761 / 1,046
分裂(4)本音
しおりを挟む
それはスマホの上に出て来ると、周りを見て、慌ててスマホ内に逃げ込もうとした。
「それは困るんだよねえ」
直が札で縛る。
何をするのよ!?
「事情を訊きたいのですが。
あなたはどちら様ですか」
ブロガーのキエよ!
「キエさん。あなたは江川貴恵さんご本人の意志を離れて、勝手にブログを書いたりしていますね」
だって、本音を隠していい子ぶって、見栄を張って
つまんないんだもの
江川さんがムッとする。
しかし見た目は、まるで双子だ。
「だからって、勝手に何をするのよ。会社でもトラブルになるし、いい迷惑だわ」
「いつから自我を得たんですか」
先月くらいよ
見栄張って高い服買ったりして バカみたい
本当はあの上司がうざいと思ってるのに
せめて本音を書けばいいのに
江川さんが肩を落とす。
それを、皆が気の毒そうに見た。
「だからってねえ」
だから 代わりに言ってやったの
ケチでパワハラのセクハラのゴマすり野郎って
私は願望を素直に表してあげただけよ
「でも、20万は違うよねえ」
あら。思ってたのよ
宣伝してやるとか言えばどのくらい出すのかなって
今月はピンチだから
20万あれば助かるのになあって
江川さんがガックリと下を向いた。
「思うと行動に移すとでは大違いですから。
あなたが江川さんの本音から生じたものだというのはわかりました。あなたは江川さんの一部を基にしていますが、暴走してしまっているとしか言えません。本人の不利益や意志を無視して勝手に行動している以上、滅する事になりますね」
何でよ!?
喚くキエだったが、無視をして、能見君を呼ぶ。
「能見君。この手のものは祓った事がないだろう。やってみろ」
「え!?俺ですか!?」
「やれ」
「はい!」
能見は尚もギャアギャア言うキエに向かって浄力をぶつけた。
すると、キエはかき消す様に消えて行った。
「こういうわけですので、取り敢えず20万は小杉さんに返却した方がいいですね。後、必要なら、今の現象をあなたの同僚の方に説明しますが」
江川さんは項垂れたまま、力なく、
「いえ、それはいいです」
と答えた。
3人が帰るのを、蜂谷はふうんと気の無さそうな顔で見送った。
「大丈夫かな。あの店、20万は戻っても、客が戻るかどうか……。
それに江川さんも、キエの書いた分で新たなトラブルになるかも知れないし」
言うと、蜂谷は鼻で笑った。
「怜怜はお人好しだなあ。前におかしいと思った事があったんだろ?それでも確認せずに、放置した自分にも責任はあるじゃないか」
「そりゃそうだけど」
「まあ、嫌な上司に関しては別にいいんじゃないかねえ。セクハラやパワハラはこれで却って収まるかもしれないしねえ」
「そうある事を願おうか」
徳川さんが言って、まとめた。
「とにかく、蜂谷さん。助かりました」
「いえいえ。れっきとした依頼ですから。
あの、誠人は上手くやっていますか」
来るのがやけに早いと思ったら、これ幸いと見に来たんだな。
僕も直もニタリとしそうになるのを堪えた。流石に徳川さんはそれをおくびにも出さないが、たぶん同じ事を思っている。
「よくやってくれていますよ」
「そうですか。
どうか、よろしくお願いします」
ホッとしたように言う蜂谷に、誠人がくすぐったそうな顔をしている。
「じゃあ、これで」
「蜂谷、ありがとうな」
「おう」
「誠人、下まで送って行って」
「はい!」
2人が仲良く並んで部屋を出るのを、僕達は微笑ましく見送った。
次の休日の昼は、兄達も一緒に摂った。サーモンとクリームチーズのサンドウィッチ、チキンチーズカツサンド、ゆでたまごのサンドウィッチ、トマトとモッツァレラチーズのサラダ、コーンスープ。凛は離乳食だが。
「ブログはやっぱり性に合わない気がするから、しないわ」
美里が言う。
「CMくらいかしらね、今はしても。
美味しい、サーモンの!」
「チキンもいいわよ。
まあね。あれはあれで大変みたいだしね」
冴子姉が言って、ガブリとサンドウィッチにかぶりつく。
「フォロワー数とか返信とか感想とかに左右されて大変らしいわよ、気にする人は」
「写真を載せるとなれば、指紋やら映り込みやら気を付ける事だらけだしな」
兄もそう言って、スープを飲む。
敬は夢中でぱくつきながら、
「美里ちゃん、またテレビに出るの?」
と訊く。
「そうねえ。ちゃんと決めてないけど。
敬君はどう思う?」
「美里ちゃんはかわいいから、出たら皆嬉しいと思う!」
「あら、そう?だったらCMくらい受けようかしら」
なんだかんだ言って、美里も敬びいきだ。
僕は凜にサーモンの裏ごしを食べさせながら、
「どっちにしろ、人間、無理や見栄はロクな事がないって事だな」
と言うと、凜は力強く、
「ん!」
と言った。
「それは困るんだよねえ」
直が札で縛る。
何をするのよ!?
