914 / 1,046
神様が多すぎる(1)神の集まる神有月
しおりを挟む
弥生やら五月やら、日本では月に異名が付けられている。その10月。今月だけは特殊で、全国同じ呼び名を使う中、出雲だけ、別の名を使う。
神有月。
全国の神様が出雲に集まるのが10月なので、出雲以外では神がいなくなるということから、普通は神無月と呼ぶ。
しかし出雲にとっては全国の神様が集まって来るので、神有月と呼ぶのだ。
では、集まって神様は何をしているのか。
会議やら情報交換やら伝達事項やら、どこの神が滅んだとか、こんな神が新しく生まれたというのもたまにある。そう、今年の僕達だ。
「顔つなぎかあ」
僕は、神様の世界もヒトと似たようなものだなあ、と思った。
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、とうとう亜神なんていうレア体質になってしまった。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。そして、警察官僚でもある。
「ドキドキするねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いであり、共に亜神体質になった。そして、警察官僚でもある。
「なあに。いつも通りでいいさ。皆、名前と噂はとうに知っているからな。単に、話した事が無いってだけだ」
照姉が気楽そうに言って缶ビールをプシュッと開ける。
天照大御神がこれだと、わかる者はそういないだろう。キリッとしたハンサムウーマンだ。
「全員集まるんですか?」
「そうだ。
まあ、怜も直もわたしのそばにいればいい。向こうから挨拶に来るから紹介してやるし、絡まれる事もない」
「絡む人もいるのか」
「神なのにねえ」
「酒癖の悪い奴もいるぞ」
照姉はケラケラと笑って、
「あ、いかん。毎週見ているドラマ、録画予約していないんだ。今日はもう帰る。じゃあな」
と帰って行った。
「なあ。神様って、割と人間っぽいよな。まあ、古事記とか読んでうすうす気づいてたけど」
言うと、直も、
「そうだねえ。神のトップである照姉が、ああもざっくばらんだしねえ」
と頷く。
「まあ、堅苦しくて難しい事を言われるよりはいいな」
僕達はそう結論付けて、10月の訪れを待ったのだった。
あの世から、神の集会所へ行った。会議は昼間、夕方以降は飲み会らしい。
そして僕と直は知り合いやあった事のない神に挨拶し、宴会に混じっていた。
「神の扱いがこの頃軽くない?」
「そうそう。SNSとかでもすぐに、『神!』とか言うしね」
「あと、『このラーメン、神!』とか。
ラーメンは神じゃないからね」
「ははは。神なら食べちゃダメだよ」
「どれだけ神様がいるのかな、この国。勝手に名乗るの禁止!神の推薦が必要!」
神様達の雑談を聞いているのも楽しい。というか、普通の雑談だった。
「この前、犬そっくりなお茶の葉の人形を見たのよね。ええとね。あ、これ!」
差し出されたスマホを、僕と直と近くの神が覗き込む。
そこには、お茶の葉を使って作り上げた犬が映し出されていた。
「うわあ、凄い」
「器用だねえ」
「本物に見えるぜ」
「でしょ。可愛がってたペットが死んで、それでペットそっくりに作ったんだって」
感心して、僕達はそれを見た。
しかし、思いもよらない所で、その犬を見かける事になるのだった。
神有月。
全国の神様が出雲に集まるのが10月なので、出雲以外では神がいなくなるということから、普通は神無月と呼ぶ。
しかし出雲にとっては全国の神様が集まって来るので、神有月と呼ぶのだ。
では、集まって神様は何をしているのか。
会議やら情報交換やら伝達事項やら、どこの神が滅んだとか、こんな神が新しく生まれたというのもたまにある。そう、今年の僕達だ。
「顔つなぎかあ」
僕は、神様の世界もヒトと似たようなものだなあ、と思った。
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、とうとう亜神なんていうレア体質になってしまった。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。そして、警察官僚でもある。
「ドキドキするねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いであり、共に亜神体質になった。そして、警察官僚でもある。
「なあに。いつも通りでいいさ。皆、名前と噂はとうに知っているからな。単に、話した事が無いってだけだ」
照姉が気楽そうに言って缶ビールをプシュッと開ける。
天照大御神がこれだと、わかる者はそういないだろう。キリッとしたハンサムウーマンだ。
「全員集まるんですか?」
「そうだ。
まあ、怜も直もわたしのそばにいればいい。向こうから挨拶に来るから紹介してやるし、絡まれる事もない」
「絡む人もいるのか」
「神なのにねえ」
「酒癖の悪い奴もいるぞ」
照姉はケラケラと笑って、
「あ、いかん。毎週見ているドラマ、録画予約していないんだ。今日はもう帰る。じゃあな」
と帰って行った。
「なあ。神様って、割と人間っぽいよな。まあ、古事記とか読んでうすうす気づいてたけど」
言うと、直も、
「そうだねえ。神のトップである照姉が、ああもざっくばらんだしねえ」
と頷く。
「まあ、堅苦しくて難しい事を言われるよりはいいな」
僕達はそう結論付けて、10月の訪れを待ったのだった。
あの世から、神の集会所へ行った。会議は昼間、夕方以降は飲み会らしい。
そして僕と直は知り合いやあった事のない神に挨拶し、宴会に混じっていた。
「神の扱いがこの頃軽くない?」
「そうそう。SNSとかでもすぐに、『神!』とか言うしね」
「あと、『このラーメン、神!』とか。
ラーメンは神じゃないからね」
「ははは。神なら食べちゃダメだよ」
「どれだけ神様がいるのかな、この国。勝手に名乗るの禁止!神の推薦が必要!」
神様達の雑談を聞いているのも楽しい。というか、普通の雑談だった。
「この前、犬そっくりなお茶の葉の人形を見たのよね。ええとね。あ、これ!」
差し出されたスマホを、僕と直と近くの神が覗き込む。
そこには、お茶の葉を使って作り上げた犬が映し出されていた。
「うわあ、凄い」
「器用だねえ」
「本物に見えるぜ」
「でしょ。可愛がってたペットが死んで、それでペットそっくりに作ったんだって」
感心して、僕達はそれを見た。
しかし、思いもよらない所で、その犬を見かける事になるのだった。
10
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
雇われ側妃は邪魔者のいなくなった後宮で高らかに笑う
ちゃっぷ
キャラ文芸
多少嫁ぎ遅れてはいるものの、宰相をしている父親のもとで平和に暮らしていた女性。
煌(ファン)国の皇帝は大変な女好きで、政治は宰相と皇弟に丸投げして後宮に入り浸り、お気に入りの側妃/上級妃たちに囲まれて過ごしていたが……彼女には関係ないこと。
そう思っていたのに父親から「皇帝に上級妃を排除したいと相談された。お前に後宮に入って邪魔者を排除してもらいたい」と頼まれる。
彼女は『上級妃を排除した後の後宮を自分にくれること』を条件に、雇われ側妃として後宮に入る。
そして、皇帝から自分を楽しませる女/遊姫(ヨウチェン)という名を与えられる。
しかし突然上級妃として後宮に入る遊姫のことを上級妃たちが良く思うはずもなく、彼女に幼稚な嫌がらせをしてきた。
自分を害する人間が大嫌いで、やられたらやり返す主義の遊姫は……必ず邪魔者を惨めに、後宮から追放することを決意する。
私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。
Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。
そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。
二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。
自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる