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解呪不能(4)小龍
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昔の見取り図などは無かったが、証言は取れた。公園に改修した時、池を今の所に移して整え、前の池は埋め立てたと。
その時に池にあった竜の形の小さい噴水や、池のそばに埋まっていた茶碗、池の中に沈められていた壺などが残っており、図書館に保管されているという。
そこで、行って、視た。
壺は割れ、欠片を並べてあった。明の時代のものらしい。そしてそれには、紙片がくっついていた。
ただ、何かが憑いているという事は無かった。
「怜、あれ、札だよう」
「札が効力を失って、割れた拍子に札も千切れたのか」
竜の噴水は、銅製で、上を向いている竜の口から水が出るような形になっていた。
「ん?怜、生きている札があるよ?」
直が言って、噴水、壺、皿、茶碗などをじっくりと視る。
そして、噴水の前に戻った。
「これだねえ」
周囲を見るが、札らしきものは無い。
「底か、内部だな」
重いが、竜の像を傾けて底が見えるようにする。それで直は、じっくりと見た。
「底にはないねえ」
「中か」
ちきんと置き直し、どこかにそれらしいものは無いか調べる。
隠された抽斗や不自然な窪みはないか。
「どこだ?」
竜に手をかけ、重いが持ち上げる――と。
「取れた!?」
竜の頭の部分が外れた。
そして中に、札でグルグル巻きにされた小さい包みがあった。
「これだよう」
直がそれをつまんで出し、しげしげと眺めた。
「開いてみるか?」
「そうだねえ。折角だし、本人の前がいいかねえ?」
「まあ、悪いやつにも見えなかったしな」
竜を元に戻し、僕と直は、公園に向かった。
黒い輪からの冷気は、内部へと沁み込んで行くようだ。ただでさえ冷たい2月の冷気が更に身に染みる。
池のほとりに立つと、ほどなく小龍は現れた。
「これなんだけどねえ。違うかねえ」
直は用心しながら、札を剥がした。
と、一気にその中の小箱から爆発的な力の気配が溢れ出た。
「それじゃ!」
小龍が飛びかかるようにして直に接近し、小箱に手をのばす。そしてそれをつかみ取った瞬間、女の子は竜の姿に変じた。
「竜!?」
「薄々そう思わなかったわけじゃないが、竜っていたのか」
僕も直も、呆然と小龍だった竜を見上げる。
「ええっと。それが珠ですか?」
小龍は再び女の子の姿になった。
「良かった。これでわらわも帰れる」
笑った口元に、小さな牙が見えた。
「竜がまたどうしてここに?」
「わらわは田舎の社に住んでおったんだがの。昼寝しておったら男に捕まえられて、牙を折られて、壺に入れられたんじゃ」
想像がつかない。
「さっきの姿は、随分大きかったよな。どうやって壺に?それほど大きな壺が?」
「ホテルとかで大きな壺も見た事はあるけどねえ。ちょっと、体長20メートルの竜を入れられる壺は、想像がつかないねえ」
小龍は肩を竦めた。
「蛇の姿になっておったんじゃ」
「ああ」
「成程。毒牙を折ったと。
ん?珠なんじゃ?」
「珠じゃ。はめると牙の形になるんじゃ」
「へえ」
「知らなかったねえ」
「で、ここの池に封じられたと」
「ああ。水に困っておると言われたが、偉い目におうたわ」
小龍は嘆息して見せた。
「わらわはこれで帰る。世話になったの」
言うや、竜の姿に変じ、飛び上がる。
「あ、待って!これは!?呪!」
「ああ、忘れておったわ」
なんて事だと怒りかけたが、正面から目がくらむような強い光を浴び、声も出ない。
「じゃあの」
声がして、まだ視界が戻らないが、気配で小龍が飛び立って行ったのがわかった。
「何だよ、眩しいなぁ」
「目が、目がぁ」
どうにか視界が元に戻ると、腕を確認する。
「おお、消えてるな!」
「消えてるねえ!」
ほっとしたのもつかの間、どこかお馴染みの感覚があった。
「ん?これは、何だろう」
「どうしたのかねえ?」
「いや、体質がなんか、変わってないか?」
「え」
直と向かい合って、相手を見る。
鱗もないし、牙もない。何だろう。何か違う。
直も落ち着かない様子で見ているが、ふと、思った。
「水?」
肩の凝った所を意識し、血液を流してみる。
「おお!血流が!肩こりが!」
「ええ?あ!?これはいいねえ!」
直もわかったらしい。
「筋肉痛知らずだよう」
「これは地味に嬉しい体質変化だな!」
僕と直は肩を組んで、空を見上げた。もう小龍はどこにも見えず、満月がかかっている。
「ありがとう、小龍!」
「ありがとう、元気でねえ!」
そして、呟く。
「居眠りしてて捕まるなんてどんくさいとか思ってごめんな」
「帰ろうかねえ」
「ああ。明日、兄ちゃん達にも肩こり解消してやろう」
「それがいいねえ」
この時僕達は、部の皆に、マッサージ機代わりに肩こり解消を頼まれて忙しくなるとは、気付いていなかったのだった。
その時に池にあった竜の形の小さい噴水や、池のそばに埋まっていた茶碗、池の中に沈められていた壺などが残っており、図書館に保管されているという。
そこで、行って、視た。
壺は割れ、欠片を並べてあった。明の時代のものらしい。そしてそれには、紙片がくっついていた。
ただ、何かが憑いているという事は無かった。
「怜、あれ、札だよう」
「札が効力を失って、割れた拍子に札も千切れたのか」
竜の噴水は、銅製で、上を向いている竜の口から水が出るような形になっていた。
「ん?怜、生きている札があるよ?」
直が言って、噴水、壺、皿、茶碗などをじっくりと視る。
そして、噴水の前に戻った。
「これだねえ」
周囲を見るが、札らしきものは無い。
「底か、内部だな」
重いが、竜の像を傾けて底が見えるようにする。それで直は、じっくりと見た。
「底にはないねえ」
「中か」
ちきんと置き直し、どこかにそれらしいものは無いか調べる。
隠された抽斗や不自然な窪みはないか。
「どこだ?」
竜に手をかけ、重いが持ち上げる――と。
「取れた!?」
竜の頭の部分が外れた。
そして中に、札でグルグル巻きにされた小さい包みがあった。
「これだよう」
直がそれをつまんで出し、しげしげと眺めた。
「開いてみるか?」
「そうだねえ。折角だし、本人の前がいいかねえ?」
「まあ、悪いやつにも見えなかったしな」
竜を元に戻し、僕と直は、公園に向かった。
黒い輪からの冷気は、内部へと沁み込んで行くようだ。ただでさえ冷たい2月の冷気が更に身に染みる。
池のほとりに立つと、ほどなく小龍は現れた。
「これなんだけどねえ。違うかねえ」
直は用心しながら、札を剥がした。
と、一気にその中の小箱から爆発的な力の気配が溢れ出た。
「それじゃ!」
小龍が飛びかかるようにして直に接近し、小箱に手をのばす。そしてそれをつかみ取った瞬間、女の子は竜の姿に変じた。
「竜!?」
「薄々そう思わなかったわけじゃないが、竜っていたのか」
僕も直も、呆然と小龍だった竜を見上げる。
「ええっと。それが珠ですか?」
小龍は再び女の子の姿になった。
「良かった。これでわらわも帰れる」
笑った口元に、小さな牙が見えた。
「竜がまたどうしてここに?」
「わらわは田舎の社に住んでおったんだがの。昼寝しておったら男に捕まえられて、牙を折られて、壺に入れられたんじゃ」
想像がつかない。
「さっきの姿は、随分大きかったよな。どうやって壺に?それほど大きな壺が?」
「ホテルとかで大きな壺も見た事はあるけどねえ。ちょっと、体長20メートルの竜を入れられる壺は、想像がつかないねえ」
小龍は肩を竦めた。
「蛇の姿になっておったんじゃ」
「ああ」
「成程。毒牙を折ったと。
ん?珠なんじゃ?」
「珠じゃ。はめると牙の形になるんじゃ」
「へえ」
「知らなかったねえ」
「で、ここの池に封じられたと」
「ああ。水に困っておると言われたが、偉い目におうたわ」
小龍は嘆息して見せた。
「わらわはこれで帰る。世話になったの」
言うや、竜の姿に変じ、飛び上がる。
「あ、待って!これは!?呪!」
「ああ、忘れておったわ」
なんて事だと怒りかけたが、正面から目がくらむような強い光を浴び、声も出ない。
「じゃあの」
声がして、まだ視界が戻らないが、気配で小龍が飛び立って行ったのがわかった。
「何だよ、眩しいなぁ」
「目が、目がぁ」
どうにか視界が元に戻ると、腕を確認する。
「おお、消えてるな!」
「消えてるねえ!」
ほっとしたのもつかの間、どこかお馴染みの感覚があった。
「ん?これは、何だろう」
「どうしたのかねえ?」
「いや、体質がなんか、変わってないか?」
「え」
直と向かい合って、相手を見る。
鱗もないし、牙もない。何だろう。何か違う。
直も落ち着かない様子で見ているが、ふと、思った。
「水?」
肩の凝った所を意識し、血液を流してみる。
「おお!血流が!肩こりが!」
「ええ?あ!?これはいいねえ!」
直もわかったらしい。
「筋肉痛知らずだよう」
「これは地味に嬉しい体質変化だな!」
僕と直は肩を組んで、空を見上げた。もう小龍はどこにも見えず、満月がかかっている。
「ありがとう、小龍!」
「ありがとう、元気でねえ!」
そして、呟く。
「居眠りしてて捕まるなんてどんくさいとか思ってごめんな」
「帰ろうかねえ」
「ああ。明日、兄ちゃん達にも肩こり解消してやろう」
「それがいいねえ」
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