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嘘の理由(1)まさに、地獄
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地獄。ほとんどの人が行った事はないが、怖いところだという認識で一致している。何せ、物凄く大変な事や怖い事などを、「地獄の1週間」とか「地獄絵図のようなありさま」などと言って、通じるのだ。
僕と直も、今、絶賛地獄の研修中だった。
「これが死後か」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、とうとう亜神なんていうレア体質になってしまった。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。そして、警察官僚でもある。
「いやあ、死んだあと、こういう風な流れになっているんだねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いであり、共に亜神体質になった。そして、警察官僚でもある。
僕達は、亜神になってしまっていたらしい。なので、今生が終わると、そっちの仕事をする事になるそうだ。そしてそれまでこの今生は、忙しい時だけ、あの世や神の手伝いをする事になった。
そのための研修中で、夜に行われている。
行先を決める為の最後の審判を受ける場所、そして天国と、まさに、ここが地獄だった。
「地獄はたくさんあるからな。昔にはあって今は無いところとか、最近できたところもあるし。まあ、時代を常に見ているというわけだ」
こう言うのは、小野篁。平安時代の官吏で、夜な夜なあの世へ行って働いていたというワーカーホリックな人物だ。今風に、短くカットされた髪と服装で、クールでスッキリとしている。僕達の直属の上司になる。
「さて。これでひと通り、死後の順路は見学したな。
あとは、ちょっと審判前の確認を見ておくか。来い」
小野さんに連れられて、審判を待つ新人の死人達(?)の生前の行いに対する罪状認否とも言うべきものに立ち会う事になった。
そこにいたのは、どこから見ても頭にヤの付く反社会的な職業の人だったが、生前の行いが現れる書類を見ると、とんでもなかった。
誰よりも優しく、親切で、人助けをたくさんしていた。
「……見かけはマルBなのに……」
「見た目で判断しちゃいけないっていう、実例だよねえ」
僕と直は、小声でしみじみと言った。
「これに間違いはありませんか」
係官に問われ、彼は
「はい」
と答え、書類にサインを入れた。そして、待合室へ行く。
「認めないやつもいる。でも、ここに現れる記録は正確だ。漏れもない。それを頭に入れておけ。
一度やっておくか。おい、代われ」
小野さんは係官を椅子から立たせると、僕と直に座れと指示し、次の亡者を入れた。
入って来たのは、中年の男だった。
書類によると、息子に睡眠薬を飲まされて家に放火され、それで焼死したとなっている。
「戸田重吾郎さんですね」
「はい」
「放火殺人での殺害となっていますが」
戸田さんはキッと僕達を睨むように見ると、身を乗り出してまくしたてた。
「違う!俺が寝たばこで火を出してしまったんだ。睡眠薬は、眠れない時に処方されているのを飲むようにしてたものだ。そのせいで起きられなかったんだ。俺のミスだ」
僕達は互いに顔を見合わせた。
が、警察官としては、放っておけない。
「再調査してもよろしいでしょうか」
小野さんは僕と直と係員の視線を受け、息をついてから重々しく言った。
「いいだろう。この件は2人に任せる」
僕と直は、不安そうな顔をする戸田さんを見た。
僕と直も、今、絶賛地獄の研修中だった。
「これが死後か」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、とうとう亜神なんていうレア体質になってしまった。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。そして、警察官僚でもある。
「いやあ、死んだあと、こういう風な流れになっているんだねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いであり、共に亜神体質になった。そして、警察官僚でもある。
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そのための研修中で、夜に行われている。
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こう言うのは、小野篁。平安時代の官吏で、夜な夜なあの世へ行って働いていたというワーカーホリックな人物だ。今風に、短くカットされた髪と服装で、クールでスッキリとしている。僕達の直属の上司になる。
「さて。これでひと通り、死後の順路は見学したな。
あとは、ちょっと審判前の確認を見ておくか。来い」
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そこにいたのは、どこから見ても頭にヤの付く反社会的な職業の人だったが、生前の行いが現れる書類を見ると、とんでもなかった。
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「……見かけはマルBなのに……」
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僕と直は、小声でしみじみと言った。
「これに間違いはありませんか」
係官に問われ、彼は
「はい」
と答え、書類にサインを入れた。そして、待合室へ行く。
「認めないやつもいる。でも、ここに現れる記録は正確だ。漏れもない。それを頭に入れておけ。
一度やっておくか。おい、代われ」
小野さんは係官を椅子から立たせると、僕と直に座れと指示し、次の亡者を入れた。
入って来たのは、中年の男だった。
書類によると、息子に睡眠薬を飲まされて家に放火され、それで焼死したとなっている。
「戸田重吾郎さんですね」
「はい」
「放火殺人での殺害となっていますが」
戸田さんはキッと僕達を睨むように見ると、身を乗り出してまくしたてた。
「違う!俺が寝たばこで火を出してしまったんだ。睡眠薬は、眠れない時に処方されているのを飲むようにしてたものだ。そのせいで起きられなかったんだ。俺のミスだ」
僕達は互いに顔を見合わせた。
が、警察官としては、放っておけない。
「再調査してもよろしいでしょうか」
小野さんは僕と直と係員の視線を受け、息をついてから重々しく言った。
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