943 / 1,046
苦いチョコ(6)転身
しおりを挟む
三宅さんは警察を辞めるだけでなく、婚約も無しになった。そして上司の部長も、城北に因果を含めたというのが明らかになり、キャリアとしてはおしまいになった。左遷も左遷、人工衛星と呼ばれるのだが、二度と戻って来られないポストへと出向だ。
そして城北も、辞表を書いたというのもあるし、偽証したというので、このままとどまっても、出世は無理だ。
というので、本当に辞める事になった。
「何でもうちょっと待てなかったんだ?相談しろよ」
言うと、城北は拳をさすりながら言った。
「まさか、約束が嘘だとは思わなかったんだ!フン!」
「あれだねえ。昇進の密約なんて、相談しにくかったんだよねえ。ボク達だったら絶対に反対するからねえ」
城北はよそを向いた。
そして、チョコレートの箱をポケットから出し、1粒食べた。
「クッソ苦いな。俺はミルク派なんだ」
言って、ゴミ箱に放り投げた。
「どうするんだよ、これから」
そこで城北は、胸を張った。
「ふふん。俺はここでは終わらないぞ。政界に出る事にした!」
「大丈夫か?」
「警察じゃない。この国のトップに立ってやる!わははは!」
僕も直も心配になったが、まあ、この調子なら、いつも通りと言えばいつも通りだ。
「そうか。期待してる」
「そうだねえ」
「ふふん!」
「あ、そうだ。
殴る時はな、親指をこう入れるんだぞ。そうじゃないと、突き指とかになる事があるからな」
「へえ。そうなのか」
「強行犯の時に習った。もしもの時の為に覚えとけよ」
「おう」
「それと、次にヤバい時は相談しろよ」
「そうだよう。ボク達、仲間じゃないか」
「町田。御崎。すまん。
げ、元気でしっかりやれよ!」
「おう」
「城北もねえ」
城北は私物を持って、初めて見るような笑顔を見せ、歩いて行った。
見送ってから踵を返すと、監察官がいた。
「あ」
「融通が利かない、とか思ってるでしょう」
「……別に」
物凄く思っている。
彼は肩を竦めた。
「監察官は、融通が利いたらダメですからね」
「まあ、そうでしょうねえ」
「あのタンカは見事でした」
そう言って一礼すると、さっさと歩き去って行った。
「はあ。佐川さんも無事に成仏したし、後は佐川氏だけか」
「聞くところによると、別居中にちょっといい感じの人ができてるみたいだし、大丈夫じゃないかねえ」
「逞しいな」
でも、これでいいのだろう。
「バレンタインの悲喜こもごもかあ。もう、バレンタインって面倒臭いな」
「でも、優維のチョコプリンは嬉しかったよう」
「去年よりも上手くなったか?
今年のホワイトデーは何にしよう?敬も、今年も張り切ってるしな」
「あ、係長!大変です!バレンタインデーにチョコをもらえなかった男子学生の霊が催事場に居座って、『まだバレンタインデーは終わっていない!』と言っているそうです!」
「面倒臭いな」
「仕方ないよう」
僕と直は肩を竦め、走り出した。
そして城北も、辞表を書いたというのもあるし、偽証したというので、このままとどまっても、出世は無理だ。
というので、本当に辞める事になった。
「何でもうちょっと待てなかったんだ?相談しろよ」
言うと、城北は拳をさすりながら言った。
「まさか、約束が嘘だとは思わなかったんだ!フン!」
「あれだねえ。昇進の密約なんて、相談しにくかったんだよねえ。ボク達だったら絶対に反対するからねえ」
城北はよそを向いた。
そして、チョコレートの箱をポケットから出し、1粒食べた。
「クッソ苦いな。俺はミルク派なんだ」
言って、ゴミ箱に放り投げた。
「どうするんだよ、これから」
そこで城北は、胸を張った。
「ふふん。俺はここでは終わらないぞ。政界に出る事にした!」
「大丈夫か?」
「警察じゃない。この国のトップに立ってやる!わははは!」
僕も直も心配になったが、まあ、この調子なら、いつも通りと言えばいつも通りだ。
「そうか。期待してる」
「そうだねえ」
「ふふん!」
「あ、そうだ。
殴る時はな、親指をこう入れるんだぞ。そうじゃないと、突き指とかになる事があるからな」
「へえ。そうなのか」
「強行犯の時に習った。もしもの時の為に覚えとけよ」
「おう」
「それと、次にヤバい時は相談しろよ」
「そうだよう。ボク達、仲間じゃないか」
「町田。御崎。すまん。
げ、元気でしっかりやれよ!」
「おう」
「城北もねえ」
城北は私物を持って、初めて見るような笑顔を見せ、歩いて行った。
見送ってから踵を返すと、監察官がいた。
「あ」
「融通が利かない、とか思ってるでしょう」
「……別に」
物凄く思っている。
彼は肩を竦めた。
「監察官は、融通が利いたらダメですからね」
「まあ、そうでしょうねえ」
「あのタンカは見事でした」
そう言って一礼すると、さっさと歩き去って行った。
「はあ。佐川さんも無事に成仏したし、後は佐川氏だけか」
「聞くところによると、別居中にちょっといい感じの人ができてるみたいだし、大丈夫じゃないかねえ」
「逞しいな」
でも、これでいいのだろう。
「バレンタインの悲喜こもごもかあ。もう、バレンタインって面倒臭いな」
「でも、優維のチョコプリンは嬉しかったよう」
「去年よりも上手くなったか?
今年のホワイトデーは何にしよう?敬も、今年も張り切ってるしな」
「あ、係長!大変です!バレンタインデーにチョコをもらえなかった男子学生の霊が催事場に居座って、『まだバレンタインデーは終わっていない!』と言っているそうです!」
「面倒臭いな」
「仕方ないよう」
僕と直は肩を竦め、走り出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
199
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる