体質が変わったので

JUN

文字の大きさ
上 下
855 / 1,046

いちばん(4)か・み・さ・ま

しおりを挟む
 もつれ合い、殺し合い、溶けあう。静電気が起きてバチバチと放電した。

     オマエナンテ イナクナレ

     ハナスモンデスカ イッショウ

「祓うか」
「何を言っても、聞きそうにないもんねえ」
 気味悪く、体が変に変形し、顔が変わり、歪む。
 そこに浄力を注ぎ込む。

     オレハ メジャーデビュースルンダ

     コレダケ ツクシタンダカラ
     アナタハ ワタシノモノ

 それで2人は、消えていった。
「……まあ、いいか」
「いいよ。仕方ないねえ」
 僕達は溜め息をついて、廊下に出た。
 と、そこにスタッフが小走りで来た。
「ああ、時間ですよ。最初の方ですよね。早く、早く!」
 意外と強い力で腕を掴まれる。
「え?いや、あの、違い――」
「連れてきました!」
 舞台袖へ連れて来られ、他のスタッフが「はーい」とか返事をする。
「待って」
 直も焦っている。
 しかし、舞台に突き飛ばされるようにグイグイと上がらされる。
「ええっとなんでしたっけ」
 もうだめだ。誰か助けて。
「兄ちゃん」
 ボソッと言うが、訊き返された。
「ええ?」
 直が呟くのが聞こえたらしい。
「かみさま」
「神SUMMERね」
「違う!!」
 僕達はハモって抗議した。DとGの音で。

 僕達は陰陽課に帰り、グッタリとしていた。
「二度と変装はしない」
「あぶないトコだったねえ」
 しかし皆は面白がるだけだ。挙句の果てに僕と直の心霊研究部時代の写真を出して来て、今と見比べている。
「変わってない!?」
「嘘ぉ!」
「高校に潜入できますね」
 美保さん、松島さん、小牧さんが言う。
「冗談じゃないよ」
 言いながら、机に突っ伏した。
「しかし、あれですね。あの番組も、裏は色々あるんですね。交渉できるだけって、必ずデビューできるものだと思ってました」
 十条さんががっかりしたように言う。
「勝ち抜けばどんなバンドでもデビューなんて事はできないでしょう」
 鍋島さんが苦笑する。
「でも、テコいれは酷い。がっかりだぁ」
 能見さんは嘆息した。
「ああ、怖い怖い」
 直は言って、アオにビスケットをやっている。
「それはさておき、階段から転落死したリカという女性の方は、おかしな点はありませんでしたか」
 訊くと、千歳さんが頷いて言った。
「はい。突き飛ばされた形跡はなく、体勢を崩したらしいとの事でした」
「ボーカルの方も、自宅で首を吊っていましたが、疑う余地はなさそうです」
 誠人が付け加える。
「じゃあ、これで解決だな。はあ、面倒臭い事件だった」
 僕は言いながら、生放送でなくて良かったとつくづく思ったのだった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

処理中です...