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親と子(4)決意
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斎藤さんの足を、直が札で縫い留める。
「なに……」
そう声を上げる斎藤さんの顔色は、あまりよくない。
「小西美智さんですね」
無表情なまま、斎藤さんが顔を僕達に向ける。
「だれ?」
「陰陽課の御崎です」
「同じく町田ですねえ」
「あなたは幸恵ちゃんを探しているんですか」
斎藤さんが頷く。
「そう。幸恵」
「会って、どうしますか。どうして会いたいんですか」
その問いに、無表情のままで応えた。
「許さ、ない。あの子だけ、幸せになんて、許さない」
直が小さく嘆息した。背後で、見張り続けて来た警察官達は息を呑んだ。
「わかっていないようですね。子供の命は親のものではないし、その体は斎藤さんのものであってあなたのものでもない。
今すぐ離れてもらいましょうか」
「……いや、だ、殺す、幸恵……」
小西は逃れようとし、斎藤さんは胸を押さえて大きく肩で息をしている。
「直、弾くぞ」
「了解だねえ」
浄力をポンと当てると、小西が押し出されるようにして斎藤さんから剥がれる。それを直がすかさず札で拘束する。
「斎藤さん、大丈夫ですか?」
斎藤さんは微かに頷いた。そこで警察官を手招きし、斎藤さんを託した。
「病院へ移送してください」
「は、はい!了解しました!」
さて。
コロスゥ ユキエェ
ワタシダケガ ドウシテェ
小西は鬼のような形相で叫んでいた。
「これは確かに、見せたらだめだな」
「一生もののトラウマになるねえ」
「子供を心配する親心かと思ってたのに」
「がっかりだよねえ」
僕と直は大きな溜め息をつき、そして僕は、小西を祓った。
「自分勝手な親もいるもんだなあ。
まあ、この人も追い詰められてはいたんだろうけど」
「そうだねえ。でも、無理心中は、ただの殺人だからねえ」
「ああ。容認できないな。どんな理由があろうとも」
救急車のサイレンの音が、近付いて来ていた。
ただいまと玄関に入ると、よたよたとした足取りで凜が出迎えに来てくれる。
「うああ」
「ただいま。出迎えてくれてありがとうな、凜」
「おおたん」
後をついて来た美里が驚く。
「父さんって言った!?」
「もう1回!凜、もう1回な」
「おおたん」
「おお……!」
僕と美里は、感激した。
「じゃあ、かあたん。かあたんだぞ、凜」
「ああたん」
「言ったわ!」
「言ったな!」
抱き上げた凜を挟んで、僕と美里は大喜びだ。
「嬉しいもんだなあ。
あ。京香さん達に悪い事したなあ……」
「何?」
「康介が初めて呼んだらしいの、僕なんだ。『えん』だったけど」
美里が、あらあ、という顔をして、すぐに笑う。
「済んだ事だし、気にしない気にしない」
「あい!」
凜が自信タップリといった様子で返事をし、僕と美里は笑ってしまった。
それを見て、凜が嬉しそうに笑う。
「もし僕が死んだら、心配だから、絶対に憑りついて守護霊になるからな」
「怜。縁起でもないわね。死にかけた事があるだけに、冗談に聞こえないのよ」
「ああ……大丈夫。長生きを目指す。それに、どこか欠けても、また生やす!」
「だからやめてぇ」
僕達は冗談を言いながら奥へ入って行った。
きっと鹿沼家もかつてはこういう幸せな家庭だったのだろう。何が原因で壊れたのかは知らない。僕はそんな事がないように、この幸せを守って行こう。
「なに……」
そう声を上げる斎藤さんの顔色は、あまりよくない。
「小西美智さんですね」
無表情なまま、斎藤さんが顔を僕達に向ける。
「だれ?」
「陰陽課の御崎です」
「同じく町田ですねえ」
「あなたは幸恵ちゃんを探しているんですか」
斎藤さんが頷く。
「そう。幸恵」
「会って、どうしますか。どうして会いたいんですか」
その問いに、無表情のままで応えた。
「許さ、ない。あの子だけ、幸せになんて、許さない」
直が小さく嘆息した。背後で、見張り続けて来た警察官達は息を呑んだ。
「わかっていないようですね。子供の命は親のものではないし、その体は斎藤さんのものであってあなたのものでもない。
今すぐ離れてもらいましょうか」
「……いや、だ、殺す、幸恵……」
小西は逃れようとし、斎藤さんは胸を押さえて大きく肩で息をしている。
「直、弾くぞ」
「了解だねえ」
浄力をポンと当てると、小西が押し出されるようにして斎藤さんから剥がれる。それを直がすかさず札で拘束する。
「斎藤さん、大丈夫ですか?」
斎藤さんは微かに頷いた。そこで警察官を手招きし、斎藤さんを託した。
「病院へ移送してください」
「は、はい!了解しました!」
さて。
コロスゥ ユキエェ
ワタシダケガ ドウシテェ
小西は鬼のような形相で叫んでいた。
「これは確かに、見せたらだめだな」
「一生もののトラウマになるねえ」
「子供を心配する親心かと思ってたのに」
「がっかりだよねえ」
僕と直は大きな溜め息をつき、そして僕は、小西を祓った。
「自分勝手な親もいるもんだなあ。
まあ、この人も追い詰められてはいたんだろうけど」
「そうだねえ。でも、無理心中は、ただの殺人だからねえ」
「ああ。容認できないな。どんな理由があろうとも」
救急車のサイレンの音が、近付いて来ていた。
ただいまと玄関に入ると、よたよたとした足取りで凜が出迎えに来てくれる。
「うああ」
「ただいま。出迎えてくれてありがとうな、凜」
「おおたん」
後をついて来た美里が驚く。
「父さんって言った!?」
「もう1回!凜、もう1回な」
「おおたん」
「おお……!」
僕と美里は、感激した。
「じゃあ、かあたん。かあたんだぞ、凜」
「ああたん」
「言ったわ!」
「言ったな!」
抱き上げた凜を挟んで、僕と美里は大喜びだ。
「嬉しいもんだなあ。
あ。京香さん達に悪い事したなあ……」
「何?」
「康介が初めて呼んだらしいの、僕なんだ。『えん』だったけど」
美里が、あらあ、という顔をして、すぐに笑う。
「済んだ事だし、気にしない気にしない」
「あい!」
凜が自信タップリといった様子で返事をし、僕と美里は笑ってしまった。
それを見て、凜が嬉しそうに笑う。
「もし僕が死んだら、心配だから、絶対に憑りついて守護霊になるからな」
「怜。縁起でもないわね。死にかけた事があるだけに、冗談に聞こえないのよ」
「ああ……大丈夫。長生きを目指す。それに、どこか欠けても、また生やす!」
「だからやめてぇ」
僕達は冗談を言いながら奥へ入って行った。
きっと鹿沼家もかつてはこういう幸せな家庭だったのだろう。何が原因で壊れたのかは知らない。僕はそんな事がないように、この幸せを守って行こう。
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