「事情を訊きたいのですが。
あなたはどちら様ですか」
ブロガーのキエよ!
「キエさん。あなたは江川貴恵さんご本人の意志を離れて、勝手にブログを書いたりしていますね」
だって、本音を隠していい子ぶって、見栄を張って
つまんないんだもの
江川さんがムッとする。
しかし見た目は、まるで双子だ。
「だからって、勝手に何をするのよ。会社でもトラブルになるし、いい迷惑だわ」
「いつから自我を得たんですか」
先月くらいよ
見栄張って高い服買ったりして バカみたい
本当はあの上司がうざいと思ってるのに
せめて本音を書けばいいのに
江川さんが肩を落とす。
それを、皆が気の毒そうに見た。
「だからってねえ」
だから 代わりに言ってやったの
ケチでパワハラのセクハラのゴマすり野郎って
私は願望を素直に表してあげただけよ
「でも、20万は違うよねえ」
あら。思ってたのよ
宣伝してやるとか言えばどのくらい出すのかなって
今月はピンチだから
20万あれば助かるのになあって
江川さんがガックリと下を向いた。
「思うと行動に移すとでは大違いですから。
あなたが江川さんの本音から生じたものだというのはわかりました。あなたは江川さんの一部を基にしていますが、暴走してしまっているとしか言えません。本人の不利益や意志を無視して勝手に行動している以上、滅する事になりますね」
何でよ!?
喚くキエだったが、無視をして、能見君を呼ぶ。
「能見君。この手のものは祓った事がないだろう。やってみろ」
「え!?俺ですか!?」
「やれ」
「はい!」
能見は尚もギャアギャア言うキエに向かって浄力をぶつけた。
すると、キエはかき消す様に消えて行った。
「こういうわけですので、取り敢えず20万は小杉さんに返却した方がいいですね。後、必要なら、今の現象をあなたの同僚の方に説明しますが」
江川さんは項垂れたまま、力なく、
「いえ、それはいいです」
と答えた。
3人が帰るのを、蜂谷はふうんと気の無さそうな顔で見送った。
「大丈夫かな。あの店、20万は戻っても、客が戻るかどうか……。
それに江川さんも、キエの書いた分で新たなトラブルになるかも知れないし」
言うと、蜂谷は鼻で笑った。
「怜怜はお人好しだなあ。前におかしいと思った事があったんだろ?それでも確認せずに、放置した自分にも責任はあるじゃないか」
「そりゃそうだけど」
「まあ、嫌な上司に関しては別にいいんじゃないかねえ。セクハラやパワハラはこれで却って収まるかもしれないしねえ」
「そうある事を願おうか」
徳川さんが言って、まとめた。
「とにかく、蜂谷さん。助かりました」
「いえいえ。れっきとした依頼ですから。
あの、誠人は上手くやっていますか」
来るのがやけに早いと思ったら、これ幸いと見に来たんだな。
僕も直もニタリとしそうになるのを堪えた。流石に徳川さんはそれをおくびにも出さないが、たぶん同じ事を思っている。
「よくやってくれていますよ」
「そうですか。
どうか、よろしくお願いします」
ホッとしたように言う蜂谷に、誠人がくすぐったそうな顔をしている。
「じゃあ、これで」
「蜂谷、ありがとうな」
「おう」
「誠人、下まで送って行って」
「はい!」
2人が仲良く並んで部屋を出るのを、僕達は微笑ましく見送った。
次の休日の昼は、兄達も一緒に摂った。サーモンとクリームチーズのサンドウィッチ、チキンチーズカツサンド、ゆでたまごのサンドウィッチ、トマトとモッツァレラチーズのサラダ、コーンスープ。凛は離乳食だが。
「ブログはやっぱり性に合わない気がするから、しないわ」
美里が言う。
「CMくらいかしらね、今はしても。
美味しい、サーモンの!」
「チキンもいいわよ。
まあね。あれはあれで大変みたいだしね」
冴子姉が言って、ガブリとサンドウィッチにかぶりつく。
「フォロワー数とか返信とか感想とかに左右されて大変らしいわよ、気にする人は」
「写真を載せるとなれば、指紋やら映り込みやら気を付ける事だらけだしな」
兄もそう言って、スープを飲む。
敬は夢中でぱくつきながら、
「美里ちゃん、またテレビに出るの?」
と訊く。
「そうねえ。ちゃんと決めてないけど。
敬君はどう思う?」
「美里ちゃんはかわいいから、出たら皆嬉しいと思う!」
「あら、そう?だったらCMくらい受けようかしら」
なんだかんだ言って、美里も敬びいきだ。
僕は凜にサーモンの裏ごしを食べさせながら、
「どっちにしろ、人間、無理や見栄はロクな事がないって事だな」
と言うと、凜は力強く、
「ん!」
と言った。
10
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる