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春休み
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カメラが止まり、明らかに崇範がホッとした顔をする。
「じゃあ、ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
言いながら報道陣が撤収し始めるのを見て、美雪は車を降りると、崇範のところに小走りで近寄った。
「深海君!」
「え、東風さん!?」
「どうしても直におめでとうが言いたくて。えへへ。
ケーキ買って来たの」
「ありがとう。
あ。も、もしかして、今の」
ハッとしたように崇範が狼狽える。
美雪は赤くなって俯き、崇範も赤くなって俯く。
「あ、あの、本当はこの前からずっと言おうとしてたんだけど、なぜかいつも邪魔が入って」
「う、うん。そうね。そうだったわよね」
「それで、その、春休みに、どこかに行かない?」
「い、行きたい、です!」
「それから、あの、好きです!」
「わた、わた、わたしも、好きです!」
それでお互いにお互いの返事にほっとし、視線を合わせて微笑むと、急に恥ずかしくなってまたも俯く。
新見と明彦が、溜め息をついた。
「節度ある付き合いにも程があるだろう」
「まあ、何か問題が起こるよりはいいですけどね」
いつの間にか美雪に気付いたカメラが録画を始めており、全てを撮られていたと知った2人は、言葉もなく蹲った……。
学年末テストが終わり、試験休みになる。撮影も始まるが、数日はまだ暇がある。
その間にと、崇範と美雪は加藤、田中、美雪の友人達と6人で遊園地に行く事になった。
崇範のコメントも崇範と美雪の付き合いも好意的に報じられ、ファンサイトもいつしか鎮静化していった。
「進路、どうするの」
「奨学金制度のある大学を受験しようかと思ってる所なんだ」
「へえ。学部は?」
「手に職をつけたいのと、法律に興味があるから、法学部かな。それで弁護士の資格を取りたいな。
東風さんは?」
「私は、獣医さんかなあ」
特設ステージ前で6人でヒーローショーの始まりを待ちながら、そんな話をしていた。
「深海は、ビッグな俳優を目指すんじゃないの?」
「そんなに僕が凄い訳ないよ」
「え、何なの、その変な自信は」
「そうだよな。特撮ヒーローの時は物凄く自信満々なのにな」
「あれは別人だから。
でも、特撮ヒーローの仕事は楽しかったな」
「うん!かっこいいしね!」
他の4人は、もういい加減慣れた。
と、ステージにお姉さんが出て来て、客席に向かって声を張り上げる。
『こんにちはーっ』
「こんにちはーっ」
子供達が笑顔で応える。目がキラキラと輝き、ワクワクが止まらないという顔でステージを見つめている。
「ああ。こういうのがいいんだよ。怪獣をやっつけて皆が笑顔になった時とかね」
崇範は、会場を見て小声で言った。
「うん。深海君は、最高のヒーローだよ!」
美雪が言い、視線が合い、笑顔がこぼれる。
『大変、怪獣が現れたぁ!助けを呼ばなくちゃ!皆は誰に助けを呼ぶ?
さあ、大きい声でヒーローを呼んでね!せえの』
「アスクルー!」
「深海くーん!!」
「東風さーん!!」
大声が青空に舞い上がった。
「じゃあ、ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
言いながら報道陣が撤収し始めるのを見て、美雪は車を降りると、崇範のところに小走りで近寄った。
「深海君!」
「え、東風さん!?」
「どうしても直におめでとうが言いたくて。えへへ。
ケーキ買って来たの」
「ありがとう。
あ。も、もしかして、今の」
ハッとしたように崇範が狼狽える。
美雪は赤くなって俯き、崇範も赤くなって俯く。
「あ、あの、本当はこの前からずっと言おうとしてたんだけど、なぜかいつも邪魔が入って」
「う、うん。そうね。そうだったわよね」
「それで、その、春休みに、どこかに行かない?」
「い、行きたい、です!」
「それから、あの、好きです!」
「わた、わた、わたしも、好きです!」
それでお互いにお互いの返事にほっとし、視線を合わせて微笑むと、急に恥ずかしくなってまたも俯く。
新見と明彦が、溜め息をついた。
「節度ある付き合いにも程があるだろう」
「まあ、何か問題が起こるよりはいいですけどね」
いつの間にか美雪に気付いたカメラが録画を始めており、全てを撮られていたと知った2人は、言葉もなく蹲った……。
学年末テストが終わり、試験休みになる。撮影も始まるが、数日はまだ暇がある。
その間にと、崇範と美雪は加藤、田中、美雪の友人達と6人で遊園地に行く事になった。
崇範のコメントも崇範と美雪の付き合いも好意的に報じられ、ファンサイトもいつしか鎮静化していった。
「進路、どうするの」
「奨学金制度のある大学を受験しようかと思ってる所なんだ」
「へえ。学部は?」
「手に職をつけたいのと、法律に興味があるから、法学部かな。それで弁護士の資格を取りたいな。
東風さんは?」
「私は、獣医さんかなあ」
特設ステージ前で6人でヒーローショーの始まりを待ちながら、そんな話をしていた。
「深海は、ビッグな俳優を目指すんじゃないの?」
「そんなに僕が凄い訳ないよ」
「え、何なの、その変な自信は」
「そうだよな。特撮ヒーローの時は物凄く自信満々なのにな」
「あれは別人だから。
でも、特撮ヒーローの仕事は楽しかったな」
「うん!かっこいいしね!」
他の4人は、もういい加減慣れた。
と、ステージにお姉さんが出て来て、客席に向かって声を張り上げる。
『こんにちはーっ』
「こんにちはーっ」
子供達が笑顔で応える。目がキラキラと輝き、ワクワクが止まらないという顔でステージを見つめている。
「ああ。こういうのがいいんだよ。怪獣をやっつけて皆が笑顔になった時とかね」
崇範は、会場を見て小声で言った。
「うん。深海君は、最高のヒーローだよ!」
美雪が言い、視線が合い、笑顔がこぼれる。
『大変、怪獣が現れたぁ!助けを呼ばなくちゃ!皆は誰に助けを呼ぶ?
さあ、大きい声でヒーローを呼んでね!せえの』
「アスクルー!」
「深海くーん!!」
「東風さーん!!」
大声が青空に舞い上がった。
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