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さまよえる廃屋(3)グリーンハウス出現
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これまでの出現位置を見ると、近所に何かしら、心霊スポットがあった。それと、どこも人の少ない寂しい場所だ。
それを踏まえてほかの候補地はないかと探したら、浮かんで来たのだという。
「凄いもんだな、趣味の力ってものも」
感心して言うと、3人は照れたような、嬉しそうな顔をし、各々口々に、
「なんで、異動の話が来ても断っていただきたいんですけど」
と言った。
そして、神戸さんが持って来た計器で、磁場や気温を計測し始めた。
「あ、磁場に乱れが!」
そう神戸さんが言ったのと同時に、僕と直も、その気配を感じて警戒に入っていた。
「全員、離れないで、指示に従ってねえ」
「はい!」
直が言うと、素直に返事をして、自前のカメラを構えだした。
雑木林の一画に廃屋が出現したのは、ほんのすぐ後だった。
「出たぞ、直」
「凄いねえ、皆」
3人は鼻高々である。
「さあて。じゃあ、逝こうか」
「はいよ」
僕達は、グリーンハウスに足を踏み入れた。
聞いていた通りに、ギシギシ鳴る廊下を通って奥へと進むと、室内農場に出た。
「室内で何をしてたんだ?もやしの栽培か?」
僕が言うと、直は、
「きのこも行けるんじゃないかねえ」
とのんびりと答える。
そんな僕達の背後に気配が生じ、僕と直は振り返った。
そこには、いつの間にか女子高生2人組の霊がいた。
僕と直が振り返った事で振り返った美保さん達も、彼女らが見えて、驚いたように身を引いた。
「うわ!本物!?」
「しゃ、写真いいですか」
「初めてだあ!」
霊の2人組の方が、たじろいでいる。
「ち、違う」
辛うじて言う彼女達に、僕は訊いた。
「警視庁陰陽部の御崎と申します」
「同じく町田と申しますぅ」
「こっちは同じ陰陽部員です。
で、違うというのは?何かを探しているんですか?」
彼女達は警戒するようにすうっと距離を置いてこちらを見ていたが、互いに視線をかわし、喋り出した。
「私達を殺した相手を探している」
「心霊スポットに来るに違いないから」
それで僕達は全員緊張した。
「詳しく話していただけますか」
彼女らは、無表情になって話し出した。
「私は春山智花。はるちゃんって呼ばれてる」
「私は椎名智子。しいちゃん」
「夏休みに、バイトの帰り、心霊スポットって言われてるグリーンハウスが近くにあったから、寄ってみようって事になって」
「来たら、大学生の2人組の男の人もちょうど来てて。一緒に入ろうって事に」
「それでここまで入ったら、いきなり押し倒されて。抵抗したんだけど、首を絞められて死んだの」
「それで私達は、捕まっていないそいつらを探してるの。心霊スポット巡りが好きな奴だから、こうしていれば、絶対に来るはず」
そう言って、怒りに目を鋭くした。
「なるほど、事情はわかりました。
でも、来た人にバツ印はね」
言うと、彼女らは首を傾けた。
「入場した印が欲しいかと思ったんだけど……?」
「ブラックライトに浮かび上がる入場スタンプじゃないんだからねえ」
直が苦笑する。
「捜査はこの後我々が行います――ん?誰か来たな」
僕達は廊下のきしむ音に、振り返った。
ドアから入って来たのは、若い男女8人のグループだった。僕達の視線に出迎えられて、一瞬ギョッとしたように体を固くしてから、力を抜いた。
「何だ。先客か」
中の男が言って笑い、仲間らが続けて
「やっぱりさまよえるグリーンハウスだな」
「ああ。たまたま来たのに、レアに行き当たるなんてなあ」
と言って笑う。
その途端、室温が目に見えて下がった。
僕と直は警戒を強めて霊である春山さんと椎名さんを見たが、それ以外は、驚いたように辺りを見回した。
いきなりドアが勢いよく閉まり、驚いた素振りを皆は見せたものの、美保さん、神戸さん、氷室さんは嬉しそうに叫んだ。
「来たぁー!」
「鉄板!」
「録画録画!」
力が抜けそうになるが、堪える。
その中で、春山さんと椎名さんが一歩接近し、後から来た彼らも、やっと彼女らに気付いたように、
「え、透けてる!?」
などと言って狼狽え始めた。
「待ってたわ」
「来ると思ってた」
そう言う春山さんと椎名さんの視線の先には、後から来たグループがいた。
それを踏まえてほかの候補地はないかと探したら、浮かんで来たのだという。
「凄いもんだな、趣味の力ってものも」
感心して言うと、3人は照れたような、嬉しそうな顔をし、各々口々に、
「なんで、異動の話が来ても断っていただきたいんですけど」
と言った。
そして、神戸さんが持って来た計器で、磁場や気温を計測し始めた。
「あ、磁場に乱れが!」
そう神戸さんが言ったのと同時に、僕と直も、その気配を感じて警戒に入っていた。
「全員、離れないで、指示に従ってねえ」
「はい!」
直が言うと、素直に返事をして、自前のカメラを構えだした。
雑木林の一画に廃屋が出現したのは、ほんのすぐ後だった。
「出たぞ、直」
「凄いねえ、皆」
3人は鼻高々である。
「さあて。じゃあ、逝こうか」
「はいよ」
僕達は、グリーンハウスに足を踏み入れた。
聞いていた通りに、ギシギシ鳴る廊下を通って奥へと進むと、室内農場に出た。
「室内で何をしてたんだ?もやしの栽培か?」
僕が言うと、直は、
「きのこも行けるんじゃないかねえ」
とのんびりと答える。
そんな僕達の背後に気配が生じ、僕と直は振り返った。
そこには、いつの間にか女子高生2人組の霊がいた。
僕と直が振り返った事で振り返った美保さん達も、彼女らが見えて、驚いたように身を引いた。
「うわ!本物!?」
「しゃ、写真いいですか」
「初めてだあ!」
霊の2人組の方が、たじろいでいる。
「ち、違う」
辛うじて言う彼女達に、僕は訊いた。
「警視庁陰陽部の御崎と申します」
「同じく町田と申しますぅ」
「こっちは同じ陰陽部員です。
で、違うというのは?何かを探しているんですか?」
彼女達は警戒するようにすうっと距離を置いてこちらを見ていたが、互いに視線をかわし、喋り出した。
「私達を殺した相手を探している」
「心霊スポットに来るに違いないから」
それで僕達は全員緊張した。
「詳しく話していただけますか」
彼女らは、無表情になって話し出した。
「私は春山智花。はるちゃんって呼ばれてる」
「私は椎名智子。しいちゃん」
「夏休みに、バイトの帰り、心霊スポットって言われてるグリーンハウスが近くにあったから、寄ってみようって事になって」
「来たら、大学生の2人組の男の人もちょうど来てて。一緒に入ろうって事に」
「それでここまで入ったら、いきなり押し倒されて。抵抗したんだけど、首を絞められて死んだの」
「それで私達は、捕まっていないそいつらを探してるの。心霊スポット巡りが好きな奴だから、こうしていれば、絶対に来るはず」
そう言って、怒りに目を鋭くした。
「なるほど、事情はわかりました。
でも、来た人にバツ印はね」
言うと、彼女らは首を傾けた。
「入場した印が欲しいかと思ったんだけど……?」
「ブラックライトに浮かび上がる入場スタンプじゃないんだからねえ」
直が苦笑する。
「捜査はこの後我々が行います――ん?誰か来たな」
僕達は廊下のきしむ音に、振り返った。
ドアから入って来たのは、若い男女8人のグループだった。僕達の視線に出迎えられて、一瞬ギョッとしたように体を固くしてから、力を抜いた。
「何だ。先客か」
中の男が言って笑い、仲間らが続けて
「やっぱりさまよえるグリーンハウスだな」
「ああ。たまたま来たのに、レアに行き当たるなんてなあ」
と言って笑う。
その途端、室温が目に見えて下がった。
僕と直は警戒を強めて霊である春山さんと椎名さんを見たが、それ以外は、驚いたように辺りを見回した。
いきなりドアが勢いよく閉まり、驚いた素振りを皆は見せたものの、美保さん、神戸さん、氷室さんは嬉しそうに叫んだ。
「来たぁー!」
「鉄板!」
「録画録画!」
力が抜けそうになるが、堪える。
その中で、春山さんと椎名さんが一歩接近し、後から来た彼らも、やっと彼女らに気付いたように、
「え、透けてる!?」
などと言って狼狽え始めた。
「待ってたわ」
「来ると思ってた」
そう言う春山さんと椎名さんの視線の先には、後から来たグループがいた。
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