体質が変わったので

JUN

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成長(1)消えた我が子

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 自分が悪かったのだろうか。何か方法があったのだろうか。
 取り戻せるなら、取り戻したい。何としても。
 則子は涙の止まらない目で、写真を見た。我が子の写真を。

 休日に出張した分の代休で休みになった僕と直は、凜と累、優維ちゃんと、公園近くのウサギ小屋の前にいた。僕の小さい頃からこの家はウサギを飼っており、ウサギは僕達子供のアイドルだったものだ。
 今でも、凜や累や優維ちゃん達、今の子供のアイドルらしい。
「どうぞ」
 優維ちゃんが葉っぱを金網の隙間から差し込み、それをウサギが、鼻をヒクヒクさせながら忙しく食べるのを、子供達は嬉しそうに笑って見ている。
「毎日、見に来たもんだよなあ」
 御崎 怜みさき れん。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「皆勝手に名前を付けてねえ」
 直が苦笑しながら言う。
 町田 直まちだ なお、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「うさちゃん、ずっと前からいるの?」
 優維ちゃんが訊く。
「お父さんが優維くらいの時にもいたよう。その時のウサギの、孫とかひ孫くらいかねえ」
 ウサギの寿命ってどのくらいなんだろうな。
 凜と累も、差し込んだ葉っぱをウサギが食べると、手を叩いて喜ぶ。
 と、少し向こうの交差点に、暗い顔付きの若い女性が通りかかった。買い物帰りなのか、ネギがエコバッグの上から出ており、ゆったりとしたシルエットのスカートとコート、ヒールのない靴を履いている。
「うたたん、長いねえ」
 累が両手を頭の上で揃えて立て、ウサギのマネをすると、凜も、
「ん。ぴょん!」
と、同様に両手を頭の上に縦て、小さく跳ぶ。
「ぴょん!」
 それで累も跳ぶと、今度はそれが面白くなったのか、2人は笑いながら、ぴょん、ぴょん、と繰り返した。
 女性は交差点からそれを微笑まし気に見ていたが、不意に顔を伏せ、無理矢理目を引き剥がすようにして歩き出した。
「今の人、公園の前にある家の人だよな。妊婦さんかな」
「確か袴井さんだったねえ。
 春先に出産予定だったらしいんだけど、ついこの前、流産したそうだよう」
 直は気の毒そうに言った。
「それは、気の毒な話だな」
「さあてと。うさちゃんにおやつをあげたから、今度はボク達も、家に帰っておやつにしようかねえ」
 直が言うと、子供達はウサギに「バイバーイ」と手を振って、仲良く手をつないで歩き始めた。




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