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チビッ子編 👻 バディ誕生(3)一番のヒーロー
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交番の巡査は、パトロール中で不在だった。不在の時はこの電話をかけて下さいと書いた札があったが、幼稚園児には読めなかった。
なので、怜と直は、自分達でどうにかするしかないと決心したのだ。
怜は、お兄ちゃんならきっと助けようとするはずだと思って。
直は、戦隊ヒーローバードマンならそうするはずだと思って。
2人は手をつないで、近道になる会社の生垣の中を通って、幼稚園に急いでいた。
幼稚園の生垣の隙間を通って園内に戻ると、園児達は教室に入ったのか姿が見えなかった。
「先手をうたれたか!」
直が悔しそうに言う。
そっと覗き込んだ教室では、先生を前に園児達が座って、各々喋っている。先生達は、深刻そうな顔で、何やら話してた。
「泥棒はいないね、直君」
「油断しちゃだめだよ、怜君。こっちの隙をうかがってるんだよ、きっと」
2人はゴクリと唾を呑んだ。
と、背後から声がかかった。
「ああ、いた。怜君と直君だね?」
2人が振り返ると、そこには、あの泥棒が立っており、2人を見て笑っていた。
一方司達は、ようやくたんぽぽ幼稚園の近くにやって来た。
「へえ、ここかあ」
「わあ。遊具とか小さい!水道の蛇口の位置が低い!」
「幼稚園の頃って、俺達もこんなだったんだなあ」
「怜はどこだ?なんで誰もいないんだ?」
「落ち着け、御崎。お絵描きとかもあるだろう」
と、その時だ。
「ん!?向こうから怜の声がした!」
司が表情を引き締めた。
「え?した?え?」
そして、戸惑う友人達を置いて、さっさと園内に入り込んで建物の方に走って行く。
「おおい、待てよ!」
友人達は慌てて後を追った。
と、泣きながら走っている幼稚園児2人がおり、その後ろから若い男が2人を追いかけるように走っていた。
「怜!?貴様!」
司はカバンを放り投げ、男を取り押さえるべく走り出す。
怜と直は手をつないで走っていたが、目の前のグルグルで手を離し、左右に分かれた。鉄を球体に編んであり、真ん中の棒を中心にしてグルグル回る遊具だ。人工衛星とかグルグルとか呼んでいるが、回転ジャングルジムという名を誰も知らない。
男は迷ったが、どちらかと言えば近かった直の方に向かう。
それで直は、グルグルに飛び込んだ。男も飛び込む。
「待って。お兄さんはね――」
「怜、今だ!」
言いながら直が隙間から飛び降り、すかさず怜がグルグルと回し出す。飛び降りた直も一緒になって回す。
「え?ちょっと?あ、気持ち悪……」
ちょこまかと走り廻らされた挙句にグルグルと回されて、彼の顔色が青くなっていく。
「怜!?」
「あ、兄たん――じゃなかった兄ちゃん!」
にいたんはそろそろやめようと言われているのを思い出して、律儀に言い直す。
「偉いぞ、怜。
じゃない。どうしたんだ?」
司はとりあえず一緒に回しながら訊く。中では男が、口を押えながら真っ青になっていた。
「あのね、泥棒なの!」
「泥棒?」
「先生も騙されてたんだよ!」
司の友人達も辿り着いて、怜と直に代わってグルグルをさらに高速回転させながら、怪訝な顔をする。
「お巡りさんに知らせようと思って、お饅頭屋さんの所の交番に行ったけど、いなかったの」
「それで、怜君と、捕まえる事にしたんだ!」
「……うえっ……」
司達は、青い顔で首を振る男を見た。
「怜と、ええっと」
「直」
「直君。どうしてこの人が泥棒なんだ?」
2人は自信満々に言った。
「だって、泥棒模様の風呂敷をもってたもん!」
司達は、男に目をやり、ゆっくりとグルグルを止めた。
男はフラフラとよろめくように降りて来ると、空を仰いで深呼吸した。
その彼に、司が恐る恐る訊く。
「あの、失礼ですが」
「……防犯課から、防犯教室の為に来ました」
司達は、一斉に頭を下げた。
「申し訳ありませんでした!」
「いや。悪いのは、唐草模様だから。冤罪だけど」
その警察官は、力なく笑った……。
午後から、留守番の仕方などを指導するための防犯教室をする事になっており、そのために来た警察官の1人だった。
泥棒役だからと、唐草模様の風呂敷を用意していた事が、仇となったようだ。
「いや。うん。実にいい連携だったね。怪しい人間を見逃さない目といい、大変よくできました」
なけなしの笑顔を怜と直に向ける警察官に、司達は、再び深々と頭を下げるのだった。
「本当に済みませんでしたァ!」
園児2人が消えたと騒ぎになりかけていた幼稚園だったが、無事に防犯教室は行われた。
そしてこれが、怜と直の、バディの始まりだったのである。
なので、怜と直は、自分達でどうにかするしかないと決心したのだ。
怜は、お兄ちゃんならきっと助けようとするはずだと思って。
直は、戦隊ヒーローバードマンならそうするはずだと思って。
2人は手をつないで、近道になる会社の生垣の中を通って、幼稚園に急いでいた。
幼稚園の生垣の隙間を通って園内に戻ると、園児達は教室に入ったのか姿が見えなかった。
「先手をうたれたか!」
直が悔しそうに言う。
そっと覗き込んだ教室では、先生を前に園児達が座って、各々喋っている。先生達は、深刻そうな顔で、何やら話してた。
「泥棒はいないね、直君」
「油断しちゃだめだよ、怜君。こっちの隙をうかがってるんだよ、きっと」
2人はゴクリと唾を呑んだ。
と、背後から声がかかった。
「ああ、いた。怜君と直君だね?」
2人が振り返ると、そこには、あの泥棒が立っており、2人を見て笑っていた。
一方司達は、ようやくたんぽぽ幼稚園の近くにやって来た。
「へえ、ここかあ」
「わあ。遊具とか小さい!水道の蛇口の位置が低い!」
「幼稚園の頃って、俺達もこんなだったんだなあ」
「怜はどこだ?なんで誰もいないんだ?」
「落ち着け、御崎。お絵描きとかもあるだろう」
と、その時だ。
「ん!?向こうから怜の声がした!」
司が表情を引き締めた。
「え?した?え?」
そして、戸惑う友人達を置いて、さっさと園内に入り込んで建物の方に走って行く。
「おおい、待てよ!」
友人達は慌てて後を追った。
と、泣きながら走っている幼稚園児2人がおり、その後ろから若い男が2人を追いかけるように走っていた。
「怜!?貴様!」
司はカバンを放り投げ、男を取り押さえるべく走り出す。
怜と直は手をつないで走っていたが、目の前のグルグルで手を離し、左右に分かれた。鉄を球体に編んであり、真ん中の棒を中心にしてグルグル回る遊具だ。人工衛星とかグルグルとか呼んでいるが、回転ジャングルジムという名を誰も知らない。
男は迷ったが、どちらかと言えば近かった直の方に向かう。
それで直は、グルグルに飛び込んだ。男も飛び込む。
「待って。お兄さんはね――」
「怜、今だ!」
言いながら直が隙間から飛び降り、すかさず怜がグルグルと回し出す。飛び降りた直も一緒になって回す。
「え?ちょっと?あ、気持ち悪……」
ちょこまかと走り廻らされた挙句にグルグルと回されて、彼の顔色が青くなっていく。
「怜!?」
「あ、兄たん――じゃなかった兄ちゃん!」
にいたんはそろそろやめようと言われているのを思い出して、律儀に言い直す。
「偉いぞ、怜。
じゃない。どうしたんだ?」
司はとりあえず一緒に回しながら訊く。中では男が、口を押えながら真っ青になっていた。
「あのね、泥棒なの!」
「泥棒?」
「先生も騙されてたんだよ!」
司の友人達も辿り着いて、怜と直に代わってグルグルをさらに高速回転させながら、怪訝な顔をする。
「お巡りさんに知らせようと思って、お饅頭屋さんの所の交番に行ったけど、いなかったの」
「それで、怜君と、捕まえる事にしたんだ!」
「……うえっ……」
司達は、青い顔で首を振る男を見た。
「怜と、ええっと」
「直」
「直君。どうしてこの人が泥棒なんだ?」
2人は自信満々に言った。
「だって、泥棒模様の風呂敷をもってたもん!」
司達は、男に目をやり、ゆっくりとグルグルを止めた。
男はフラフラとよろめくように降りて来ると、空を仰いで深呼吸した。
その彼に、司が恐る恐る訊く。
「あの、失礼ですが」
「……防犯課から、防犯教室の為に来ました」
司達は、一斉に頭を下げた。
「申し訳ありませんでした!」
「いや。悪いのは、唐草模様だから。冤罪だけど」
その警察官は、力なく笑った……。
午後から、留守番の仕方などを指導するための防犯教室をする事になっており、そのために来た警察官の1人だった。
泥棒役だからと、唐草模様の風呂敷を用意していた事が、仇となったようだ。
「いや。うん。実にいい連携だったね。怪しい人間を見逃さない目といい、大変よくできました」
なけなしの笑顔を怜と直に向ける警察官に、司達は、再び深々と頭を下げるのだった。
「本当に済みませんでしたァ!」
園児2人が消えたと騒ぎになりかけていた幼稚園だったが、無事に防犯教室は行われた。
そしてこれが、怜と直の、バディの始まりだったのである。
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