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サンタさんにお願い(2)呪殺
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呪殺というものは、10年程前までは法で罰する事ができなかった。証明が困難だからだ。今はどうにか証明する手段はできつつあるが、全ての死を、呪殺かどうかチェックするには至らない。
不審な遺体の情報が入ったのは、僕も直も書類仕事に熱中していた午前中だった。
男子児童が急死したのだが、まず授業中に首を抑えて苦しそうに呻き、その状態はすぐに収まってキョトンとしたかと思えば今度は胸を抑えて苦しがり、意識を失った。すぐに救急搬送されたが心肺停止状態で、そのまま死亡が確認された。
このまま子供の突然死として終わりそうになったのだが、首と胸に黒い手形のアザが付いており、これはおかしいと警察に届けがだされたのだ。
病院に行った能見さんと誠人はそれが呪殺であると確認。すぐに協力員の蜂谷を派遣し、術者の特定を行った。
『被害者は暮林陽斗、7歳。死因は呪術による心筋梗塞に間違いありません』
電話でまずはそう能見さんが報告する。
『術を2回受けてるぞ』
蜂谷がそう言い、続ける。
『1度目は首を絞められて、それを跳ね返したんだろう。2度目で心筋梗塞を起こされて、死んだようだ』
子供の呪殺の場合、ほとんどは親が関係している。親の愛人問題や、子供が邪魔になったとか、保険金目当てなど。
重くなった気持ちを抱えながら、指示を出す。
「蜂谷、術の痕跡を追えるか」
『行けるぜ』
「じゃあ、能見さんと誠人は術者の確保に向かってくれ。着いたらそのまま待機。合流してから確保する」
そして僕は沢井さんに暮林陽斗の家族についての調査を依頼し、直は書類整理をしているだけだった槇村さん、山神さん、征木さんにも術者確保に向かうようにと指示し、術者の所へ行くべく一緒に部屋を出る。術者は逃走のために罠などを仕掛けたり式を暴れさせたりすることもあり、2人だと危険な事もある。
特にこの術者は、呪殺の術を返され、それを再び返すという事をしている。それだけ準備を整えている事から、危険度は低くはないと思われたのだ。
「嫌な事件になりそうだねえ」
直が憂鬱そうに言う。
「ああ。クリスマス前だっていうのにな」
僕も小さく嘆息した。
安積は胸を押さえて、荒い息を整えていた。
術を返された時のために、それを返す算段は最初に念のために立てておく。それで返って来た術を再び返したのはいい。それで向こうは、死んだはずだ。もう、術は返って来なかったのだから。
しかし、1度目に返って来た時の影響は、完全に消し去れはしていない。心臓を冷たい手に鷲掴みにされているような苦しさがあり、背中も痛くて身動きがとれない。
呪殺屋としてこれまで何人も呪殺してきた。返しがなくとも、その度に淀みが澱のように蓄積し、背中の痛みは酷くなるばかりだ。それで、これでおしまいにして、どこかでのんびりと暮らそうと考えていた。
「ああ、くそ。痛ぇ。
はああ。どこに行くかな。暖かい所がいいなあ」
言いながら、震える手でタバコを掴み、くわえた。
その時、見張りのために置いてあった式神が異常を知らせた。
「くそ、警察か」
火を点けてもいないタバコをグシャリと握りつぶし、そろそろと立ち上がる。
「へへ。来やがれってんだ」
そして、玄関に張ってある罠が作動するのを待ち構えた。
不審な遺体の情報が入ったのは、僕も直も書類仕事に熱中していた午前中だった。
男子児童が急死したのだが、まず授業中に首を抑えて苦しそうに呻き、その状態はすぐに収まってキョトンとしたかと思えば今度は胸を抑えて苦しがり、意識を失った。すぐに救急搬送されたが心肺停止状態で、そのまま死亡が確認された。
このまま子供の突然死として終わりそうになったのだが、首と胸に黒い手形のアザが付いており、これはおかしいと警察に届けがだされたのだ。
病院に行った能見さんと誠人はそれが呪殺であると確認。すぐに協力員の蜂谷を派遣し、術者の特定を行った。
『被害者は暮林陽斗、7歳。死因は呪術による心筋梗塞に間違いありません』
電話でまずはそう能見さんが報告する。
『術を2回受けてるぞ』
蜂谷がそう言い、続ける。
『1度目は首を絞められて、それを跳ね返したんだろう。2度目で心筋梗塞を起こされて、死んだようだ』
子供の呪殺の場合、ほとんどは親が関係している。親の愛人問題や、子供が邪魔になったとか、保険金目当てなど。
重くなった気持ちを抱えながら、指示を出す。
「蜂谷、術の痕跡を追えるか」
『行けるぜ』
「じゃあ、能見さんと誠人は術者の確保に向かってくれ。着いたらそのまま待機。合流してから確保する」
そして僕は沢井さんに暮林陽斗の家族についての調査を依頼し、直は書類整理をしているだけだった槇村さん、山神さん、征木さんにも術者確保に向かうようにと指示し、術者の所へ行くべく一緒に部屋を出る。術者は逃走のために罠などを仕掛けたり式を暴れさせたりすることもあり、2人だと危険な事もある。
特にこの術者は、呪殺の術を返され、それを再び返すという事をしている。それだけ準備を整えている事から、危険度は低くはないと思われたのだ。
「嫌な事件になりそうだねえ」
直が憂鬱そうに言う。
「ああ。クリスマス前だっていうのにな」
僕も小さく嘆息した。
安積は胸を押さえて、荒い息を整えていた。
術を返された時のために、それを返す算段は最初に念のために立てておく。それで返って来た術を再び返したのはいい。それで向こうは、死んだはずだ。もう、術は返って来なかったのだから。
しかし、1度目に返って来た時の影響は、完全に消し去れはしていない。心臓を冷たい手に鷲掴みにされているような苦しさがあり、背中も痛くて身動きがとれない。
呪殺屋としてこれまで何人も呪殺してきた。返しがなくとも、その度に淀みが澱のように蓄積し、背中の痛みは酷くなるばかりだ。それで、これでおしまいにして、どこかでのんびりと暮らそうと考えていた。
「ああ、くそ。痛ぇ。
はああ。どこに行くかな。暖かい所がいいなあ」
言いながら、震える手でタバコを掴み、くわえた。
その時、見張りのために置いてあった式神が異常を知らせた。
「くそ、警察か」
火を点けてもいないタバコをグシャリと握りつぶし、そろそろと立ち上がる。
「へへ。来やがれってんだ」
そして、玄関に張ってある罠が作動するのを待ち構えた。
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