体質が変わったので

JUN

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チビッ子編 👻 神社の猫さん(3)一夜明けて

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 どのくらい経っただろうか。体を揺すられ、怜と直は目を覚ました。
 目の前には、制服を着た警察官がおり、自分達を覗き込んでいた。
「ああ、よかった」
 何だかよくわからなかったが、言う事は決まっている。
「おはようございます」
「おはよう。どこか痛くない?気持ち悪くない?名前を言えるかな?」
「御崎 怜です!」
「町田 直です!」
 それで警察官はにこにこしながら、肩の無線で連絡し、
「家に帰ろうか。寒かっただろう?家族が心配してるよ?」
と言った。
 立ち上がり、怜は後ろを振り返った。
「大丈夫。大きい猫さんが――あれ?」
 直も、キョロキョロとする。
 大きい猫も子猫も巫女もいない。
「巫女さんも大きい猫さんも子猫もどこに行っちゃったのかな?」
 警察官は表情をやや引き締めた。
「猫?巫女さんもいたの?」
 誘拐犯が、猫を連れた女だと考えているらしい。
「子猫に連れて来てもらったら、大きい猫さんと巫女さんがいたんだよ」
「お供えのお饅頭を皆で分けて食べたんだよね」
「うん。夜も、大きい猫さんと猫さんがいて、暖かかったもんね」
「ねえ」
 警察官達はヒソヒソと、
「誘拐犯?」
「でも、埃に残った足跡は幼児2人分しか……」
「巫女って誰だ?ここの巫女さんか?」
「ここはハイキングの人がたまに寄って行く程度の無人の神社だぞ。誰も常駐してないはずだ」
「じゃあ、なんだよ。ホームレスか?」
「……先輩に聞いた事があるぞ。明治の初め、ここで巫女さんとお腹の大きかった猫が、逃げ込んだ強盗犯に殺されたって」
「……」
「まさか……」
「いやいやいや。待てって。それじゃあ、巫女さんと大きい猫さんと子猫ってのは、幽霊だとでも?」
「……」
と言い合い、その辺を探し回る怜と直を見た。
「いないねえ。お礼とバイバイ、言いたかったのになあ」
「楽しかったねえ」
 そして、笑い合う。
 警察官は、頷き合った。
「取り敢えず、保護した幼児を署に連れて帰ろう」
「そうだな」
 そうして怜と直は、警察官に連れられて警察署に行き、駆け付けて来た家族と会った。



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