体質が変わったので

JUN

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さまよえる廃屋(4)糾弾

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 春山さんと椎名さんがそう言うと、彼らは落ち着きなく互いに顔を見合わせていたが、その中で2人が、震えながらじっと春山さんと椎名さんを凝視していた。
「はい、ちょっと待ってくださいね。
 春山さん、椎名さん。彼らがそうですか?」
「そうよ」
「間違いない」
 それに彼らは、焦った。
「ふざけるな!何で俺達だって!」
「そうだよ!俺達が殺したっていう証拠があるのか!?」
 彼らと来たメンバーだけが、わけが分からないでギョッとしている。
「殺した?言ってないのによくわかっているじゃないですか」
 僕が言うと、直はクスクスと笑う。
「語るに落ちるってこういう事かねえ」
 春山さんと椎名さんは、その2人の若い男に滑るように近付いた。
「この人に殺された」
「この人に首を絞められた」
 男2人は、汗をびっしょりとかいて春山さんと椎名さんを見ている。
「暴行されそうになって、抵抗したら殴られて、引っかいたら首を絞められた」
「あなたはそれを見て、こっちも口封じしないとって言って、首を絞めたでしょ」
「しょ、証拠は――」
「あなたの名前はシュウ。そのネックレスに、私が殴られた時に出た鼻血が飛んでる」
 春山さんの前の男は、ハッとしたように、ブランドもののネックレスに手を伸ばした。
「あなたはタクジ。私はあなたの手の甲を引っかいた。遺体の爪に残ってる筈」
 椎名さんの前の男は、今は傷も無い手を、慌てて背中に回した。
「お、お前ら、嘘だよな?」
 震えながら、仲間が言う。
「おい、シュウ!タクジ!何とか言えよ!」
 別の仲間が言うと、シュウは
「言いがかりに決まってるだろ!」
と言って、ネックレスをゴシゴシとこすり出す。
 それに、僕達は悠々と近付いて、バッジを示した。
「はい、待って。警視庁陰陽部の御崎と申します」
「同じく町田と申しますぅ」
「同じく氷室と申します」
「同じく美保と申します」
「同じく神戸と申します!」
 そして、シュウとタクジに目を据えながら言う。
「詳しい事を、場所を変えて聴かせていただきましょう。それと、ネックレスを鑑定させていただけますか。後、DNAの提出も」
 遺体の爪に皮膚片が残っていたら、鑑定しているはずだ。
 それにネックレスのチェーンは細かい。血液が検出される可能性はある。
 シュウとタクジはその場に俯いて座り込み、頭を抱えた。
「肝試しなんか来るんじゃなかった!」
「誰だよ、行こうなんて言い出したの!」
 それに、仲間がポツンと言った。
「トンネルは俺だけど、ここを見て行こうって言ったのはお前だよ」

 彼らに事情を訊くと、大学の時の仲間で、今日は一緒に飲んでいたらしい。それでこの先の「自分の死に顔が見えるトンネル」を見に行った帰りにここを見付け、「あの有名なグリーンハウスだ」と興奮し、入って来たという事だった。
 皮膚片のDNAとタクジのものが一致し、タクジが落ちた事で、シュウも落ちた。
 シュウの方は、シュウの指紋が春山さんの眼鏡に付着して残っていたので、証拠となった。
 5年前、2人はグリーンハウスに肝試しに来て、春山さんと椎名さんと鉢合わせた。そして乱暴しようとしたが暴れられ、殺してしまった。
 どうせ心霊スポットだし、誤魔化せるんじゃないか。そう思って、逃げたらしい。
 心霊スポットだろうが何だろうが、誤魔化せるわけがない。
「春山さん、椎名さん。遅くなって申し訳ありませんでした。でもこれで犯人は逮捕できました。安心して、旅立ってください」
 そう言って、僕達は頭を下げた。
 彼女らは初めて、ふわりと笑った。
「よかったわ。ね、しいちゃん」
「うん。これでスッとしたよね、はるちゃん」
 それで笑いながら、形を崩し、キラキラと光って立ち昇って行った。
「まあ、作戦は成功したけど、バツ印はちょっとねえ」
 直はそう言って、苦笑した。

 美保さんと神戸さんと氷室さんは、仲良く録画したものをチェックし合い、喜んでいた。
 そして、ニコニコしながら徳川さんに訴える。
「ぼくたち、お手柄ですよね?役に立ちますよね?」
「だから、陰陽部に不可欠ですよね?」
 徳川さんはそんな彼らを眺め、諦めたように嘆息した。
「骨を埋める覚悟なんだね。はいはい。
 でも、仕事は仕事。しっかりこれからも頼むよ」
 3人は揃って嬉しそうにガッツポーズをした。


 


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