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心配
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東風一家は、揃って夕食を摂っていた。
「ああ、美雪。転校の件だが」
勝が言うと、美雪がキョトンとした顔を向けた。
「その話は終わったんじゃないの?」
「終わってない」
「あら。どうしてかしら、あなた」
留美も首を傾ける。
勝は落ち着きなく箸を置いたり持ったりしながら、目を合わせないようにして喋り出す。
「それはやっぱり、同じ学校に深海――君がいると気を使うだろうと思ってだな」
「そんなわけないじゃないの」
「そうですよ。だって、お付き合いしてるんだもの。ねえー」
「恥ずかしい。えへへ」
留美と美雪がニコニコするが、それを見て、勝はイラッとした。
「やつは貧乏人だぞ」
「倒産させられたからね」
「うっ。
しょ、将来も不安定なやつじゃないか」
「あら。まだ高校生よ。高校生に安定した将来の子がいるわけないわ。それに今は、安定した職業とかってあるのかしら」
「それは、あれだ。大きい会社のトップとかだな」
「あなた。そんな甘い考えはあまりにも現代にそぐわないわよ」
留美にも心配そうな顔を向けられ、勝は言葉に詰まった。
明彦は小さく嘆息した。
「公立の学校よりも、同じような家庭環境の子が通う学校の方がいいんじゃないか?話も合うだろうし」
「私、友達は多いわよ?学校は楽しいし、成績もここが合うと思うし、問題ないわ、お兄ちゃん」
「しかし、家の格というか」
「明彦。あなた何時代に生まれたの?そんな考えじゃ、いい出会いも期待できないわね」
留美にかわいそうな子を見るような目で見られ、明彦も黙った。
そして勝と明彦は、もそもそと食事を再開したのだった。
食後、勝と明彦は書斎で唸っていた。
「悪いやつとは言わん。言わんが……」
「うん。美雪はそれなりの所に嫁いだ方が幸せだよな。経済的にも苦労しないような所」
「そう!そうだとも!」
「友人の家が病院を経営してるんだけど、そこの弟が今医大生なんだ。まあ、将来病院長は兄貴の方が継ぐにしても、待遇は間違いないよ。ルックスだって悪くないし、薬物とか賭け事とかには手を出さないみたいだし」
勝が前のめりになる。
「女は?」
「もてるのはもてるらしいね。詳しく知らないけど」
「まあ、それだけいいやつなんじゃないのか?見合いさせるか」
幾分、2人は声をひそめた。
「まずは上手く2人を引き合わせてみようか」
「できるか?」
「できると思う」
「よし。頼んだぞ。深海の倅は、どうもな……」
気を使うのは美雪ではなく自分達の方だと、気付いていない勝だった。
崇範と佐原が事務所に戻った時、まだプロデューサーもいたが、今起こった話をすると、新見と同じく、呆れ、憤慨し、そして心配した。
「警察に行った方がいいよ。それ、立派な恐喝罪だから」
「ですよね。それにしても、頭の悪いやつらだな。どうやったらこういう発想になるんだ?」
「自分勝手、ここに極まれりですね」
「崇範、しばらくうちに来るか?狭いが、お前の所は、もしあいつらが来たら、キック1発でドアが開くぞ」
佐原が心から心配そうに言った。
「そうですか?」
「あのアパートはセキュリティに問題がありすぎだろ。引っ越しも考えた方がいいぞ」
「でも、安いし、僕1人だからあれで十分だし、仕事がいつまでもあるとは限らないし」
「どこまでも心配症だな、崇範は」
新見と佐原が呆れかえり、プロデューサーは笑いを堪えていた。
「ああ、美雪。転校の件だが」
勝が言うと、美雪がキョトンとした顔を向けた。
「その話は終わったんじゃないの?」
「終わってない」
「あら。どうしてかしら、あなた」
留美も首を傾ける。
勝は落ち着きなく箸を置いたり持ったりしながら、目を合わせないようにして喋り出す。
「それはやっぱり、同じ学校に深海――君がいると気を使うだろうと思ってだな」
「そんなわけないじゃないの」
「そうですよ。だって、お付き合いしてるんだもの。ねえー」
「恥ずかしい。えへへ」
留美と美雪がニコニコするが、それを見て、勝はイラッとした。
「やつは貧乏人だぞ」
「倒産させられたからね」
「うっ。
しょ、将来も不安定なやつじゃないか」
「あら。まだ高校生よ。高校生に安定した将来の子がいるわけないわ。それに今は、安定した職業とかってあるのかしら」
「それは、あれだ。大きい会社のトップとかだな」
「あなた。そんな甘い考えはあまりにも現代にそぐわないわよ」
留美にも心配そうな顔を向けられ、勝は言葉に詰まった。
明彦は小さく嘆息した。
「公立の学校よりも、同じような家庭環境の子が通う学校の方がいいんじゃないか?話も合うだろうし」
「私、友達は多いわよ?学校は楽しいし、成績もここが合うと思うし、問題ないわ、お兄ちゃん」
「しかし、家の格というか」
「明彦。あなた何時代に生まれたの?そんな考えじゃ、いい出会いも期待できないわね」
留美にかわいそうな子を見るような目で見られ、明彦も黙った。
そして勝と明彦は、もそもそと食事を再開したのだった。
食後、勝と明彦は書斎で唸っていた。
「悪いやつとは言わん。言わんが……」
「うん。美雪はそれなりの所に嫁いだ方が幸せだよな。経済的にも苦労しないような所」
「そう!そうだとも!」
「友人の家が病院を経営してるんだけど、そこの弟が今医大生なんだ。まあ、将来病院長は兄貴の方が継ぐにしても、待遇は間違いないよ。ルックスだって悪くないし、薬物とか賭け事とかには手を出さないみたいだし」
勝が前のめりになる。
「女は?」
「もてるのはもてるらしいね。詳しく知らないけど」
「まあ、それだけいいやつなんじゃないのか?見合いさせるか」
幾分、2人は声をひそめた。
「まずは上手く2人を引き合わせてみようか」
「できるか?」
「できると思う」
「よし。頼んだぞ。深海の倅は、どうもな……」
気を使うのは美雪ではなく自分達の方だと、気付いていない勝だった。
崇範と佐原が事務所に戻った時、まだプロデューサーもいたが、今起こった話をすると、新見と同じく、呆れ、憤慨し、そして心配した。
「警察に行った方がいいよ。それ、立派な恐喝罪だから」
「ですよね。それにしても、頭の悪いやつらだな。どうやったらこういう発想になるんだ?」
「自分勝手、ここに極まれりですね」
「崇範、しばらくうちに来るか?狭いが、お前の所は、もしあいつらが来たら、キック1発でドアが開くぞ」
佐原が心から心配そうに言った。
「そうですか?」
「あのアパートはセキュリティに問題がありすぎだろ。引っ越しも考えた方がいいぞ」
「でも、安いし、僕1人だからあれで十分だし、仕事がいつまでもあるとは限らないし」
「どこまでも心配症だな、崇範は」
新見と佐原が呆れかえり、プロデューサーは笑いを堪えていた。
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