972 / 1,046
くりかえす(6)被殺人鬼
しおりを挟む
菅井さんの怒りに呆然としていた皆も、笑い出す者、慌てる者、怯える者と反応は様々だった。
「直、逝こうか」
「はいよ」
刀を出し、札を構える目の前で、イネさんは笑い声を上げ、前原さんは逃げ出そうとして菅井さんに吸収され、ただ震えていた重吾さんも吸収された。下長さんはマツさんとフミちゃんとチヨちゃんを抱えるようにして兄の誘導で離れ、村雨さんはイネさんのところに行こうとして菅井さんに捕まって吸収された。
「犯人はわかった。もういいでしょう?今更、生き返る事もできないんだから。ここから時間を動かしたらどうです」
「成仏してスッキリしたほうがいいねえ」
コロス!コロス!コロス!
「うわああ!」
畑中は、床の上に座り込んで震えている。
菅井さんは、その畑中さんしか見ていないようだった。鬼気迫る顔で腕を伸ばして畑中に掴みかかろうとしたところで、斬る。
ナゼ!?
そして、崩れて消え去る。
それを見送って、マツさんが溜め息をついた。
「これで皆も、ようやく成仏できるでしょう」
そして、下長さんと見つめ合う。
その時、畑中が腰を抜かしていたとは思えない素早さで逃げ出した。
が、兄の一本背負いで床の上に叩きつけられた。
「逃げられると思っているのか。だいたい、もう死んでいるのに」
兄に言われて、畑中は狼狽えたように視線を動かした。
「あの世で反省しろ。怖い係員が待ってるから」
小野篁の顔がチラつく。
そして、浄力を流して畑中を祓った。
「さてと。逝きますか」
「お世話をおかけしました」
「おかげでスッキリしました」
頭を下げる下長さんとマツさんのそばで、フミちゃんとチヨちゃんが見上げる。
「皆どこへ行ったの?」
「私達もどこかへ行くの?」
それに、マツさんと下長さんが優しい目を向けて、肩に手を置く。
「一緒だから怖くないでしょ」
「姉様は優しい」
「下長さんも優しい」
「ふふ。では、お願いします」
まるでピクニックにでも行くような顔付きだ。
「向こうで、お幸せにぃ」
手を振る4人に浄力を流し、そして彼らは逝き、辺りはただの貸別荘になった。
夕食の準備をする。
人参バターライス、ローストチキン、サラダ、アスパラのポタージュ、エビとホタテのガーリック焼き、ナスの生姜焼き。
突然皆がいなくなった事を、チビッ子3人以外はどういうことか理解している。京香さんが皆について万が一に備えながら、皆に説明はしてくれていたのだ。
それでもチビッ子3人は良くわからないらしく、かくれんぼでもしているのかと探し回りそうになった。
それを兄が、彼らがどういう人たちだったか説明し、もう会えないと言って聞かせる。
「じゃあ、フミちゃんとチヨちゃんも、これで安心?」
「そうだな」
「もう、苦しくない?」
「大丈夫」
兄の言葉に、凜も累もほっとしたように笑う。
ああ。流石は兄ちゃんだな。説得も上手い!それに、凜と累も優しい。
美里はそばに来て、
「何考えてるかわかってるわよ。ブラコンめ」
とくすくす笑う。
「美里は何考えてるかな。凜が優しい子に育って良かった?」
「それもだけど、怜もかっこよかったわよ」
「何だ、惚れ直したのか」
言うと、背中を軽くパンと叩かれた。
「出来上がりまで20分くらいかな」
「あ!踊る!」
「踊る!覚えたもん!」
「あ。レコードありますね」
康二さんが見つけ、ダンスタイムになる。
「凜も累も上手だねえ。へえ、優維と敬も上手いもんだねえ」
康介はマツさんを思い出して、テーブルに突っ伏した。
兄は冴子姉と踊り出した。
「初めて見るけど、絵になるなあ」
「司さん、やっぱり最強だよねえ」
「だな!流石、兄ちゃんだ」
京香さんと康二さんも踊り出し、直と千穂さんも踊り出す。そうなると、僕と美里も踊らない訳にはいかなくなった。
「だから、ダンスは苦手なんだって」
「いいじゃない。ほら、ほら。覚えてるんでしょ」
「まあね。心霊特番で無理矢理やらされたやつね」
でもまあ、いいか。皆が楽しそうに笑っているから。
「とは言え、次の旅行こそ、いい加減平穏無事な旅行に行きたいもんだな」
「あはは。言えてるねえ」
直が朗らかな笑い声をあげ、凜達も笑う。
「もしくは、願掛けのお百度踏んでから来るとかかねえ?」
「それは面倒臭い」
冴子姉と京香さんが吹き出した。
「直、逝こうか」
「はいよ」
刀を出し、札を構える目の前で、イネさんは笑い声を上げ、前原さんは逃げ出そうとして菅井さんに吸収され、ただ震えていた重吾さんも吸収された。下長さんはマツさんとフミちゃんとチヨちゃんを抱えるようにして兄の誘導で離れ、村雨さんはイネさんのところに行こうとして菅井さんに捕まって吸収された。
「犯人はわかった。もういいでしょう?今更、生き返る事もできないんだから。ここから時間を動かしたらどうです」
「成仏してスッキリしたほうがいいねえ」
コロス!コロス!コロス!
