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邪魔
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美雪のカツサンドは、美雪の想像以上に上手くいっていた。
「美味しい!東風さん、料理が美味いんだね」
崇範にほめられ、やや内心で焦りながらも、今回はアドバイスを受けながらもほとんど自分で作っただけあって、美雪も嬉しかった。
「まだまだだよ。ありがとう。
不安に勝つように。がんばってね」
「うん。ありがとう。がんばってみるよ」
にこにこしながら仲良く食べ、他愛もない話をしながら、崇範は美雪が本当にありがたいと思った。
「もうすぐ春休みね」
「その前に学年末テストがあるけどね」
「憂鬱だわぁ」
「僕はその前の例のテストがね」
テストはするものの、ほとんど決まったようなものらしい。それでも、あまりにもダイコンだと落ちるに違いないと崇範はヒヤヒヤしていた。
「応援してるから。落ち着いたら大丈夫よ」
「うん。緊張したら東風さんを思い出す事にするよ。頑張れる気がする」
「えへへ」
美雪はくすぐったそうに笑った。
「来年も同じクラスになれたらいいのに」
崇範は、
(今だ!)
と思った。
「東風さん。もしクラスが違っても、その後の進路が違っても、僕は――」
「東風さん」
一世一代の気合を込めた告白の最中に遮られ、崇範は机に突っ伏しそうになった。
美雪も、何か大事な話のようだと集中していた最中に割り込まれ、つい、恨めしそうな目を声の主に向けた。
「……堂上君……」
堂上が、イケメンスマイルで立っていた。
「ちょっといいかな」
ダメだと言われないのを前提とした顔だ。
「深海、ちょっといいか」
担任までもが乱入して来た。
(また今度改めて言おう)
崇範と美雪は、渋々立ち上がって、各々堂上と担任とについて行った。
崇範が連れて来られたのは、職員室だ。
「昨日、襲われたんだって?大丈夫なのか。殴られたのか?」
「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」
「今日は朝から、手記がどうのこうのって、校門前にも取材陣が来てなあ。他の生徒や近所の迷惑になるからと帰ってもらったが」
「すみません。色々とお騒がせしてしまって」
「いや、俺はいいよ。深海は俺の生徒だしな。
むしろ、何でも相談しろよ。例えば進路も」
冬休み明けに進路調査票を出したのだが、崇範は就職を希望した。
「就職ってのは、芸能界か?」
「いえ。スタントもスーツアクターもバイトです。どこかの企業に就職しようと思ってますよ」
「でも、俳優でいくとかネットに出てたぞ」
「先生、そんなのも見るんですか」
「まあな」
「ううん。今の騒ぎはきっと一時的なものだと僕は思うんです。まあ、バイトでやりますけど」
「バイトねえ。
進学の意志はないのか。成績的にはそっちを勧めるところだけどなあ。奨学金だって特待生制度のある学校だってあるし、将来を考えれば、進学を勧めるんだがなあ」
「奨学金は、卒業してから返さないといけないから」
「色々だぞ。資料を揃えておくから、春休み中によく考えてみろ。いいな」
「はい」
「それと、何か取材とかをするなら、できれば学校に押しかけて来ないように事務所から言ってもらえないか」
「はい。社長にそう申し入れしてもらいます。
ご迷惑をおかけして、済みませんでした」
崇範は礼をして、職員室を出た。
美雪と堂上は、人気の無い特別棟の廊下にいた。
「この前の話なんだけど」
美雪は一瞬何だったか考え、思い出した。
「ごめんなさい。堂上君とは付き合えないわ」
「何で?」
「堂上君にはそういう感情が持てないから」
「え、いや、付き合ってみて」
「何が何でも誰かと付き合わなきゃいけないわけでもないし、深海君がだめでも、それで別の人となんておかしいもの」
堂上は理解不能という顔をしていた。
美雪は気まずい事もあって、
「ごめんなさい。じゃあ」
と、さっさと踵を返した。
堂上はそれを呆然と見送っていた。
「美味しい!東風さん、料理が美味いんだね」
崇範にほめられ、やや内心で焦りながらも、今回はアドバイスを受けながらもほとんど自分で作っただけあって、美雪も嬉しかった。
「まだまだだよ。ありがとう。
不安に勝つように。がんばってね」
「うん。ありがとう。がんばってみるよ」
にこにこしながら仲良く食べ、他愛もない話をしながら、崇範は美雪が本当にありがたいと思った。
「もうすぐ春休みね」
「その前に学年末テストがあるけどね」
「憂鬱だわぁ」
「僕はその前の例のテストがね」
テストはするものの、ほとんど決まったようなものらしい。それでも、あまりにもダイコンだと落ちるに違いないと崇範はヒヤヒヤしていた。
「応援してるから。落ち着いたら大丈夫よ」
「うん。緊張したら東風さんを思い出す事にするよ。頑張れる気がする」
「えへへ」
美雪はくすぐったそうに笑った。
「来年も同じクラスになれたらいいのに」
崇範は、
(今だ!)
と思った。
「東風さん。もしクラスが違っても、その後の進路が違っても、僕は――」
「東風さん」
一世一代の気合を込めた告白の最中に遮られ、崇範は机に突っ伏しそうになった。
美雪も、何か大事な話のようだと集中していた最中に割り込まれ、つい、恨めしそうな目を声の主に向けた。
「……堂上君……」
堂上が、イケメンスマイルで立っていた。
「ちょっといいかな」
ダメだと言われないのを前提とした顔だ。
「深海、ちょっといいか」
担任までもが乱入して来た。
(また今度改めて言おう)
崇範と美雪は、渋々立ち上がって、各々堂上と担任とについて行った。
崇範が連れて来られたのは、職員室だ。
「昨日、襲われたんだって?大丈夫なのか。殴られたのか?」
「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」
「今日は朝から、手記がどうのこうのって、校門前にも取材陣が来てなあ。他の生徒や近所の迷惑になるからと帰ってもらったが」
「すみません。色々とお騒がせしてしまって」
「いや、俺はいいよ。深海は俺の生徒だしな。
むしろ、何でも相談しろよ。例えば進路も」
冬休み明けに進路調査票を出したのだが、崇範は就職を希望した。
「就職ってのは、芸能界か?」
「いえ。スタントもスーツアクターもバイトです。どこかの企業に就職しようと思ってますよ」
「でも、俳優でいくとかネットに出てたぞ」
「先生、そんなのも見るんですか」
「まあな」
「ううん。今の騒ぎはきっと一時的なものだと僕は思うんです。まあ、バイトでやりますけど」
「バイトねえ。
進学の意志はないのか。成績的にはそっちを勧めるところだけどなあ。奨学金だって特待生制度のある学校だってあるし、将来を考えれば、進学を勧めるんだがなあ」
「奨学金は、卒業してから返さないといけないから」
「色々だぞ。資料を揃えておくから、春休み中によく考えてみろ。いいな」
「はい」
「それと、何か取材とかをするなら、できれば学校に押しかけて来ないように事務所から言ってもらえないか」
「はい。社長にそう申し入れしてもらいます。
ご迷惑をおかけして、済みませんでした」
崇範は礼をして、職員室を出た。
美雪と堂上は、人気の無い特別棟の廊下にいた。
「この前の話なんだけど」
美雪は一瞬何だったか考え、思い出した。
「ごめんなさい。堂上君とは付き合えないわ」
「何で?」
「堂上君にはそういう感情が持てないから」
「え、いや、付き合ってみて」
「何が何でも誰かと付き合わなきゃいけないわけでもないし、深海君がだめでも、それで別の人となんておかしいもの」
堂上は理解不能という顔をしていた。
美雪は気まずい事もあって、
「ごめんなさい。じゃあ」
と、さっさと踵を返した。
堂上はそれを呆然と見送っていた。
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