体質が変わったので

JUN

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嘘の理由(2)再調査

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 現世で、僕達はその火事を調べた。
 深夜、戸田重吾郎さんの家から出火し、木造1戸建ての家屋が全焼。戸田重吾郎さんが焼け跡から見つかり、息子の重太郎君は、駆け付けた消防隊員により助け出されている。
 遺体の気管にはススが付き、血中からは睡眠薬が検出されているが、重太郎君とかかりつけ医の証言から、それは2年前に奥さんの静子さんがなくなって以来不眠を訴える重吾郎さんに処方されていたものだと判明。
 また、重吾郎さんはヘビースモーカーで、寝たばこが原因の事故だと結論付けられそうだった。
「重太郎君は中学2年生か」
「今は軽い火傷と気管の炎症で入院中だねえ。行こうか」
「そうだな」
 僕と直は、面会しに行く事にした。

 戸田重太郎君は大部屋で寝ており、言葉も少なく、表情に乏しかった。
 まあ、こんな事件か事故かの後だし、これで家族がいなくなったのだ。それも無理はないとは思うのだが。
「火事の日の事を、もう1度お聞きしたいのですが」
 言うと、自分の膝辺りを見ながら、ボソボソと口を開く。
「夜、ご飯が終わって、風呂に入って、寝ました。その時親父は居間にいたけど。それで、夜中に目が醒めたら、煙が充満してて、何とか階段を下りたところで方向が分かんなくなってしゃがんでたら、消防士さんが助けてくれて……それで……病院で、朝になってから、親父が遺体で見つかったって……」
 相手は中学生だ。話を聞くにも気を使う。
「お父さんに、何か変わった点はありましたかねえ」
「……」
「辛いとは思いますが――」
 ここで重太郎君は、きつい目をして僕達を見た。
「親父は、母さんを殺したんだ。母さんは親父のせいで苦しんで死んだんだ。だから親父が苦しむのは当然だろ?辛くなんかない!」
 激昂したその様子に、同席していた医師がドクターストップをかけ、僕達は廊下に追い出された。
「お母さんを殺した、か。何だろう?」
「静子さんは、肺癌で亡くなってるよう」
「ああ。ヘビースモーカーのせいか?副流煙で肺癌になったって」
「そういう事かねえ」
 信憑性が問題なのではない。本人がそう思っていたかどうかが問題なのだ。
「消防本部にも行こうか」
 僕達は消防本部に行った。
 火災の原因を調査する火災調査室では、火元は重吾郎さんの寝室だという事だった。布団のそばに燃え残りのタバコと灰皿があったという。
「寝たばこでしょうね」
「そうですか。ありがとうございました」
 外に出て、そのまま、ブラブラと歩く。
 下校途中の中学生が、笑顔でふざけ合いながら、すれ違う。
「言い分が事実ならいいんだがな。別に、逮捕したくてしたくてたまらないなんて事はないんだし」
「証拠が全焼して何も残ってないしねえ」
「でも、アレを抜きにしても、引っかかるよな」
「だよねえ」
 僕と直は、溜め息をついた。
 とにかく戻って、課長に報告だ――地獄のアレに関しては言えないが。


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