体質が変わったので

JUN

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ゲスト出演(2)石とロープ

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 そのお化け屋敷は、何とか客を取り込みたいと考えたスーパーの屋上に作られていた。
 元々は子供用のちょっとしたゲームが置いてあったり、苗や鉢植、カメや金魚などを売っていたそうだが、それらは無くなり、ずっと閉鎖されていたそうだ。
 舞台は無人の学校になっていて、教室を2つと保健室と中庭を通り抜け、要所要所に隠してあるクイズを探して答えるというもので、正解数に応じて、飴玉をいくつか貰えるらしい。
 小さくて手作り感を感じるところもあるが、ホログラムやセンサーを利用した仕掛けは凝ったもので、本格的だ。訊くと、そういうものが好きな社員が中心になって、コツコツと作ったとか。
「大したもんだなあ」
「凄いねえ」
 ぐるっと1周して、僕も直も感心した。
「ありがとうございます」
 主に作ったという社員3人が嬉しそうに答える。
 工学部出身でこういうものを作るのが好きな日野さん、心理学を学んだ天理さん、心霊関係が好きな石場さんの3人で、小道具も拾ったり廃棄処分のものを使ったりして、コストを抑えていた。
 そして、出口で振り返り、それだけ本物のネコの霊を見た。
 澄ました顔で、座っている。
「どこから来たんですか」

     ニャア

 ネコは応えるように鳴いたが、何を言ったのかはわからない。
 次に、ネコのそばにある石を見た。
「これは?」
 日野さんが答える。
「郊外の山で拾ってきました。良い感じだったので。そこのロープも、木にひっかかってて」
 そばの木の枝にかけられたロープを指した。
 石には恨めしそうな男の念が憑き、ネコはロープに憑いていた。
「同じ場所ですか」
 訊くと3人が頷いた。
「じゃあ、そこに行く事にしようか」
「案内してもらえますかねえ」
 それで揃って、近くの山に向かった。

 車を展望台のようになっている場所にとめて、雑木林の中の細い道に分け入っていく。
 そのまま10分も歩くと、テニスコートほどの開けた場所に出た。突き当りは崖で、眺めは良い。その広場の中央付近には小屋の残骸があるが、屋根も崩れ落ちており、ここへ入る人はいないだろうと思えた。
「ここで、石とロープを拾ったんですよ」
 小屋の残骸のそばの木の根元を3人は指さし、そこに、ビニール袋に入れた石とロープを置いてみた。
「この小屋って何だろう」
「物置かねえ?山の手入れをする人の休憩場所とか?」
 僕と直は言いながら、周囲を見た。
 石とロープを視る。
 石の表面に男が浮き出て、低く唸り始める。ロープからはネコがスルリと出て来て、伸びをした後、小屋の残骸をジッと見た。
「ここか?」

     ニャア

 ネコが、真っすぐにこちらを見て鳴く。
 男は立ち上がり、木の下に立って、小屋の残骸を見ていた。
 調べたいが、小屋の中に立ち入るのは、どう見ても危険だった。
「鑑識を呼ぶか」
「入れるかねえ、これ」
 相談するのを聞いて、日野さん達が慌てる。
「あの?」
「わかり難いでしょうが、この石には血痕が付いています。それと、男性の霊が。ロープにはネコの霊が」
「は!?」
 黙っていた男が言った。

     なぜ 誰に殺されたんだ 俺は

 そして、ネコに気付く。

     ネコ……そうだ
     ネコがここで 死んでた
     枝からロープで吊るされて
     それを下ろしてやったら いきなり頭にガツンと……

 ネコは何の関心も無いように、座って毛を繕い始めた。
「他に何か覚えていますか」
 男は考えていたが、静かに首を振った。
 日野さん達は何も見えていないようだが、何かいるという事だけは察して、かたまって神妙にしていた。
 電話をして応援を待つ間に、男にも事情を訊く。

     俺の名前は 木下良樹
     大学2年生だ
     ここへは 時々 絵を描きに来てた
     あの日も スケッチしようとして ここへ来た
     そうしたら ネコがぶら下がってて
     下ろしてやったら 誰かが後ろから 殴ったみたいで
     俺は 死んだんだな 何でだ

 男は俯いて肩を震わせ、

     許せない 見付けて 殺してやりたい

と言っていたが、ネコが足元に寄って行って体を擦り付けると、我に返ったように、悪い物になりかけていたのが元に戻った。
 そしてネコを抱き上げる。

     そうだな そんな事をしても
     仕方がないよな

     ニャア

 僕と直は、ほっとして目を見交わした。
 警戒したまま待っているうちに、ようやく応援が到着し、辺りは物々しい雰囲気に包まれた。


 
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