体質が変わったので

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会いたい人(4)家族

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 そして、保管室で、僕と直はそれを見て棒立ちになり、吉永さんは訝し気に僕達を見た。
「課長?どうかしましたか?」
「まさか、ここだったとは……」
「意外過ぎたよねえ」
 僕も直も、唸った。というのも、あれほど探し回っていた奥さんとお嬢さんは、保管室にいたのだ。
 とにかく直は可視化の札を書き、それを吉永さんに持たせた。
 すると吉永さんの目が驚きに見開かれた。
「愛子!七奈!」
 奥さんは泣きそうな顔で笑い、女の子は満面の笑みを浮かべて吉永さんに飛びついて来た。
「やっと来た」
「探し回ってたのに……!何でここに?」
「だって、証拠品を教えようと思って。
 なのにあなたは来ないし、誰も私達の事に気付いてくれないし」
 その頃陰陽課もまだなかったしなあ。
「事件関係者はタッチできないから」
 吉永さんが言うが、その前に重要な事を今言ったじゃないか。
「待ってください。それより、今、証拠品を教えようと思ったって?」
 奥さんは頷いた。
「ええ。あの?」
「俺の上司だよ。御崎課長と町田課長。俺の様子を心配して、力を貸して下さったんだよ」
 すると、奥さんは深々と頭を下げた。
「まあ。主人がいつもお世話になっております」
 なのでこちらも、返した。
「いえいえ、とんでもない」
「こちらこそ、頼りにさせてもらっていますよう」
 直もにこにこしながら言う。
 が、吉永さんが我に返ったように言った。
「じゃない!愛子!」
「ああ、はい。
 ブローチですよ。抵抗した時に、犯人の手を傷つけたんです」
 透明のケースの中に、確かにブローチがあった。
「これは、前々日の誕生日に、俺がお前に贈った……」
 吉永さんが呆然としている。
「お父さん。七奈のイチゴの髪留めに、犯人が触ったよ」
 女の子が吉永さんを見上げて笑う。
「七奈……!」
 吉永さんは、女の子を抱きしめ、奥さんを引き寄せた。
「怖かったなあ。苦しかっただろ。痛かったよなあ。ごめんな、遅くなって」
「お父さん、お寝坊」
「ふふふ。ねえ」
 親子3人で泣きながら笑う吉永さん一家をそのままそっとしておいて、僕と直は、それらを持って部屋を出た。

 すぐに再鑑定の手続きが取られ、結果、指紋が一致する人物が出た。
 藤川恒夫。暴行と殺人未遂で逮捕歴があった男だった。出所後に引きこもっていた実家が神社の真ん前で、見かけた愛子さんに一目ぼれした。それで神社で待ち伏せて声をかけたが、当然断られ、カッとなってまず愛子さんを殺害。その後七奈ちゃんも殺害した事を自供した。
 愛子さんは吉永さんに、
「仕事仕事って言わずにちゃんと休んでね」
と体の心配をし、七奈ちゃんは、
「ブロッコリー残しちゃだめなのよ」
と言い、
「七奈はピーマンが嫌いだよな」
と反撃され、笑い合っていた。
 そして、
「後からゆっくり来てね」
と言って、成仏して行った。
 それを笑顔で手を振りながら見送った吉永さんは、笑いながら、ぼろぼろと泣いていた。
 そして見えなくなると、顔を覆って号泣した。

 僕と直と兄と徳川さんは、食堂で喋っていた。
「犯人を逮捕できて良かったな。それに、奥さんと娘さんも」
「そうだなあ。
 でも、これが吉永さんへの恨みとかじゃなくて良かったよ」
「そんな事になったら、吉永さんでなくとも、もう」
 もし自分に仕返ししたいがために美里や凛に何かした、なんてやつがいたら、僕は職務をなげうってでも、報復したいと思うだろう。兄もだ。兄に何かするやつがいたら、何年かかろうが、地球の裏側にいようが、あの世にいようが、必ずやり返す。殺してくれと頼んで来るくらいの目に合わせる。
 そう考えていたら、直が肩を叩いた。
「怜。物騒な事考えてそうだねえ?だめだよう?」
「……そうだな。うん。そうならないように、安全対策を取っておくか。全員にパスをつないでおいて、異常があれば即飛んで行く事にしよう。それがいい。
 早速兄ちゃんにつけていいかな」
「怜。負担が大きすぎてやばいよう」
 徳川さんが笑い、兄は苦笑した。
「通常運転で安心したよ」
「怜も気を付けるんだぞ。俺のとばっちりが怜に行く事もあるかも知れないんだからな」
「うん。わかった」
「こっちも心配ないな」
「そうですねえ」
 何か会話がおかしいが、まあいい。
 と、すっかり吹っ切った吉永さんが現れた。
「ああ、いたいた。
 課長。神戸君と京極さんが、何かテストしたいとか言って探してましたよ。浄力がどこまで広がるか計測したいとか、その時の脳の活性分布がどうとか」
「うひゃあ。面倒臭い」
 徳川さんと兄と直が、吹き出した。
「いつも通りだ」



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