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留められた神(2)七福神の宿
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その旅館の気配を探る。
「いないな」
「入れ違いになったのかねえ?」
「向かう途中で何かに気を取られて寄り道でもしてるのか?」
「だとしたら、探して連れて行くのは大変だよう」
「お使いとか学校へ行く時に寄り道してはいけませんって、子供達でも知ってるのに」
どうやって探そうかとウンザリしながら、僕と直はぼやく。
取り敢えず、探りつつ島根県へ向かってみる事にする。どこかで、酒のつまみになるようなものを買ってお土産にしようと思ったのかも知れないしな。
見かけは「座敷童」というだけあって子供でも、中身は大人だったりすることもある。
僕達からすると、小学生にしか見えない姿でどぶろくをがぶがぶ飲んでいたら、違和感だらけなんだが。
「川魚の燻製とかも美味しいよなあ」
「そばも美味しいしねえ」
「梅あんを牛皮で包んだお菓子とかもいいし、ブランド牛もあるしな」
言いながら気配を探りつつ歩いていると、ふと足が止まった。
オープンしたてのホテルがあった。
源泉かけ流しの24時間入浴可能な温泉、豪華料理、七福神の宿。そう書いてある。看板の料理は確かに豪華だが、足を止めたのはそのせいではない。
「ここ?」
「何か、変だよねえ?」
複数の気配がそこに感じられたからだ。
中を探りたいのはやまやまだが、見付かったら間違いなく不法侵入だ。門にはセキュリティ会社のシールが貼ってあるので、バレないようにというのも難しい。
「どうするんだ、これ。こっちに出張の話でもあればいいのに」
「依頼させるってのもねえ」
「よし。タルパで行こう」
「いや、怜。見られたら幽霊と思われるんじゃないかねえ?」
まあな。市松人形とピエロの人形が歩いていたら、誰だってそう思うよな。
「落とし物とか思わないかな」
「無理だよう」
「でも、アオは無理だろ?鳥目だろうし」
アオは直のポケットから顔を出して、首を傾げ、
「チッ!……チィ……チ!」
と鳴く。
任せろ!でも、どうかな、うーん、まあ、できるか、な。そう言っているように見えた。
直が苦笑しながら通訳してくれたのも、まさにそういう感じだった。
「頼むねぇ、アオ」
「気を付けろよ。ぶつかるなよ」
僕はアオに目を付けさせてもらい、直はアオを飛ばした。直はアオと目を共有し、会話できる術を安倍晴明から教わったので、それを通じて見ている。
門の内側は駐車場になっていて、たくさんの車が並んでいた。
そして本館と別館、それをつなぐ渡り廊下に囲まれた中庭には日本庭園があり、池や橋、石灯篭やきれいに手入れされた木々があったが、木の種類までは暗くてわからなかった。
しかし目玉は、池の中にある、宝船に乗る七福神のモニュメントだった。
石でできたそれは、デザインはよくある宝船と七福神でしかない。よく磨かれており、泊まり客のものか、船の甲板には5円玉や10円玉が入っている。
そしてその下からは、ねじくれ、ぶつかり合う、爆発しそうに蠢く複数の気配がしていた。
「アオ、戻っておいで」
直が呼び戻すとアオは戻って来て、直の指にとまった。
「何だ、今の」
「探してた座敷童と、それ以外の何かがいたよねえ?」
「ああ。それも、閉じ込められてたよな?」
僕と直は顔を見合わせた。
「明日、こっちの協会に問い合わせしてみよう」
「ただの寄り道ならまだ良かったのにねえ」
「全くだ」
溜め息をついて、取り敢えず一旦帰る事にした。
「いないな」
「入れ違いになったのかねえ?」
「向かう途中で何かに気を取られて寄り道でもしてるのか?」
「だとしたら、探して連れて行くのは大変だよう」
「お使いとか学校へ行く時に寄り道してはいけませんって、子供達でも知ってるのに」
どうやって探そうかとウンザリしながら、僕と直はぼやく。
取り敢えず、探りつつ島根県へ向かってみる事にする。どこかで、酒のつまみになるようなものを買ってお土産にしようと思ったのかも知れないしな。
見かけは「座敷童」というだけあって子供でも、中身は大人だったりすることもある。
僕達からすると、小学生にしか見えない姿でどぶろくをがぶがぶ飲んでいたら、違和感だらけなんだが。
「川魚の燻製とかも美味しいよなあ」
「そばも美味しいしねえ」
「梅あんを牛皮で包んだお菓子とかもいいし、ブランド牛もあるしな」
言いながら気配を探りつつ歩いていると、ふと足が止まった。
オープンしたてのホテルがあった。
源泉かけ流しの24時間入浴可能な温泉、豪華料理、七福神の宿。そう書いてある。看板の料理は確かに豪華だが、足を止めたのはそのせいではない。
「ここ?」
「何か、変だよねえ?」
複数の気配がそこに感じられたからだ。
中を探りたいのはやまやまだが、見付かったら間違いなく不法侵入だ。門にはセキュリティ会社のシールが貼ってあるので、バレないようにというのも難しい。
「どうするんだ、これ。こっちに出張の話でもあればいいのに」
「依頼させるってのもねえ」
「よし。タルパで行こう」
「いや、怜。見られたら幽霊と思われるんじゃないかねえ?」
まあな。市松人形とピエロの人形が歩いていたら、誰だってそう思うよな。
「落とし物とか思わないかな」
「無理だよう」
「でも、アオは無理だろ?鳥目だろうし」
アオは直のポケットから顔を出して、首を傾げ、
「チッ!……チィ……チ!」
と鳴く。
任せろ!でも、どうかな、うーん、まあ、できるか、な。そう言っているように見えた。
直が苦笑しながら通訳してくれたのも、まさにそういう感じだった。
「頼むねぇ、アオ」
「気を付けろよ。ぶつかるなよ」
僕はアオに目を付けさせてもらい、直はアオを飛ばした。直はアオと目を共有し、会話できる術を安倍晴明から教わったので、それを通じて見ている。
門の内側は駐車場になっていて、たくさんの車が並んでいた。
そして本館と別館、それをつなぐ渡り廊下に囲まれた中庭には日本庭園があり、池や橋、石灯篭やきれいに手入れされた木々があったが、木の種類までは暗くてわからなかった。
しかし目玉は、池の中にある、宝船に乗る七福神のモニュメントだった。
石でできたそれは、デザインはよくある宝船と七福神でしかない。よく磨かれており、泊まり客のものか、船の甲板には5円玉や10円玉が入っている。
そしてその下からは、ねじくれ、ぶつかり合う、爆発しそうに蠢く複数の気配がしていた。
「アオ、戻っておいで」
直が呼び戻すとアオは戻って来て、直の指にとまった。
「何だ、今の」
「探してた座敷童と、それ以外の何かがいたよねえ?」
「ああ。それも、閉じ込められてたよな?」
僕と直は顔を見合わせた。
「明日、こっちの協会に問い合わせしてみよう」
「ただの寄り道ならまだ良かったのにねえ」
「全くだ」
溜め息をついて、取り敢えず一旦帰る事にした。
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