体質が変わったので

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心霊警察・リクエスト(2)真夜中の笑い声

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 視聴者からの意見でも「あのメンバーが良かった」というのが多く、視聴率でもそれがあからさまだったとかで、僕と直が協力する事が求められた。
 なので、僕と直が同行して、現場に来ていた。
「周りには何も無い、田んぼに挟まれた1本道ですが、真夜中にここを通ると、何か話し声や、たくさんの笑い声などが聞こえて来るそうです」
 高田さんが真面目な顔で言い、ミトングローブとえりなさんが、
「ええ、やだあ」
「怖いな、マジかよ」
と周囲を見回す。
 そこでユーヤは、フン、と不機嫌そうにも見える態度で立っている。
「オレに怖い物はない!笑うだけだろ!」
 僕と直は、まず周囲を眺めた。
「そうですね。笑うだけなので、今のところは害はないですよ」
 言って、視る。
「何でオレを見るんだよ!」
「え、だって……ねえ」
「ああ。ユーヤさんの周りに固まってるから」
「ぎゃああああ!!」
 全員がユーヤから素早く距離を取り、ユーヤはどうしたらいいのかとその場で足踏みしながらグルグルと回る。
「な、何なんだよ!?」
 叫ぶユーヤに、ミトングローブが笑顔で
「S型天然霊能師だよ」
と答える。
「うんうん。俺達もさんざんこのパターンでびびってきたもんな」
 高田さんが笑顔で言うと、えりなさんも、
「この洗礼を受けて初めて、第一歩なのよ」
と嬉しそうに笑った。
「まあそれは置いといて。
 ここに集まっているのは確かですけどね。彼らに害意は感じませんよ。大丈夫です。落ち着いて」
 彼らはユーヤの周囲で嬉しそうに、ピースをしたり肩を組んだりしているだけだ。
「こここここ」
「ニワトリの霊はいませんが」
「誰がニワトリだ!
 こいつらって、どんな奴で、何をしているんだよ」
 精一杯の虚勢を張るようにユーヤが言う。
「テレビと、スターが来たのが嬉しいんでしょうねえ。ピースとかしていますよお」
 それで少し、安心したらしい。
「何だ。だったら別にいいか。見えたら握手くらいしてやるぜ」
 僕と直は顔を見合わせた。
「本人が言うし」
「そうだねえ」
 直が札をきり、彼らが可視化された。
 ここで交通事故に遭って死んだ血まみれでおかしな角度に首が曲がった女子高生、水路に落ちて溺死したおじいさんと小学生、心筋梗塞で急死した胸を骨が見えるほど掻きむしったおじさん、戦時中、機銃掃射に当たって体に穴が開いたり頭や手足の欠けた女学生――。
「ぎゃああああ!!」
 全員が絶叫した。が、やはりカメラさんは強かった。

 落ち着いて話を聞いてみると、彼らはなんとなく集まり、声が聞こえて来るので、一緒に聞いているのだという。
「声が?聞こえる?」
 皆が耳を済ませる中、音声さんが手を上げて言った。
「さっきから、小さく何か声が入っています」
 それで、確認してみようという事になった。
 録音していた音声を再生する。
 すると本当に、
『人殺し!』
「なにこれっ!?」
 僕はそばのガードレールに近付いた。
「これですよ。ラジオの電波をこれが拾って、ラジオの声が聞こえるんですよ」
「これ、お昼のラジオ劇ですよねえ。今はミステリーのはずですよお」
 それに霊達がうんうんと頷く。
「暇で暇で。唯一の楽しみがラジオでな」
「夜の歌謡スタジオもお気に入りなんですよ」
「わしは競馬の中継がええのう」
「高田コージさんのおしゃべり散歩、毎週聞いとるよ」
「あ、ありがとうございます」
 高田さんが思わずにっこり笑って頭を下げる。
 その中で、痩せた中年の男が、力なく言う。
「俺のリクエストは全然読まれない。番組も流れない」
 それに各々顔を見合わせていると、霊の仲間達が、事情を教えてくれた。
「この人、元は歌手だったんですって」
 それに、子供が嬉しそうに笑った。
「レールマンの歌!ぼくも大好き!ぼくもラジオでかかるの、待ってるんだ!」
 ほぼ全員が怪訝な顔をする中、甲田さんがぽんと手を打った。
「物凄く流行ったヒーロー番組!ああ、主題歌が確か新人の子だったよ。
 だけど、不運な番組だったんだよなあ。特撮のシーンで、コンテナから飛び降りた役者が本当に死んでしまって、番組は打ち切り。ヒットし始めてた主題歌もパタリと放送されなくなって、歌手もゲンが悪いみたいな扱いで引退に追い込まれちゃってさあ」
 それで中年は、俯いて行った。
「本当にあなたが?」
「はい。坂上卓郎です」
 男は蚊の鳴くような声でそう答えた。




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