蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜

葉暮銀

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アクロ編

第19話 ダンジョンでの面倒ごと

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 帰宅してから早速冒険者ギルドに行って宝箱から出た青色の盾の鑑定を頼んだ。
 名前が【昇龍の盾】。特殊効果は盾の移動が速くなるとの事。沼の主人ダンジョンの宝箱の装備は【昇龍】シリーズなのかな?
 ナギさんに聞いたらダンジョンによっては同じ名前を冠している装備が出る場合があるそうだ。
 せっかくなら【昇龍】シリーズを集めてみたいなぁ。

 今日の収穫を確認する。

昇龍の盾
B級魔石  1個
C級魔石 66個

 レベルは僕は上がらず、ミカは1つ上がっていた。

 家に帰ろうとしたらギルド長が僕達を呼び止めた。ギルド長室に入って座るとウォータール公爵家がその後どうなったのか教えてくれた。

 冒険者ギルドアクロ支部の抗議文を読んだウォータール公爵家宗主は慌てて冒険者ギルドを訪問したとの事。冒険者ギルドへの圧力は宗主の預かり知らぬこと。次男のサルファ・ウォータールの独断でやった事がわかった。

 ウォータール公爵家宗主のセフェム・ウォータールは、子供であるサルファ・ウォータールを叱責した。
 最年少Dランクの冒険者の僕はBランク冒険者並の魔石を納品することができ、街として有益な冒険者であると懇々と説明した。
 それに納得ができないサルファは「それならば俺がそれ以上の魔石を納品する」と言って先日冒険者ギルドに冒険者登録をしたという話だ。

 その話を聞いてサルファの粘着質の性格を感じた。何も起きなければ良いけど。
 ギルド長は新しい情報が入ったら連絡すると言ってくれた。

 冒険者ギルドの帰り道、少しだけ暗い顔をしているミカだった。

 家でナギさんからサルファ・ウォータールの話を聞いた。金に物を言わせて奴隷を買って戦力にしているとのこと。奴隷を肉壁にしてその後ろから水系の魔法で倒しているみたいだ。

 大丈夫だと思うけど沼の主人ダンジョンには来て欲しくないなぁ。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 Bランク冒険者を目指し始めて7日目から14日目までは特に何もなく日々をこなしていった。

①早朝に起きて素振り。その後ミカと木剣を使った模擬戦。ナギさんの作った朝ごはんを食べる。
②沼の主人ダンジョンまで走る。そのまま沼の主人ダンジョンのボス部屋までまた走る。
③ボスを倒して宝箱を開ける(この時はドキドキする)。
④ボス部屋から2階まで走る。
⑤2階からはMPが切れかかるまで泥ゴーレムを蒼炎で倒す。
⑥家まで帰宅してナギさんが作ってくれた軽食をつまむ。
⑦ミカとナギさんと共に冒険者ギルドに行って魔石の納品と宝箱から出たお宝の鑑定などをする。
⑧家に帰ってお風呂に入る。
⑨ナギさんが作ってくれた夕ご飯を食べる。
⑩晩酌をしているミカとナギさんに断って自室に戻り就寝。

 取り敢えずはこの繰り返し。
 なお7日目から14日目までの収穫はこちら。

【7日目】
昇龍の胸当て(全体の素速さUP)
B級魔石  1個
C級魔石 68個
アキ レベル1UP
ミカ レベル1UP

【8日目】
昇龍の剣
B級魔石  1個
C級魔石 70個
アキ レベル1UP
ミカ レベル1UP

【9日目】
昇龍のグリーブ(脚の素早さUP)
B級魔石  1個
C級魔石 72個
アキ レベルUPなし
ミカ レベル1UP

【10日目】
昇龍のガントレット(腕の素早さUP)
B級魔石  1個
C級魔石 72個
アキ レベル1UP
ミカ レベルUPなし

【11日目】
昇龍の杖(魔法の射出速度UP)
B級魔石  1個
C級魔石 74個
アキ レベルUPなし
ミカ レベル1UP

【12日目】
昇龍のローブ(全体の素速さUP)
B級魔石  1個
C級魔石 74個
アキ レベル1UP
ミカ レベル1UP

【13日目】
昇龍のローブ
B級魔石  1個
C級魔石 76個
アキ レベルUPなし
ミカ レベルUPなし

【14日目】
昇龍の剣
B級魔石  1個
C級魔石 76個
アキ レベルUPなし
ミカ レベル1UP

レベルはミカに追いつかれた。

ミカの装備は
・昇龍の剣(剣速UP)
・昇龍の胸当て(全体の素速さUP)
・昇龍の盾(盾の移動速度UP)
・昇龍のガントレット(腕の素早さUP)
・昇龍のグリーブ(脚の素早さUP)

 昇龍シリーズは青色の装備で速度を速める効果がある。インナーの服は白色でまとめた。なかなかオシャレになっている。
 そして何故かミカは膝上のスカートに変えた。カーサスを倒す時にスカートがひるがえって目のやり場に困る。というよりガン見している自分に気が付き、僕はムッツリなのかと軽い自己嫌悪に陥っている。

 僕は毎日の剣術の稽古はやっているがダンジョン探索は魔術師の格好にした。
・昇龍の杖(魔法の射出速度UP)
・昇龍のローブ(全体の素速さUP)

 後はマジックバッグに黒龍の杖と昇龍の剣を入れてある。
・黒龍の杖(魔法の威力DOWN)
・昇龍の剣(剣速UP)
 通常、僕は街中では昇龍の剣を装備している。

 僕はこのまま順調に続くと思っていた。安全に討伐ができている。装備やお金、それにギルドポイントが貯まってきた。
 しかしBランク冒険者を目指し始めて15日目。この日常が崩れることが起きてしまった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 その日はいつもと同じように沼の主人ダンジョンの毒泥ゴーレムを倒して2階に戻ってきた。ここからゆっくりと泥ゴーレムを倒しながらダンジョンの入り口まで戻るのがいつものパターンだ。

 いつもどおり道の上まで泥ゴーレムが上がってくるのを待って蒼炎を撃ち込む。淡々と作業とも呼べる討伐をこなしながら、ミカのひるがえるスカートを見ていた。殺伐としたダンジョン攻略の中での癒しである。

 1階に上がり入り口から1キロルまでのところで気が付いた。ダンジョンの入り口付近で戦闘をしている冒険者がいる。

 沼の主人ダンジョンは簡単な一本道のため隠れてダンジョンを出ることができない。横を走り抜けていこうかと思ったが、この冒険者パーティは10人を超える人数で15メトルの道幅いっぱいに広がって戦闘している。時間をかけ過ぎたのか泥ゴーレムも3体いる。倒れている人も2~3人いるようだ。

