体質が変わったので

JUN

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チビッ子編 👻 たんぽぽ捕物帖(2)盗撮魔現る

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 色んな服装の子供達がいる。お姫様、怪獣、魔女、ちょうちょ。
 怜は忍者、直は狩人だ。
 怜に何の格好がいいか訊くと、最近お気に入りのドラマに登場する御庭番がいいと言ったのだ。衣装は割と簡単にできた。上様とかだったらカツラも用意しなければいけない所だったので、正直助かった。
 直は、妹の絵本に出て来る狩人が気に入ったらしい。直の父兄は、「白雪姫とか言い出さなくて良かった」と冗談を言っていた。
 ジーンズの司は黒装束の怜と狩人の直を連れて、ルートに従って家をまわっていた。
 訪問先の中には歯医者もあり、たくさんの園児が緊張を強いられ、そして、「意外と怖くない」と認識を改めさせられている。そして、歯医者へのハードルを下げようという父兄の魂胆にはまっていた。
 怜と直もここをクリアし、おもちゃの吸盤付きの弓とプラスティックの刀を片手に上機嫌で歩いていた。
「兄ちゃんもお菓子一緒に食べようね!」
「ボクのもあげるね!」
「ありがとう。ほら、前を見ないと危ないぞ」
「はあい」
 と、その足が止まった。
 前方のブロック塀の陰に、怪しい男がいた。
 犯罪者が見るからに怪しい訳がないと司は思っていたが、これは怪しい。締まりなく口元を開き、イヤホンを耳に差し込み、モバイルのような何かを両手で持っていた。
 幼稚園児ですらも怪しいと思って、手前の曲がり角で身をひそめるくらいだ。
「あれ、何、兄ちゃん」
 こそっと怜が訊く。
「何だろうな。
 あ、盗撮魔か?この塀の向こうはどこかの会社の女子寮だったな」
「盗撮魔って、お母さんが言ってた。卑劣で悪いやつなんだって」
「卑劣って何?」
「知らないなあ。ううんと、ひれかつの仲間?」
「美味しそうだね」
 怜と直がトンチンカンな会話をしているうちに、司は携帯電話を取り出して、警察に知らせようとしていた。
 が、幼児の思わぬ行動に先を越された。
「悪者め!言い逃れはできんぞ!」
「へ!?いや、お、俺は、その、あっち行け!」
 推定盗撮魔が慌てるが、司も慌てた。
「え!?ちょっと待て!」
「逃がさん!」
 ラジコンをあたふたと回収しようとする推定盗撮魔に向かって、直が弓を射た。それは上手く推定盗撮魔の眼鏡に当たって、視界をふさぎ、尻もちをつかせた。
「ぎゃあ!な、何だ!?」
 慌てた拍子に、ラジコンのヘリがガツンと窓に当たったらしく、塀の向こうから、
「え、何の音?」
「ヘリコプターのおもちゃ?」
「カメラが付いてる!」
「キャアアアア!!チカンよおおおお!!」
と声が響き、司の携帯電話の向こうからは、
『どうしました?え、チカン?もしもし?』
と、緊急通報センターの警察官の声がする。
 そして、怜は期待を込めた目で司を見上げている。
「兄ちゃん!」
「……あ。『成敗』」
 司が言うと、怜は嬉しそうにおもちゃの刀を振り上げて、「目が!目がああ!」と混乱している推定盗撮魔に飛び掛かって行き、背中に叩きつけた。
「ウギャアアア!?」
 ビクビクしていたところにわけのわからない攻撃を受けたと思い込んでいる盗撮魔は、情けない悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。
 司は悠々とうつぶせに倒れてもがく推定盗撮魔に近付き、背中から抑えつけた。




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