒していると時間が掛かるため、明日からナギさんがお弁当を作ってくれると提案してくれた。本当にありがたい。

 今日は上手く行っても明日はどうなるかわからない。ゆっくり寝て明日に備えよう。
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