 ミカと顔を合わせる。

「どうしようか?」

「あれだと隠れて外に出れないわ」

「苦戦しているようだし、倒れている人もいるから助けたほうが良いかな」

 通常、ダンジョンで他の冒険者パーティに遭遇したら獲物の横取りなどがあるため、不干渉が原則である。あくまでも自己責任が冒険者の基本となる。

 しかし生命の危険性などがある場合や救援を求められたら、出来るだけ助け合うのが不文律としてある。

 状況次第でいろいろと対応を変えないといけない。倒れている人がいるため助けても良いのだが、あとから難癖をつけられる場合がある。

 また泥ゴーレムに効き目のある攻撃は蒼炎しかないため、あまり人前で使いたくはない。

「まぁ近くまで行って、リーダーに声をかけてそれから適宜判断かなぁ」

「そうね。結局わからないもんね。蒼炎は後何発撃てる?」

「うーんとね。後8発だね」

「分かったわ。それなら問題ないわね。取り敢えず行ってみましょう」

 戦闘現場に近づいていくと、戦っている人はみんなチョーカーをしている。奴隷のようだ。剣で斬りつけても泥のゴーレムはすぐに修復し、拳を振り上げて殴りかかっている。

 冒険者パーティの一番奥から20セチルほどの水弾が発射された。泥ゴーレムに当たるが全く効いている感じは受けない。

 誰が魔法を撃ったのか確認できた。濃い青色の髪色に高そうな金属鎧を装備している20歳半ばの男性。見るからに性格が悪そうな顔をしている人物。間違いなくサルファ・ウォータールであった。

 僕らより魔石を多く納品するならCランク以上のダンジョンに入らないといけない。
 アクロ周辺ダンジョンでCランク以上のダンジョンは3つしかない。Aランクの東の封印ダンジョン。Bランクの水宮ダンジョン。そしてCランクの沼の主人ダンジョンである。

 それでCランクの沼の主人ダンジョンに来たのだろうがこれは悪手である。水系のモンスターに水系の魔法をぶつけてもダメージはほとんどでない。そんな単純なことが分かっていないようだ。

 パーティのリーダーがサルファ・ウォータールならこちらに助けを求めるわけがない。取り敢えず静観するしかなかった。

 サルファも僕達に気がついたようだ。遠目でも悔しがっているのがわかる。ヤケ糞気味にウォーターボールの魔法を3発連射する。なかなかの速さだが泥ゴーレムにはまったく効いていない。

 どうするのか見ていると「撤退だ!撤退するぞー!」と大きな声を張り上げていた。
 誰よりも早く逃げ出すサルファ。慌ててそれを追う奴隷達。残されたのは倒れている人が3人、足を引きずっている人が1人。暴れるドロゴーレムの前に4人が取り残されていた。

「ミカ!このまま蒼炎を撃つと倒れている人にも余波が行く!こちらに泥ゴーレムを誘導してくれるかな?」

「分かった。任せといて」

 そうミカは言うと3体の泥ゴーレムを昇龍の剣で切り裂いていく。昇龍シリーズを装備しているミカの速さは目に追えないくらいだ。
 3体のゴーレムはミカをロックオンして追いかけてくる。
 僕はミカが蒼炎の範囲を逃れるタイミングを図り呪文の詠唱をする。

【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】

 3体いた泥ゴーレムの真ん中の1体に蒼炎は当たる。余波で左側のゴーレムは倒せた。右側のゴーレムは片腕だけしか焼けなかった。
 残ったゴーレムにもう一発蒼炎を撃ちこむ。大量の水蒸気が出て、泥の成分が赤白くドロドロになっていた。
 数秒で蒼炎の余波エネルギーとゴーレムの残骸をダンジョンが吸収した。

 残ったのは3個のC級魔石と倒れている3人と唖然とこちらを見ている足を引きずっていた男性奴隷だった。

 C級魔石を拾ってマジックバックに入れる。倒れている3人は重症だった。このままほっとけばダンジョンに吸収されるだろう。

 取り敢えず意識のある足を引きずった男性に声をかける。

「まずはこのポーションを飲んで」

 その間に倒れている人にもポーションを飲ませる。少し待つと倒れていた3人の意識が戻った。
 肩を貸してあげてダンジョンの外に出る。
 先に逃げ出したサルファ達はどこにもいなかった。

 しょうがないから肩を貸して西門まで怪我人を連れてきた。サルファの奴隷なので、西門の衛兵に伝え処理を頼む。奴隷は物扱いだからしかるべきところに預けて主人に取りに来てもらうのが正しい対応だ。

 助けた奴隷4人はお礼も言わない。僕達のせいで無理矢理ダンジョン探索をさせられているため恨みがあるみたい。なんだかなぁ。

【15日目】
昇龍の胸当て
B級魔石  1個
C級魔石 74個
アキ レベルUPなし
ミカ レベルUPなし
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