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捕食(1)囮作戦
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普段、陰陽課から協力依頼の為に協会へ出向く事は多いが、その反対は少ない。しかし今回は、その珍しいパターンが起こっていた。
「霊能師が消える、または意識不明に陥る、ですか」
僕は支部長に訊き返した。
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「今月の頭から、もうこれで6人だ」
「新人ですかねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「色々だな。新人に近いのから中堅まで。
皆、肝試しの後始末の依頼を受けての事なんだ。夏休みに入って多いだろ?それで、新人にも中堅にも割り振っててな」
「それで、中堅のベテランまで、事故にあってるんですか」
どういう状況だろう。
「原因の調査と解決、お願いできないだろうか」
支部長が神妙な顔で言うと、徳川さんが答えた。
「放っておくわけにはいきませんよね。何か強い霊のせいか、人為的な何かかも知れない。霊能師も大切な国民、都民ですからね」
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ここは、怜君と直君に頼もう。確実に頼むよ」
「はい」
こうして、僕と直は、その不可解な事件に関わる事となったのだった。
僕は鏡を見て言った。
「いや、この必要、あるのか?」
緑色の髪に四角いメタルフレームの眼鏡、革風のシャツにジーンズ。
直を見ると、髪を濃いピンクというか赤に染めてパーマをかけ、髑髏の絵の入ったTシャツに革のベスト、ジーンズ。
「うわお。別人だよねえ」
直も僕を見てそう言った。
「囮になるんだもの。あまりにも強いと知れ渡ってる霊能師じゃあ、流石に囮にならないわ」
ユキが面白そうに言う。
天野優希、高校で同じ心霊研究部を創設した仲間だ。お菓子作りが好きな大人しいタイプで、慣れるまでは人見知りをする。霊能師協会で、カウンセラーとして働いている。
蜂谷はニヤニヤと完全に面白がっている。
蜂谷恭介。霊能師で、呪術、解呪に強く、電波を介した術のエキスパートで、パソコン関係にも明るい。シニカルなところがあるが、根はお人好しで、面倒見がいい。
「なかなか似合ってるぞ。バンド活動してる大学生みたいで」
「そう言えば、昔チャラい美容師に、こういう髪形勧められたな」
「ああ、あったねえ。ボクはパーマを勧められて、怜は緑に染めて長髪にしてみたらどうかって」
想像したのか、蜂谷は低く口笛を吹き、ユキは眉をハの字にした。
「そうだ。偽の免許証くらいはいるよね」
徳川さんが、完全に悪乗りして、偽造免許証を作る算段を始めた。
「面白がってるでしょう、皆。ねえ」
「でも、何だかボクもその気になって来たねえ。
へい、ピピッと祓っちゃうぜ!なんてねえ」
直まで遊び出した。
ああ、なんてことだ。でも、まあ、ちょっとだけ楽しいな。
こうして、囮作戦がスタートしたのだった。
「霊能師が消える、または意識不明に陥る、ですか」
僕は支部長に訊き返した。
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「今月の頭から、もうこれで6人だ」
「新人ですかねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「色々だな。新人に近いのから中堅まで。
皆、肝試しの後始末の依頼を受けての事なんだ。夏休みに入って多いだろ?それで、新人にも中堅にも割り振っててな」
「それで、中堅のベテランまで、事故にあってるんですか」
どういう状況だろう。
「原因の調査と解決、お願いできないだろうか」
支部長が神妙な顔で言うと、徳川さんが答えた。
「放っておくわけにはいきませんよね。何か強い霊のせいか、人為的な何かかも知れない。霊能師も大切な国民、都民ですからね」
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ここは、怜君と直君に頼もう。確実に頼むよ」
「はい」
こうして、僕と直は、その不可解な事件に関わる事となったのだった。
僕は鏡を見て言った。
「いや、この必要、あるのか?」
緑色の髪に四角いメタルフレームの眼鏡、革風のシャツにジーンズ。
直を見ると、髪を濃いピンクというか赤に染めてパーマをかけ、髑髏の絵の入ったTシャツに革のベスト、ジーンズ。
「うわお。別人だよねえ」
直も僕を見てそう言った。
「囮になるんだもの。あまりにも強いと知れ渡ってる霊能師じゃあ、流石に囮にならないわ」
ユキが面白そうに言う。
天野優希、高校で同じ心霊研究部を創設した仲間だ。お菓子作りが好きな大人しいタイプで、慣れるまでは人見知りをする。霊能師協会で、カウンセラーとして働いている。
蜂谷はニヤニヤと完全に面白がっている。
蜂谷恭介。霊能師で、呪術、解呪に強く、電波を介した術のエキスパートで、パソコン関係にも明るい。シニカルなところがあるが、根はお人好しで、面倒見がいい。
「なかなか似合ってるぞ。バンド活動してる大学生みたいで」
「そう言えば、昔チャラい美容師に、こういう髪形勧められたな」
「ああ、あったねえ。ボクはパーマを勧められて、怜は緑に染めて長髪にしてみたらどうかって」
想像したのか、蜂谷は低く口笛を吹き、ユキは眉をハの字にした。
「そうだ。偽の免許証くらいはいるよね」
徳川さんが、完全に悪乗りして、偽造免許証を作る算段を始めた。
「面白がってるでしょう、皆。ねえ」
「でも、何だかボクもその気になって来たねえ。
へい、ピピッと祓っちゃうぜ!なんてねえ」
直まで遊び出した。
ああ、なんてことだ。でも、まあ、ちょっとだけ楽しいな。
こうして、囮作戦がスタートしたのだった。
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