「うわああ!」
畑中は、床の上に座り込んで震えている。
菅井さんは、その畑中さんしか見ていないようだった。鬼気迫る顔で腕を伸ばして畑中に掴みかかろうとしたところで、斬る。
ナゼ!?
そして、崩れて消え去る。
それを見送って、マツさんが溜め息をついた。
「これで皆も、ようやく成仏できるでしょう」
そして、下長さんと見つめ合う。
その時、畑中が腰を抜かしていたとは思えない素早さで逃げ出した。
が、兄の一本背負いで床の上に叩きつけられた。
「逃げられると思っているのか。だいたい、もう死んでいるのに」
兄に言われて、畑中は狼狽えたように視線を動かした。
「あの世で反省しろ。怖い係員が待ってるから」
小野篁の顔がチラつく。
そして、浄力を流して畑中を祓った。
「さてと。逝きますか」
「お世話をおかけしました」
「おかげでスッキリしました」
頭を下げる下長さんとマツさんのそばで、フミちゃんとチヨちゃんが見上げる。
「皆どこへ行ったの?」
「私達もどこかへ行くの?」
それに、マツさんと下長さんが優しい目を向けて、肩に手を置く。
「一緒だから怖くないでしょ」
「姉様は優しい」
「下長さんも優しい」
「ふふ。では、お願いします」
まるでピクニックにでも行くような顔付きだ。
「向こうで、お幸せにぃ」
手を振る4人に浄力を流し、そして彼らは逝き、辺りはただの貸別荘になった。
夕食の準備をする。
人参バターライス、ローストチキン、サラダ、アスパラのポタージュ、エビとホタテのガーリック焼き、ナスの生姜焼き。
突然皆がいなくなった事を、チビッ子3人以外はどういうことか理解している。京香さんが皆について万が一に備えながら、皆に説明はしてくれていたのだ。
それでもチビッ子3人は良くわからないらしく、かくれんぼでもしているのかと探し回りそうになった。
それを兄が、彼らがどういう人たちだったか説明し、もう会えないと言って聞かせる。
「じゃあ、フミちゃんとチヨちゃんも、これで安心?」
「そうだな」
「もう、苦しくない?」
「大丈夫」
兄の言葉に、凜も累もほっとしたように笑う。
ああ。流石は兄ちゃんだな。説得も上手い!それに、凜と累も優しい。
美里はそばに来て、
「何考えてるかわかってるわよ。ブラコンめ」
とくすくす笑う。
「美里は何考えてるかな。凜が優しい子に育って良かった?」
「それもだけど、怜もかっこよかったわよ」
「何だ、惚れ直したのか」
言うと、背中を軽くパンと叩かれた。
「出来上がりまで20分くらいかな」
「あ!踊る!」
「踊る!覚えたもん!」
「あ。レコードありますね」
康二さんが見つけ、ダンスタイムになる。
「凜も累も上手だねえ。へえ、優維と敬も上手いもんだねえ」
康介はマツさんを思い出して、テーブルに突っ伏した。
兄は冴子姉と踊り出した。
「初めて見るけど、絵になるなあ」
「司さん、やっぱり最強だよねえ」
「だな!流石、兄ちゃんだ」
京香さんと康二さんも踊り出し、直と千穂さんも踊り出す。そうなると、僕と美里も踊らない訳にはいかなくなった。
「だから、ダンスは苦手なんだって」
「いいじゃない。ほら、ほら。覚えてるんでしょ」
「まあね。心霊特番で無理矢理やらされたやつね」
でもまあ、いいか。皆が楽しそうに笑っているから。
「とは言え、次の旅行こそ、いい加減平穏無事な旅行に行きたいもんだな」
「あはは。言えてるねえ」
直が朗らかな笑い声をあげ、凜達も笑う。
「もしくは、願掛けのお百度踏んでから来るとかかねえ?」
「それは面倒臭い」
冴子姉と京香さんが吹き出した。
10
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる