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いちばん(2)すれ違う霊
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金色、赤色、緑色。エッフェル塔のように立っていると思えば、部分的に刈り上げていたり。かと思えば、意外と普通だったりもする。
ようするに、何でもありの、色々な人がそこにはいた。
僕達の、緑色の髪だろうが赤い髪だろうが、その中では全く違和感が無い。
「29だぞ。21歳の設定は無理がないか」
そう言ったが、
「違和感ないよ。そう言えば、怜君、高校生の頃からあんまり変わってないよね」
と徳川さんと沢井さんに言われ、直と2人、送り出された。
それでとりあえずはと、収録現場である音楽ホールの中を歩いていた。
その途中、出演する10組のバンドメンバー達の声も聞こえて来る。
妬み、嫉み、噂、悪意しかない想像。誰かを引きずり下ろしたいという心情の吐露。
「何か、疲れるねえ」
「頭痛くなるな」
悪い感情が、悪いものを呼ぶ。害をなすほどでなくとも、わかる者なら、当てられていい気分はしない。
僕達はグロッキー気味になりながらも、怪しい気配が出ないかと、パトロールしていた。
階段に差し掛かった時、ザワリとした感じがして、女が近くに現れた。そして彼女は僕達の顔を至近距離から覗き込むと、
ちがう
と言って、消えて行った。
「あれ?」
「引きずり落とさないのかねえ?」
首を傾げていると、またも気配がして、悲鳴が上がった。
「楽屋か!」
急いで向かう。
各グループにひとつ楽屋を割り振られており、その中の1室から飛び出した男が、震えながら廊下にへたり込むのが見えた。暫定チャンピオンの楽屋だ。
「どうしましたか?」
「あ、あそこ……!」
震える指で中を指し、僕達はその楽屋に入った。
そこには頭を抱えて震える、短い金髪のガタイのいい男がいた。そして、見開いた目を、半透明で空中に浮かんでいる細身の男に向けていた。
そこはお前の場所じゃない
そう言う。
それに直が札をきる直前に、その霊はすうっと掻き消えて行った。
「逃がしたねえ」
直が言い、にらめっこしていた男は肩の力を抜いた。
「助かった……」
「一体何があったんですか」
訊くと、廊下から入って来た男とその辺で腰を抜かして座り込んでいた男達が集まって来て、パイプ椅子にどうにか腰を下ろす。
「いきなりあの幽霊がそこに出て来て、俺達を睨んで見回したんだよ」
中の1人が水をゴクゴク飲んで言う。
「それで、廊下に飛び出したり、椅子からずり落ちたりしたんだけど、俺は目が合ったから動けなくて」
睨み合っていた男だ。
「それで硬直してたら、あんた達が来て、それで幽霊は『そこはお前の場所じゃない』って言って消えたんだよ。
お前、逃げ出すなんて冷たいな」
「どうしようもないだろ!?って、お前は何かできるのかよ!」
仲間割れが始まった。
ああ。演奏は大丈夫なんだろうか。
「まあまあ、落ち着いて」
「そう言えばあんた達誰だよ。どこのバンドだよ。スパイか?」
「いやいやいや。怪しい者じゃあないですよう」
「怪しいやつがそうと言うわけないだろ」
「おお、確かに」
「真理だねえ」
「ふざけてんのか手前ェ」
外に共通の敵を作る手段でなあなあを謀る気か、こいつ。
そう思いながらも、僕達は
「通りすがりの者です」
「どうもぉ」
と、そこを出た。
そして、こそこそと相談する。
「階段の話は、驚いて勝手に落ちただけかもな」
「だねえ。掴みかかるのも、至近距離に接近されるせいかもねえ」
「ああ。どうも、積極的に関わって来るのはあの2人だな。話を聞きに行くか」
僕と直は、番組ディレクターの所に向かった。
ようするに、何でもありの、色々な人がそこにはいた。
僕達の、緑色の髪だろうが赤い髪だろうが、その中では全く違和感が無い。
「29だぞ。21歳の設定は無理がないか」
そう言ったが、
「違和感ないよ。そう言えば、怜君、高校生の頃からあんまり変わってないよね」
と徳川さんと沢井さんに言われ、直と2人、送り出された。
それでとりあえずはと、収録現場である音楽ホールの中を歩いていた。
その途中、出演する10組のバンドメンバー達の声も聞こえて来る。
妬み、嫉み、噂、悪意しかない想像。誰かを引きずり下ろしたいという心情の吐露。
「何か、疲れるねえ」
「頭痛くなるな」
悪い感情が、悪いものを呼ぶ。害をなすほどでなくとも、わかる者なら、当てられていい気分はしない。
僕達はグロッキー気味になりながらも、怪しい気配が出ないかと、パトロールしていた。
階段に差し掛かった時、ザワリとした感じがして、女が近くに現れた。そして彼女は僕達の顔を至近距離から覗き込むと、
ちがう
と言って、消えて行った。
「あれ?」
「引きずり落とさないのかねえ?」
首を傾げていると、またも気配がして、悲鳴が上がった。
「楽屋か!」
急いで向かう。
各グループにひとつ楽屋を割り振られており、その中の1室から飛び出した男が、震えながら廊下にへたり込むのが見えた。暫定チャンピオンの楽屋だ。
「どうしましたか?」
「あ、あそこ……!」
震える指で中を指し、僕達はその楽屋に入った。
そこには頭を抱えて震える、短い金髪のガタイのいい男がいた。そして、見開いた目を、半透明で空中に浮かんでいる細身の男に向けていた。
そこはお前の場所じゃない
そう言う。
それに直が札をきる直前に、その霊はすうっと掻き消えて行った。
「逃がしたねえ」
直が言い、にらめっこしていた男は肩の力を抜いた。
「助かった……」
「一体何があったんですか」
訊くと、廊下から入って来た男とその辺で腰を抜かして座り込んでいた男達が集まって来て、パイプ椅子にどうにか腰を下ろす。
「いきなりあの幽霊がそこに出て来て、俺達を睨んで見回したんだよ」
中の1人が水をゴクゴク飲んで言う。
「それで、廊下に飛び出したり、椅子からずり落ちたりしたんだけど、俺は目が合ったから動けなくて」
睨み合っていた男だ。
「それで硬直してたら、あんた達が来て、それで幽霊は『そこはお前の場所じゃない』って言って消えたんだよ。
お前、逃げ出すなんて冷たいな」
「どうしようもないだろ!?って、お前は何かできるのかよ!」
仲間割れが始まった。
ああ。演奏は大丈夫なんだろうか。
「まあまあ、落ち着いて」
「そう言えばあんた達誰だよ。どこのバンドだよ。スパイか?」
「いやいやいや。怪しい者じゃあないですよう」
「怪しいやつがそうと言うわけないだろ」
「おお、確かに」
「真理だねえ」
「ふざけてんのか手前ェ」
外に共通の敵を作る手段でなあなあを謀る気か、こいつ。
そう思いながらも、僕達は
「通りすがりの者です」
「どうもぉ」
と、そこを出た。
そして、こそこそと相談する。
「階段の話は、驚いて勝手に落ちただけかもな」
「だねえ。掴みかかるのも、至近距離に接近されるせいかもねえ」
「ああ。どうも、積極的に関わって来るのはあの2人だな。話を聞きに行くか」
僕と直は、番組ディレクターの所に向かった。
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